知っ得!納得!今旬デジタルキーワード事典

BLE? ワイヤレスオーディオ? 今さら聞けない「Bluetooth」最新事情を解説!

このエントリーをはてなブックマークに追加

「Bluetooth(ブルートゥース)」とは、2.4GHz帯の電波を用い、数m〜数十m程度の比較的短距離な無線データ通信を目的とした規格の名称だ(IEEE規格名は「IEEE 802.15.1」)。今やワイヤレス通信方式としてポピュラーになっているこのBluetoothの基本から、爆発的に普及しているワイヤレスオーディオの規格、そしてIoT時代を見据えた「Bluetooth Low Energy」まで解説していこう。

特にスマートフォンでのBluetooth通信は、多くの人にとって使用する機会が増えている

特にスマートフォンでのBluetooth通信は、多くの人にとって使用する機会が増えている

Bluetoothは当初、民生用途としては携帯電話とウェアラブル機器の連携を想定して開発されたもので、「パーソナル・エリア・ネットワーク」(PAN)に位置付けられる。広域通信を目的としたWANやLANと出発点が異なるものと考えれば、特徴や機能が理解しやすいだろう。たとえば、微弱な電波を用いて通信距離を短く設定していたり、原則1対1の通信に制限されているのは、技術面での限界ではなく、混信の低減やセキュリティ性を高めるためだ。

なお、「Bluetooth」という名称には、開発に携わったエリクソン社(スウェーデン)の技術者の「乱立する規格を統合したい」という願いが込められている。中世のノルウェーとデンマークを、交渉により平和的に統合したデンマークの王・ハーラル1世がBlatand(青歯王)と呼ばれていたことにちなんで命名されたものだ。

Bluetooth機器を購入するときにチェックする3つのポイント

Bluetooth対応機器を購入する場合、機能や性能を100%発揮させるためには、主に通信に関わる「バージョン」と、機器同士の機能連携に関わる「プロファイル」、そして通信距離に関わる「Class」の確認が重要だ。ここでは、それぞれについてユーザー目線でくわしく解説する。

【1】現在の主な「バージョン」と概要

Bluetoothのバージョンの違いは、通信速度や利用できる機能に関わる。バージョン間の互換性が考慮されたVer.1.1以降の流れと、それぞれの違いを整理しよう。Ver.2ではペアリングの手続きが簡素化されて便利になった。そしてVer.3では高速通信が可能に。そしてVer.4では、Ver.3に比べて最大約60%低消費電力化し(Bluetooth Low Energy)、ビーコンやセンサーネットワークなどへと応用範囲が広がった。なお、Ver.1.1〜3.Xは後方互換が保たれている。Ver.4は「省電力に特化した特別版」の位置づけだ。これについては後述する。このほか、さらに通信速度と距離を向上させたVer.5.0規格も2016年に発表されたばかりだ。

【2】身近な4つの「プロファイル」をピックアップ

Bluetooth機器同士で通信を行うための規格が各種「プロファイル」だ。スマートフォンとプリンターをつなぐためのプロファイルや、2台のPC同士で通信するためのプロファイルなど、多くの種類が存在する。なかでも最近、多くの人にとって使用する頻度が多いBluetoothデバイスといえば、ワイヤレスのBluetoothイヤホン/ヘッドホンだろう。特に、昨年発売された「iPhone 7」でイヤホンジャックが廃止されたことから、Bluetoothイヤホンが爆発的に普及している。ここでは、数多く存在するプロファイルのうち、スマートフォンとイヤホン/ヘッドホンの接続に関連する中で、覚えておきたい項目をピックアップしよう。

●A2DP (Advanced Audio Distribution Profile)
モノラル/ステレオ音声を伝送するプロファイルであるA2DPの登場で、元来ヘッドセット通話を前提としていたBluetoothに“音楽再生の波”が来た。SBCを必須とし、幅広いコーデックも利用可能に。ヘッドホンやスピーカーなどで重要なプロファイル。

●AVRCP (AudioVideo Remote Control Profile)
AV機器の操作に関わるプロファイル。スマホや音楽プレーヤーとイヤホンをBluetooth接続した際に、音楽トラックのスキップや再生/停止といった基本操作ができる。AVRCP Ver.1.3以降はアーティスト名やアルバム名などの情報も転送可能に。

●HSP (Headset Profile)
マイクとモノラル音声の双方向通信をサポートするプロファイル。イヤホン/ヘッドホンを、携帯電話やスマホのヘッドセットとして利用するには、HSPへの対応が必要だ。

●HFP (Hands-Free Profile)
HSPに加え、発信や着信操作を行うには、このプロファイルへの対応が必要になる。

つまり、音楽が聴けてヘッドセットとしても利用できるイヤホン/ヘッドホンを探すなら、Bluetoothバージョンは2.0以降で、さらにA2DP/ AVRCP/HSP/HFP という、4つのプロファイルに対応していることが最小条件と言える。

【3】通信距離に関わる「Class」

Bluetoothには、機器の通信距離を示す目安「Class」があり、対応製品はスペック欄に記載がある。これは電波の強さによるもので、互換性の心配はない。対応通信距離は「Class1=最大100m 、Class2=最大10m 、Class3=最大1m」だ。たとえば手持ちのスマホがClass2で接続する機器がClass3なら、1m程度以内で利用できると考えればよい。

iPhone 7のイヤホンジャック廃止で一躍注目! Bluetoothオーディオあれこれ

さてここからは、iPhone 7の登場時から特に注目を集める「Bluetooth音楽再生」について少し掘り下げてみよう。Bluetooth接続のイヤホン、ヘッドホン、スピーカーなどで音楽を楽しむ際、音質を大きく左右するのは「コーデック」と呼ばれる音声圧縮方式と「ビットレート(時間あたりのデータ量)」である。

イヤホンジャックがなくなったiPhone 7の登場により、ワイヤレスで音楽再生できるBluetoothイヤホン/ヘッドホンが急速に普及中。アップルもBluetoothイヤホン「AirPods」を同時発表した

Bluetooth でオーディオを伝送できるA2DPプロファイルでは、「SBC(Side Band Codec)」というコーデックが必須要件。さらにオプションで「AAC(iOSデバイスでサポート)」や高音質で定評のある「aptX」などの各種コーデックがあり、それらを利用できる機器も増えている。最近では、ハイレゾ相当の音質を扱える「aptX-HD」や「LDAC」(ソニーが開発)などのコーデックも登場し、一部の機器で採用が始まっている。

まず基本として、同じコーデックなら、原則、ビットレートが高いほうが音質はよい。逆に、同じビットレートの場合、コーデックの性能が音質差となって現れる。コーデックの音質序列としては、高音質順にaptX、AAC、SBCだ。ただし、SBCがAACやaptXに比べて低音質と言われることが多いのは、過去、ビットレートが低い時代が長かった影響が大きい。SBCには「BitPool」というデータ転送量を調整する値があるのだが、音質を重視した最新のBluetoothオーディオ機器の多くは、最高のBitPool 53(328kbps)に対応している。この場合、聴感上もAACに比べて大きく劣る印象はない。新製品のオーディオ機器でもSBCのみにしか対応していないものもあるが、数年前のSBCよりも音質自体は向上している。

AACはSBCと同程度の高圧縮を行うが、SBCと異なり、MP3と同様に人間の聴覚が聞こえないとされる音を間引くことで、高効率なデータ圧縮を実現している。言い換えれば、同じビットレートなら、AACのほうが音質面で有利だ。

aptXはAACのように聞こえないとされる音を“間引く”のではなく、高度な計算を用いて圧縮するのが特徴で、元のデータを固定的に1/4に圧縮する。44.1kHz/16bit(CD相当)なら352kbpsに、48kHz/16bitなら384kbpsといった具合だ。SBCやAACに比べると、圧縮効率が高くない分ビットレートは高くなり、元のデータに遜色のない高音質が実現できる。加えて、レイテンシ(遅延時間)がSBCやAACよりも短いことも特徴。動画視聴時に、口の動きに対してセリフが遅れて聞こえるような不具合も少ないなど、メリットが多い。

SBC、AAC、aptX、コーデック各種のレイテンシ(遅延時間)目安イメージ

SBC、AAC、aptX、コーデック各種のレイテンシ(遅延時間)目安イメージ

また、CDよりも高品位な音声データを扱えるaptX-HDは、最大48kHz/24bitのハイレゾ領域でもビットレートは576kbpsで、Bluetoothの最大スループット(実際に音声データを転送できる上限)の1Mbps程度を大きく下回るので、音切れなどの問題が発生しにくい。

aptX HDは、最大48kHz/24bit、576kbpsでのBluetooth伝送に対応

aptX HDは、最大48kHz/24bit、576kbpsでのBluetooth伝送に対応

いっぽう、ソニーが開発したLDACは、Bluetoothで最大96kHz/24bitのハイレゾ音楽データが扱える最新コーデック。最大ビットレートは990kbpsに達する。Bluetoothの最大スループット(1Mbps程度)に近いため、電波状況によっては音切れを起こすケースも少なくないが、もっともハイレゾに近い存在と言える。(なお圧縮を行うため、LDAC対応機器には日本オーディオ協会が定めるハイレゾロゴは適用されない)

ソニーが開発したLDACのハイレゾ伝送イメージ。最大96kHz/24bit、990kbpsでのBluetooth伝送に対応する

ソニーが開発したLDACのハイレゾ伝送イメージ。最大96kHz/24bit、990kbpsでのBluetooth伝送に対応する

なお、2017年3月にプレビュー版がリリースされたAndroidの次期バージョン「Android O」では、aptX-HDとLDACをサポートする予定である。Bluetoothオーディオもハイレゾ相当の高音質時代を迎えそうだ。

Bluetooth v4は「低消費電力」に特化= Bluetooth Low Energy登場

進化を続けるBluetooth。続いてはその最新動向と、我々の生活がどのように便利になるかを考えてみたい。もっとも注目すべきは、低消費電力化とそれによる用途の拡大である。

従来のBluetoothは、携帯電話を中心にパーソナル・エリア・ネットワークを実現する手段として爆発的な普及を遂げた。いっぽう、消費電力は少ないとは言えず、そのせいで用途が限られたのも事実。たとえば、IoT時代に期待されているセンサーネットワーク用途では、小さな電池で数年スパンという長期間の運用が求められるため、低消費電力を得意とする無線技術「ZigBee」がBluetoothを押しのけて台頭した。ZigBeeは、家庭内の家電を結ぶHEMSやガスおよび電力メーターの検針に向けて、採用を検討する動きがあった。

そんな中、Bluetoothは対抗規格として、“低消費電力版Bluetooth”と言える「Bluetooth v4/別称:Bluetooth Low Energy(BLE)」(旧:Bluetooth SMART)を策定した。原則、v3以前と互換性を考慮しないかたちで、さまざまなアイデアや技術を盛り込み、低消費電力化の方向に進化している。簡単にまとめると、「通信関連回路の簡略化」と「最大パケットサイズの縮小」が大きなポイントだ。

●通信関連回路の簡略化
Bluetooth v4では、通信に利用するチャンネル1つあたりの帯域を広く取り、通信速度を欲張らない(変調方式はGFSKのみ。高速通信EDR時に使用するQPSKを排除)ことで、RF回路(電波の送受信に関連)を簡略化した。

●最大パケットサイズを縮小
v3までの規格は、音声データなど連続した大きなデータを高効率に伝送する目的で、最大パケットサイズが大きくなっている。この状態では、小さなデータを送るときも大きなデータを送ることになり、低消費電力には向かない。これをv4では、たとえば温度センサーが検知した数値データを送れる程度のパケット長に縮小。小さなデータを送り、次の通信までしっかり休むことで、低消費電力化を実現する。v3は定期運行の大型バス、v4は必要なときに呼べる小型タクシーと考えれば、わかりやすいだろう。どちらが効率的かは、利用数で決まる。

昨年話題を呼んだ「ポケモンGO Plus」もBluetooth Low Energy対応機器のひとつで、使用時の消費電力を抑えている

Bluetooth v4=Bluetooth Low Energyを活用する便利な暮らし

通信にかかる電力を低くできれば、あらゆるものにセンサーを取り付け、データを収集することができる。すでに製品化されているものを含めて例にあげてみよう。アイデア次第で用途は広がる。

●ウェアラブル端末で脈拍/体温の記録
スマートウォッチなどウェアラブル端末に内蔵したセンサーで、脈拍や体温を測定し、自身のスマホでデータ収集できるデバイスが登場している。たとえばFitbitの心拍計「charge HR」は、Bluetooth v4に対応し2時間の充電で5日間も利用できる。

Bluetooth v4に対応するFitbitの心拍計「charge HR」

Bluetooth v4に対応するFitbitの心拍計「charge HR」


●ビーコンで位置情報の活用
ビーコン(Beacon)とは、電波を用いて位置を特定するシステム。アップルはiOS7で、Bluetooth v4をベースにした屋内測位システム「iBeacon」をサポートしている。ビーコンを使った製品例でいうと、忘れ物防止タグ「MAMORIO」がヒット中だ。MAMORIOは、いわば1円玉程度のコンパクトな“タグ型ビーコン”。持ち物に取り付けておくと、あらかじめひもづけられたスマホと距離が離れたときに教えてくれる。リチウム電池を内蔵し、約1年間稼働可能で、有効距離は約30m。遠く離れている場合も、ほかのユーザーのスマホを介して位置を知らせてくれる機能があり、ユーザーが増えて密集する地域で使えば、紛失物を発見できる可能性が高まる。

忘れ物防止タグ「MAMORIO」は、ビーコンによる位置特定技術を活用した製品

忘れ物防止タグ「MAMORIO」は、ビーコンによる位置特定技術を活用した製品


●商店などでの情報提供/情報収集
ビーコンが登場した当初、BtoB向けの展開を期待する声も多かった。たとえば店舗で展示物にビーコンを仕込んでおいて、来店者がその売り場、棚、商品に近づいた際にスマホにくわしい情報を提供したり、クーポンを送って興味を引くといったことができる。次世代のマーケティングツールとして注目されているとともに、消費者にとってもタイミングよく関連情報が収集でき、利便性の向上が期待できるのだ。ほかにも、博物館や美術館でのガイド、決済の簡略化など、さまざまな用途が検討されている。

●屋内でもナビゲーション
GPS電波が届かない屋内でも、スマホだけで高精度に位置を特定できるので、ビーコンは屋内での位置ナビゲーションにも役立つ。

さいごに:IoT時代のシームレスな通信へ。Bluetoothは進化する

Bluetoothが普及した理由は、携帯電話やスマートフォンで標準的に採用され、パーソナル・エリア・ネットワークのデファクトスタンダードとなった点に尽きる。今後のIoT時代を見据えた無線通信は規格間で主導権争いが続くと見られるが、Bluetooth v4(Bluetooth Low Energy)はすでにiPhoneやAndroid端末に入り込んでいるため、当面はBluetooth v4が中心となるだろう。また、よりシームレスなIoT環境を想定し、さらに通信距離と速度をアップさせたBluetooth v5も昨年に発表されたばかり。これから、最新のBluetoothを活用したアイデアやサービスが登場し、我々の生活がどのように楽しく快適になるのか、引き続き注目したい。

鴻池賢三

鴻池賢三

オーディオ・ビジュアル評論家として活躍する傍ら、スマート家電グランプリ(KGP)審査員、家電製品総合アドバイザーの肩書きを持ち、家電の賢い選び方&使いこなし術を発信中。

このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事
連載最新記事
連載記事一覧
2017.12.9 更新
ページトップへ戻る