選び方・特集

《2023年》完全ワイヤレスイヤホン一気レビュー!音質や装着感をイヤホンのプロが徹底検証

アップル「iPhone」シリーズでのヘッドホン出力廃止以降、Bluetooth方式のワイヤレスヘッドホン&イヤホンが急激に普及している。実際、ここ数年で過去の数倍に匹敵する新製品が各社から登場。いまやヘッドホン&イヤホンの主流となっている。

そのなかでも高い人気を誇っているのが、「完全ワイヤレスイヤホン」と呼ばれる左右別体のイヤホンだ。「トゥルーワイヤレスイヤホン(TWS)」や「フルワイヤレスイヤホン」、「耳栓型イヤホン」、「左右分離型イヤホン」など、いろいろな呼ばれ方をしているこちらのタイプ。一般的なBluetoothイヤホンはスマートフォンなどの再生機器側とはワイヤレス接続ながら左右本体がケーブルでつながっているのに対して、完全ワイヤレスイヤホンは左右間もワイヤレス接続となっており、ケーブルがいっさい使用されていない。その名のとおり、“完全”“完璧”なワイヤレスイヤホンとなっているのだ。

その代表例といえるのがアップルの「AirPods」で、こちらが発売されて以降、大きく注目を集めるようになり、現在はさまざまなメーカー/ブランドから数多くの製品がラインアップされている。

ヘッドホン出力端子が廃止されたiPhoneの登場で、Bluetooth方式のワイヤレスヘッドホン&イヤホンが急速に拡大している(写真はApple「iPhone X」と「AirPods Pro」)

ヘッドホン出力端子が廃止されたiPhoneの登場で、Bluetooth方式のワイヤレスヘッドホン&イヤホンが急速に拡大している(写はApple「iPhone X」と「AirPods Pro」)

本特集では、そんな大注目の完全ワイヤレスイヤホンの選び方を4つのポイントにわけてわかりやすく解説するとともに、話題の最新モデルから人気の定番モデルまで一気レビューをお届けする。レビューでは、音質をメインとしつつも、接続時の手間などユーザビリティも含めて紹介させていただくので、自分にとってのベストワンを選び出す参考にしていただけたらと思う。

完全ワイヤレスイヤホンの選び方

1. 装着感(耳にフィットしてこぼれ落ちないモデルを選ぶ)

本稿の冒頭でも述べたとおり、完全ワイヤレスイヤホンの最大のメリットは、ケーブルがいっさいないため、屋外でとても扱いやすい製品になっているということだ。

一般的なBluetoothイヤホンは左右のイヤホン同士をケーブルで接続しているため、ケーブルをなにかに引っかけて断線してしまったり、収納時にケーブルが絡まったり、有線イヤホンと同じトラブルが発生する可能性がある。もちろん、ケーブルの長さは有線イヤホンに比べれば圧倒的に短いし、ネックバンドを採用するなどの工夫によってケーブルにまつわるトラブルは格段に少ないが、わずかながら可能性は残る。また、これは気分の問題だが、左右のイヤホンがケーブルでつながっているのがうっとうしく感じるユーザーもいるだろう。対して完全ワイヤレスイヤホンは、左右が完全に独立していて、ケーブルにまつわるトラブルやストレスから完全に解放される。これだけでも十分な魅力といえる。

いっぽうで、これらの特徴が完全ワイヤレスイヤホンのデメリットにもなっている。それは、落としやすくなくしやすいことだ。実際、通勤時などに完全ワイヤレスイヤホンが耳からこぼれ落ちてしまう人に少なからず遭遇する。筆者も、電車とホームのすき間に落ちてしまい絶望的な顔をしている人に会ったことがある。それも、ひとりやふたりではない。

完全ワイヤレスイヤホンは、本体内ですべての構成が完結しなければならないため、有線タイプのイヤホンに対して本体が大きくなりがちで、どうしても落ちやすい傾向があるのだ。そのため、耳穴の小さい人などはひんぱんに耳からこぼれ落ちやすく、なくしたり壊したりする可能性が高くなってしまう。

また、本体が小さいことから、自宅などの室内でも思っている以上に見つかりにくいという思わぬ落とし穴もある。そういった事態への対策として、メーカーは本体の形状を最適化したり、収納用のケースを付属したりとさまざまな工夫を行っている。とはいえ、やはり重要なのは実際の装着感だ。自分の耳にちゃんとフィットしているか、実際に製品に触れる機会があるなら確認しておいたほうがいいだろう。

ちなみに、イヤホン本体の紛失への対策として、一部メーカーの製品には片方紛失/故障時の有償サービスが付いているモデルもあったりする。いざというときに大変ありがたいので、製品選びの際のチェック項目として加えておくものいいだろう。

完全ワイヤレスイヤホンは製品によって大きさや形状もさまざま。耳の形状や耳穴の大きさも人によって大きく異なるので、実際に装着して自分の耳にフィットするモデルを選ぶのが鉄則だ

完全ワイヤレスイヤホンは製品によって大きさや形状もさまざま。耳の形状や耳穴の大きさも人によって大きく異なるので、実際に装着して自分の耳にフィットするモデルを選ぶのが鉄則だ

2. ワイヤレスの接続性(切れにくいもの、復帰がスムーズなものを選ぶ)

もうひとつ、完全ワイヤレスイヤホンのデメリットとしてあげられるのが接続状況だ。イヤホン本体が左右完全に分かれた状態でBluetoothによるワイヤレス接続するうえ、左右の間にある人間の頭部が電波を通しづらい傾向があるため、一般的なBluetoothイヤホンに比べるとどうしても音切れが発生しやすい。各社とも、イヤホン本体に搭載したアンテナの形状を工夫したり、左右イヤホン間の接続方式を工夫したりと、さまざまな方法で音切れの回避を行っているが、有線イヤホンのように完璧な安定接続は不可能であるため、多少の音切れは容認せざるを得ない。

それよりも、音切れの頻度や復帰のスムーズさを気にしたいところだ。最新チップを搭載したモデルは接続の安定性が高くなっているが、やはり最大のポイントは本体内蔵アンテナのデザインで、ワイヤレス技術にすぐれたメーカーが安心だ。ただ、通信の安定性の良し悪しは実際に試してみないと分からないのが歯痒いところ。本稿では、接続の安定性についても触れているので、ぜひそういった情報を参考にしてもらいたい。

3. 再生時間(トータルの再生時間や急速充電機能の有無をチェック)

次に重要なポイントとなるのが、バッテリーの持続時間だ。イヤホン本体がコンパクトな完全ワイヤレスイヤホンは、大きなバッテリーを搭載することが難しく、再生時間は一般的なBluetoothイヤホンに対して短くなっている。現在発売されている製品を見てみると、5〜8時間のバッテリー駆動時間をうたっているモデルが多い。そのため、収納ケースがそのまま充電ケースとなっていて、トータルで10時間以上の使用できるよう工夫されているが、それでも“聴きたいときにバッテリー切れで聴けない”可能性があるのも確かだ。

それをできるかぎり回避するため、製品選びの際はバッテリー駆動時間ができるだけ長いものを選ぶというだけでなく、充電ケースに“急速充電”機能がある製品を候補としてあげたい。15分で1時間ほどの使用が可能な急速充電対応の製品を購入していれば、聴きたいときに聴けない事態をうまく回避することも可能になる。イヤホン本体や充電ケースのバッテリー駆動時間が長いことが理想ではあるものの、そればかり追求するとイヤホン本体や充電ケースのサイズが大きくなってしまい、せっかくの装着感や携帯性が損なわれてしまうので、利用シーンを想定しながら本体サイズとバッテリーとのバランスを含めて検討してもらえればと思う。

4. 音質(自分好みの音色傾向を選ぶ)

最後に、音質についてもぜひチェックしてほしいところだ。これまで完全ワイヤレスイヤホンは、イヤホン本体にアンテナやバッテリーを搭載しなければならないスペース的な制限によって音質的に不利と言われてきた。しかし、各社が音質に対してさまざまな工夫を凝らした結果、ここ数年で完全ワイヤレスイヤホン全体の音質レベルはかなり引き上げられている。Bluetoothの「便利だけど音が悪い」というイメージはかなり払拭されつつあるのだ。

こういった状況からも旧モデルよりも最新モデルを選ぶほうが音質的に有利なことが多いことは確かだが、やはり最終的には自分好みの音色傾向を選ぶというのが一番だろう。一気レビューのパートには、製品ごとの音質傾向を詳しく掲載しているので、ぜひ参考にしていただければと思う。

完全ワイヤレスイヤホン注目機種レビュー

1. アップル「AirPods Pro」(第2世代モデル)
音質・機能性をブラッシュアップ。大人気ノイキャンTWS「AirPods Pro」の最新モデル

完全ワイヤレスイヤホン市場でここ数年最大の売り上げを誇っているアップルのカナル型モデル、「AirPods Pro」の第2世代モデル。イヤホン本体のデザインは初代モデルからほとんど変化してないものの、最新の「H2チップ」への変更をはじめ、随所への改良によって機能性と音質の両面で少なからぬグレードアップが押し進められている。

まず、大きな魅力となっているのがソフトウェアの進化だろう。特に「パーソナライズ機能」は大注目で、iPhoneのTrueDepthカメラを活用してユーザーの頭部や耳まわりの形状を把握、個人に合わせた精密な最適化を行うことができ、空間オーディオの広がり感やヘッドトラッキングの精度、ノイズキャンセリング機能の効果などを大きく向上してくれるという。こちらは、「AirPods Pro」の第2世代モデルだけでなく、「AirPods Pro」の初代モデル、無印「AirPods」の第3世代モデル、Beatsの「Beats Fit Pro」、ヘッドホンタイプ「AirPods Max」でも利用できる。利用できるのはTrueDepthカメラ機能を搭載したiPhoneなどの一部機種に限られるが、対応機種を所有している人はぜひ活用したい機能だ。

もうひとつ、ノイズキャンセリング機能に力が入っているのも第2世代モデルの特徴だ。初代モデルと比べて“最大2倍の雑音を消す”とアピールされている。ちょっと調べてみても何が2倍になっているのかよくわからなかったが、精度とか音量とか、そのあたりを示した言葉遣いなのだろうと思う。

ほかにも、装着センサーが光学式から肌検出へと変更され、不用意に再生されることがなくなっているほか、操作系も感圧式からタッチセンサーに変更され上下スワイプで音量調整が行えるようになった。イヤホン本体から音量操作ができるようになったのは、使い勝手の面で大きなメリットと言えるだろう。

また、イヤホン単体のバッテリー性能が最大6時間へと大きく伸びてくれたのもうれしいポイントだ。初代モデルの最大4.5時間という数値も実用上大きな不満は持ちなかったが、1.5倍の長持ちによってながら聴きや映像視聴、ゲームプレイなど、使い勝手の面で大きな幅をもらしてくれそうだ。

さらに、第2世代モデルはイヤホン本体だけでなく、充電ケースも進化している。今回もLightningコネクターが採用されているが、ワイヤレス充電に関してはQiだけでなくMagSafeにも対応し、Apple Watch用の充電器も活用できるようになった。ほかにも、充電ケースを探し出すことができるトラッキング機能を新たに搭載。小型のスピーカーが内蔵され、見当たらない時に音を出して素早く発見できるようになった。イヤホン本体だけでなく、充電ケースも見つけやすくなったのは、うれしい改良点だ。

さて、実際の製品を使って気になるポイントをチェックしていこう。まずは「パーソナライズ」とノイズキャンセリング機能から。残念ながら、測定には結構手間取った。というのも、横から耳を正しい位置で撮影しようとすると、横目でもiPhoneの画面が見られず、当てずっぽうでやるしかないからだ。1回しか行わないことなのに慣れないと難しい作業は、なんとも歯痒いところだ。

数回トライして無事に撮影が完了したので、「パーソナライズ」をオンにして音を聴いてみると、音場の広がり感や定位の正しさについてはかなりの良質さを持ち合わせていた。空間オーディオ対応音源を聴くとよくわかるが、初代モデルに対して定位感が明瞭になり、音の広がりも大きくなったように感じられる。

「パーソナライズ」の効用もあってか、ノイズキャンセリング機能も良好だ。単に数値的なよさよりも、気になるところをしっかり消してくれる絶妙さを持ち合わせている。おかけで、暗騒音やファンノイズなどの耳障りな音をきれいにマスクしてくれ、長時間聴いていてもストレスが少なくなったように感じる。また、新機能である「適応型環境音除去」も優秀で、自動的に雑音を低減してくれるので、アナウンスなどがとても明瞭に聴こえてくる。ノイズキャンセリング機能に関しては、なかなかの優秀さを持ち合わせていると感じた。

音質もなかなかで、初代モデルに対して確実によくなっていた。センターのボーカルがクリアな歌声を聴かせてくれる。おかげで、男性女性問わずボーカルものは楽しい。中域重視、自然な音色を求めたチューニングなのだろう、重低音派には刺激が物足りなく感じる人がいるかもしれないが、米津玄師もYOASOBIも声の魅力がしっかりと表現されていて楽しい。唯一、センター前面のフォーカスのよさに対して左右や奥側が多少緩くなってしまっているのが気になる。テクノ系など音場表現を巧みに利用した楽曲は多少違和感を覚えるかもしれない。

また、約4万円という価格も気になるところ。4万円クラスの完全ワイヤレスイヤホンといえばかなりの高級モデルとなるが、単純な音質という面では本製品以上に高音質なモデルというものはほかにもある。円安のため致し方ないところだが、デビューのタイミングで損をしてしまった感は否めない。ただし製品としての完成度は悪くないので、iPhoneユーザーであれば最有力候補にリストアップすることをおすすめしたい。

イヤホン重量(片耳):5.3g
イヤホン操作:タッチコントロール
再生時間(イヤホン単体):最大6時間(空間オーディオとヘッドトラッキングを有効にした場合は最大5.5時間)
再生時間(充電ケース併用):最大30時間
充電方法:充電ケース
急速充電対応:○
防水対応:○(イヤホン・充電ケースともにIPX4相当)
対応コーデック:SBC、AAC
アプリ対応:-
カラーバリエーション:ホワイト

2. アップル「AirPods Pro」(第1世代モデル)
カナル型デザインで装着感がアップ。ノイズキャンセリング機能を搭載した大人気TWS

数多ある完全ワイヤレスイヤホンの中でも、圧倒的な人気でナンバーワンのシェアを保ち続けているアップル「AirPods」シリーズ。その中でも特に人気の高いモデルが「AirPods Pro」だ。

「AirPods Pro」は、「AirPods」シリーズの上位に位置するモデルで、イヤホン本体のデザインやノイズキャンセリング機能など、デザインや機能性を大きく変更したのが特徴となっている。耳掛けタイプの「AirPods」は、筆者はもちろん、利用者の多くが“使用中に耳からポロリとこぼれ落ちてしまう”ことがあり、紛失が深刻なレベルでの問題となっていたし、音漏れに関してもかなりの音量となっていて、正直、混雑時の電車内などでは周囲の迷惑を考えると使いづらかったが、「AirPods Pro」はカナル型イヤホンとなったことでホールド感が向上。IPX4レベルの耐汗防滴性能と合わせて、耳掛けタイプの「AirPods」ではカバーできないフィットネスやランニングなどのスポーツユースにも活用できるようになった。

とはいえ、「AirPods Pro」のノズル部分はそれほど長くなく、緩くはめ込む形となっていて、サイズをしっかり合わせないと外れやすい。筆者は普段MかMSサイズのイヤーピースを使用しているのだが、「AirPods Pro」ではLサイズでピッタリだった。一般的なカナル型イヤホンとはホールドされる位置が異なっているので、同梱されているS/M/Lイヤーピースのうちどのサイズがベストなのか、しっかりと試してほしい。ちなみに、「AirPods Pro」にはうれしいことにイヤーピースの装着状態テストも用意されている(iOS設定画面の「Bluetooth」をタップし、接続中の「○○ 's AirPods Pro」の横の「i」をタップするとAirPods Proの設定画面が表示されるので、その中の「イヤーチップ装着状態テスト」をタップ)ので、こちらを使ってフィット感を確認するのがよいだろう。

音漏れに関してはもうひとつ、構造だけではなく新機能のノイズキャンセリング機能もある程度の効果を発揮してくれている。「AirPods Pro」のノイズキャンセリング機能は、かなり強力なもので、環境騒音の中心である低域はもちろん、中域など人の声のあたりも含め、全体的に強く効かせる傾向にある。そのため、静粛性が高く、音楽の音量を自然と抑えるようになるため、音漏れが圧倒的に減ってくれるのだ。さすがに、ぎゅうぎゅう詰めの満員電車では厳しいだろうが、多少混んでいるくらいであれば大丈夫だろう。

また、ノイズキャンセリング機能は外部音取り込みモードも用意されていて、こちらに変更すると外部の音がしっかりと届いてくれる。しかも、周囲の音がとても自然に感じられるので、徒歩などの移動中には積極的に活用したくなる。製品によっては、この外音取り込みモードがかなり不自然な音になるため、あまり活用したい気持ちにはならないのだが、「AirPods Pro」では普段から利用したくなる質の高さがある。このあたりも「AirPods Pro」ならではのアドバンテージと言えるだろう。

肝心のサウンドはというと、基本的にはジェントルなサウンドキャラクターだ。荒々しさをまったく感じさせない、ていねいな抑揚表現によって、落ち着きのある、聴き心地のよいサウンドを楽しませてくれる。男性ボーカルも女性ボーカルも、どちらかというとしっとりとした印象の朗々とした歌声で、聴き心地のよさはなかなかのもの。解像感はそれほど高くはないが、あまり気にならない良質な表現を持ち合わせている。その代わりに、ややパワー感に欠ける傾向はあるが、ハードロックばかり聴く人でもない限りは、それほど気にならないだろう。Jポップとの相性もまずまず良好なので、サウンドキャラクターを不満に思う人はそれほどいないはずだ。

すでに「AirPods Pro」の第2世代モデルが発売されており、本製品は旧製品という扱いにはなるため積極的には選びにくいが、コスパ重視でできるだけ安価に「AirPods Pro」を手に入れたいという人なら本製品も候補になるはずだ。

イヤホン重量(片耳):5.4g
イヤホン操作:感圧センサー
再生時間(イヤホン単体):最大4.5時間(ノイズキャンセリングと外部音取り込みをオフにした場合は最大5時間)
再生時間(充電ケース併用):24時間以上
イヤホン操作:感圧センサー
充電方法:充電ケース
急速充電対応:○
防水対応:○(イヤホンのみ、IPX4相当)
対応コーデック:SBC、AAC
アプリ対応:-
カラーバリエーション:ホワイト(MagSafeあり)ホワイト(MagSafeなし)

3. アップル「AirPods」(第3世代モデル)
装着感と音質が大きく進化。耳掛けタイプの「AirPods」最新モデル

現在の完全ワイヤレスイヤホン全盛時代の立て役者であり、発売以来、今も変わらずベストセラーを続けているアップル「AirPods」が、第3世代へとリニューアルされた。

今回の第3世代モデルでは、インナーイヤー型の軽快な装着感はそのままに、筐体デザインを大きく変更。スティック部分に操作用の圧力センサーを配置するなど、操作系は変わらないものの、全体的にはカナル型を採用した「AirPods Pro」に近いデザインへとシフトし、耳に収まる部分がリデザインされ、変更されたバーの角度と相まって、高い装着感を実現している。正直なところ、これまでの「AirPods」は俗称で“うどん”などと言われてきたように、バーの部分が長めで、その部分ばかりが変に目立つデザインだったが、第3世代モデルではそれがずいぶんと普通な印象へと生まれ変わっている。こういった装着時の見かけのよさだけでも、うれしいアップデートと思える。

機能面でも、ノイズキャンセリング機能こそないものの、上位モデルの「AirPods Pro」にだいぶ近い内容を持つようになった。まず、これまで「AirPods Pro」と「AirPods Max」のみだった空間オーディオやヘッドトラッキング機能が搭載され、映画やゲームで没入感の高いサウンドを楽しめるようになった。また、耳の形に合わせて音を自動調節してくれる「アダプティブイコライゼーション」も「AirPods Pro」同様に搭載されている。こういったパーソナライズ機能は、音楽を聴き続けるうえでのストレスが低減されるので、最新の第3世代モデルを購入する大きなメリットのひとつと言えるだろう。

バッテリー性能は、イヤホン単体で最大6時間の音楽再生が可能で、充電ケースを合わせると最大30時間の連続使用が可能となっている。ちなみに、充電ケースは第2世代モデルと体積はほぼ同じだが横長レイアウトとなり、イヤホン本体の出し入れもかなりやりやすくなった。IPX4の防滴機能を持ち合わせるようになったことも、うれしい進化と言えるだろう。また、マイクに関しても風切り音を低減するシステムを導入するなど、さらなる進化が押し進められている。

独自のダイナミックドライバーとパワフルなカスタムアンプを搭載したという、第3世代モデルのサウンドはというと、第2世代モデルに比べて大きく進化。解像感が明らかに高まり、細かいニュアンスまでしっかりと伝わってくるようになった。歪み感が少なくなったことに加え、やや迫力重視だった帯域バランスも、よりニュートラルなイメージへと生まれ変わったため、ずいぶん聴きやすくなった。あえて第2世代を選ぶ必要のない、完成度の高い製品だ。

イヤホン重量(片耳):4.28g
イヤホン操作:感圧センサー
再生時間(イヤホン単体):最大6時間(パーソナライズされた空間オーディオを有効にした場合は最大5時間)
再生時間(充電ケース併用):最大30時間
充電方法:充電ケース
急速充電対応:○
防水対応:○(イヤホン・充電ケースともにIPX4相当)
対応コーデック:SBC、AAC
カラーバリエーション:ホワイト

4. アップル「AirPods」(第2世代モデル)
「Siri」による音声操作に対応した「AirPods」の第2世代モデル

完全ワイヤレスイヤホンのけん引役にして、ジャンル最大の販売数を誇るアップル純正モデル「AirPods」の第2世代モデル。本体に関して外観の変更は第1世代モデルからほとんど見られず、充電ケースも同じデザインながら、LEDが外部に移動されて充電状況が外からわかりやすくなったこと、Qiによるワイヤレス充電対応モデルをラインアップするなど、いくつかの利便性向上が図られている。

とはいえ、イヤホン本体も情報をよく見てみると、いくつかの性能アップが盛り込まれているのがわかる。「AirPods」は元々、取り出すだけでiPhoneと簡単に接続でき、装着するだけで音楽再生を楽しむことができるうえ、同じApple IDを登録したiPadやMacなどとペアリング情報が共有されるため、機器ごとに設定する必要もない。これまでもアップル製品のユーザーには、とても使い勝手のよい製品となっていたのだが、新世代の製品では声で音声アシスタント「Siri」を呼び出せるなど、いくつかの機能性アップも行われている。

これは、ワイヤレスモジュールの変更によって実現した機能性だと思われる。第1世代モデルでは「Apple W1」というチップを採用していたが、第2世代モデルでは「Apple H1」へと変更され、低消費電力化や接続機器の切り替え速度向上など、主に使い勝手の面でグレードアップが行われている。使いやすさを重視した製品作りは、アップルらしい方向性だと言える。

しかしながら、「AirPods」も純然たるオーディオ機器であるのも確か。いちばん重要なのは、その音質だろう。ということで、さっそくiPhoneに接続して、そのサウンドをチェックしたが、第1世代モデルに対して、ややニュートラルなサウンドキャラクターにシフトしたイメージだ。第1世代モデルは、昔のBoseのようなアメリカ東海岸サウンドとも呼ぶべき音色傾向を持ち合わせていたが、第2世代モデルは逆に中域重視のキャラクターが強まり、奔放さよりもまとまりのよさを重視したような印象となった。

ややウォーミーな音色傾向で、女性ボーカルはいつもよりハスキーだが、高域への伸びやかさはしっかりと保たれていて、印象的な歌声を聴かせてくれる。ピアノの響きも伸びやかだ。解像感も高まってくれているのだろう、楽器の音色もリアリティが高まっている。音質については、確実なグレードアップを果たしている印象だ。機能性といい音質といい、ぐっと完成度の高まった製品に生まれ変わったと思う。

インナーイヤー型なので、当然音漏れはある。また、街中で耳からポロリとこぼれ落ちた人を何人も見ている(そのうち2人は線路に吸い込まれていった)。電車内で使用する際は音量に気を使う必要があり、歩きながらの使用は(こぼれ落ちるのを回避するためにも)避けてもらいたい製品だが、いっぽうでこの扱いやすさは大きな魅力だ。最新の第3世代モデルも発売されたこともあり、第2世代モデルを積極的に選ぶ必要はあまりないが、第3世代モデルに比べると価格がかなり安価になってきているので、コスパ重視ということならこちらを選ぶというのもアリだろう。

イヤホン重量(片耳): 4g
イヤホン操作:ダブルタップ
再生時間(イヤホン単体):最大5時間
再生時間(充電ケース併用):24時間以上
充電方法:充電ケース
急速充電対応:○
防水対応:-
対応コーデック:SBC、AAC
アプリ対応:-
カラーバリエーション:ホワイト(Lightning Charging Case)ホワイト(Wireless Charging Case)

5. ソニー「WF-1000XM4」
ノイキャン性能だけじゃなく全方位で進化を遂げた定番ノイキャンTWS

ソニーのノイズキャンセリング機能搭載完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000X」シリーズの最新モデルが「WF-1000XM4」だ。2019年に発売された「WF-1000XM3」の後継に位置するモデルで、イヤホン本体も充電ケースもデザインが一新され、どちらもかなりの小型化が押し進められた。また、好評のノイズキャンセリング機能をさらに向上させるため、フィードフォワード+フィードバックのハイブリッド方式マイク構成はそのままに、下記のような進化を遂げた。

・Bluetooth SoCとノイズキャンセリング処理プロセッサーを統合した「V1」チップを採用することで処理能力を向上させ低遅延でのノイズキャンセリング処理を実現
・独自開発のポリウレタンフォーム素材を使用する新開発ノイズアイソレーションイヤーピースを採用
・新開発6mm口径ドライバーユニットによって低音域のノイズキャンセリング性能を向上

これらの全面的な改良によって、先代の「WF-1000XM3」を大きく上回るノイズキャンセリング性能を実現したという。

また、ノイズキャンセリング性能以外にも、風を検知すると自動的にフィードフォワード(イヤホン本体外側)マイクがオフとなる「風ノイズ低減機能」の搭載や、高いノイズキャンセリング効果を確保するためにアプリによる装着状態テスト機能の導入、片耳だけでの使用に新たに対応するなど、新機能を多数搭載。外音の取り込み量を増やすことでより自然な集音を実現した「アンビエントサウンドモード」、周囲の音を取り込みつつ一時的に音楽の音量を絞って聴き取りやすくする「クイックアテンションモード」など、使い勝手の面においてもきめ細やかな追及がなされている。

「WF-1000XM3」に対してかなりの小型化を実現した充電ケースは、ワイヤレス充電機能を搭載。Qi対応充電器などから手軽に充電を行うことができる。また、充電ケースを「Xperia 1 III」などの対応スマートフォンの背面に置くだけでスマートフォンから給電される「おすそわけ充電」も可能となっている。バッテリー性能は、イヤホン単体・ノイズキャンセリング機能オンで最大8時間(ノイズキャンセリング機能オフの場合は最大12時間)、充電ケースを含めると最大24時間(ノイズキャンセリング機能オフの場合は最大36時間)と、十分なスペックを持ち合わせている。1分間の充電で60分再生が可能な急速充電にも対応しているので、バッテリー切れで困ることはまずないだろう。

いっぽうで、音質面での最大のトピックは、完全ワイヤレスイヤホン初となるLDACコーデックの対応だろう。これまでの完全ワイヤレスイヤホンは、ソニー製だけでなく他社製品も含めてaptXコーデックが最高音質となっていたが、「WF-1000XM4」はハイレゾ音源にも対応した高音質コーデックであるLDACに対応。さらなる高音質サウンドを楽しめるようになった。

このように、ソニーとしてかなり力の入っている「WF-1000XM4」だが、実際の製品を手にしてみると、完成度の高い仕上がりであるように感じられた。まず、「WF-1000XM3」に対してイヤホン本体がかなり小さくなり、イヤーピースの恩恵もあってか、格段に装着時の安定感がよくなっている。それに合わせてノイズキャンセリング性能も向上、かなりの静けさを提供してくれるようになった。同時に、外音取り込みの音がずいぶんと自然に感じられるようになった点も好ましい。リアルの音に比べると少し高音よりの帯域バランスというか、キーボードを叩く音はカチャカチャするが、それでも音色や方向などでかなりのリアリティを持ち合わせている。

音質については、CD音源もハイレゾ音源も、格段のきめ細やかな表現を持ち合わせていた。特にハイレゾ音源がその本領を発揮してくれるのがうれしい。結城アイラ「Leading role」などシンプルな構成の楽曲を聴くとよくわかるが、ピアノの音は単に伸びやかなだけでなく、録音した場所の空気感も伝わってくる豊かな表情を持ち合わせているし、ボーカルは声のリアルさが如実に感じられる。

いっぽう、音色傾向については、流行とは異なる普遍的な独自のキャラクターにまとめ上げられている。高域が伸びやかであるにもかかわらず、まったく尖りを感じないためとても聴き心地がよい。こんなに聴きやすい上坂すみれ「POP TEAM EPIC」は初めてかもしれない。比較的長時間使い続けても、聴き疲れすることはまずないだろう。唯一、低域の量感は今風にやや多めとなっているが、フォーカス感が保たれた質のよい音なので、アプリのイコライザーなどで好み合わせて調整すればよいだろう。ノイズキャンセリング機能、装着感、音質いずれにおいてもとても良質で、非常に完成度の高い製品だ。

イヤホン重量(片耳):7.3g
イヤホン操作:タッチセンサー
再生時間(イヤホン単体):最大8時間(ノイズキャンセリング機能オフの場合は最大12時間)
再生時間(充電ケース併用):最大24時間(ノイズキャンセリング機能オフの場合は最大36時間)
充電方法:充電ケース
急速充電対応:○
防水対応:○(イヤホンのみ、IPX4相当)
対応コーデック:SBC、AAC、LDAC
アプリ対応:○
カラーバリエーション:ブラックプラチナシルバー

6. ソニー「LinkBuds S WF-LS900N」
常時装着を想定した「LinkBuds」シリーズ初のノイキャン搭載モデル

積極的に外音を取り込むというまったく新しいコンセプトを持つソニーの完全ワイヤレスイヤホン「LinkBuds」シリーズ。先に登場した無印の「LinkBuds」上位機種にあたるのがこの「LinkBuds S」だ。

外観は普通の完全ワイヤレスイヤホンのようで、デザイン的にはフラッグシップモデル「WF-1000XM4」の弟機、と表現してもよさそうだ。「LinkBuds」のように物理的な穴から外音を取り込む構造ではないが、マイクを使って周囲の音を取り込むことでながら聴きができるという、常時装着をアピールポイントとするコンセプトは変わらず持ち合わせている。

イヤホン本体はかなりコンパクトな部類だ。耳の中にすっぽりと収まってくれるため、また、装着性をイヤーピースだけに頼らず、分散してホールドする形状となっているので、長時間のリスニングもそれほど苦にならない。いっぽうで、穴が空いていないからこその工夫として、ノイズキャンセリング機能の搭載や外音取り込み機能に注力している様子もうかがえた。特に外音取り込み機能は、完全ワイヤレスイヤホンにありがちなマイク集音ならではの不自然さはあまり感じられず、実際に直接音を聴いているのに近い印象までクオリティアップしている。

また、「LinkBuds」シリーズらしさはアプリ対応にも垣間見られる。同社ヘッドホン・イヤホン共通アプリ「Headphones Connect」からは外音取り込みの音量が調整できたり、センシング技術を活用した常駐型アプリ「Auto Play」からは通知読み上げ機能や、通話後や歩き始めたら音楽が自動再生されたりと、常時装着を想定したさまざまな機能性が盛り込まれている。さらに、2022年9月のアップデートで「audio switch」に対応し、複数のAndroidデバイスに接続できるようになるなど、ユーザビリティの面では、かなりの先進性を持ち合わせた製品となっている。

さて、音質に関しては、LDACコーデックに対応していることが大きなアドバンテージとなっている。スマートフォンと接続して音楽再生してみると、かなりの解像感があり、ノイズや歪みの少ない良質なサウンドを楽しむことができた。ハイレゾそのままとまではいえないが、ディテール表現などはワイヤレスイヤホンの中ではなかなか優秀で、低域に十分な量感があるおかげか、ボーカルははつらつとした勢いのある歌声に感じられる。弦楽器の演奏にもキレがあり、抑揚表現がダイナミックだ。決して重低音ではなく、あくまでもウェルバランスといえる範疇だが、それでも地味な音にならず、印象的なサウンドに仕上がっている点は好感が持てる。音質はもとより、多機能さ、先進性など、さまざまな角度からの魅力を持ち合わせている優等性だ。

イヤホン重量(片耳):4.8g
イヤホン操作:タッチセンサー
再生時間(イヤホン単体):最大6時間(ノイズキャンセリング機能オフの場合は最大9時間)
再生時間(充電ケース併用):最大20時間(ノイズキャンセリング機能オフの場合は最大30時間)
充電方法:充電ケース
急速充電対応:○
防水対応:○(イヤホンのみ、IPX4相当)
対応コーデック:SBC、AAC、LDAC
アプリ対応:○
カラーバリエーション:ブラックホワイトエクリュアースブルー

7. ソニー「LinkBuds WF-L900」
独自のリング型ドライバーユニットで穴から直接外音を取り込める新機軸のTWS

耳穴に装着する部分に穴が開いているというまったく新しいデザインを持つ、斬新なコンセプトの完全ワイヤレスイヤホンが、ソニー「LinkBuds WF-L900」だ。

最大の特徴は、耳穴に装着する部分に大きく開いた穴から周囲の音を自然な形で取り込めること。街中やオフィスでの使用時でもイヤホンを外すことなく周囲の音を確認できるので、音楽を聴きながら会話もすることができる。また、耳を密閉していないため、健康面、安全面でもアドバンテージを持ち合わせている。とても画期的な製品に作り上げられているのだ。

外音取り込み機能に関してはこれまでも多数の完全ワイヤレスイヤホンに搭載されてきたが、その多くはマイクを使って周囲の音を集音するシステムのため、音声的には不自然なものも多かった。また、手動で外音取り込みモードに切り替えるものが多く、とっさに周囲の音を確認したいときにすばやく対応できないことも多かった。その点、物理的に穴が開いている「LinkBuds WF-L900」は、常に周囲の音を取り込めるし、取り込んだ音声も自然で使い勝手がよい。

装着感に関してもなかなかできている。同社は、旧ソニー・エリクソン時代に外音が自然に聴こえる「Xperia Ear Duo」をラインアップしていたが、こちらは装着の仕方が特殊だったためか広く普及するまでにはいたらなかった。対して「LinkBuds WF-L900」は、装着が一般的な完全ワイヤレスイヤホンに近く、それでいて5サイズのフィッティングサパーターが付属するなどていねいな造形もあって、幅広いユーザーにフィットしてくれる。実際、耳の対珠部分の形状から完全ワイヤレスイヤホンが落ちやすい筆者であっても、しっかりとフィットさせることができた。

また、操作系もユニークだ。基本的にはタップ操作となっているが、イヤホン本体だけでなく顔の周囲も含めたワイドエリアタップに対応していて、たとえば頬を叩くだけで操作を行うことができる。これは、センサーが振動を拾って反応しているのだが、タップ位置がそれなりに広くとられているので、慣れれば簡単に操作できるようになる。こういうアイディアもなかなか面白い。

バッテリー性能は、イヤホン単体で最大5.5時間、充電ケース併用で最大17.5時間と必要十分な数値を持つ。また、10分間の充電で90分再生可能な急速充電にも対応している。「LinkBuds WF-L900」がアピールする“1日中付けっぱなしで活動できる”というコンセプトには少々短いバッテリーライフだが、連続して音楽を聴き続けているわけではないだろうし、急速充電も持ち合わせているので、実際の活用ではそれほど不満になることはなさそうだ。

このほかにも、ソニーの展開する空間オーディオ「360 Reality Audio」認定モデルであることや、AIによる機械学習アルゴリズムで実現した通話マイクのノイズリダクションシステム「高精度ボイスピックアップテクノロジー」など、エンターテインメント、仕事の両面で活躍できる機能性も盛り込まれている。防滴性能はIPX4、コーデックはSBC、AACに対応している。

さて、12mm口径のリングドライバーが生み出すサウンドはというと、外音が常に聴こえているのにもかかわらず、想像していたよりもピュアな音色を聴かせてくれることに驚いた。音楽が再生されるとそちらに意識が向くので、外音があまり気にならなくなるのだ。ダイナミックレンジがしっかり確保されているおかげでメリハリのよい演奏に感じられるし、ボーカルも距離感が近いため表情がよく見える。一般的なカナル型イヤホンとそう変わらない印象だ。もちろん、外音が常に聴こえているのだから解像感はそれほど高くはないものの、音のフォーカスが明瞭なためかそん色はそれほど感じず、不満に思うことはなかった。

それよりも、音楽が前面に押し出されてくるため、意外と外音が“聴こえてこない”ことのほうが意外だった。周囲の音をしっかりと確認したい場合は、ボリュームを普段よりも小さめにしたほうがよさそうだ。もうひとつ、音漏れがかなり少なめな点も驚きだった。それなりボリュームを上げると音漏れはしてしまうが、ボリュームをある程度絞れば電車内でも使える程度しか音漏れがない。「AirPods」などのインナーイヤー型はもちろんのこと、骨伝導イヤホンよりも圧倒的に小さいため、かなり実用性は高いと思った。

このように、「LinkBuds WF-L900」は普通に音楽が楽しめ、かつ外音を自然に聴くことができるという大きなメリットを持ち合わせている。屋外やオフィスで完全ワイヤレスイヤホンを使用したい人にとっては、とても魅力的な製品と言えるだろう。

イヤホン重量(片耳):4.1g
イヤホン操作:タッチコントロール
再生時間(イヤホン単体):最大5.5時間
再生時間(充電ケース併用):最大17.5時間
充電方法:充電ケース
急速充電対応:○
防水対応:○(イヤホンのみIPX4相当、リングドライバーユニット除く)
対応コーデック:SBC、AAC
アプリ対応:○
カラーバリエーション:ホワイトグレー

8. ソニー「WF-C500」
アンダー1万円。コスパ重視のソニー完全ワイヤレスイヤホン

ソニーの新しいスタンダードクラスにして、同社が初めてリリースする1万円前後の価格帯となる高コストパフォーマンス完全ワイヤレスイヤホンが「WF-C500」だ。

とはいえ、その内容に手抜かりはない。ソニーが推進する立体音響「360 Reality Audio」認定モデルとなっているうえ、圧縮音源の高音域をクリアに再現する高音質技術「DSEE」も無印ながら搭載されている。また、ワイヤレストランスミッター「WLA-NS7」を組み合わせることで、BRAVIA XR対応テレビでDolby Atmosを楽しむこともできるようになっている。アプリ「Headphones Connect」を活用することで、イコライザー機能、通知音や音声ガイダンスの変更、ソフトウェアのアップデートなど、さまざまな便利機能を活用することも可能だ。

イヤホン本体がかなり小柄にまとめられているのも特徴だ。フラッグシップモデル「WF-1000XM4」のイメージを受け継ぐデザインのイヤホン本体は、耳からの出っ張りを抑え、耳との接触面を増やす「エルゴノミック・サーフェース・デザイン」を採用することで、装着感の高さが追求されている。実際に装着してみると、確かに、フィット感の高い装着をしてくれる。ただし1点、イヤーピースのノズル部が太いためか(イヤホン本体のノズル部はいたって普通の径)、耳穴を押し広げる力が強く、耳穴の小さい人などは少々違和感を覚えるかもしれない。このあたりは、可能であれば実機を試してみるなど、購入前に確認してほしい。

バッテリー性能は、イヤホン単体で最大10時間、充電ケース併用で最大20時間使い続けることができる。また、10分の充電で1時間の再生が可能な急速充電にも対応する。このほか、左右同時伝送による安定した接続性を確保していたり、左右どちらかの片側使用も可能、IPX4相当の防滴機能など、この価格帯の製品としては十分な機能性を持ち合わせている。

さて、肝心のサウンドはいかがなものだろう。スマートフォンとAACコーデックで接続して試聴した。きめ細やかなディテールをしっかりと再現してくれる、ていねいな表現の中高域が特徴。女性ボーカルはややクールだが、やさしく語りかけてくるかのような聴き心地のよい歌声を楽しませてくれる。いっぽう、低域はちょっと量感多めで、ロックやJポップなどは普段よりも少しばかりパワフルな演奏に感じられる。屋外でも演奏が迫力を失うことのない、絶妙なバランスだ。また、音色の変化が少ないストレートな表現のため、音楽ジャンルを選ばない点も好感が持てる。装着感のよさや、この価格帯の製品としては良質なサウンド、質感のよいイヤホン本体外観の仕上げなど、多方面において満足度の高い製品だ。

イヤホン重量(片耳):5.4g
イヤホン操作:タッチセンサー
再生時間(イヤホン単体):最大10時間
再生時間(充電ケース併用):最大20時間
充電方法:充電ケース
急速充電対応:○
防水対応:○(イヤホンのみ、IPX4相当)
対応コーデック:SBC、AAC
アプリ対応:○
カラーバリエーション:アイスグリーンコーラルオレンジホワイトブラック

9. ソニー「WF-1000XM3」
ノイキャン性能や接続安定性を高めたソニーのロングセラー完全ワイヤレスイヤホン

ソニーの完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000XM3」の特徴をひと言で表すならば、それはずばり、コンセプトの完璧な実現、といったイメージだろうか。第1世代モデル「WF-1000X」は、完全ワイヤレスイヤホンとして世界初となったノイズキャンセリング機能の搭載や、上質なサウンドで大いに人気を得ることとなったが、ソニーとしては初めて手がける完全ワイヤレスイヤホンだということもあってか、接続安定性や装着感などで、ユーザーから不満の声があがることもままあった。そういった部分をすべてしらみつぶしに解消していき、“理想の”完全ワイヤレスイヤホンを作り出そうとした様子が「WF-1000XM3」からうかがえるのだ。

たとえば、イヤホン本体のデザインは、ハウジング部のオーバル形状など基本的なスタイルこそキープコンセプトであるものの、まったくの新造形となっているし、さらに耳側、ノズルまわりの形状はまったく異なるデザインへと変更。第1世代モデルを上回る高い装着感を実現している。また、内部に目を移しても、Bluetoothチップセットを新規に開発するなど、徹底した改良が行われている。名前は“M3”だが、完全新作と呼んで差し支えないほどのブラッシュアップが行われているのは確かだ。

ちなみに、2代目なのになぜ“3”なのか疑問に思ったのだが、その旨を尋ねてみると、ノイズキャンセリング機能搭載ヘッドホン「WH-1000XM3」のイヤホン版という位置付けとなっているため、この名前を採用したようだ。正直、M3をマーク3ととらえると多少違和感があるが、ソニーとしてはマーク3の略と明言している訳ではなく、世代で製品名末尾を揃えるのは製品特徴としてわかりやすい面もあるので、これはこれでわかりやすいかも、とも思えた。

いっぽう、機能面でも第1世代モデルに対しての進化がいくつも見られる。ノイズキャンセリング機能は、新たにヘッドホンの外側と内側に配置した2つのマイクを配置した「デュアルノイズセンサーテクノロジー」を完全ワイヤレスイヤホンとして初めて採用。さらに、ヘッドホン「WH-1000XM3」用のノイズキャンセリングプロセッサー「QN1」を省電力/小型化した「QN1e」を新たに搭載することで、ノイズキャンセリング機能の精度も高めている。さらに、ノイズキャンセリング機能のオン/オフに加え、「アンビエントサウンド(外音取り込み)モード」も、イヤホン本体のタッチパッドから操作できるようになった。もちろん、スマートフォン用アプリからの操作も引き続き行えるようになっていて、こちらは外音取り込みレベルを22段階で調整可能なほか、ボイスフォーカスをオンにすることで外のノイズを低減しつつ人やアナウンス音のみを聴きやすくすることもできる。また、ペアリングしているスマートフォンの加速度センサーを読んで、止まっている時/歩いている時/走っている時/乗り物に乗っている時の4パターンを検出して、あらかじめ設定したノイズキャンセリング&外音取り込みのモードを自動で切り替えてくる「アダプティブサウンドコントロール」も健在。使い勝手については、大いに満足のいくレベルだ。

なお、付属の充電ケースは第1世代モデルに比べると多少コンパクトになった印象だが、他社製品の最新状況を踏まえると、大柄と感じてしまうサイズかもしれない。とはいえ、NFC機能が付いていて、対応するスマートフォンとのペアリングは簡単で便利だし、3回分のフル充電が行えることを考えると、許容できる範囲かもしれない。ちなみに、バッテリー性能は、イヤホン単体で最大6時間、ケースからの充電も合わせると最大24時間使い続けることができるようになっている。

さて、実際の使い勝手はというと、装着感についてはなかなかのもの。ホールド感がしっかりしていて、耳からポロリとこぼれ落ちることはまずない。また、接続安定性に関しても、特に気になるほどではなかった。ヘッドホンイベント会場という、かなり劣悪な環境でも試してみたが、他社製品に比べると優秀な接続安定性を示してくれた。もちろん、相当な悪環境だったので接続が切れることは何回もあったが、クアルコム社製「QCC3026」搭載モデルなど接続安定性をアピールする製品と同等か、それ以上のクオリティは持ち合わせていたように思う。

肝心のサウンドはというと、SBC、AACコーデックのみの対応とは思えないほど、質感のよい表現を持ち合わせている。ピアノはタッチのニュアンスがしっかりと伝わってくることに加えて、倍音がしっかりとのっているので、のびのびとした演奏に感じられる。ボーカルも迫力のある、メリハリのよい歌声を聴かせてくれる。アコースティック楽器が得意だった第1世代モデルに比べると、オールラウンダータイプにシフトしたというべきか。ボーカルの押し出し感や、ドラムやベースのグルーヴ感の高さなど、メリハリのしっかりしたサウンドとなっている。幅広いジャンルの音楽が楽しめるようになったのはうれしいかぎり。これでSBC/AACコーデックのみの対応というのはもったいない、もしLDAC対応であればさらに良質なサウンドが楽しめただろうと、少々残念な気持ちにはなっている。とはいえ、「WH-1000XM3」の音質、機能性は一級品といえるものだ。

イヤホン重量(片耳):8.5g
イヤホン操作:タッチセンサー
再生時間(イヤホン単体):最大6時間(ノイズキャンセリング機能オフの場合は最大8時間)
再生時間(充電ケース併用):最大24時間(ノイズキャンセリング機能オフの場合は最大32時間)
充電方法:充電ケース
急速充電対応:○
防水対応:-
対応コーデック:SBC、AAC
アプリ対応:○
カラーバリエーション:プラチナシルバーブラック

10. ソニー「WF-XB700」
スポーツユースを重視した貴重な重低音モデル

ソニー「WF-XB700」は、スポーツユースを重視した重低音モデルという、なかなかに貴重な1台だ。迫力の重低音を生み出すEXTRA BASSサウンドを最大の特徴としつつも、スポーツユースにも十分な配慮がなされ、耳の3点で支えることで高いフィット感を保持する「エルゴノミック・トライホールド・ストラクチャー」やIPX4相当の防滴性能、イヤホン本体が左右それぞれにプレーヤーからの音楽信号を受け取る左右同時伝送方式などが採用されている。

加えて、イヤホン単体で最大9時間、充電ケースと合わせ最大18時間の再生が可能なバッテリー性能を持ち合わせているほか、10分の充電で1時間の音楽再生が可能な急速充電にも対応する。BluetoothコーデックはSBCとAACに対応。カラーバリエーションはブラックとブルーの2色だ。

重低音サウンドだけどスポーツモデルの完全ワイヤレスイヤホン。このアピールポイントそのものが、「WF-XB700」の特徴を端的に表している。当然、その音色傾向はかなりの低音強調タイプで、分厚い低域によって迫力のサウンドを楽しむことができる。よって、EDMやJポップをメインに聴く人、重低音が好みの人にはピッタリとはまってくれる。いっぽうでハードロックやジャズとの相性はかなり悪くなってしまうが、それは重低音モデル全般にいえることだから致し方のないところ。好みがはっきりとわかれる製品だが、気に入る人にとっては替えのきかない魅力的な製品となってくれるだろう。

イヤホン重量(片耳):8g
イヤホン操作:物理ボタン
再生時間(イヤホン単体):最大9時間
再生時間(充電ケース併用):最大18時間
充電方法:充電ケース
急速充電対応:○
防水対応:○(イヤホンのみ、IPX4相当)
対応コーデック:SBC、AAC
アプリ対応:○
カラーバリエーション:ブラックブルー

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