スマートフォンとBluetooth接続することで、音楽や動画の音声をワイヤレスで楽しむことができるワイヤレスイヤホン。じゃまなケーブルがなく、取り回しも簡単で、通勤・通学時はもちろん、ランニングなどのスポーツ時にも使えて便利ですね。アップルの大人気スマートフォン「iPhone」シリーズがイヤホンジャックを廃止したこともあり、ここ数年でアイテム数が一気に増加。低価格なモデルから多機能な高機能モデルまで、ユーザーの選択肢がグンと広がっています。そこで本特集では、数あるワイヤレスイヤホンの中から、初心者におすすめのモデルをピックアップしてみました。ワイヤレスイヤホンの購入を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。
ワイヤレスイヤホンは、製品の形状によって「完全ワイヤレスタイプ」「左右一体タイプ」「ネックバンドタイプ」「ボックスタイプ」「片耳タイプ」の大きく5つのタイプに分類されます。形状によってメリット・デメリットがあり、使い勝手も大きく変わってきます。以下に、それぞれの特徴やメリット・デメリットをわかりやすくまとめてみました。
■完全ワイヤレスタイプ
左右のイヤホン本体をつなぐケーブルがまったくないタイプで、「左右独立タイプ」「トゥルーワイヤレス」とも呼ばれています。アップル「AirPods」の登場で一気に火が付き、ここ数年で製品数が一気に増加。今ではワイヤレスイヤホンの主流となっています。なお、イヤホンのプロによる完全ワイヤレスイヤホンの選び方の解説や注目製品のレビューは「完全ワイヤレスイヤホン一気レビュー!音質や装着感をイヤホンのプロが徹底検証」でも紹介しています。そちらもぜひ参考にしてください。
●メリット
ケーブルをまったく気にせずに使える
本体が小さく、重量も非常に軽い
●デメリット
内蔵バッテリーが小さいため、バッテリー駆動時間が短い
装着感がよくないと耳から落ちやすい
■左右一体タイプ
左右のイヤホン本体をケーブルでつないだシンプルな形状で、低価格なエントリークラスのワイヤレスイヤホンで多く採用されているタイプです
●メリット
ケーブルが短くからみにくい
本体が軽く、コンパクトにまとめて持ち運べる
左右のイヤホンがケーブルでつながっているので落としにくい
●デメリット
製品によっては内蔵バッテリーの容量が少なく、バッテリー駆動時間が短い
■ネックバンドタイプ
ネックバンドタイプは、左右のイヤホン本体をつなぐケーブル部に形状記憶素材などを採用し、首の後ろにかけて使用します。バンド部分がしっかりと作られており、装着感が高いのが特徴です。
●メリット
ネックバンドでしっかりと固定するため、装着感が高い
バンド部に大型のバッテリーを内蔵しやすく、バッテリー駆動時間が比較的長い
●デメリット
左右一体型モデルと比べると、本体重量はやや重い
ネックバンドの素材や形状によってはコンパクトに折りたたみできない場合がある
■ボックスタイプ
Bluetoothレシーバーとイヤホンを組み合わせたタイプの製品。Bluetoothレシーバーとイヤホンが一体型となっている製品や、イヤホン部を取り外して好みのイヤホンに交換できるセパレートタイプの製品などがあります。
●メリット
セパレートタイプの製品は好みのイヤホンをワイヤレス化できる
●デメリット
構造上、ケーブルがじゃまに感じる場合も
■片耳タイプ
片耳に装着して使用するタイプ。自動車ドライバーのハンズフリー通話用イヤホンとして採用されることが多いです。片耳使用のため、音楽リスニングにはあまり向いていません。
●メリット
片耳で利用できるので、屋外などでも比較的安全に使用できる
●デメリット
片耳で使用するため、音楽リスニングには不向き
せっかくワイヤレスイヤホンを選ぶなら、利用シーンにあった機能性にもぜひ注目したいところ。
たとえば、電車やバスでの通勤・通学時の利用がメインなら、ノイズキャンセリング機能を備えたモデルがおすすめです。周囲の雑音を打ち消してくれるので、周りの騒音を気にせず音楽を楽しめます。
ランニングなどのスポーツ時の利用がメインなら、スポーツタイプのイヤホンがおすすめ。激しい動きでもコードがじゃまにならず、ノイズを拾いにくい構造となっているほか、耳から外れにくいイヤーピースやデザインを採用したモデルが多くラインアップされており、集中してスポーツを楽しめます。防水・防滴機能を備えたモデルなら、汗をかくスポーツや、突然雨が降ってきた時にも安心して使えるので便利です。
ワイヤレスイヤホンの多くは低消費電力で駆動するBluetoothというワイヤレス通信技術が使用されています。しかし、Bluetoothはデータ転送の速度があまり速くありません。そのため、音声データを効率よくワイヤレス伝送するために、音声データをコーデックと呼ばれる音声圧縮変換方式で圧縮して伝送しています。
Bluetoothでは標準で「SBC」と呼ばれるコーデックに対応しています。標準コーデックなので、Bluetoothに対応したスマートフォンやイヤホンは基本的にすべての製品が対応しておりますが、仕様上、接続性を優先して圧縮効率を高めた結果、音質劣化が大きく、ワイヤレス伝送したデータの復元に時間がかかってしまい、遅延が大きいという弱点がありました。
SBCコーデックのこれらの弱点を解消するため登場したのが、「AAC」や「aptX」といったコーデックです。これらのコーデックは、SBCコーデックよりも高音質かつ低遅延という特徴があり、SBCコーデックで気になる音質劣化や、伝送遅延による動画視聴時の映像と音声のズレがだいぶ抑えられています。
数年前までは、ワイヤレスイヤホンのハイエンドモデルにしか対応製品がラインアップされていませんでしたが、近年はエントリーモデルにも対応製品が増えています。ワイヤレスイヤホンで動画視聴やゲームアプリを快適に楽しみたいのであれば、ぜひ「AAC」や「aptX」といったコーデックに対応した製品を選んでおきましょう。
また、最近では「aptX Adaptive」や「LDAC」といったBluetoothでハイレゾ相当の高音質伝送を可能にする高音質コーデックというのも登場してきています。まだ対応する製品は限られていますが、先ほど紹介した「AAC」や「aptX」よりも高音質な音楽が楽しめます。音質重視の人は、「aptX Adaptive」や「LDAC」といった高音質コーデックに対応する製品を選ぶのもアリでしょう。
なお、ここまで紹介した「AAC」「aptX」「aptX Adaptive」「LDAC」といった標準コーデックのSBC以外のコーデックを使用するには、送信側のスマートフォン、受信側のワイヤレスイヤホンの双方が対応していることが必要です。iPhoneではAACに対応、Androidスマートフォンでは、一部機種で「AAC」「aptX」「aptX Adaptive」「LDAC」に対応しています。組み合わせるスマートフォンで使えるかどうかは事前によく確認しておきましょう。
テレワークが徐々に普及し、自宅でパソコン作業を行う際にワイヤレスイヤホンを使うという人も増えてきています。メインのスマートフォンだけでなく、パソコンとの接続も考えているなら、「マルチポイント」という機能に対応したモデルがおすすめです。
マルチポイントとは、複数台の親機に同時接続・待ち受けできる機能のこと。スマートフォンとパソコンの両方にあらかじめペアリングしておけば、1台のワイヤレスイヤホンでスマートフォン・パソコンどちらの着信にも対応することができます。
ちなみに、マルチポイントに似た機能として、「マルチペアリング」という機能があります。マルチポイント同様、1台のワイヤレスイヤホンに複数の親機を登録できる機能ですが、マルチポイントのように複数台の親機に同時接続・待ち受けはできません。2台の親機に同時に接続する場合は、必ずマルチポイントに対応したモデルを選びましょう。
アップル「AirPods Pro 第2世代」
「AirPods Pro 第2世代」は、アップル純正のノイズキャンセリング機能搭載完全ワイヤレスイヤホンです。iPhoneを手がけるアップルが開発したイヤホンということもあり、ケースから取り出すだけで近くのiPhoneと簡単にペアリングができたり、iPhoneのコントロールセンターからノイズキャンセリング機能のオン/オフを手軽にコントロールできたり、同じApple IDを使用したiPhoneとMacの同時待ち受けができる独自のマルチポイント機能に対応しているなど、iPhoneやMacと組み合わせて使用する際に便利に使える機能が満載。少々価格が高めですが、カナル型デザインを採用し、遮音性も高く、ノイズキャンセリング機能の効果もかなり優秀なので、iPhoneユーザーでノイズキャンセリング機能搭載のワイヤレスイヤホンを探しているなら、真っ先に検討したい1台です。
なお、密閉感のあるカナル型イヤホンが苦手という人は、インナーイヤータイプで付け心地が軽い「AirPods」がおすすめ。最新の「AirPods 第3世代」ならスティック部分が短くなった新デザインになり、音質も大きく向上しています。操作体系も感圧センサーを使ったつまむ操作に切り替わり、使い勝手もアップしています。ノイズキャンセリング機能こそありませんが、そのほかの機能はほぼ同じ、価格も「AirPods Pro 第2世代」よりも安いので、ノイズキャンセリング機能が不要なら、こちらを選択するのもアリでしょう。
Bose「QuietComfort Earbuds II」
ワイヤレスイヤホンの中でも特にノイズキャンセリング性能を重視したいという人におすすめなのが、Boseの完全ワイヤレスイヤホン「QuietComfort Earbuds II」です。本製品のウリは、なんといっても強力なノイズキャンセリング機能でしょう。イヤホンを耳に装着した際に流れる起動音を活用し、耳穴の反響音を瞬時に測定する独自の「CustomTuneテクノロジー」を新たに搭載し、ノイズリダクション信号をユーザーそれぞれの耳の特性に合わせて調整することで、ノイズキャンセリング性能が従来モデルから飛躍的に向上しています。完全ワイヤレスイヤホンタイプの製品ながら、同社のノイズキャンセリングヘッドホンを上回るノイズキャンセリング性能となっており、周囲のノイズを強力に抑え込んでくれます。
イヤホン本体はセミカナルタイプですが、イヤーフィンとイヤーピースの2か所を自分の耳に合わせてそれぞれ3サイズから選べるため、装着感も比較的良好。強力なノイズキャンセリング機能でありながら、ノイズキャンセリング機能特有の耳への圧迫感も少なめです。重低音もしっかりと楽しめるメリハリの利いたBoseサウンドも健在。価格は少々高いですが、ノイズキャンセリング性能重視でワイヤレスイヤホンを選ぶなら、ぜひ検討したい1台です。
ソニー「LinkBuds S WF-LS900N」
ソニーのワイヤレスイヤホンといえば、強力なノイズキャンセリング機能を搭載した最新の「WF-1000XM5」が有名ですが、今回初心者におすすめモデルとして紹介するのは、「LinkBuds S WF-LS900N」。ノイズキャンセリング機能や自然な外音取り込みの切り替えで常時装着するというスタイルを提案する新コンセプトのイヤホンになります。
ノイズキャンセリング性能については最新の「WF-1000XM5」やロングセラーモデルの「WF-1000XM4」に比べると多少落ちますが、イヤホン本体は常時装着を想定していることもあり、「WF-1000XM4」よりも小さくて軽く、耳の小さな人でも無理なくしっかりとした装着感が得られます。外音取り込み機能も違和感が少なく、AI技術を活用した「高精度ボイスピックアップテクノロジー」で通話品質も優秀。LDACコーデックによるハイレゾワイヤレス対応、圧縮音源をハイレゾ級の音質に引き上げる独自のアップコンバート技術「DSEE Extreme」など、高音質技術もしっかりと搭載されています。ノイズキャンセリング機能が突き抜けたモデルではありませんが、ソニーのノイズキャンセリング機能搭載の完全ワイヤレスイヤホンの中でも特にバランスのとれた1台と言えるでしょう。
Shokz「OpenRun」
耳をふさがずに周囲の音を常に確認できるため、ジョギングなどの屋外で使用するスポーツ用のワイヤレスイヤホンとして人気が高いShokzのネックバンド型の骨伝導ワイヤレスイヤホン。現在ではさまざまなグレードの製品をラインアップしていますが、初めての1台として手に入れるなら、価格と性能のバランスのよい「OpenRun」がおすすめです。
同社のネックバンド型骨伝導ワイヤレスイヤホンとしてはスタンダードモデルという位置づけですが、激しいアクションでもずれることなくしっかりとフィットしてくれる重量26gの軽量チタンボディや、IP67相当の防塵・防水対応など、スポーツイヤホンに求められる性能はしっかりとカバー。バッテリー性能は最大8時間と上位モデル「OpenRun Pro」の最大10時間に比べるとやや短いですが、約10分間で最大1.5時間使用できる急速充電も備わっており、十分実用レベルと言えます。ボリュームを上げると多少音漏れがするので、静かな場所ではボリュームを抑えるなどの工夫は必要ですが、激しいスポーツにも使えるワイヤレスイヤホンを探しているなら、「OpenRun」は唯一無二の1台と言えるでしょう。
ソニー「LinkBuds WF-L900」
耳をふさがず、音楽リスニングや人とのリアルなコミュニケーションができることで年々注目度が高まってきている“ながら聴き”対応のワイヤレスイヤホン。メーカー各社からさまざまな形状の製品が登場していますが、外音取り込みの自然さで選ぶなら、ソニー「LinkBuds WF-L900」がおすすめです。イヤホン本体に大きな穴を開けたまったく新しい構造を採用しているので遮断性は一切ありませんが、その分周囲の音を自然な形でしっかりと取り込むことができ、蒸れや耳への圧迫感も少なく、長時間でも快適に装着できます。
また、AI技術を活用した「高精度ボイスピックアップテクノロジー」で内蔵マイクを使った通話品質も非常に高いのもポイント。しゃべっている自分の声も開いた穴から自然な形で確認できるので、テレワーク中のビデオ会議などにも積極的に使っていけます。開放的なスタイルのため、ボリュームを上げると音漏れが気になるのと、独特のイヤホン形状のため、最適なフィット感を得るために装着時の工夫が必要なところは少々難点ですが、周囲の音をしっかりと確認でき、安心して使えるながら聴きイヤホンを探しているなら、間違いなく第1候補になるはずです。
JVC「HA-A5T」
「HA-A5T」は、JVCケンウッドが展開する完全ワイヤレスイヤホンのエントリーモデルです。最大の魅力は、なんといってもその価格。価格.comの最安価格なら4,000円でおつりがくるという圧倒的なコスパモデルとなっています。
イヤホン本体のデザインもオーソドックスなデザインで、Bluetoothの対応コーデックもSBCのみ、バッテリーもイヤホン単体で最大5時間と突出したスペックは持ち合わせていませんが、ちょっとした日常使いであれば十分使える性能です。音質も、数多くのワイヤレスイヤホンを手がけるJVCケンウッドらしく、バランスのよいサウンドに仕上がっています。できるだけお金をかけたくないが、完全ワイヤレスイヤホンを一度は試してみたいという人にうってつけの1台と言えるでしょう。
JBL「TUNE 125BT」
ワイヤレスイヤホンは欲しいけど、現在主流の完全ワイヤレスタイプは落としてしまいそうだから、ケーブル一体型の製品をあえてチョイスするという人も多いです。ケーブル一体型タイプは製品数が徐々に少なくなっており、現在は安価なエントリーモデルが中心となっていますが、安価なエントリーモデルの中でもおすすめしたいのが、JBL「TUNE 125BT」。価格.com最安価格で4,000円を切る価格で購入することができるコスパ抜群の1台です。オーソドックスなケーブル一体型の製品とはいえ、JBLの手がける製品がこの価格で手に入るというのはうれしいですね。
フラットケーブルとイヤホン部のマグネットでからみにくいように配慮されているのもポイント。また、この価格帯の製品ながら、2台のBluetooth機器と同時接続できるマルチポイントもサポート。普段はオーディオプレーヤーで音楽を聴き、着信があった時だけスマートフォンに切り替えるといった使い方も可能です。バッテリーは最大16時間と必要十分。できるだけコストをかけずにワイヤレスイヤホンを手に入れたいなら、JBL「TUNE 125BT」は有力な選択肢になるでしょう。
ビーツ・エレクトロニクス「Beats Flex」
「Beats Flex」は、アップルの傘下のビーツ・エレクトロニクス(Beats by Dr. Dre)が手がけるケーブル一体型のワイヤレスイヤホンです。アップル「AirPods 第2世代」などに搭載されている「Apple W1チップ」を搭載しており、「AirPods」同様、iPhoneやMacといったアップル製品と簡単にペアリングできる機能や独自のマルチポイント機能などを利用できます。また、「Beats Flex」はボリューム調整の専用ボタンを備えており、ボタン操作だけでボリューム調整を完結できるのも便利です。
ケーブル一体型のデザインのため、「AirPods」のように耳から外れて落ちる心配がなく、専用充電ケースの持ち運びも不要。バッテリーも最大12時間とかなり余裕があります。充電端子の形状がUSB Type-Cのため、iPhoneユーザーの場合は、旅行などの長期の外出時はLightningケーブルとUSB Type-Cケーブルの2本を持ち運ばなければいけないのは難点ですが、アップル製品とのシームレスな連携が可能なワイヤレスイヤホン製品の中でもダントツに安いモデルなので、iPhoneユーザーの初めてのワイヤレスイヤホンとして要注目のモデルと言えそうです。
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AV家電とガジェット系をメインに担当。ポータブルオーディオ沼にどっぷりと浸かっており、家のイヤホン・ヘッドホンコレクションは100を超えました。最近はゲーム好きが高じて、ゲーミングヘッドセットも増えてます。家電製品総合アドバイザー資格所有。