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デジタル時代のコンテンツ著作権保護「DRM」とは?

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映像・音楽コンテンツのデジタル化が進む今、それをユーザーが楽しむうえでスルーできないのが、著作権保護に関する「DRM」というキーワードだ。コンテンツを再生しようとしたときに、映像が出ない・音が出ないといった事態に陥り、「AV機器の故障かな?」と思ったら、DRMによる制限だったという経験は誰でも1度はあるのではないだろうか。今回は、このDRMの種類とユーザビリティについて整理する。日頃の疑問解決にも役立ててほしい。

映像や音楽など、デジタルコンテンツに適用される「DRM」とは? 今さら聞けない基本のキを解説!

映像や音楽など、デジタルコンテンツに適用される「DRM」とは? 今さら聞けない基本のキを解説!

そもそもDRMってどういう意味?

DRMとは、「Digital Rights Management」の略。日本では「デジタル著作権管理」と呼ばれ、デジタルコンテンツの著作権保護を目的とした技術の総称であり、方式そのものを指すケースも多い。著作権自体は法律で保護されているが、それでもDRMが重視される背景には、「劣化なく」「無限に」コピーを作成できるというデジタルデータの特性がある。

デジタルデータは、理論上、伝送や保存の過程で品質の劣化が起こらない。これはユーザーにとって、コンテンツを高いクオリティで楽しめるので大きなメリットと言える。いっぽう、コンテンツの著作権者側にとっては、承諾していない高品質コピーが無限に拡散してしまうリスクを抱えることになる。特に最近はインターネット回線の高速化により、そういったコピーデータが簡単に全世界に広まってしまう状況だ。そこで、デジタルコンテンツを暗号化したり、伝送・再生・コピーする操作に制限を加えるなど、著作権者の意図通りに管理しようする技術やシステムが開発されてきたというわけだ。

その狙いは違法コピーを排除し、著作権者の利益を保護すること。しかし裏を返せば、ユーザーの権利(Fair Use)をうばい、使い勝手を悪くしてしまうリスクもある。

ちなみに、デジタル/アナログを問わず、コンテンツから著作権保護技術を外す行為については、米国で施行されたデジタルミレニアム著作権(The Digital Millennium Copyright Act)を皮切りに、各国とも法律で禁止する方向になっている。日本では、2012年10月1日に一部施行が始まった改正著作権法に明示された

メディア別・DRMの種類を解説

デジタルコンテンツを収録するメディアによって、さまざまなDRM技術が採用されている。おおまかには「コンテンツの暗号化」と「コピー世代管理」の2種類がある。ここでは、テレビ放送からBD/DVD、CDや配信コンテンツまで、現在流通する主要メディア&伝送方式別にその種類を紹介していこう。

【1】テレビ放送

私たちが普段視聴している地上デジタルハイビジョン放送には、著作権保護のためのコピー制御信号が付加され、暗号化が施されている。テレビやBDレコーダーなどの放送受信機器に挿入されるB-CASカードに暗号鍵が収納されていて、放送コンテンツにかけられた暗号を解除することで視聴できる仕組みだ。そして、BDレコーダーやUSB-HDDに録画した番組をBDディスク等にダビングする際は、「ダビング10」や「コピー・ワンス」といったルールが適用され、コピーできる回数に上限が設けられている。なお、将来の4K/8K実用放送用にはセキュリティを強化した新型CASが登場予定で、録画に関する運用規定の変更も見込まれる。

現在、地デジの番組は基本的に「ダビング10」が適用され、ひとつの録画番組から9個のコピーを作成+1回のムーブが上限。なお録画した番組データは、著作権保護の観点から、その“引継ぎ”にも制限があり、テレビ/BDレコーダーの外付けUSB-HDDに番組を録画・保存した場合、録画時に使用した機器でしか再生できず、テレビ等を新しく買い換えると見られなくなる。これに対応するのが「SeeQVault」(シーキューボルト)というDRM規格。同規格に準拠したテレビやBDレコーダー、USB-HDDを使用して録画した番組は、対応する新しいテレビ/BDレコーダーに引き継いで再生したり、SDカードなどに書き出して持ち歩くことができる

【2】Ultra HD Blu-ray/BD/DVD

容易なリッピングやコピーを防止するため、映画などの商用DVDには暗号化技術「CSS」(Content Scrambling System)が採用された。しかし、暗号を解除するための「鍵」が流出し、実質無効化している。商用BDではそうした失敗を教訓に、3つの暗号鍵を用いる暗号化技術「AACS」(Advanced Access Content System)が採用されたのだが、こちらも「鍵」の一部が流出。インターネットが普及した今、情報を集めれば誰でもコピーを作成できる状態になってしまった。そして最新のUltra HD Blu-rayでは、より強固な「AACS2.0」が開発された。

デジタルコンテンツの世界は、DRM技術とクラッカーのいたちごっこ。現在はネット上に違法なAACS解除ソフトも出回る状況に。最新のUHD-BDでは、より強固な「AACS2.0」が採用されている

ちなみに、録画した放送番組をBDディスクにコピーする場合も、暗号化にはAACSが適用される仕組みになっている

【3】ホームネットワーク視聴

近年のAV機器は、たとえば「リビングのBDレコーダーに録画した放送番組を、Wi-Fiネットワークを経由してベッドルームのタブレットで再生する」というような家庭内配信が標準機能になっている。こうしたネットワーク伝送には、DRMとして「DTCP-IP」(Digital Transmission Content Protection)が適用され、家庭内の同一LAN内でのみ視聴できるよう制限される。

また、DTCP-IP Ver 1.4で追加された「DTCP+」を備えたBDレコーダーやNASを使用すれば、スマホを使用したいわゆる「リモート視聴」が可能。外出先にいながら、スマートフォンを使って自宅のBDレコーダーやNAS内にある録画番組を視聴することができるようになる。

アイ・オー・データ機器のネットワーク対応HDD(NAS)「RECBOX DR HVL-DR2.0」は、DTCP+に対応し、自宅で録画した番組を外出先のスマホからでも楽しめる

【4】HDMI伝送

HDMIによるコンテンツの伝送は、コンテンツのソースに使用される各種の映像圧縮信号や暗号を解いたデジタルデータを取り出すため、高いセキュリティが求められる分野だ。HDMI規格の登場当初から、DRM技術として「HDCP」(High-bandwidth Digital Content Protection)が採用されている。送信機(プレーヤー)と受信機(テレビなどの映像装置)の間で相互認証を行い、OKの場合、コンテンツの伝送と暗号の解除が可能になる仕組みだ。

4K時代には、超高画質な映像データを保護する観点から、より強固な「HDCP 2.2」が採用され、UHD-BDや4K放送番組の伝送に必須となっている。近年発売されている映像装置は、ほとんどがHDCP 2.2に対応したHDMI端子を備えているが、複数の端子のうち1基だけがHDCP2.2に対応しているケースもある。また、もし初期の4Kテレビを譲り受けたり中古で購入する場合は、HDCP 2.2に非対応のケースもあるので、注意が必要だ。

4K時代に突入し、最近のAV機器のほとんどはHDCP 2.2に準拠するHDMI端子を備えている

4K時代に突入し、最近のAV機器のほとんどはHDCP 2.2に準拠するHDMI端子を備えている

【5】音楽CD

現在、音楽CDは、PCに取り込んでデータ形式で管理するのが主流だ(CDリッピング)。多くの方が、特にDRMを気にせず接しているメディアだろう。

しかし以前は、コピー防止技術「SCMS」(Serial Copy Management System)によって、CD音源のコピーが制限された時代があった。民生用オーディオ機材を使用して商用の音楽CD、MD、DATなどを他のデジタルメディアにコピーする際、バックアップなどの私的利用での目的に限り「1回だけ録音」ができるように規定されていたのだ(親から子への1世代コピーは作成できるが、子から孫といった2世代目は作成不可)。SCMSは、コピーできる世代をコントロールすることで、無秩序なコピーが大量生産されるのを抑制するというものだった。

だが、SCMSはあくまでも民生用機材を使った音楽CDのコピーに対して適用されるもので、現在主流であるPCを使ったCDリッピングには適用されない。PCにCD音源を取り込むことは違法ではなく、利用者の裁量に任せられるようになっている(なお、ソニーとフィリップスにより規格化されたいわゆる“高音質CD”「SACD」をリッピングするのは違法)。

CD自体にコピー防止技術を適用し、1世代コピーもできないようにした「CCCD」(Copy Control CD)もかつて存在したが、iPodに代表されるデジタルオーディオプレーヤーとデータ形式による音源管理スタイルの普及にともない、なくなっていった。ちなみに、PCに取り込んだ音源データをCD-Rに焼き込むためのソフトウェア(Windows Media PlayerやiTunesなど)には、著作権保護の有無を確認する機能が備わっている。

最近は、PCでリッピングしてデータで管理するのが主流になっているCD音源

最近は、PCでリッピングしてデータで管理するのが主流になっているCD音源

ちなみに音源データをCD-Rにダビングする場合は、私的録音補償金が含まれた「音楽用CD-R」を使用することが推奨されている

【6】音楽配信/ダウンロード

商用のダウンロード型音楽配信がスタートした1999年には、ソニーが開発したDRM技術「MagicGate」や、PC上で音楽データを管理・保護するソフトウェア技術「OpenMG」などが注目を集めた。しかし、RIAA(全米レコード協会)など著作権者の望むコンテンツの取り扱いルールが複雑で、利用者にとっては不便なものだった。

その後、DRMをかけない、またはiTunesなどの制限を緩和したサービスの登場により、音楽配信の世界では全体的に「DRMフリー」の流れが定着。現在では、主要な配信サイトのほとんどが、DRMをかけない状態で配信サービスを行っている。ただし、これは法律による違法コピー取り締まりを前提にしたもの。ファイルコピーが自由に行えるからといって、私的利用を超えた配布・販売行為は違法であることを忘れてはならない。

 以前はDRM付きで配信されていたiTunes Storeの楽曲も、2012年から全曲DRMフリーになった

以前はDRM付きで配信されていたiTunes Storeの楽曲も、2012年から全曲DRMフリーになった

【7】映像ストリーミング配信/音楽ストリーミング配信

「Netflix」や「Spotify」といった映像/音楽のストリーミング配信サービスは、登場当初より、プレーヤー側にコンテンツのデータが残らない点で、ダウンロード型よりもコピーの難易度が高いと考えられてきた。今では、月額定額で見放題のサービス(サブスクリプション型)が数多く存在するが、配信中のコンテンツには原則としてDRMが施されている。インターネット接続を前提にしており、コンテンツ再生時にサービス側から再生端末側のシステムへ、DRMを解除する「鍵」を受け渡しする仕組みが一般的。ハッキングへの耐性があり、セキュリティのレベルは高い。

また、多くのサービスがWi-Fiが利用できないシチュエーションも想定し、コンテンツのダウンロード再生にも対応している(オフライン再生)。その際にコンテンツには暗号化が施されており、たとえば映像ストリーミングサービスの場合、インターネットに接続できない状態だと視聴期限が設けられたりする。正規のユーザーが視聴期限を過ぎても視聴したい場合、再度インターネットに接続して認証を行えば可能になる。

ストリーミングサービスでは、強固なDRMが施されているにも関わらず、利用者に不便を感じさせないのもポイントだ。ダウンロード型と異なり、ストリーミング型ではファイルコピーの必要がないうえ、アカウントで紐付けることにより複数のデバイスで自由に視聴できるのは大きなメリット。今後も、配信側と視聴側にメリットが多いストリーミング型をベースにしたサービスがシェアを高めると考えられる。

Amazonプライム会員であれば、追加料金なしで見放題になる映像配信サービス「Amazonプライム・ビデオ」。端末へのダウンロード機能にも対応しており(写真右、赤マルの個所をタップするとダウンロードできる)、ダウンロードしたタイトルの視聴期限は作品によって異なる

同じく、プライム会員であれば追加料金なしで利用できる音楽配信サービス「Amazonプライム・ミュージック」。もちろんこちらもDRM付きでオフライン再生に対応している

さいごに

デジタルコンテンツの世界は高画質化・高音質化が進むいっぽうで、著作権者にとっては、コンテンツデータが流出した際の損失リスクがますます高まっている。時代にあわせて暗号化技術も進化してきたが、クラッキングやハッキングをゼロにするのは難しく、いたちごっこが続いてきた。こうした状況をふまえ、DRM回避の禁止や違法アップロードを法律で取り締まる法整備も進んでいる。著作権を尊重しつつ、利用者に負担をかけないシステムの進化に期待したい。

鴻池賢三

鴻池賢三

オーディオ・ビジュアル評論家として活躍する傍ら、スマート家電グランプリ(KGP)審査員、家電製品総合アドバイザーの肩書きを持ち、家電の賢い選び方&使いこなし術を発信中。

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2017.11.17 更新
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