新開発のドライバーユニットで低音域の再現性を向上!

期待度大! final初の平面駆動型ヘッドホン「D8000」を聴く!

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超高級イヤホン/ヘッドホン市場でひと際存在感を放つ国産ブランド「final」。2015年に実売62.9万円の最上位ヘッドホン「SONOROUS X」をデビューさせ、大きな注目を集めた。その衝撃が再び。finalが4年の開発期間をかけて作り上げた渾身のヘッドホン「D8000」が、いよいよ2017年11月30日に発売される。店頭想定売価は約39万円(税込)。これまでダイナミック型のヘッドホンを手がけてきた同社では初となる平面駆動型の製品だ。

ここでは、発表会で得た情報を踏まえながら「D8000」の特徴をくわしく見ていくとともに、音質インプレッションもお届けする。

finalの平面駆動型ヘッドホン「D8000」

finalの平面駆動型ヘッドホン「D8000」

空気の粘性を利用した低音域の出力を増した平面駆動型ドライバーユニットを採用

ダイナミック型ヘッドホンのドライバーユニットには主に2種類ある。振動板の形状によってドームタイプと平面タイプがあり、それぞれ音の傾向が異なる。ヘッドホンで一般的なドームタイプでは豊かな低音が楽しめるのが特徴的。いっぽうで平面タイプは、ドームタイプに比べて低音が弱いものの全体的にノイズが少なく中高音がきれいに聴こえるのが特徴となる。これは、ドームタイプの振動板が一点を中心に振幅して音を出すのに対し、平面タイプは振動板全面が均一に動き、余計な振動や共振が起きにくいため、歪みが発生しにくいからだ。

「D8000」は、後者の平面タイプ(平面駆動型)のドライバーユニット採用した製品だ。従来の平面駆動型のいいところはそのままに、弱点だった低音を補った。それがドライバーユニットに採用されるAFDS(Air Film Damping System)である。

AFDSを採用した平面駆動型ドライバーユニットの断面図。一般的な平面駆動型ドライバーにはない、パンチングメタルを振動板とマグネットの間に挟み込んでいる

AFDSでは、空気の粘性を使って振動板の動きをコントロールする。一般的な平面駆動型ドライバーにはない、パンチングメタルを振動板とマグネットの間に挟み込む。ここに空気の層が生じる。従来の平面駆動型では、振動板が大きくゆれる大音量のときや重低音のときなど、マグネットに振動板がぶつかるのを防ぐため、振動板自体を重くしてテンションをかけていた。すると振幅しにくくなり、これが低音の悪化につながっていたという。AFDSを使うことにより、振動板の厚みはドームタイプの振動板の25ミクロンの半分となる12ミクロンを実現。厚みを増すことや過剰なテンションをかけることなく、振動板の動きをコントロールしているという。

パンチングメタルには、小さな穴が無数に開いている。ステンレス板で、肉眼ではかろうじて確認できるほどの穴のサイズになっている。この穴の大きさや振動板やマグネットとの距離を最適化するのがかなり難しいそうだ

パンチングメタルと振動板との間にできた空気の層が振動板との衝突を防ぐ。これは下敷きを机の上に置いたときに一瞬ふわり浮くのと同じ性質“空気の粘性”を利用したものだそう

メンテナンスしやすいネジ止め構造で長く愛用できる

「D8000」のボディはアルミマグネシウム合金製の削り出し。見た目どおり頑丈で制振性も高いが、ぎりぎりまで軽量化されており、全体の重さは523gに抑えられている。平面駆動型では比較的重いが、クッション性のあるヘッドバンドやソフトな肌触りのイヤーパッドによって、つけていてもさほど重さは感じなかった。また、長く使えるようにするため、本体のパーツの多くをネジ止めにしており、壊れてもメンテナンスしやすい構造にしている。同社によれば、時計のように長く使ってほしいとのことだ。

ちなみに、ボディのコーティングは一眼レフカメラと似たマーブル調のもの。実際にカメラの塗装を手がけているドイツのメーカーに委託して仕上げたというこだわりぶりだ。

アルミマグネシウム合金製の切削ボディ。高精度で作られた制振性の高い作りだ

アルミマグネシウム合金製の切削ボディ。高精度で作られた制振性の高い作りだ

適度なクッション性があるヘッドバンド。側圧の締め付けはやや硬めに思えた

適度なクッション性があるヘッドバンド。側圧の締め付けはやや硬めに思えた

ドライバー単体で十分な低音を出せるため通気性のよいイヤーパッドが使われている。長時間つけていてもムレにくい

ケーブルは着脱可能な左右両出しタイプ。回転式のロック機構を備える

ケーブルは着脱可能な左右両出しタイプ。回転式のロック機構を備える

ケーブルは標準で2種類付属する。左が3.5mmステレオミニ(長さ1.5m)で、右が6.3mmの標準プラグ(長さ3m)

ケーブルは標準で2種類付属する。左が3.5mmステレオミニ(長さ1.5m)で、右が6.3mmの標準プラグ(長さ3m)

final初のアルミ削り出しのヘッドホンスタンドが付属するのもポイント

final初のアルミ削り出しのヘッドホンスタンドが付属するのもポイント

音質インプレッション

最後に「D8000」の音質インプレッションをお届けする。使用したプレーヤーはAstell&Kern「AK380」。音源は、DSDのほか、96kHz/32bit(または24bit)や192kHz/24bitのFLAC/WAV音源、CD音源などを用いた。

「D8000」の音の感じをひと言で表すならナチュラルトーンだ。平面駆動型ならではの綿密なディテールと空気感を持ちつつ、ドームタイプのダイナミック型に劣らない開放感と低音の量感も備えている。

高級なドームタイプのダイナミック型ヘッドホンと比べても、全体的にノイズ感が少なく、1音1音がより明瞭に描き出されている。また、そうした高解像度の音でありながら、長時間聴いても音が刺さるような感覚がなく、中高域もうるさく感じないのは、平面駆動型のドライバーの性能の高さなのだろう。みずみずしい演奏が印象的なヒラリー・ハーンの「バッハ:シャコンヌ」を聴いてみたが、全体的に透明感がより際立っており、和音の響きもよりフレッシュに聴こえてきた。高域の抜けのよさや音が広がっていく様子もよりリアルに感じられた。

気になる低音についても、アコースティック楽器の低音から電子楽器の重低音まで、かなり細かく鳴らし分けており、ボワついたり音が単調になることもなかった。上原ひろみの「Alive」を聴いてみたが、アンソニー・ジャクソンのベースのリアルさがすごい。AFDSを採用したドライバーユニットの効果だろうか、音の立ち上がりが早く、余韻も自然。解像度の高い音をキレよく鳴らし、6弦ベースの迫力もしっかりと伝わってくる。そして、サイモン・フィリップスが叩くドラムスは、豊かな音色で細かなニュアンスもよく表現している。特に平面駆動型ドライバーとしては、明らかに低音の鳴りが強く解像感も高い。

また、音楽スタジオで録音したプロの生演奏を収めたDSD音源を聴いてみたが、現場の緊張感や迫力、音の情報量をかなりの精度で再現していた。その現場の音を自宅で本格的に再現しようとすると、高級な据え置きオーディオ機器やスピーカーが必要で、置き方やルームチューニングにもこだわらないといけない。ところが本機では、そうした面倒もなく、非常にリアルかつ豊かなサウンドが目の前に広がってくる。これには正直驚かされた。

まとめ

「D8000」は約39万円という高いヘッドホンではあるが、素直にほしい音と思えた。その理由は、平面駆動型ならではのきれいな中高音にさらに磨きをかけたいっぽう、ドームタイプのダイナミック型に負けないほどの、開放感や低音の量感も備えたところにある。高級なドームタイプのダイナミック型ヘッドホンと平面駆動型ヘッドホンのいいとこどりしたといえば、わかりやすいかもしれない。現代の平面駆動型ドライバーというとナチュラルトーンの傾向が多い。本機もそうだが、聴きこんでいくとやや低音を強くしたようなチューニングが感じられる。その点では、あたたかみがある情熱的な音に仕上がっていると感じた。少し残念に思えたのは、この価格帯の製品でバランスケーブルが付属しない点だ。後日別売を予定しているそうだが、この性能なら価格を上乗せしても付属したほうがよかったと思う(標準ケーブルでも十分音質を楽しめるのだが・・・・・・)。試聴できる場所は限られているが、おそらくfinalが考える「原音に近い音」を、一度堪能してみてほしい。

銭袋秀明(編集部)

銭袋秀明(編集部)

編集部の平均体重を底上げしている下っ端部員。アキバをフィールドワークにする30代。2015年4月、某編集部から異動して価格.comマガジン編集部へ。今年こそ、結果にコミット!

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2017.11.22 更新
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