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高画質テレビの最終形?

今やテレビは4K超え!「8K」って何がスゴいの? 徹底解説


現在、40型を超える大画面テレビは4Kが主流だが、次世代の「8K」も見えてきた。日本で民生用の8Kテレビが登場したのは2017年末だが、その後2018年には8K衛星放送も始まり、徐々にではあるが製品数も増えてきている。

そして2020年、日本で開催される国際的スポーツの祭典では、多くの競技が8Kでも放送される見込みで、テレビメーカー各社は8Kテレビ投入に意欲満々。今年はまさに「8K元年」と言える年になりそうだ。この記事では、そんな8Kにまつわる基礎知識と具体的な楽しみ方までくわしく紹介する。

そもそも「8K」とは?

8K映像とは、横×縦の解像度が7680×4320画素を持つ映像のこと。この画質に対応する放送を8K放送、テレビ受像機を8Kテレビと呼ぶ。1000を1キロ(K)と数え、横方向の解像度が約8000なので8Kというわけだ。ちなみに、4Kは3840×2160で4K、フルハイビジョン(フルHD)は1920×1080で2Kと表せる。縦×横の画素数で比較すれば、8Kは4Kの4倍、2Kの16倍にあたる。同じ画素密度なら、8Kは2Kの16倍も広い面積の映像を、逆に面積が同じなら16倍緻密な表現ができるというわけだ。

フルHD(2K)、4K、8Kの画質差イメージ

フルHD(2K)、4K、8Kの画質差イメージ

8Kは高画質テレビの最終形?

フルHD(2K)から4Kへ、4Kから8Kへ。「次は16K?」「またテレビを買い替えなくてはならないの?」と消費者からは疑問の声が上がりそうだが、現時点では8Kが究極かつ最終形と考えられている。「8K」に決定した経緯も知っておくと、理解が進むだろう。そもそも8Kは、NHKが「スーパーハイビジョン」(SHV)の名称で、放送システムや受像機関連の開発をリードし、それが世界規格として認められるに至ったものだ。その流れをざっくり説明していこう。

「8K」の根本の考えは、家庭における「究極の映像の臨場感」を実現すること。言い換えると、本物の景色と見間違えるほどのリアリティをめざして研究がスタートした。まず、映像は大きいほど没入感が高まるのは想像に難くないが、一般家庭で実現できる映像サイズには限界があるので、最適な最小限のサイズを探る必要がある。

実は、映像サイズが視野の水平100°を上回ると、人間が映像から得られる臨場感は飽和する(=最大限に近いところに達する)という結果が、NHK技研の研究でわかっている。まず、この水平視野100°で映像を見るときの適正距離が、画面の高さの0.75倍(0.75H)の距離であるとされている。その0.75Hの距離で、視力1.0の人が画素の粗さを知覚せずスムーズに映像視聴するためには、映像の水平画素数を約8,000にする必要があることがわかり、ここから「8K」という解像度が導き出されたという経緯がある。

画面を見る水平視野が100°を超えたところで人間が映像から得る臨場感は最大限に達する=飽和するそう。この水平視野100°での適正視距離が、画面の高さの0.75倍(0.75H)の距離なのだとか。ところが、画面にあまりに近づきすぎると、今度は画素の粗さを知覚してしまう。そこで導き出されたのが、画面から0.75Hの距離でも画素の粗さがわからない「8K」という解像度

元々、フルHD(2K)映像の適正視距離は、画面の高さの3倍(3H)とされてきた。これは、視力1.0の人間が、フルHD(2K)映像の画素のツブツブを知覚しないでキレイに見ることができる距離ということ。8Kの画素サイズはフルHD(2K)の4分の1。単純計算で3H÷4=0.75Hなので、8K映像の適正視距離は、画面の高さの0.75倍(0.75H)の距離になる。たとえば、8Kテレビの画面サイズを100インチ(16:9)と仮定した場合、画面の高さは約120cmなので、最小限の適正視距離はその0.75倍の90cmと計算できる

つまり簡単に言うと、仮に16K映像が出てきた場合、解像度から見た適正視距離はさらに縮まるが、そうなると水平視野が100°を超えるので、人間が知覚する臨場感は8K映像から得られるものとそんなに差はないだろうと推測されるわけだ。というわけで、一般家庭で8K以上の解像度は不必要と考えられていて、8Kが最終形になるのは間違いなさそうである。

参考までに、今後映像のリアリティを向上する軸は、「解像度」から「フレームレート」に移ると考えられており、8Kでは、現行放送最大の60コマ/秒の2倍にあたる120fps(1秒間に120コマ/120p)も規格に含まれている(備考:地上デジタル放送はインターレース方式の60コマ(60i)、4K放送はプログレッシブ方式の60コマ(60p))。

ちなみに、120fpsでは、映像の動きがより滑らかになり、動物の有機的な動きもリアルに感じられる。世界の各所で研究されているが、人間の知覚を基準にすると、フレームレートは240fps程度で飽和すると考えられている。その先の進化は、ホログラム技術などによる完全な立体テレビだろう。こちらも現在各所でさかんに研究が進められている。

8K放送を見るポイント

8Kテレビを最大限に活用するには、やはり8K放送を抜きには考えられない。テレビ放送の8K化は国策の一環で、着実に進んできた。数年前に立案された計画に照らすと、前倒しするほどの勢いだ。上述の通り、8Kの実用放送は2018年に開始され、2020年の東京五輪では多くの競技が8Kでも放送される予定となっている。

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8K実用放送は、BS(左旋)と110°CS(左旋)を用いる衛星放送で、視聴にはBS(左旋)と110°CS(左旋)が受信できるパラボラアンテナとチューナーが必要になる。ちなみに「左旋」とは、衛星放送で用いる円偏波のうち、左(反時計回り)に回転しながら進む電波のこと。従来の右旋と併用すれば、同じ周波数帯域で2倍の情報量が伝送でき、限りある電波帯域を有効活用できる。4K/8K化による情報量の増大を効率よくカバーするアイデアだ。

ちなみに、現在発売されているパラボラアンテナは原則左旋にも対応しているが、念のため、「4K/8K対応」を目印に確認しておくと安心だろう。

8K放送対応パラボラアンテナ製品例:マスプロ「BC45RL」

8K放送対応パラボラアンテナ製品例:マスプロ「BC45RL」

8K放送対応のチューナーを搭載したテレビや外付けチューナーは2018年に登場済みで、2020年にはさらに安価で扱いやすい製品が増えるのは間違いない。また、ケーブルテレビやインターネット網を通じた放送や再送信も検討されているので、こうした複数の手段が実現すれば、パラボラアンテナなしで8K放送を楽しめるようになる。

ちなみに、4K/8K化が進んでも、現在の地上/BS/110°CSデジタル放送は継続するので、視聴者は現在の放送を見続けていても問題ない。この点は、過去のアナログ地上波を停波して地上デジタル放送に完全移行したいわゆる「地デジ化」のときとは大きく異なる。

8Kテレビのラインアップをチェック!

8Kテレビ製品は今夏に向けて新モデルが増え、一気に選択肢が広がった。ここからは、価格.comで販売されているラインアップを紹介していこう。

まず、この分野で先行していたのはシャープ「AQUOS」シリーズで、2020年2月10日時点で60型〜80型の液晶タイプ7モデルを発売中。特に「AX1」シリーズは8Kチューナーを内蔵していて、画面サイズを60型・70型・80型から選ぶことができる。60型に至っては価格35万円前後(2020年2月時点)からラインアップされており、数年前に予測されていた数百万円に比べると身近だ。安価とは言えないが、現実的な水準に到達している。

シャープ「AQUOS 8T-C60AX1」

シャープ「AQUOS 8T-C60AX1」

もうひとつ、8Kテレビを日本で展開しているメーカーはLGで、モデル名は「OLED88Z9PJA」。LG得意の有機ELタイプで高画質をうたい、画面も88型と超大型だ。価格も350万円前後とダイナミックだが、貴重な選択肢と言える。なお8Kチューナーは内蔵していないが、HDMI 2.1準拠のHDMI端子を搭載しており、対応8Kチューナーが登場すればケーブル1本で接続できるようになるだろう。

LG「OLED88Z9PJA」

LG「OLED88Z9PJA」

そして、2020年3月7日に発売を予定しているのがソニー「BRAVIA KJ-85Z9H」だ。8Kチューナーを内蔵した85型の液晶タイプで、実売価格は220万円程度になる模様。新開発の8Kプロセッサー「X1 Ultimate」や独自の音響技術「Acoustic Multi-Audio」を搭載したプレミアムモデルとなる。

ソニー「BRAVIA KJ-85Z9H」

ソニー「BRAVIA KJ-85Z9H」

そのほかにも、年頭のCES 2020では各社が8Kテレビを披露していることから、この春にさらに数モデルの発表があるのは間違いなさそうな雰囲気だ。今夏までには8Kテレビが店頭に出揃って、選択の幅が増えるに違いない。

なかでも注目したいのは、TCLやハイセンスといった中国メーカーの液晶モデル。最新の液晶パネル製造設備は75型サイズのパネルを効率よく製造することができ、リーズナブルな価格が期待できる。海外メーカーの場合はチューナーの開発に時間がかかる可能性もあるが、東芝のテレビ事業を傘下に置くハイセンスであれば、チューナー内蔵タイプの登場も間違いないだろう(東芝は製品化の時期を未定としつつも、2019年11月にLGの88型有機パネルを使ったチューナー内蔵モデルを発表済み)。

ストリーミングサービスも8Kに積極取り組み

8Kテレビを手に入れても、8Kコンテンツがなければ価値は半減。8Kチューナーを内蔵しているテレビや8Kチューナーを手に入れても、8K撮影した作品やコンテンツが増えるにはしばらく時間がかかりそうだ。

そんな心配を吹き飛ばしてくれそうなのが、NetflixやAmazonビデオといった動画ストリーミングサービスの8K対応。すでに8K撮影を行っているというウワサもあり、8Kで配信される日も近そうだ。ちなみにYouTubeでは、すでに8Kコンテンツを8K画質でストリーミング配信中。8K出力が可能なプレーヤーや、同機能を内蔵したテレビも近いうちに登場すると思われる。

HDMIも8K伝送に対応!

さらに2020年1月7日、HDMIの規格を策定するHDMI Forumは、8KをサポートするHDMI 2.1の認証プログラムを発表した。認証を受けたケーブルは2020年前半に発売される見込みで、HDMIケーブル1本による8K伝送が可能になる。

HDMI 2.1に対応するHDMIケーブルであれば、1本で8K伝送可能に(画像はHDMI Forum公式サイトより:https://www.hdmi.org/spec/hdmi2_1

ちなみに、2019年末に発売を開始したLGのOLED88Z9PJAは、8K入力が可能なHDMI 2.1端子を備えている。今後発売されるテレビやチューナー製品は、HDMIケーブル1本で8K映像のやり取りができる仕様になるだろう。

8Kの画質って実際どう?

筆者はシャープやLGの事業所で、すでに何度か8K画質による映像視聴を体験しているが、4Kとはまたケタ違いの雰囲気を感じる。8K撮影されたデモ映像が特別に高画質ということもあるが、言葉で表現すると“空気の存在”が感じられ、映像に自然な奥行がともなってくるのだ。これは、2Kではほぼ不可能な表現で、4Kでも困難だと感じていた部分である。

つまり8Kの高解像度は、単に繊細な図柄のディテール再現性にすぐれるだけでなく、普段我々が気付かないうちに肉眼で得ている認知的な情報まで伝える力を持っているようだ。もちろん、映像を至近距離で見ても画素のツブツブは感じにくく、映像の見たい部分に近寄ればクローズアップできるのも、リアル8Kならではの世界。スポーツ中継なら、観客席からスタジアムを望むようなアングルだと、その場に出向いたような臨場感が味わえる。小さく映る選手の表情や細かな筋肉の躍動感も、迫力と感動の度合いをアップしてくれるだろう。

ほか、8Kの高精細を生かせば番組表など表示の一覧性も高まるなど、情報表示装置としても有利で、いちど慣れると後戻りできなくなりそうだ。

また2Kや4Kから8Kへのアップコンバートも、各社が超解像技術をAIで編み出したアルゴリズムで進化させている。ネイティブ8Kコンテンツが豊富になるまで、アップコンバートによる高精細&高画質化性能が、8Kテレビを選ぶ際の重要なポイントのひとつになるだろう。

8K関連の心配

高解像度化は順当な進化と言えるが、テレビの8K化においては、課題も少なくない。たとえば、コンテンツ制作側は撮影カメラや編集機材を8K対応品に入れ替えなくてはならず、放送局は送出や伝送に関わる機材を更新する必要があり、その費用は莫大だ。在京キー局、大都市圏の準キー局以外が8Kに対応するには、しばらく時間がかかるだろう。

受信者側も、現行の地上デジタル放送が視聴できる状態では、わざわざ追加コストを支払って8K視聴する視聴者は限られるだろう。なお放送インフラの問題は、高速インターネット通信や5G通信網でカバーする検討も進んでいるので、解決は時間の問題と見る向きもある。

また、コンテンツ提供側も8Kを意識した制作が必要になる。従来の2Kや4Kとは異なり、8Kは視野をすっぽり覆うほどの大画面を至近距離で視聴することを前提としているので、それに応じた「撮り方」も、視聴体験を大きく左右する。動画酔いを防止するには、遠景で撮影しパンニングを多用しないなど、ガイドライン作りも必要になるだろう。人物を映し出す際は、等身大を超えないくらいが自然に思う。2Kや4Kテレビが混在する状況で、どこまで8Kに適した撮り方が行えるかはまだ不透明だ。

さいごに

現状では「8K不要論」が各所から飛び出しそうだが、高解像度化は、慣れてしまうと戻れないもの。特に最近では、身近なスマートフォン画面が高精細化傾向にあり、多くの人々が日々そのメリットを体験しているので、理解も得やすくなっていると思う。インフラ整備やコンテンツ制作など、8K化に向けては課題も残るが、いずれ定着して「究極のテレビ」になるのは間違いなさそうだ。

それに2020年中には8Kテレビが急速に身近な価格になって、コンテンツも増えそうな気配である。HDMIの8K伝送規格も定まり、新規格に対応したテレビ、チューナー、そしてケーブルなら将来にわたって使い続けられる安心感も出てきた。2020年にテレビを買うなら、8Kを検討に含めるとよいだろう。

鴻池賢三

鴻池賢三

オーディオ・ビジュアル評論家として活躍する傍ら、スマート家電グランプリ(KGP)審査員、家電製品総合アドバイザーの肩書きを持ち、家電の賢い選び方&使いこなし術を発信中。

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