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真空管の基礎知識から注目製品紹介まで

小型で実力派なイマドキ真空管アンプ6選! 真空管の魅力を徹底解説

真空管というデバイスを使ったオーディオ製品の人気は、今でも根強い。その大きな魅力はズバリ、独特の音のよさ。デジタル全盛の今でも「温かみと音楽性がある音がする」と、オーディオファンや音楽ファンから注目されているのだ。それに最近では、ガラス管の中に光が灯るレトロなデザインなど、インテリア性の面から真空管搭載製品に惹き付けられる人も多いようだ。

ここでは、今でもファンが多い真空管オーディオの基礎知識と魅力をおさらいしつつ、入門機としてもぴったりのコンパクトで実力派な真空管オーディオアンプ6製品をご紹介しよう。

<目次>
1.真空管って何?
2.真空管を使ったオーディオの魅力
3.トランジスターアンプと真空管アンプの音の違い
4.小型&実力派な“イマドキ”真空管アンプ6選

1.真空管って何?

真空管とは、内部を真空にした筒状のガラス管に電極を封入した電子部品のこと(厳密にはセラミックや金属製のものもある)。電極を高温にして電子を放出し、電界や磁界により制御して、増幅、整流、発振、検波、変調などを行う。

真空管は1904年にイギリスで発明され、1945年頃から1960年代にかけて家電を含む多くの電気製品に使用されて活躍した。しかし後年、同様の機能を持つ小型の半導体「トランジスター」が発明され、真空管はその役割をトランジスターに譲ることになる。

ガラス管の中が真空になっているので真空管と呼ぶ。中にある電極の数により、二極管、三極管、四極管などの種類がある

2.真空管を使ったオーディオの魅力

つまり広義にとらえるなら、真空管はすでに過去のデバイスとなるわけだが、それがなぜ今もオーディオ製品に用いられているかといえば、先述した通りその音に魅力があるからだ。真空管を使うオーディオ製品の代表格が真空管アンプだが、真空管による増幅はディープなオーディオマニアも一目置く、音楽性豊かな表現をかなえるのである。また、オーディオだけでなくギターアンプなどにもいまだに採用されており、音楽制作の世界でも支持が厚い。

昔ながらのレコードを鳴らすのはもちろん……、

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最新のハイレゾ音源を真空管アンプで鳴らすのもイイ

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真空管には、大きさや内部構造などにバラエティがあり、数多くの種類が存在する。オーディオ用に使われる真空管を大きさで分類すると、ミニチュア管と言われる小型の「MT管」から「GT管」、そして大型のアンプに使用される「ST管」などがある。そして、それぞれの大きさごとに整流管、電圧増幅管、出力管という種類があり、さらに直熱管と傍熱管に分かれる。

そして真空管は、形式は同じでも、製造された年代や内部に使われているパーツ、製造の精度によって大きく音が変わる。だから、マニアの間ではビンテージ品の人気も高い。

たとえば、オーディオ用真空管として「最高の出力管」との呼び声も高い「300B」と言われる直熱三極管は、1936年頃にアメリカのウエスタンエレクトリック社が映画の音声再生用に開発した製品で、オリジナルモデルは今でもかなりの高値で取り引きされている。このように、管の違いによるプレミア性や音質の違いを楽しめるのも、真空管オーディオの醍醐味なのだ。

真空管にはさまざまな種類がある。製造年代によって音質も違うので、ビンテージ品を探す楽しみもある

真空管にはさまざまな種類がある。製造年代によって音質も違うので、ビンテージ品を探す楽しみもある

3.トランジスターアンプと真空管アンプの音の違い

さて、トランジスターアンプと真空管アンプの音質的な違いが気になる方も多いだろうから、簡単に説明しておこう。

高域から低域までの周波数特性や歪み、出力などの物理的なスペックはトランジスターアンプのほうがすぐれている。そのいっぽう、真空管アンプは聴感上の音楽性が高いのがアドバンテージ。ボーカルや生楽器の音に色気があり、音楽を感情豊かに表現してくれると言われている。

実際に真空管アンプのサウンドを聴いてみると、音楽を表現する際にもっとも大切な中域が充実しているし、色ツヤもよく、歌モノの場合はボーカルにスピード感もあるのがわかる。トランジスター式のアンプとは異なる音楽性と“味”を実感できるのだ。

トランジスターアンプとは違った音楽性を感じると、真空管にハマってしまう

トランジスターアンプとは違った音楽性を感じると、真空管にハマってしまう

このような音になる理由として推測できるのが、真空管独自の特性だ。たとえば信号の歪みをオシロスコープという測定機で測ると、トランジスターアンプは鋭いギザギザの波形になるが、真空管アンプは波形が丸い。つまり真空管アンプはその歪みが耳に付きにくいということなのだ。また、スピーカーの駆動力を示す数値のダンピングファクターの違いや、微小な電力の入力に強いことなどが、真空管の音がよくなる理由として推測できる。

現在は、トランジスターと真空管を両方搭載したハイブリッド型の真空管アンプも多く発売されている。そのほか、回路の一部に真空管を用いて音質チューニングを行ったタイプの製品も存在する。

なお真空管アンプは出力が高くない。そこで使いこなしのコツとしては、組み合わせるスピーカーに能率の高いモデルを選ぶこと(真空管とトランジスターを両方搭載するハイブリッド型の場合は、基本問題ない)

4.入門者にもこだわり派にも! 小型&実力派な“イマドキ”真空管アンプ6選

音質的な魅力に富んだ真空管オーディオだが、注目したいのは、真空管自体は決して高いものではないということ(先述の通り、歴史的に人気のあるビンテージ管は高い)。高級オーディオのイメージがある方も多いかもしれないが、実は価格帯を抑えた真空管アンプの入門機もたくさんあって、購入しやすいのだ。

真空管アンプの入門モデルは、ミニチュア(MT)管をはじめとして小型の真空管を採用したものが多く、筐体サイズがコンパクトで設置しやすいことも魅力。さらに、最近はポータブルヘッドホンアンプなどのポータブル機器に採用されている例もある。音楽リスニングスタイルが多様化する今、真空管オーディオ製品のラインアップもバラエティ豊かに広がっているのだ。

最近は、デスクトップ環境で使用できるコンパクトなモデルや、ポータブル環境でヘッドホンと組み合わせて楽しめる真空管アンプも登場している

それでは以下より、機能が多様化している“イマドキ仕様”の真空管オーディオアンプをご紹介していこう。価格.comで購入できるラインアップの中から、コンパクトサイズでカジュアルに使える6機種をピックアップした。「真空管アンプ入門機」としての面もありつつ、同時にこだわりユーザーも楽しめる実力派の製品ばかりだ。それぞれ簡単な音質チェックもしてみたので、ぜひ参照されたい。

4-1. トライオード「Ruby」

日本の真空管アンプメーカーを代表するトライオードが手がける、コンパクトな真空管プリメインアンプ。使用真空管は「6BQ5」2本と「12AX7」2本で、それらが立ち並ぶ堂々とした外観は、同社の上位モデルと共通のデザインアイデンティティを持つ。音質にすぐれた純A級方式によるスピーカー駆動を実現し、出力は3W+3W(8Ω)を確保。インターフェイスには2系統のアナログ入力とスピーカー出力のほか、6BQ5真空管から出力される6.3mm標準ヘッドホン端子も備えている。

実は本機、発売当初は女性やビギナー向けのモデルとして企画されたが、ミニマムで美しいデザインと音のよさが評価され、コアなオーディオマニアにも売れまくったという逸話を持つ。それを物語るように音質は非常に高く、クセがなく躍動感があって、とにかく音楽性が高い。

現在、トライオードは世界的な真空管アンプメーカーとして模造品さえ登場するほどの人気メーカーとなっている。本製品は5万円台のカジュアルラインながら、そんな同社のエッセンスが詰まった完成度の高い1台だ。

4-2. Carot One「ERNESTOLO 50k EX」

イタリア・ナポリ生まれのオーディオブランド、Carot One(キャロットワン)から登場したコンパクトなプリメインアンプ。オレンジ色のアルミ製筐体とクリアガラスブロックによって構成されたボディの美しさ、76(幅)×75(高さ)×150(奥行)mm(突起物含む)という小型サイズが特徴だ。

プリアンプ部の真空管には「ECC 802 SG」を、オペアンプ部には「OPA 2604 AP」を採用した、真空管とトランジスターのハイブリッド構成もポイント。出力は25W+25W(4Ω)/12W+12W(8Ω)を確保している。さらに、高級オーディオで採用例の多いアルミ削り出しボディや、電源と信号の基板をセパレートにしたプリアンプ部などの音質重視設計も魅力。インターフェイスにはRCA入力と3.5mmステレオミニ入力を備え、バナナプラグ対応のスピーカー出力のほかに、3.5mmステレオミニヘッドホン端子も備えている。

そのサウンドは、なめらかな音調を持ちながら同時に躍動感もあって、オレンジ色の美しいボディとシンクロするビビッド感を持つ。音質的にもデザイン的にも、イタリアのオーディオ製品といった面持ちがある。

4-3. iFi Audio「iFi micro iTube2」

おどろくほどハイスペックな小型DACや、斬新なアクセサリーを多数手がけ、デジタルオーディオの世界で存在感を高めているイギリスのオーディオブランド、iFi Audio。「iFi micro iTube2」は、製品カテゴリーでいうと「真空管プリアンプ/バッファアンプ」と呼べるもの。手持ちのオーディオ機器に追加すれば、手軽に真空管の音を加味して楽しめるようになるというユニークな製品だ。インターフェイスはRCA入出力を1系統ずつ装備する。

内部には音質に定評のある真空管「General Electric 5670」を採用しており、真空管アンプ部の音色/音調を3つのモードから選択して調整することもできる。モードを「Push-Pull」にして、筆者が使用しているネットワークプレーヤーとアンプの間に挟む形でその効果を試してみると、真空管らしい艶やかな音色と躍動感がオーディオシステムに付与され、音楽が生き生きと鳴った。

さらに低域をブーストする「X BASS+」や音の立体感を向上させる「3Dホログラフィック+」を使えば、音を可変させることもできる。そんな遊び心もうれしい製品で、真空管の音を手軽かつ高音質に楽しみたいこだわり派ユーザーにはうってつけの1台である。

4-4. Sound Warrior「SWD-TA10」

長野県に本拠地を置く音響・通信機器の研究・製造メーカー、城下工業の自社ブランド「Sound Warrior」(サウンドウォーリア)による、真空管バッファ付きパワーアンプ。デスクトップで高音質環境を構築できる、コンパクトな1台だ。

「12AU7」真空管をプリアンプ部に用い、パワーアンプ部は小型でもパワーが出せるD級アンプで駆動するハイブリッド構成が特徴で、15W×15Wの出力を確保。インターフェイスはRCA入力を1系統備え、スピーカー出力のほかに、3.5mmステレオミニヘッドホン端子と、アクティブスピーカー専用の3.5mmステレオミニ出力も装備している。小型ボディに機能性のあるディメンションが魅力だ。

そのサウンドはとにかく低域がパワフル。真空管らしい音調とトランジスターアンプのスピーカー駆動力を両立させていて、音楽性の高さと躍動感ある音が印象的だ。なお、ヘッドホンアンプ部には専用トランスを用いる構成で、ヘッドホンリスニングでも高い満足感を得られる。

4-5. エレキット「TU-HP03」

自作のロボットキットやプログラミング学習ができる基盤など、ユニークな製品を多数ラインアップするイーケイジャパンのブランド“エレキット”。そんな同社が、手軽に真空管の音を楽しめるようにと開発したポータブルヘッドホンアンプだ。

この「TU-HP03」は、もともと人気モデルだった「TU-HP01」をブラッシュアップした機種で、小型で発熱の少ないサブミニチュア管「Raytheon:6418」を搭載し、回路構成の見直しにより残留ノイズを徹底的に低減させている。本体重量は190gと軽量で、コンパクトな筐体は持ち運びにすぐれており、単3形乾電池4本で駆動する手軽さも魅力。スマートフォンやDAP(デジタル・オーディオ・プレーヤー)とヘッドホンの間に使用すれば、ポータブル環境で手軽に真空管のサウンドを楽しめるようになる。

価格は安いがその出音は印象的で、聞き疲れがないのにしっかりと音楽性も高めている。出力部に用いられているオペアンプを交換することで音色や音調を変えることも可能で、音質的なコストパフォーマンスが高い。

4-6. ALO audio「Continental V5 」

米国の著名ケーブルデザイナー、ケン・ボール氏が率いるオーディオブランド、ALO audioが手がけた真空管搭載のポータブルヘッドホンアンプ。入力段のクラスA動作の回路にフィリップス製「6111」真空管を、出力段にはAB級のトランジスターアンプを搭載するハイブリッド構成が特徴だ。

アルミニウムブロックを機械加工して放熱にも考慮されたコンパクトなケースに、充電式のリチウムポリマーバッテリーを搭載。USBバスパワーで駆動するので、外出先でも手軽に真空管の音を楽しむことができる。インターフェイスは、3.5mmステレオミニ入出力を1系統ずつ装備するシンプルな構成としている。

そのサウンドは、どのジャンルの音源を聴いてもなめらかな中高域と引き締まった低域が印象的で、高域から低域までのレンジも広い。真空管の持つ高い音楽性と、トランジスターアンプの持つヘッドホン駆動力を両立させている1台と言える。ちなみに、同ブランドの本拠地であるアメリカのオレゴン州で、1台1台ていねいにハンドメイドされているのもポイント。

まとめ

いかがだっただろうか? トランジスターとはまた違った真空管のサウンドを体験すると、音楽を聴く感動の値が大きく上がり、見事にハマッてしまう。それに、ガラス管の中に光が灯る独特のアナログチックな美しさも、真空管アンプならではだ。今も多くのオーディオファンをトリコにする真空管オーディオの魅力に、ぜひ注目していただきたい。

土方久明

土方久明

ハイレゾやストリーミングなど、デジタルオーディオ界の第一人者。テクノロジスト集団・チームラボのコンピューター/ネットワークエンジニアを経て、ハイエンドオーディオやカーAVの評論家として活躍中。

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