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スマホ/タブレットだけでなくオーディオ機器にも拡大

ますます採用が進む「USB Type-C」はオーディオインターフェイスとして使えるのか?

USB Type-Cでどう変わる?スマホ/タブレットのオーディオ環境

 Type-C採用機器の増加にともない、両端がType-C端子のケーブルで接続するケースが増えそうだ

Type-C採用機器の増加にともない、両端がType-C端子のケーブルで接続するケースが増えそうだ

USBという接続規格は、デジタルオーディオでは重要な存在だ。特にPC/スマートフォンを再生機器として利用する場合、USBなしには語れない。その端子は長い間、データの送り出し側は平たい「Type-A」、受け側となるコンポーネント機器は正方形の「Type-B」、スマートフォンなど小型機器は「Micro-B」と端子の棲み分けが成立していたが、「Type-C」(USB-Cとも呼ばれる)の登場により状況が変化している。

きっかけは、Type-C端子を搭載したスマートフォン/タブレットの登場だ。これらの機器は、ハイレゾ対応アプリを追加すれば高品質再生が可能となり、USB DAC/ポータブルアンプとの接続性も考慮されている。Android OS搭載機に関していえば、ハイレゾ再生を売りにする「ONKYO HF Player」などのアプリを用意してもいいし、端末標準装備のプレイヤーアプリを利用してもいい。ケーブルの片側がType-Cに変更されたことを除けば、接続方法はMicro-Bのときと変わらない。

しかし、Type-Cで明確に変わったことが1つある。これまでのUSB端子は、形状を見れば"両端のどちらがホスト(命令する側)でどちらがデバイス(命令を受ける側)か"の関係が一目でわかったが、Type-Cにはそれがない。USBの普及にともない、Micro-Bなどデバイス用端子でもホストとして動作できるよう「OTG(On The Go)」規格が設けられたこともあり、Type-C端子はホスト/デバイスどちらの端子としても利用できるのだ。

今後登場するUSB DACなどの機器にもType-C端子の採用が進むはずで、実際に「Astell&Kern KANN」や「A&ultima SP1000」、「Fiio M3」や「SHANLING M0」といった製品が発売されている。両端がType-Cのケーブルでホスト(タブレットやスマートフォン)とデバイス(USB DACやDAP)をつなぐ時代が近づきつつあるのだ。

今回のテストで大活躍したAndroidタブレット「NEC LAVIE Tab E TE410/JAW」。Type-C端子以外にも、Dolby ATMOS対応などオーディオ機能が充実している

独自にUSBドライバーを持つアプリでは、このようなダイアログが表示される(画面はONKYO HF Player)

独自にUSBドライバーを持つアプリでは、このようなダイアログが表示される(画面はONKYO HF Player)

Type-C採用USBオーディオ機器をチェック

前述したとおり、Type-C端子にはホストとデバイスの区別がない。それでは実際のところ、スマートフォン/タブレットとType-C対応USB DACを接続するとどうなるのだろう? 10.1型Androidタブレット「NEC LAVIE Tab E TE410/JAW」とUSB入出力可能な小型DAP「SHANLING M0」、そしてPD 60W/USB 3.0対応ケーブルcheero「Type-C to Type-C(CHE-250)」を利用し、検証してみた。

M0のUSB入力を「DAC」に設定してからLAVIE Tab Eに接続したところ(アプリはONKYO HF Player)、M0の画面には48kHz/24bitの信号を入力していることを示す「48Khz/24Bit」が現れた。しかし、3.5mm端子に挿したヘッドホンから音は出ず、OS標準装備のドライバーを使用するSpotifyやAmazon Musicにアプリを切り替えても状況は変わらない。

SHANLING M0とType-C to Type-C USBケーブルで接続した

SHANLING M0とType-C to Type-C USBケーブルで接続した

問題箇所をはっきりさせるために、TEAC「HA-P5」(入力はMicro-B端子となるため変換にApple「USB-C Digital AV Multiport Adapter」を使用)を接続したが、こちらはDSD 5.6MHzまで支障なく再生できた。送り出し側を「Xperia XZ3」に変更しても状況が同じだったことからすると、M0のUSB DACとしての動作に問題があるようだ。

念のためTEAC HA-P5と接続してみたが、まったく支障なく動作した

念のためTEAC HA-P5と接続してみたが、まったく支障なく動作した

Type-C端子を入力専用に使うオーディオ機器も試してみた。チョイスしたのは、ポタフェス2018冬の伊藤屋国際ブースに参考出品されていたKZ製の「USB Type-Cリケーブル(製品名未定)」。端子部分に192kHz/24bitのDAC/ヘッドホンチップを内蔵、2ピンコネクターに接続されたBA×1・ダイナミック×1のハイブリッドイヤホン「KZ ZST」で聴くという製品だ。ケーブル部分は一般的な0.75mm/2ピンのイヤホン用リケーブルとしても使えるという汎用性も考慮し、最終開発版を検証用として借りた。

こちらは、LAVIE Tab Eに挿すだけであっけなく認識。「Spotify」や「Amazon Music」などAndroid OS標準のUSBドライバーを使用するアプリについては、3.5mm端子に接続するイヤホンと特に変わりなく利用できた。ONKYO HF Playerなど一部のアプリは、USB Type-Cリケーブルを接続すると「アプリ『○○』にUSBデバイスへのアクセスを許可しますか?」というダイアログが現れるが、これはアプリ独自のUSBドライバーを利用することの確認だ。

このような振る舞いの理由は、かつてAndroid OSがUSBオーディオを正式サポートしていなかったことによる。ソニーやサムスンなど一部のメーカーは、Android OSに独自の拡張を施しUSBオーディオ対応を実現していたが、そうしないメーカーが多かった。そこで「ONKYO HF Player」など音質/オーディオ関連機能を重視した再生アプリは、USBオーディオドライバーを同梱することを選択した。USBオーディオをサポートしないAndroid端末でもUSB DACを利用できるのは、そのためだ。

いっぽう、Android 5以降はOSレベルでUSBオーディオがサポートされたため、メーカーを問わずUSB DACを利用できるようになった。だからここ数年で発売されたAndroid端末は、USB Audio Classに対応したUSBオーディオ機器でありさえすれば、どの音楽再生アプリからでも音を出せる。ただし、OSレベルでサポートされるのは48kHz/16bitまでで、それ以上の情報量を求める場合は独自のUSBオーディオドライバーを同梱したアプリを利用するしかない。

ところで、この「USB Type-Cリケーブル+KZ ZST」の組み合わせはある意味衝撃的だ。KZ ZSTに付属の3.5mm端子ケーブルと比較すると明らかに音の鮮度が向上し、レスポンスも鋭さを増す。一般的なリケーブルとは異なるサウンドキャラクタの変わりようで、特に左右のセパレーションと低域のスピード感はもはや別次元と言っていい。そもそもKZ ZSTは高いパフォーマンスのイヤホンだが、気になっていた低域がややモタつくところの解消は大収穫といえる。

念のため、M0に「USB Type-Cリケーブル+KZ ZST」を接続(今度はM0が出力側)してみたところ、画面に一瞬「音声デバイスの接続」と現れたあとに音声が出力された。使いかたは一般的なイヤホンと同じで、ボリュームコントロールを含め違いはない。3.5mm端子ケーブルと比較したときのサウンドキャラクタの変化もLAVIE Tab Eと同様、スピード感と鋭いレスポンスはまるで別のイヤホンだ。実際に再生されるサンプリングレート/ビット深度は不明だが、DSD 5.6MHzなどハイレゾ音源を一通り聴いたかぎり、聴感上の性能はすこぶる良好と言っていい。

USB Type-Cリケーブル+KZ ZSTを接続したところ。96kHzで出力されていることがわかる

USB Type-Cリケーブル+KZ ZSTを接続したところ。96kHzで出力されていることがわかる

ONKYO HF Playerには44.1/48/96kHz対応のUSB DACとして認識された

ONKYO HF Playerには44.1/48/96kHz対応のUSB DACとして認識された

SHANLING M0でも「USB Type-Cリケーブル+KZ ZST」が問題なく利用できた

SHANLING M0でも「USB Type-Cリケーブル+KZ ZST」が問題なく利用できた

まとめ 〜2019年はブレイク必至か?〜

Type-C端子を採用したオーディオ機器は少数派だが、再生機器として使うスマートフォン/タブレットでの採用がますます進むことを考慮すれば、状況が変化することは確実だろう。これまでUSB DACといえば据え置きタイプはB端子、ポータブルタイプはMicro-Bを採用することが一般的だったが、特に後者はType-Cに移行する可能性が高い。

今回のテストでは、「Type-C to Type-Cケーブルで接続するUSB DAC」と「Type-C端子内にDAC/アンプICを搭載したイヤホン(リケーブル)」という2種類の製品を試したが、Type-Cという端子の特性を生かせるのは後者だ。上下の向きを気にせず端子を差し込むことができ、しかもアプリを選べばハイレゾ音源の再生も視野に入る。Type-C端子部分に内蔵される小型DAC/アンプICの性能がさらに向上すれば、Hi-Fi再生視点での注目度もより高まるはずだ。

Apple製品でType-C対応が本格化する可能性が高いことにも留意したい。すでにMacBookなどノート型Macでは数年前からType-Cの採用が始まり、2018年はLightningを置き換える形でiPad Proに採用された。今後iPhoneにも採用されれば、市場の大きさからしてType-C端子採用のイヤホンが増えることは確実だろう。

課題としては、ホスト側の環境整備が挙げられる。基本的には、USB Audio Class対応製品であれば(Android OS/iOSとも)接続するだけでデバイス側の機器が認識されるはずだが、ハイレゾ再生にはアプリ収録のドライバーが存在しなければならない。普及のためには、OSレベルでのサポート強化が必須だ。この点は楽観的に臨むしかないものの、iPad Proのこともあり2019年は期待して待ちたい。

海上 忍

海上 忍

IT/AVコラムニスト、AV機器アワード「VGP」審査員。macOSやLinuxなどUNIX系OSに精通し、執筆やアプリ開発で四半世紀以上の経験を持つ。最近はAI/IoT/クラウド方面にも興味津々。

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