特別企画
Anker「PowerHouse」を使って実際に検証

大容量ポータブル電源をオーディオに活用したら音がよくなる!?

Anker「PowerHouse

先日、アンカー・ジャパンが川崎市と「市民利便性や防災力の向上に向けた通信環境の拡充・電源確保に関する協定」を締結し、川崎市内5か所にWi-Fiアクセスポイントを整備するとともに、特別災害対策セット「防災POWER BAG」とポータブル電源「PowerHouse」をそれぞれ12個ずつ提供した。

これは、端的にいえば、川崎市内にある帰宅困難者一時滞在施設に対してアンカー・ジャパンが自社製品等を無償提供した、ということなのだが、同じ川崎市民である筆者にとっては、とても現実味のある話に感じられた。

というのも、2011年の東日本大震災発生当日、川崎市では大規模な停電が発生し、復旧までかなりの時間がかかったからだ。その後も計画停電の地域に含まれ、電気のない生活の不自由さも体験することとなった。

もちろん、被災した人々に比べればなんてことはない話なのだが、停電すると日常生活に支障を来してしまうのも事実。いざというときのためにも、ここ1〜2年でかなりの大容量化が進み、選択肢も増えたポータブル電源を1台確保しておこうか、と考えたとき、ふと思いついた。もしかして、ポータブル電源ってオーディオ機器にも使えるかも!?

実は7年程前、価格comマガジンで「普通の電源と電気自動車の電源、どちらが音がいい?」という記事を書かせてもらったことがある。三菱自動車「i-MiEV」から取り出した家庭用電源と、オーディオ機器を設置している仕事場の電源を比べ、どちらの方が音がいい? それとも変わらない?? というテストを行ってみたのだ。

7年程前に価格comマガジンで掲載した「普通の電源と電気自動車の電源、どちらが音がいい?」という比較記事

7年程前に価格comマガジンで掲載した「普通の電源と電気自動車の電源、どちらが音がいい?」という比較記事

結果は、インバーター(電気自動車内の直流電源を交流電源に変換する装置)ノイズが発生する電気自動車のほうが音が悪そう、という大方の予想を覆して、電気自動車のほうが圧倒的に音がいい、という結論となった。

これは、同じ電源ラインを家庭内はもちろん近所の家でも共有している一般電源に対して、電源供給するのはオーディオ機器のみという、とてもシンプルな電源回路構成のため有利になったのだろう(いま話題!?のマイ電柱も発想はこれに近い)。

もしかすると、ポータブル電源を活用することで、これに近いアドバンテージが享受できるかも、と考えたのだ。また、日常的にポータブル電源を活用することで、いざ災害発生というときにバッテリー切れだったり、最悪完全放電して使い物にならない、という事態も回避できるはず。

そこで、先ほど川崎市に提供されたアンカーのポータブル電源「PowerHouse」を借用して、テストを行ってみることにした。ポイントは3つ。

1.音が良くなるか否か
2.オーディオ機器の最大消費電量をまかないきれるか否か
3.どのくらいの時間、音楽を聴き続けることができるか

この3ポイントに注目して、試聴を行ってみた。

まずは、ポータブル電源「PowerHouse」の詳細について紹介していこう。

今回取材に使用した「PowerHouse」は、2016年6月に発売された大容量モバイルバッテリー製品。120,600mAh/434Whという大容量や、PowerIQ搭載のUSB電源だけでなく家庭用電源や12Vシガーソケット出力なども用意するため、モバイルバッテリーではなくポータブル電源と呼ばれている。

また、鉛蓄電池ではなくリチウムイオンバッテリーを採用することで、(一般的なポータブル電源に対して)大幅な軽量化と小型化を達成。サイズ約200(幅)×145(高さ)×65(奥行)mm、重さ約4.3kgという比較的コンパクトなサイズ感を実現している。

Ankerのポータブル電源「PowerHouse」。AC出力のほか、USB出力、12Vシガーソケット出力なども備えており、さまざまなシーンで活用できそう

本体は重さ約4.3kgとやや重いが、本体上部にキャリングハンドルが用意されており、可搬性は悪くない

本体は重さ約4.3kgとやや重いが、本体上部にキャリングハンドルが用意されており、可搬性は悪くない

加えて、BMS(バッテリーマネージメントシステム)が用意されておりで、電圧や温度を適切に管理することで、ショートを予防して高い安全性を確保。また、アクティブ方式のセル・バランシング(複数個の電池セルの残量を均一化する機能)を採用することで、エネルギー効率を最適化すると同時に、バッテリー寿命も長期化している、とアピールしている。

実際、「PowerHouse」は災害用としてだけではなく、日常用としてもかなり幅広く活用できるようになっている。例えばキャンプに持っていけば、ライトやBluetoothスピーカー、調理器具などの電源を確保することができて便利だし、特に車中泊する人にとってはエンジンを頻繁にかけなくても大丈夫になるので大いに重宝しそう。一般家庭でも、物置や作業小屋など、電源を引いていない場所で多くに役立ってくれることだろう。

このように、「PowerHouse」は機能性が重視される製品。それをオーディオの音質向上に使おうというのだから、本来の活用方法ではないのは事実だ。だから、音質がよくならなくても誰にも文句をいわれる筋合いはない。筋合いはないのだが、過去の経験から大いに期待はしている! しているぞ! ということで、さっそくオーディオ機器に接続してみることにした。

まず、最初にテストしたのが自称「ミニマムシアター」ルーム内にあるステレオシステム。プリアンプはサンバレー「SV-192A/D」、パワーアンプはChord「SPM1400」×2、スピーカーはパイオニアのプロモニターTADシリーズのユニット「TD-4001」+「TL-1601B」という大柄なシステムだ。これにアナログプレーヤーTien Audio「TT3+Viroa」とフォノイコライザーiFI-Audio「iPhono2」を組み合わせ、早速試聴をスタートした。

ちなみに、各機器は壁コンセントから直接電源を取っているため、いちど外し、サエク「TAP MATE」にすべてをつなぎ直して、素早く一般電源と「PowerHouse」が切り替えられるようにした。

サエクのオーディオ向け電源タップと組み合わせて検証を行った

サエクのオーディオ向け電源タップと組み合わせて検証を行った

まずは、普通の電源から。普段は系統を分けているアンプ系とプレーヤー系を1つのタップに集中したせいか、ハムノイズが出てしまったが、対策を行って試聴をスタート。iFI-Audio「iPurifier AC」などのノイズ対策機器が外れてしまったためか、普段よりもSN感が低く、音場の広がりも微妙に狭い気がするものの、とりあえずはこの音を基準として、いくつかのLPを再生してサウンドの状況をチェックする。

続いて、電源ケーブルを「PowerHouse」に差し替えてみる。すると、さっそくトラブルが。各オーディオ機器の電源をオンにすると、電流量が多すぎてしまったようで、BMSが作動し電源がオフになってしまった。

そこで、1台1台30秒程の間隔を空けて電源をオンにしていったところ、BMSは作動せず使い続けることが可能となった。そこで試聴をしてみると、明らかにSN感が違う。先ほど“普段よりSN感が〜”とコメントしたが、こちらは普段よりも明らかにSN感が良くなり、一段とダイレクトなサウンドが楽しめるようになった。定位もしっかりしているし、音場も左右に大きく広がっている。これはいい。

しかしながら、LP片面、30分も聴いているとまたBMSが作動して電源がオフになってしまった。そこで、「PowerHouse」の画面に表示されるパーセンテージの減りをストップウォッチで計測してみたところ、おおよそ1分30秒で1%の減りだった。

ストップウォッチでバッテリーの減るスピードを計測。おおよそ1分30秒で1%のスピード。さすがにこの構成だと、オーディオをじっくり楽しむといった感じでは使えなさそうだ

しばらくテストを続けるとまたBMSが作動してしまったのであくまでも計算上だが、このシステムだと90分ほど音楽を聴き続けられるはず。計算上の消費電力は、300Whとなった。しかしながら、ここまで大きな消費電力だと、BMSが作動してしまうようだ。また、90分しか音楽を聴き続けられないのは、あまり現実的ではないかもしれない。

そこで、別のオーディオシステムに繋ぎ直し、試してみることにした。第2のシステムは、USB DACのティアック「UD-503」と、プリメインアンプのCambridge Audio「CXA80」を組み合わせてPCオーディオシステム。スピーカーは、ELAC「BS312」を組み合わせてみた。ちなみに、こちらのシステムでもストップウオッチ計測を行ってみたところ、おおよそ4分強で1%の減りとなり、消費電力は65Whほど、400分以上音楽を聴き続けられる計算となった。こちらの数値であれば、「PowerHouse」を、組み合わせて活用するのも現実的だろう。

さすがにポータブル電源で本格的なオーディオシステムを稼働するには無理があったので、今度はもう少しミニマムなPCオーディオシステムで検証を実施

こちらの環境だと、バッテリーの減りは4分強で1%程度。バッテリーが満充電なら6時間以上楽しめる計算だ

こちらの環境だと、バッテリーの減りは4分強で1%程度。バッテリーが満充電なら6時間以上楽しめる計算だ

肝心の音質だが、こちらでも顕著な違いを感じることができた。ノイズ感が低減されるのだろう、音のフォーカスが高まり、定位感もよくなっている。おかげで、スピーカーの置き場所を意識させない、より自然な音場を楽しむことができた。解像感が変わったりするわけではないのだが、ベールが1枚外れたかのようにダイナミック感が高まってくれるため、迫力が増しただけでなく、一段とリアルな音になったように感じられるのだ。オーディオ的に、このグレードアップは大いに魅力的といえる。

いっぽうで、完全でない部分もあった。音のキレやダイレクト感はよくなるのだが、高域に小さなピークがあるようにも感じる。何か対策はないか、と先のiFI-Audio「iPurifier AC」やトランス電源をつないでみたりしたのだが、「PowerHouse」ならではのキレのよさ、鮮度感の高さが失われてしまう。もう少し、研究が必要だろう。

電源タップをそのまま接続した状態だと高域あたりに多少違和感がでる。いっぽうで、iFI-Audio「iPurifier AC」やトランス電源をつなぐとキレのよさ、鮮度感の高さが失われしまう。なんとも悩ましい状況だ

このように、「PowerHouse」をオーディオ機器の電源部に利用することで、手軽に音質を向上させることができることが確認できた。特に、電源まわりの対策を行っていない人は、ぜひ一度試して欲しい。明らかな効果が体験できるはずだ。

毎日毎晩ホームオーディオシステムで音楽を聴いている人だったら「PowerHouse」自身の劣化が気になるところだが、適度な利用はいざというときのための正常動作にも繋がってくれるはず。普段はオーディオ用に、そしていざというときの災害用にと、2つの利用目的を踏まえ、ポータブル電源の導入を検討してみてはいかがだろうか。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどをはじめ幅広いジャンルで活躍するAVライター。ハイレゾ音源についても造詣が深く、アニソンレーベルのスーパーバイザーを務めるほか、TBSテレビ開運音楽堂「KAIUNハイレゾ」コーナーではアドバイザーとしてレギュラー出演している。

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