レビュー
ノーマル/パイアンプ/パラレルBTLをじっくり聴き比べ

多機能だけじゃない!音質へのこだわりがすごいマランツのミニコンポ「M-CR612」

使い勝手のよいコンパクトなサイズの一体型オーディオシステムとして、根強い人気を保ち続けているミニコンポ。これまでは、設置の簡単さ、分かりやすい操作性、そして手頃な価格などが重要視されてきた傾向のある製品ジャンルだったが、ここ数年は音質もデザインも相当にこだわった製品がいくつも登場してきており、それらが売り上げ台数の上位を占めることが多くなってきている。そんな、こだわり派の代表格といえるのが、マランツから4月に発売されたミニコンポ「M-CR612」だ。

マランツ「M-CR612」

こちらの製品、2015年の発売以降30か月以上の長きにわたって売り上げナンバー1を記録した「M-CR611」の後継モデルとなっていて、他の製品とは一線を画す、徹底したこだわりが盛り込まれているのが特徴だ。

ミニコンポといえばCDやAM/FMラジオを聴くもの、といったイメージが強いかもしれないが、「M-CR612」はそれに加えて、WiFiやBluetoothなどの無線接続機能も用意。スマートフォンから簡単手軽に音楽再生ができるほか、独自のHEOSテクノロジーによって、Amazon Prime MusicやAmazon Music Unlimited、AWA、Spotifyなどの音楽ストリーミングサービスも楽しむことができる。さらに、AirPlay 2やAmazon Alexaの音声コントロールにも対応。NASやUSBメモリーからハイレゾ音源(5.6MHzまでのDSDと192kHz/24bitまでのリニアPCM)再生することができるなど、幅広いコンテンツを楽しむことができる。

有線LANや無線LAN、Bluetoothを内蔵しており、スマートフォンに保存した音源はもちろん、音楽ストリーミングサービスの提供する膨大な数のライブラリーにもアクセスできる

背面のUSB端子に音源の入ったUSBメモリーなどを刺して直接再生することもできる

背面のUSB端子に音源の入ったUSBメモリーなどを刺して直接再生することもできる

とはいえ、「M-CR612」最大の特長といえば、やはり音質に対するこだわりだろう。単体コンポーネントのSACDプレーヤー「SA-12」と同様の超低位相雑音クロックを投入してデジタル回路のより高精度な動作を実現したほか、「PM-10」や「PM-12」などの技術を生かしたパワーアンプ周辺回路の設計見直し、パワーアンプ専用電源回路など、すべてのパートにおいてミニコンポとは思えないほどの徹底した音質向上が行われている。

基板のパーツレイアウトを含め、細部まで徹底的に音質にこだわった設計がなされている

基板のパーツレイアウトを含め、細部まで徹底的に音質にこだわった設計がなされている

ミニコンポとは思えないという部分、ということでさらに注目したいのが4chパワーアンプの搭載だ。もともと「M-CR612」の背面には4ペアのスピーカーターミナルが用意されていて、それぞれに独立したパワーアンプをレイアウト。4スピーカー(2ペア)接続やバイアンプ(ツイーターとウーハーで個別にスピーカーターミナルが用意されている製品向けの接続方法)再生が行えるようになっている。それだけではない、パワーアンプ2系統をひとつのスピーカー(のターミナル)に接続する「パラレルBTLドライブ」機能も用意。こちらを活用することで、ダンピングファクター(アンプのスピーカー駆動力の指標となる数値)は、通常に比べて約2倍に向上するという。しかも、もともと「M-CR612」のパワーアンプ回路は、1chにつき2つのパワーアンプを用いるBTLドライブ配置が採用されているので、正確には全8ch(!)ものパワーアンプが搭載されている。これを最終的に2chにまでまとめてスピーカー駆動力と音質をかせごうというのだから、どれだけ音質とパワーにこだわっているかが憶測できるだろう。

AとBの2つに分かれたスピーカーターミナル

AとBの2つに分かれたスピーカーターミナル

2つのスピーカーターミナルを組み合わせることで、ノーマル(BTL)やパイアンプ、パラレルBTLといった駆動方式に対応している

さて、スペックだけ見ていては製品の本質は分からない。ということで、実際に「M-CR612」を借用して、そのサウンドを確認してみた。なお、今回の試聴でスピーカーはB&W「707S2」を組み合わせている。試聴音源は、ハイレゾ音源をメインに使用した。

試聴にはB&W「707S2」を組み合わせた

試聴にはB&W「707S2」を組み合わせた

「707S2」はバイワイヤリング接続に対応している

「707S2」はバイワイヤリング接続に対応している

まずは普通の接続というべきか、パワーアンプ2ch分の接続(4ch中2chは未接続の状態)から。

なかなか元気よい、生き生きとしたサウンドが楽しめる。ボーカルはほんのちょっとハスキーだが、基本的な音色はニュートラル志向というか、とても自然なサウンドキャラクターを持ち合わせている。いっぽう、広がり感はまずまずで、ボーカルやエレキギターなど、センター寄りのフロントラインの印象がが強く感じられる傾向も。音場的にはまずまず、それほど大きな広がり感はないが、デスクトップで使うには悪くない。ちなみに、「607」は決して鳴りにくいスピーカーではないが、実力のすべてがこのセッティングで発揮されているかといわれると、否、だ。

マランツ「M-CR612」をじっくり試聴

マランツ「M-CR612」をじっくり試聴

続いて、1つのスピーカーに2つのパワーアンプを接続する「パラレルBTLドライブ」を試してみた。すると突然、サウンドフィールドが倍以上の広がりとなり、奥行き感も生まれた。同時に、細やかな表現もしっかりと伝わってくるようになり、楽器の音色が格段にリアルに感じられるようになった。おかけで、ボーカルも歌い方のニュアンスや感情の込め方が素直に伝わってくるようになる。低域も、押し出し感の強い、パワフルな印象へと生まれ変わっている。まさにこれぞ、「707S2」が本来の実力を発揮したサウンドなのだろう。「M-CR612」の特性のよさや駆動力の高さが、「707S2」ならではのキレのよいサウンドを引き出してくれている。

さらに、「707S2」に2本のスピーカーケーブルを繋ぐ、パイアンプ接続も試してみた。こちらは基本的に「パラレルBTLドライブ」の印象に近いものの、高域が寄りピュアな印象となり、低域も幾分フォーカス感が高まってくれたように感じる。両者のどちらを選ぶかは好みの問題かもしれないが、「707S2」の場合はスピーカーがバイワイヤ対応であること、実際のサウンドもほんの少しピュアさが高まることから、バイアンプ接続のほうがオススメだ。とはいえ、「パラレルBTLドライブ」はかなり“使える”し、スピーカー駆動力の高さも持ち合わせているので、手持ちのスピーカーとの相性の心配をする必要はないといっていい。スピーカーの実力を生かし切ってくれる実力を持つという点だけでも、大いに魅力的に感じられる。

バイアンプ接続はパラレルBTLドライブに近い印象だ

バイアンプ接続はパラレルBTLドライブに近い印象だ

加えて、HEOSアプリによってスマートフォンから手軽な操作が行えること(音楽プレーヤー機能も持ち合わせているのでとても扱いやすかった)や、マランツらしい個性的な外観デザインなど、音質以外にも沢山の魅力を持ち合わせている、素晴らしい製品だ。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどをはじめ幅広いジャンルで活躍するAVライター。ハイレゾ音源についても造詣が深く、アニソンレーベルのスーパーバイザーを務めるほか、TBSテレビ開運音楽堂「KAIUNハイレゾ」コーナーではアドバイザーとしてレギュラー出演している。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
「価格.comマガジン」プレゼントマンデー
ページトップへ戻る