レビュー
ケーブルアダプターでカスタムIEMも完全ワイヤレス化

好みのイヤホンに交換できるFOSTEX初の完全ワイヤレス「TM2」が面白い

FOSTEX「TM2」

FOSTEX「TM2」

FOSTEX初となる完全ワイヤレスイヤホン「TM2」は、かなり特別な製品となっている。というのも、耳掛け型の本体を持つ完全ワイヤレスイヤホン、というデザインだけでも他に類のない特徴的なスタイルなのに、MMCX端子を採用することでイヤホン本体が外れ、さまざまな(MMCX端子採用の)イヤホンに交換できるのだ。しかも、端子部分もショートケーブル化されており、FitEar端子やカスタムIEMでよく使われる2pin端子のアダプターもオプションで用意。こちらを交換することでさらに多くのイヤホンで「TM2」を活用することができるのだ。この懐の深さは、もう驚くべきだろう。リケーブル製品ならともかく、きちんとしたBluetoothワイヤレス製品、完全ワイヤレスイヤホン製品が、(保証なしとはいえ)他社製イヤホンの使用を認めてくれるなんて、大変ありがたい限りだ。

イヤホン部分と通信機能やバッテリーを内蔵した本体部分、それらをつなげるショートケーブルアダプターで構成されており、イヤホン部分を自分好みにカスタマイズできるのが最大の特徴だ

ではさっそく、「TM2」についてのディテールを見ていこう。外観は先に述べたとおりこちらの製品、耳掛け型の本体デザインを持つ完全ワイヤレスイヤホンで、本体の大きさを巧みに活用して、操作系はタッチセンサーとマルチボタンの両方が採用されている。FOSTEXロゴのあるあたりに配置されたタッチセンサーは、音量調整(左右ともに上下スライド)と早送り/コマ送り操作(長押し)が行え、マルチボタンは音楽再生/通話操作(1回押し)、早送り/コマ送り操作(2回押し)が行えるようになっている。

実際に試してみたが、タッチセンサーの上下スライドで音量が簡単に調整できるのはなかなか便利だし、左右2つずつの操作場所となっているため、比較的的確な操作が行えた。タッチセンサーの反応も悪くない。逆に、曲送りしようと思って音量を上げてしまう誤操作などが発生しにくいため、とても扱いやすく感じた。よく考えられている操作系だと思う。唯一、音量調整の段階がやや幅広いため、その間にもうひとつくらい階調が欲しいところではある。現在、それほど不満があるわけではないが、もしファームウェアのアップデート等で改善できるのなら、先々にでも行なって欲しいところだ。

耳掛け型の本体デザインとなっており、装着するとこんな感じだ

耳掛け型の本体デザインとなっており、装着するとこんな感じだ

タッチセンサーとマルチボタンの2つの操作方法が用意されている

タッチセンサーとマルチボタンの2つの操作方法が用意されている

いっぽう、イヤホン本体の内部には最新のトレンドをうまく取り込んだパッケージがなされている。まず、Bluetoothチップセットには人気のQualcomm社製「QCC3026」を搭載。Bluetooth 5.0対応の安定した接続環境を実現しているほか、TWS+にも対応しており、最大で10時間ほどの連続再生を行うことが可能となっている。また、コーデックもSBCはもちろんのこと、aptXやAACにも対応しているため、より良質なサウンドを楽しむことができる。さらに、IPX5の防滴機能を持つなど、汗や突然の雨などにもほぼ安心だ。

しかしながら、製品を色々と眺めているうちに1点だけ疑問が浮かんだ。というのは、専用ケースにバッテリーが内蔵されていないことだ。ケースは外部の電源から本体に充電する機能のみで、ケースそのものからは(バッテリー非搭載のため)充電することができない。この頃のケースはバッテリー搭載が当たり前なので、ちょっと目に付いたのかもしれないが、一応本体だけでも約10時間の連続再生が可能となっているので、それほど不満に思うことはないだろう。どうしても気になる、という人は大きさの近いモバイルバッテリーを用意して接続しておく、というのはいかがだろうか。ちょっと試してみたところ、かなり分厚くなってしまったが、まあ、持ち運びで使えないことはなさそうだった。

本体の薄型化と防水性を担保するために、専用ケースとは独自の接点で充電する形になっているのだが、ケース自体にバッテリーは内蔵されておらず、ケースに充電ケーブルをつないで充電する形となっている

ケースについてはもうひとつ要望がある。これは、FOSTEXにとって見当違いな要望になってしまうのだが、ケース内にカスタムIEMなど大型のシェルを持つイヤホンが入らない(蓋が閉じない)のだ。本来付属しているイヤホンが、6mmドライバー搭載のかなり小型なタイプのため、そちらではまったく問題ないのだが、さらにもうひと工夫、配慮をしてもらえると大変嬉しかった。場合によっては、バッテリー内蔵&イヤホンスペース広めの追加オプションケースがあってもよいかもしれない。少なくとも、個人的には欲しいと思う。

厚みのあるカスタムIEMは専用ケースに収納できないのが難点だ

厚みのあるカスタムIEMは専用ケースに収納できないのが難点だ

さて、「TM2」最大の特徴となる、付け替え可能なショートケーブルは、標準装着のMMCXタイプに加えて、FitEar 2pin タイプ、カスタムIEM 2pinタイプが別売オプションとして用意されている。色々なイヤホンと接続を試みてみたが、JVCやfinalなど、スタンダードなMMCXコネクターを採用しているメーカーはほぼ大丈夫だった。Westone、センサフォニックスなどのカスタムIEMも問題なく接続可能。なかでも、コネクター部が本体内に入り込むセンサフォニックスが大丈夫なのはありがたかった。

MMCXタイプの付属ケーブルのほか、カスタム2pinやFitEar2pinタイプもオプションで用意

MMCXタイプの付属ケーブルのほか、カスタム2pinやFitEar2pinタイプもオプションで用意

MMCXタイプはJVCやfinalのイヤホンで試してみたが、問題なく装着できた

MMCXタイプはJVCやfinalのイヤホンで試してみたが、問題なく装着できた

MMCX端子が独特の位置に配置されているセンサフォニックスにも問題なく装着できたのは個人的に大きな収穫だった

また、FitEar用は同ブランドカスタムIEM、ユニバーサルIEMともにすべてOK。ケースには収まらないが、使用中はまったく問題ない。最後、カスタムIEM 2pinタイプだけは多少注意が必要だった。UniqueMelodyなどスタンダードなデザインのものく問題ないが、qdcやUltimate Earsの旧コネクターなど(イヤホン側のメス端子が飛び出しているタイプ)は、耐久性に問題が発生しそう。こういった製品では、活用しないことを推奨したい。

ケースには入らないものの、FitEarはカスタムIEM、ユニバーサルIEMともに問題なく装着できた

ケースには入らないものの、FitEarはカスタムIEM、ユニバーサルIEMともに問題なく装着できた

カスタム2pinはイヤホン側の形状により、装着した際に端子部分に負荷がかかる場合があるので、あらかじめイヤホン側の形状を確認することをおすすめする

もうひとつ、気になっていることがある。現在、「TM2」専用となるスマートフォン用アプリを用意中とのことで、こちらによって外音取り込み設定や5バンドイコライザー調整、ボイスアシスタント呼び出しなど、さまざまな機能を活用することができるようになるという。こちらの完成も楽しみだ。

さて、肝心のサウンドについてレビューしよう。当然、本来のイヤホン本体でのサウンドを聴いてみる。意外とできがいい、良質なサウンド。中高域は鮮明で、低域は必要充分な量感を持ち合わせ、重心の落ち着いた、それでいて勢いのあるサウンドを聴かせてくれる。ユニークなのが、当然といえば当然だが、FOSTEXらしいというべきか、モニターライクな音色傾向を持ち合わせていることだ。鮮明で正確、それでいて何処かの帯域が悪目立ちすることなく、バランスのよい音を聴かせてくれる。さすがに長時間聴き続けるのは疲れそうだが、正確さをしっかり追求した「TM2」の音色傾向は、とても貴重だ。

続いて、イヤホンを色々と交換して試聴を行ってみた。注目なのが、イヤホンそれぞれのよさを素直に発揮させてくれる、なかなかに良質なアンプの存在だ。JVC「SOLIDEGE 01 inner HA-FD01」やAcoustune「HS1670SS」は、キレのよい鮮明なサウンドを聴かせてくれ、FitEar「EST Custom」は、本来の特徴である自然な音色とリアルな表現をしっかりと感じさせてくれる。正直、Bluetoothワイヤレスでここまでの音質を楽しめるのは驚くばかり。

もちろん、Bluetoothワイヤレスにありがちなザラッとしたノイズ感が陰に見え隠れするし、何よりも今回試聴したイヤホン製品の実力は有線接続でこそ発揮される高いレベルを持ち合わせているが、その片鱗を感じさせてくれるのは御の字だろうし、さまざまなシチュエーションで愛用イヤホンが気軽に楽しめるようになるのはありがたい。とても趣味的だし、色々と役に立ってくれる、よくできた製品だ。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどをはじめ幅広いジャンルで活躍するAVライター。ハイレゾ音源についても造詣が深く、アニソンレーベルのスーパーバイザーを務めるほか、TBSテレビ開運音楽堂「KAIUNハイレゾ」コーナーではアドバイザーとしてレギュラー出演している。

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