レビュー
既存モデルとは異なる考え方によって作られた意欲作

音楽ジャンルに合わせて音作りを最適化! finalの新機軸イヤホン「B1」「B2」「B3」の魅力に迫る

finalからまったく新しいサウンドコンセプトを持つカナル型イヤホン、Bシリーズが発売された。こちらの製品、一気に3モデルが発売されたが、音質について既存モデルとは異なる考え方によって作られた意欲作となっている。そんなBシリーズについて、詳細を紹介していこうと思う。

音楽ジャンルに合わせて音作りを最適化! finalの新機軸イヤホン「B1」「B2」「B3」の魅力に迫る

既存モデルとは異なる考え方によって作られたBシリーズ

上質でていねいな作りの外観と、独自のアプローチによる音質追求によって人気を集めているジャパンブランド、final。近年は超弩級クラスのフラッグシップ・ヘッドホン「D8000」に注目が集まっているほか、装着しやすいスマートなイヤホン本体とコストパフォーマンスの高い音質によってヒット作となったEシリーズなど、幅広いユーザーに向けた展開を推し進めている。そんなfinalが、まったく新しいコンセプトのイヤホンシリーズを発売した。それが今回紹介する、Bシリーズだ。

こちらの製品、外観というか、イヤホン本体は先に登場したmakeシリーズと共通のデザインを採用している。実はこれ、もともとBシリーズ用として開発していたものを“メインテナンスしやすくてちょうどよい”ことからmakeシリーズに流用したのだという。

Bシリーズの筐体は、一般的な接着等ではなくネジによって固定されており、それを外すことで内部にアクセスすることができる。これは、もともとメーカーによる製品の修理がしやすくするための工夫だそうで、こういったシステムを採用することで、ユーザーにより長い間、製品を楽しみ続けてもらおうと意図したのだという。もちろん、修理は有償になるだろうが(またあくまでも“保証”ではなく“可能性”となるだろうが)、お気に入りの製品をより長い期間使い続けることができるのは嬉しいかぎり。ゆえに、Bシリーズではあくまでもメーカーのメインテナンス用となっていて、makeシリーズのようにユーザー自らが筐体を開けると保証外、メインテナンス対象外となってしまうので注意してほしい。

また、この筐体は装着感の高さにおいても注目のデザインとなっている。finalとしては希有なイヤーモニター型デザインを採用しているのだが、内側(耳側)のデザインに工夫を凝らし、イヤーピースだけでなく耳珠(耳穴すぐのところ)や耳甲介(耳のくぼみ部分)の3か所で支える構造を採用していて、確かなフィット感を実現している。

実際に装着してみると、装着感自体は軽快なのだけど、大きく動いたりずれたりすることがないためか、ちょっとした動きで耳からこぼれ落ちることがない。一般的にカナル型イヤホンはイヤーピースによるホールドに頼りきっているものが多いため、人によってはちょっとした運動などで外れてしまうことがあるが、このBシリーズに関しては、そういった不安は一切ない。なかなか、絶妙な筐体デザインといえるだろう。

finalでは珍しいイヤーモニター型のデザインを採用するBシリーズ。見た目はmakeシリーズそっくりだ

finalでは珍しいイヤーモニター型のデザインを採用するBシリーズ。見た目はmakeシリーズそっくりだ

とはいえ、Bシリーズ最大の特徴といえば、やはり音質の追求だろう。フラッグシップ・ヘッドホン「D8000」を作り上げるうえで得たノウハウや最新の音響技術を生かしつつ、そしてなによりも“何を持ってベストとするか”という、finalならではの音作りに対するこだわりを投入した製品となっているからだ。

なかでも、特にこだわったのが、音場とダイナミックレンジだという。メーカーの言葉を借りると、“音楽の音場感やダイナミックレンジとイヤホン・ヘッドホンの物理特性との関係”に着目したとのことで、クラシックとJポップで大きく異なる音場感やダイナミックレンジ表現をどう両立させるか、ドライバー選びから最終的なチューニングにいたるまで、さまざまな工夫を盛り込んでいったという。結果として、Bシリーズは今回3モデルがリリースされることとなった。それぞれ、微妙にサウンドキャラクターが異なっていて、“価格”ではなく“よく聴く楽曲のタイプ”や“音の好み”によってチョイスするという、なかなかに特徴的なラインアップになったという。

finalがBシリーズの発表会時に公開した同社イヤホン・ヘッドホンのプロット図。縦軸にダイナミックレンジの変化幅、横軸に解像感と音場感を配置したプロット図において、Bシリーズはそれぞれこういった配置になるそうだ

そういった製品性もあってか、Bシリーズは既存のfinal製品とは異なり、数字が大きいほど高額モデルではなく、あくまでも開発順として製品ナンバーが付けられている。他社でもごくたまに、そういった製品名の付け方をしている場合があるが、finalとしては初めてのトライだし、ドライバー構成よりも結果としての音を訴求したい、という意図にはマッチしているように思う。

ただし、どの番号がどんな特徴があるのかわかりづらい(人間は数字によるものの識別はしづらい傾向がある)ので、せめて枝番があれば、と思っていたところ、ふと実機を見ると「B1」の筐体サイド部分に「B1BDSSD」という文字が。おや、と思って「B2」を見てみると「B2BSSD」、「B3」には「B3B2SSD」と書かれている。メーカーに確認してみたところ、最初の2桁が製品名、次のアルファベットと数字がドライバー種類と数、次のSSが筐体素材を表すステンレススチール、最後のDがデタッチャブル、着脱式ケーブルの採用を表す記号のとのこと。

うん、わかりやすい。ちなみに、WEBサイトのスペック表で正式な型番を確認してみると、「B1」は「FI-B1BDSSD」となっていて、ハードウェア的な特徴は型番から一発でわかるようになっていた。また、3モデルで筐体のカラーも異なっているので、自分の気に入った製品がどれなのか、後でわからなくなってしまうことはなさそうだ。

さて、ここからは3モデルそれぞれの特徴を見ていこう。

まず「B1」だが、ドライバーはバランスド・アーマチュア型1基とダイナミック型1基を搭載したハイブリッド構成を採用。ステンレススチール筐体は、鏡面仕上げのローズゴールドカラーに彩られている。MMCXコネクターを採用した着脱式ケーブルは、潤工社と共同開発した1.2mのOFCシルバーコートケーブルが付属している。サウンドキャラクターについては、「音の近さや臨場感を特に重視したモデル。アニソンやJポップなどの楽曲に向いていて、スタジオエンジニアがイメージしたとおりの音のバランスが再生できる」とのこと。

final「B1」。ローズゴールドカラーのイヤホン本体とOFCシルバーコートケーブルの組み合わせ

final「B1」。ローズゴールドカラーのイヤホン本体とOFCシルバーコートケーブルの組み合わせ

続いて「B2」は、バランスド・アーマチュア型ドライバーを1基搭載したモデル。「音場感に富んだ録音に適したモデルで、クラシックやライブ録音向き」とアピールしている。ステンレススチール筐体はガンメタリックカラーに彩られ、着脱式ケーブルはやわらかくしなやかな被覆素材のOFCタイプが付属する。

final「B2」は、ガンメタリックカラーのイヤホン本体を採用。ケーブルはブラックカラーの被膜をまとったOFCケーブルだ

最後の「B3」は、バランスド・アーマチュア型ドライバーを2基搭載したモデルで、解像感を特に重視したサウンドチューニングが行われているようだ。ボディカラーはフロストシルバーを採用。着脱式ケーブルは「B1」と同じOFCシルバーコートケーブルが付属する。

final「B3」は、フロストシルバーカラーのイヤホン本体とOFCシルバーコートケーブルの組み合わせだ

final「B3」は、フロストシルバーカラーのイヤホン本体とOFCシルバーコートケーブルの組み合わせだ

また、共通の付属品として、イヤーピースは左右軸色違いのfinalオリジナルタイプと、タッチノイズを解消するイヤーフック、シリコン素材のイヤホンケース、さらにケーブル着脱時に利用するためのシリコンシート?などが同梱されている。付属品は、いたってシンプルといっていいだろう。

Bシリーズの付属品。イヤーピースはEタイプで、SS/S/M/L/LLの5サイズだ(うち1つは装着済み)

Bシリーズの付属品。イヤーピースはEタイプで、SS/S/M/L/LLの5サイズだ(うち1つは装着済み)

3モデル異なるサウンドキャラクター。それぞれの魅力や聴きどころは?

さて、肝心のサウンドをそれぞれチェックしてみよう。試聴にはQuestyle「QP2R」のほか、iBasso「DX220」+「A9アンプ」なども使用してみた。

まずは「B1」から。確かに、メーカーがアピールするとおりパワフルで迫力重視の楽曲に向いている印象が感じられた。MITH&ROIDを聴くと、ボーカルがグッと一歩前に出てきたかのような距離感の近さがあり、よりボーカルが際だったバランスとなっている。いっぽう、伴奏はあまり出しゃばらないものの、それなりの広がり感を持ち音量も絶妙なバランスに保たれているため、しっかりと脇役としての役割を果たしきれている。

音色傾向は、フォーカス重視のやや硬質な中高域を中心に据えつつ、聴き心地のよい低域がイヤミなく添えられているといったバランスにまとめ上げられている。もしかすると、エージングによってさらに2ドライバーのキャラクターが馴染んでくれるかもしれないが、エージング40時間ほどの現在の状態でも、歌声が明瞭で、かつ全体的には聴き心地のよいサウドに感じられる。確かにJポップやアニソンOP/EDと相性のよい、絶妙なサウンドチューニングといえる。

続いて「B2」を試聴する。「B1」に対して、まったく異なるキャラクターを持ち合わせているのが面白い。バランスド・アーマチュア型ドライバーならではの抑揚表現のきめ細やかさを生かしつつ、中域重視、ダイナミックレンジの幅広さ重視のサウンドに仕立てられている。

『ハクメイとミコチ』EDテーマ「Harvest Moon Night」を聴くと、ちょっとだけドライな歌声が魅力的に感じる。同時に、演奏のバランスが普段とはずいぶん異なっていて、ピアノやドラムなどは音がよく通る。いっぽう、弦楽器の表現はなかなか深みがあり、チェロはボディの響きが普段よりも豊かに感じられる。ヴァイオリンも強弱の表現が幅広く、演奏がより魅力的に感じられる。オススメはクラシック、なかでも構成楽器の少ない演奏がより楽しめそうだ。

また、音場重視というキャラクターもあってか、想像していた以上にTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDとの相性はなかなかよかった。ベストマッチは「打ち寄せられた忘却の残響に」だが、ボーカルの位置が近いD-selection「LAYon-theLINE」も細部までこだわった広がり感が充分に感じられ、なかなか楽しかった。

最後に「B3」を試聴。解像感にこだわったという製品だけあって、音質という切り口においては3モデル中いちばんの実力を示してくれた。ボーカルはフォーカスがかなり高いのにもかかわらず、ていねいでどことなくやさしさを感じる表現を持ち、ほんの少しドライ、ほんの少しハーモニーが強調された、とても魅力的な歌声を聴かせてくれる。ボーカル、演奏のバランスも自然で、さまざまなジャンルの音楽に対応できる懐の深さがある。

TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND「打ち寄せられた忘却の残響に」は、各楽器のバランスがよい(「B2」ほどソリッドではないものの)しっかりしたフォーカスと音の広がりを感じるバランスのよいサウンドを楽しませてくれた。アコースティック楽器も得意なので、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDの楽曲にも参加しているパーカッショニスト、よしうらけんじのアルバム「TONES」などは、多彩な楽器の音色が縦横無尽に繰り広げられる様子が臨場感高く楽しめた。

まとめ

このように、finalのBシリーズは、音質はもちろんのこと、抑揚や音場表現にもこだわって作られただけあって、表現力豊かなサウンドを楽しませてくれる魅力的な製品に仕上がっていた。なによりも、ボーカルの近さを意識したり、しっかりした定位感を求めたりなど、特徴的なサウンドチューニングは一聴の価値がある。チャンスがあれば、ぜひ皆さんもイベントや店頭などで試聴して、finalの新しい音楽リスニング提案を体験してみてほしい。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどをはじめ幅広いジャンルで活躍するAVライター。ハイレゾ音源についても造詣が深く、アニソンレーベルのスーパーバイザーを務めるほか、TBSテレビ開運音楽堂「KAIUNハイレゾ」コーナーではアドバイザーとしてレギュラー出演している。

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