マランツは同社製Hi-Fiコンポーネントの新モデルとして、ネットワーク対応のオーディオレシーバー「NR1200」を発表した。2019年10月中旬の発売を予定しており、メーカー希望小売価格は78,000円(税別)となる。
その特徴は、Hi-Fiステレオアンプでありつつ、テレビを含む多彩なソース機器とつながること。端的に言うと「薄型デザインの筐体にネットワーク機能とHDMI入出力を搭載したステレオアンプ」であり、マランツは本機を「リビングに置けるHi-Fi」と位置づけている。
「リビングにマルチチャンネル環境を作るのは難しいが、テレビの音質を向上させるため普通にステレオでアンプとスピーカーを接続したい」と思う方は多いのではないだろうか。NR1200は、そんなユーザーにうれしい選択肢となりそうな1台だ。また、先日スタートしたAmazonのハイレゾ/ロスレスストリーミングサービス「Amazon Music HD」に対応する点も見逃せない。以下より、その詳細をご紹介しよう。
はじめに、製品の基本スペックを見ていきたい。本体高さ105mmというスリムなサイズがまずポイントで、リビングのテレビラックに設置することができる。その内部には、定格出力75W/ch(8Ω,20Hz〜20kHz)のフルディスクリートパワーアンプを2基搭載する。
本体サイズは約440(幅)×105(高さ)×378(奥行き)mm。カラーはシルバーゴールドの1色展開となる。後述するが、HDMI端子5入力/1出力を備えているのが特徴だ。出力端子はスピーカーアウトやヘッドホン出力ほか、2.2chプリアウトも装備しており、外部パワーアンプを追加するといった使い方も可能
上記の写真を見てもわかる通り、NR1200は入力系統が豊富で、テレビやスマホ、ゲーム機、NAS、レコードプレーヤーなど、リビングにあるさまざまなソース機器とつながるのが魅力だ。
特に「リビング仕様」を実感できるのは、Hi-FiステレオアンプでありながらHDMI端子5入力/1出力を備えていること。いずれも最新のHDMI規格に準拠しており、4K/60p/BT.2020/HDCP 2.3をサポートする。HDMI出力はARCに対応するので、テレビ接続時にはテレビへの映像送信とテレビからの音声受信をHDMIケーブル1本でカバー。テレビ内蔵アプリで再生する音声もNR1200の高品位なサウンドで楽しめる。そのほか、USB入力や光デジタル/同軸デジタル入力も備え、アナログ入力は3系統+MM対応のフォノ入力を1系統装備する。
Blu-rayレコーダーやレコードプレーヤー、Apple TVなど、リビングにあるさまざまな機器とつながる
本体にはWi-Fiを内蔵しており、ネットワーク/USB経由で最大192kHz/24bit PCM、5.6MHz DSDの再生が可能。マランツとデノンの製品に共通するネットワーク連携機能「HEOS」テクノロジーもサポートし、NAS内音源の再生はもちろん、「Spotify」「Amazon Music」などのストリーミングサービスや、インターネットラジオの聴取も行える。Amazonがスタートしたばかりのハイレゾ/ロスレスストリーミングサービス「Amazon Music HD」にもしっかり対応している。
さらにAmazon Alexa対応スピーカーとの連携にも対応し、音声操作もできる。また、Bluetooth機能は音声入力に加えて、外部機器へのBluetooth音声出力にも対応。そのほか、AM/FMチューナーも内蔵するという全方位対応仕様だ。
「Amazon Music HD」は、初めて日本で公式に聴けるハイレゾストリーミングサービス。「HEOS」テクノロジーを搭載するマランツおよびデノンの製品全てが同サービスに対応したことが発表されており、NR1200ももちろんその中に入っている
なお「NR」という型番やその見た目でピンと来た方もいるかもしれないが、実は本機は、2019年5月に発表されたマランツの薄型AVアンプ「NR1710」をベースに開発されている(NR1710の詳細は以下記事を参照)。
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NR1710(左)とNR1200(右)の比較。フロントパネルのデザインは異なるが、シャーシ設計と本体サイズは基本同じ
NR1710は、発売以来、価格.comのAVアンプ製品カテゴリーでも売れ筋ランキング上位に入る大人気モデル。そのシャーシと基本設計を流用しながら、内部をHi-Fiアンプとしてブラッシュアップした点がNR1200のポイントだ。NR1710をベースにしたことでHDMIセレクターの実装を実現したのもそうだが、単にマルチチャンネル機能を省略したわけではなく、マランツの上位Hi-Fi製品に近づけた音質設計を施しているのがキモ。リビングに置く薄型のレシーバーという位置づけを考えると、かなりコストパフォーマンスの高い設計が投入されている。
たとえば電源部は、NR1710で7基のパワーアンプを駆動していたスペースを活用して、NR1200専用の大型トランスと6,800μFのカスタムブロックコンデンサーを配置。NR1710ではチャンネルあたりの定格出力が50Wだったところを、NR1200では75Wの高出力にアップさせた。
基盤も、電源部を中央にしてL/Rチャンネルを左右対称に配置するシンメトリカル・レイアウトを新しく採用することで、左右のクロストークを低減しセパレーションを高めている。DAC部にはNR1710と同じ8ch DAC「AK4458VN」を採用するが、NR1200ではこれをL/Rそれぞれで2ch(合計4ch分)を使用する「ダブルディファレンシャル構成」のDA変換回路とした。これにより、さらに高SN比で透明感のある空間表現を図っている。
NR1200はフルサイズのヒートシンクを搭載し、内部は2chフルディスクリート構成。パワーアンプ回路に電源供給するブロックコンデンサーには、6,800μFの専用カスタムコンデンサーを2基採用。電源トランスには大型のEIコアトランスを使用している。また、二次巻線は回路ごとに独立させ高周波ノイズの回り込みを低減。厳選したパーツをふんだんに使用し、徹底した音質チューニングを行った
パワーサプライを中央にして、L/Rチャンネルを左右対称に配置するシンメトリカル・レイアウト。マランツHi-Fi製品の上位モデルに近づけた設計がキモ
ネットワーク、USBなどデジタル回路への電源供給には専用トランスを配置して、アナログ回路との相互干渉を抑制
セットアップ時に、テレビと接続するなら「ディスプレイあり」、テレビと接続しないなら「ディスプレイなし」と2種類のセットアップ方法が選択できるのもNR1200ならでは
今回、マランツの試聴室で少しだけNR1200とNR1710をステレオ再生で聴き比べる機会があった。オーケストラ音源を聴いたのだが、さすが「マランツのHi-Fiアンプ」と位置付けられているだけあり、NR1200のほうが左右のセパレーションが高く、空間性や見通しのよさもあり、弦楽器の弦の太さや力強さなどもより感じられる印象だった。
とはいえ、NR1710も薄型AVアンプとして十分な音質クオリティを備えたモデル。リビングで映画鑑賞をメインに楽しむ予定であるとか、最初は2chからスタートしてゆくゆくはマルチに拡充することを前提にしているユーザーなら、もちろんNR1710のほうが適しているだろう。
近年、音源ソース機器が多様化したことによってニーズが生まれつつある、「リビングに置くアンプ」というイマドキのスタイル。「リビングのサウンドをどう楽しむか」で、マランツクオリティを担保する2モデルの選択肢があるというのは心強い。
オーディオ&ビジュアル専門サイトの記者/編集を経て価格.comマガジンへ。私生活はJ-POP好きで朝ドラウォッチャー、愛読書は月刊ムーで時計はセイコー5……と、なかなか趣味が一貫しないミーハーです。