レビュー
AKGを代表する定番モニターヘッドホン

“澪ホン”復活!? 再発売されたAKG「K701」を、オーストリア製と比較する

AKG「K701-Y3」

AKG「K701-Y3」

いやもう、こんなに嬉しいことはない。

いきなりそんなことをいわれても“何のことやら”と思うかもしれないが、実は先日、AKGモニターヘッドホンの名機である「K701」と「K240」が、ヒビノからY3(3年保証)モデルとして再び販売開始されたのだ。このふたつ、2018年までは一部の輸入業者などが取り扱っていたが、日本国内の正規輸入代理店から正式にカタログモデルとしてラインアップしてくれたのは喜ばしいかぎり。そこで今回は、2モデルのうち筆者が愛してやまない名機「K701」にフォーカスして、10年以上前に製造された手元にあるオーストリア産「K701」との違いをチェックしつつ、はたして魅力的なサウンドは健在なのか、レビューをお届けしようと思う。

細部のディティールが微妙に変更された「K701-Y3」

日本国内ではアニメ「けいおん!」の秋山澪が使用していた通称“澪ホン”としても有名な「K701」だが、世界では2005年の発売以来、大人気モデルとしてロングセラーを記録していた。その後、プロ用としては「K702」へと発展し、さらに「K712」へと進化。コンシューマー向けモデルとして「Q701」がリリースされるなど、いくつかのバリエーションが登場している。それでもオリジナル「K701」の人気は高く、生産拠点を中国に移して製造は続けられていたようだ。そしてこのたび、めでたくヒビノから3年保証の日本国内モデルとして再登場することとなった。重ね重ねになるが、いやはや、ありがたい限りである。

というのも、AKGブランドがサムスン傘下となったいま、いつまでこういった往年の名機が製造し続けられるのか、先が読めなくなっているからだ。気になるのだったら早めに入手しておいた方がよい、というのが正直なアドバイスだ。

とまあ、業界事情はさておき、再発売された「K701」のディテールについてチェックしていこうと思う。現在の「K701」は、オーストリアで製造されていた時代の「K701」とはいくつか異なる部分がある。まず、製造場所が中国に移されている。これにより、出荷前の個体品質チェック、サウンドチェックの内容が変わっているだろうが、それについては目に見えるものではなく、推論の範疇をでないため、今回は割愛させていただく。なお、製品パッケージはスリーブ付きの紙箱から、スリーブなし、「K550」系と同じ前面クリアで中身が見えるタイプに変更されている。いっぽう、後のバリエーションモデルで割愛された専用ヘッドホンスタンドは最新版でも引き続き付属されている。

スリーブ付きの紙箱から、クリアで中身が見えるタイプに変更された製品パッケージ。Y3(3年保証)モデルの赤いシールが目を引く

ヘッドホンスタンドは内部スポンジのキメなど微妙に異なってはいるが、ほとんど違いはないといっていい

ヘッドホンスタンドは内部スポンジのキメなど微妙に異なってはいるが、ほとんど違いはないといっていい

次に、外見からわかる違いが、ヘッドバンド部が“コブなし”になっていることだ。オーストリア製「K701」は(「Q701」や前期の「K702」も同様に)、頭の側に凸凹した滑り止めがあるが、これは賛否両論あったためか、最新版では割愛されている。付随して、表側も革素材が異なっていたり(最新版は合皮のようなつるっとした感触)AKGロゴの大きさが異なっていたりと、かなり印象は異なっている。

ヘッドバンドは大きく変更され、「K701」の初期モデルで採用された凹凸はなくなり、まっ平なデザインとなった

さらに、イヤーパッドも多少の変化が。表面がベロア生地で、反発が強め(元の形状に戻るのが早い)になった。内部スポンジの印象はそのままだが、フィルター素材や内部に配置されるスポンジフィルター、接続部のプラスティック素材などが微妙に異なっている。イヤーパッドは消耗品のため、オーストリア製であっても交換すれば同じものになってしまうが、このあたり、音質的な影響がどれほどあるのか気になるのは確かだ。もうひとつ、音質への影響という点では、最新版のハウジング部センターキャップを爪などで叩くと、ほんの少し金属的な“チン”という響きが乗っているのも気に掛かる。

内部のスポンジフィルターも微妙に変更されている

内部のスポンジフィルターも微妙に変更されている

そのほか、“Made in Austria”の文字がなくなっていたり、“Reference Headphones K701”の書体が違っていたり、ヘッドバンドのAKGロゴが微妙に変わっていたりもしているが、このあたりは製造工場が変わっての変化のかもしれない。気になってもオーストリア製の新品が入手できることは皆無なのだから、こればっかりは仕方がない。当時に比べてずいぶん手の届きやすくなった価格を考えると、許容範囲といえるばかりか、逆にありがたい限りだろう。

ハウジング部にプリントされている、“Reference Headphones K701”の書体が異なる

ハウジング部にプリントされている、“Reference Headphones K701”の書体が異なる

ヘッドバンドのAKGロゴも変更されていた

ヘッドバンドのAKGロゴも変更されていた

時代は変わっても「K701」の音は変わらない

さて、ここからは肝心のサウンドをチェックしてみよう。

残念ながら、手元のオーストリア製「K701」は着脱式コネクタ設置+バランスケーブル化の改造を行っているため、直接の比較は不可能。あくまでも参考程度に留めつつ(記憶を頼りに当時の音を思い出しつつ)、そのサウンドをチェックしてみることにした。ヘッドホンアンプは、AKG製の「K1500」を使用している。

ああ、時代は変わっても、細部のディテールが変化しても「K701」の音は変わらなかった。開放型という言葉では説明できないほど、大きくスムーズに広がる音場、擦過音が強め、しかしそれが気にならないほど煌びやかでつややかな高音が、音の持つエネルギーを感じさせ、結果として実際感のあるサウンドを聴かせてくれる。そんな「K701」ならでは、唯一無二のサウンドが、最新版でもしっかり楽しめるのだ。

あくまでも記憶との比較であって厳密でないのは恐縮するばかりだが、いちおうバランス接続に改造した「K701」と比較したところ、こちらはクオリティこそアップしているものの音色の傾向はほとんど変わらない。最新版は新品同様ということもあってか、高域の一部帯域に強調感があるが、これは使い続けていくとともに解消されていくだろう。新旧で音質的な変化はほぼない、といい切れる。

そう、「K701」ならではの、とても印象的なサウンドを聴かせてくれるのだ。特に、女性ボーカルの魅力的な声といったら。ややエコー成分を感じる、つややかな歌声は、その声に込められた感情がしっかりと伝わるし、何よりも聴いていて心地よい。ピアノの音も、跳ねるような、軽やかなタッチの演奏が楽しめる。

低域が弱い、といわれることが多い「K701」だが、改めて聴いてみると、決してそのようなことはない。必要な量感はしっかりと確保されているし、何よりもフォーカス感のある、良質な低音を持ち合わせているので、重心が低く厚みのあるボーカルを聴かせてくれるし、ベースの演奏もキレがよく、演奏も高いグルーヴ感を感じる。

なお、参考までにと手元の「Q701」や「K712」とも聴き比べてみたが、「Q701」はほんのちょっと中域寄り、ほんのちょっとシルキーなサウンドにシフト。「K712」はやや客観的な、モニターライクなフラット志向のサウンドに変化しつつ、ドライバーが進化したことが影響しているのだろう、歪み感も低減されている。カラー以外の外観がまったくといっていいほど同じな3製品だが、改めて比べてみると、微妙にキャラクターが異なっているのはとても興味深い。

もちろん、同時に最新ドライバーではないので歪み感という点では多少の弱点もある。しかし、そういったもの覆い尽くし感じさせなくするほどの音質的な魅力を「K701」は持ち合わせている。モニターヘッドホンなのに、聴き心地がよく、聴いていて楽しい。名機と呼ばれるに値するサウンドを、最新版「K701」はしっかり持ち続けている。この価格でこの音が手に入るのだったら、充分に魅力的といえる。音楽好きであれば、ぜひ1台手元に置いて欲しい、素晴らしいヘッドホンだと思う。

あ、ちなみに筆者は「K701」シリーズ大好き人間であるからして、話半分とまではいかないまでも話2/3くらいに捉えていただき、実際に試してみていただくくらいがちょうどよいかも。あと、「K701」はポータブルプレーヤーでは本来の実力を発揮しきれないので、ヘッドホンアンプの導入をおすすめしたい。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどをはじめ幅広いジャンルで活躍するAVライター。ハイレゾ音源についても造詣が深く、アニソンレーベルのスーパーバイザーを務めるほか、TBSテレビ開運音楽堂「KAIUNハイレゾ」コーナーではアドバイザーとしてレギュラー出演している。

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