アップルの「AirPods Pro」が2019年10月30日に発売された。昨日、突如発表されたこのAirPods Proは、アクティブノイズキャンセリング機能を搭載したカナル型の完全ワイヤレスイヤホン。アップルストア価格は27,800円(税別)。発売日に入手できたので、ファーストインプレッションをお届けしたい。
まずは外観からチェックしていこう。AirPods Proは、インナーイヤー型の「AirPods」とは違い、遮音性の高いカナル型となっている。軸部分は短くなり、角度もきつくなった。ワイヤレス充電に対応するケースは、横長の形状に変わっている。重量はイヤホンが5.4gで、ケースが45.6g。2代目のAirPodsはイヤホンが4g、ケースが40gだったので、少しだけ重くなっているが、ほとんど差は感じない。
左がAirPods Pro、右が2代目のAirPods。ケースは横長に形が変わっている
黒いマイク部分や、充電用の接点部分など、AirPodsと違うところも多いが、白くて丸みのあるフォルムはひと目でAirPodsシリーズであることがわかる。丸みのあるフォルムは筆者の耳によくフィットした。アップルは「EarPods」やAirPodsで多くのユーザーの耳を調査してきたが、AirPods Proではさらに数千の耳のデータを追加調査して、より快適な装着性を実現しているという。
左がAirPods Pro、右がAirPods。軸部分が短くなり、太くなった
左がAirPods Pro、右がAirPods。耳に装着すると、軸が短くなっているのがよくわかる
それでも人の耳の形は人それぞれなので、AirPods Proでは装着性を高めるために、S/M/Lの3つのサイズのイヤーチップが付属し、好みのサイズが選べるようになっている。イヤーチップは非常に柔らかいシリコン製で、しっかりと耳に装着できる。見た目よりも耳にフィットするので、首を振っても簡単に外れることはなく、走っても外れなかった。
S/M/Lのどのサイズのイヤーチップが自分に合っているのかわかりにくい場合は、「イヤーチップ装着状態テスト」を利用するといいだろう。設定アプリの「Bluetooth」をタップして、ペアリング中のAirPods Proの横の「i」マークをタップすれば同機能を利用できる。数秒間サウンドが鳴り、内向きのマイクがその音を解析して、しっかりと密閉されているかを測定してくれる。
楕円形のイヤーチップはハウジングに装着されているようだ。簡単に外れないように取り外しにくい構造になっているが、取り付けは向きに気をつけてかちっとはめるだけ
イヤーチップはMサイズが標準で装着されており、LサイズとSサイズが同梱されている
設定アプリの「Bluetooth」をタップして、接続中の「○○ 's AirPods Pro」(名前)の横の「i」をタップすると、AirPods Proの設定画面が表示される。そこで、「イヤーチップ装着状態テスト」をタップ。数秒音楽が鳴り、しっかりと密閉できているか判断してくれる
密閉されていない場合は、黄色の文字で「イヤーチップを調整するか、ほかのチップにしてください」と表示される
密閉性に強いこだわりを感じるAirPods Proだが、そのいっぽうで密閉しすぎると耳の穴を指でふさいだときのような不快さを感じてしまう。AirPods Proでは小さな通気孔を設けることで、耳の内側と外側で圧の差がなくなるようにしている。不快感のなさはAirPods Proの大きな特徴なので、ノイズキャンセリングが苦手という人もぜひ試してみてほしい。
AirPods Proは、マイクで外の音を拾って、その逆位相の音でノイズを打ち消すアクティブノイズキャンセリング機能を搭載している。外向きのマイクが外部の音を検知して、アンチノイズ成分を作ってノイズを打ち消し、内向きのマイクが耳の内側の不要な音(残留ノイズ)を検知して、同じように打ち消してくれる。他社製のノイズキャンセリングイヤホンのように効果を調整することはできないが、AirPods Proのノイズキャンセリング機能は、毎秒200回調整されるので、どこでも最適な効果を得られるようになっているのだ。
ノイズキャンセリングの効果を試すべく、電車に乗ってみたが、思った以上に外部の音が消えていて、音楽への没入感が高まると感じた。完全に聞こえないということではないが、ノイズキャンセリング機能をオンにすると別世界に入ったような不思議な感覚を味わえる。
ノイズキャンセリングの効果は、静かなオフィスや室内で試してもわかりにくいので、ぜひ外で試してみてほしい。その効果も非常に高く、音楽の没入感が一気に高まる
電車のアナウンスなど、外の音を聞き逃したくない場合のために、AirPods Proには「外部音取り込みモード」という機能が用意されている。同機能を有効にすると、アナウンスがしっかりと聞き取れるようになった。ノイズキャンセリングをオンにした場合よりも音楽への没入感は得られないが、外の音も音楽も両方自然に聞こえるので、電車に乗っているときだけでなく、仕事中など、いろいろなシーンで使えそうな機能だ。
同機能は、iPhoneのコントロールセンターから有効にできるほか、感圧センサーを搭載した軸部分を少し長くつまんでも有効にできる。なお、AirPods Proでは、AirPodsのようにタップ操作による再生の一時停止、曲送り、曲戻しはできず、軸部分をつまむことで同じ操作ができるようになっている。
ノイズキャンセリングと外部音取り込みモードの切り替えはコントロールセンターからできる。ノイズキャンセリングをオフにすることも可能だ
軸部分には感圧センサーが内蔵され、この部分をつまむことでさまざまな操作ができる
AirPods Proの音質はどうか、2代目のAirPodsと聞き比べてみてみた。音質の傾向はほぼ同じだが、AirPods Proのほうが情報量が多く、低音域も引き締まっており、今っぽい音作りと言えるかもしれない。低音域部分と中音域部分を耳の形に合わせて自動的に調整する「アダプティブイコライゼーション」も搭載されており、音質には強いこだわりが感じられる。
AirPodsは電車ではどうしても音を大きくしがちで音漏れすることもあったが、ノイズキャンセリング機能を備えるAirPods Proは音を大きくしなくても、クリアに聞こえるので音漏れも減りそうだ。
音質やノイズキャンセリング機能、Siriなどは、「H1チップ」がコントロールする。10個のオーディオコアを採用するほか、レイテンシーが低いのがウリだ。確かに、動画を見ても口の動きと音がずれることはなく、ゲームも音がずれることなく楽しめた。
そのほか、AirPods ProはIPX4相当の耐水性能を備えており、汗が付いたり、少しの雨の中では問題なく利用できるのも心強い。バッテリー駆動時間は最大4.5時間で、AirPodsよりも0.5時間短くなっている。ただ、ノイズキャンセリング機能と外部音取り込みモードをオフにした場合はAirPodsと同じ最大5時間となる。ケースと組み合わせると24時間の利用が可能。バッテリーに関しては5分の充電で1時間使える急速充電的な機能もあるので、ケースさえ充電しておけば、日常生活でバッテリー切れの心配はないだろう。
充電ケーブルはLightning - USB-Cケーブルとなった。USB-Cで充電器やケーブルを揃えているユーザーにはありがたい
ノイズキャンセリング機能を搭載したAirPods Proは、「Pro」の名にふさわしいモデルに仕上がっている。ワンタップでのペアリング、Siriを使った音声操作、耳から外すと音楽再生が止まるなど、オリジナルのAirPodsに搭載されていた機能もしっかりと搭載されている。もともと人気が高かったAirPodsだが、ノイズキャンセリング機能が搭載され、装着性や遮音性といったAirPodsの弱点が解消されたAirPods Proは、iPhone向けの完全ワイヤレスイヤホンの大本命と言っていいだろう。
iPhoneなどiOS端末に近づけて、画面に表示される「接続」をタップするだけでペアリングができる。この接続のしやすさはAirPodsからしっかりと引き継がれている。使いやすさもAirPods Proの大きな魅力だ
ガジェットとインターネットが好きでこの世界に入り、はやいもので20年。特技は言い間違いで、歯ブラシをお風呂、運動会を学芸会、スプーンを箸と言ってしまいます。お風呂とサウナが好きです!