レビュー
自宅オーディオルームでガチチェック

ホンダが開発した話題のオーディオ電源「LiB-AID E500 for Music」の実力がスゴかった

ホンダから、オーディオ用の蓄電機「LiB-AID E500 for Music」(以下、E500 for Music)が発売される。……というニュースを初めて聞いたとき、筆者は耳を疑った。しかしこれは事実。そう、あの車メーカーの本田技研工業(Honda)が、オーディオ向けに電源バッテリーを開発したのである。

ということで今回は、オーディオ界隈でもかなり話題になっているこのE500 for Musicの音質をテスト! 筆者宅のオーディオルームで、どれほどの音質向上効果があるのか本気でチェックしてみた。

オーディオ趣味における電源の必要性

まずはココを語ろう。音質向上の過程を楽しむオーディオという趣味において、電源に興味を持たない人はいない。それくらい、オーディオファンにとって電源の良質化は大きなテーマである。電源環境がよくなると音の何が変わってくるかといえば、まず音に透明感が出る。そして背景のざわつき(ノイズフロア)が減少することで、1つひとつの音がハッキリと聞こえてきて、音に奥行きが生まれる。さらに、低域を中心に全帯域の力感が増すなど、多くのメリットが生まれる。

電源タップや電源ケーブルなど、我々はとにかく電源部に試行錯誤する! もちろんオーディオ機器メーカーは製品の電源部をケアしているものの、コンセントから給電される商用電源の品質はさまざま。設置環境によって少なからず電圧変動が起きたり、ほかの家電製品から伝導ノイズと言われるノイズ成分が室内の電気配線を経由して、オーディオ機器に伝わってしまうからだ

だから、オーディオの世界では電源品質を良質化するオーディオ用途のアクセサリーが多数発売されており、さらにはオーディオ専用の分電盤を設置したり、なかには数百万円ものコストをかけてオーディオ専用の電柱(=マイ電柱)を立てる人もいる。そのような中、バッテリー駆動でノイズが乗らない高品位な電源供給を可能としたE500 for Musicは、オーディオ界隈で大きな注目をあびている。

ホンダの開発したE500 for Musicとは

では、ここからE500 for Musicについて紹介していこう。本機は、ホンダが2017年から発売しているリチウムイオン電池搭載のポータブル蓄電機「LiB-AID E500」をベースに、各部のパーツをオーディオグレードにアップデートしたモデルとなる。つまり、れっきとしたオーディオグレードの電源バッテリーだ。販売台数は200台限定となり、受注期間は2019年12月18日までで、価格は27万円(税別)。出荷開始は2020年2月中旬を予定している。なお、200台を超える申し込みがあった場合は抽選販売となるとのこと(→くわしくはこちら!)。

シルバーで先鋭的なデザインの「LiB-AID E500 for Music」(※写真はサンプル機のため、ステッカー類等の外装が製品版と一部異なる場合があります)

背面の排気ポートに「HONDA」ロゴを配置

背面の排気ポートに「HONDA」ロゴを配置

その内部には、377Whのリチウムイオン電池を搭載。電池から出力される直流電流はインバーターユニットで高精度にDC-AC変換され、100V(ボルト)の正弦波を生成する。またUSBポートも装備しており、USB接続機器への電源供給能力も備えている。

本体サイズは266(幅)×248(高さ)×182(奥行)mmで、重量は5.4kg。定格出力は300W(VA)で最大出力は500W(VA)と強力だ。15W程度のCDプレーヤーを接続した場合、約15時間の音楽再生が可能で、50Wの機器を接続した場合の運転時間は4〜6時間とアナウンスされている。また、空状態からの充電時間は約6時間で、充電→放電を1サイクルとする「サイクル回数」は1,000回以上に対応するという。

フロントパネルに、電源ボタンのほか、給電用のコンセント部やバッテリー残量のわかるインジケーターを備える

サイドには、本体充電用の端子や周波数切り替えスイッチを搭載。使用前に50Hzと60Hzを切り替えておこう(基本的には、関東以北が50Hz、関西以南が60Hz。くわしくは電力会社に確認推奨)

基本の使い方としては、フロントのコンセント部にオーディオ機器の電源プラグを挿入して本機から給電する

基本の使い方としては、フロントのコンセント部にオーディオ機器の電源プラグを挿入して本機から給電する

USBポートも備えており、スマホなどのポータブル機器を手軽にUSB充電できる

USBポートも備えており、スマホなどのポータブル機器を手軽にUSB充電できる

なぜホンダがオーディオ用電源を開発?

それにしてもなぜ、このタイミングで本モデルが登場したのか? 実はホンダは、本業である自動車やバイクに加えて、古くからポータブル発電機を手がけていた。1965年には初代モデル「E300」を、1998年には高品位な正弦波インバーターを搭載した「EU9i」を発売している。

現在でも販売中の「EU9i」。ホンダによると、1998年の発売時点で家庭用商用電源(コンセント)よりも高品位な電源供給が可能になっていたというから驚き

つまり、ホンダは高品位な電源供給を行うポータブル発電機のノウハウを長年持っていたのである。そして2017年に、本機のベースモデルとなったE500を開発。キャンプや車中泊用途として自動車販売ディーラー経由で発売したのだが、同社によるアンケートの結果、E500ユーザーのうち約5%がオーディオ用途に使用していることが判明した。また、蓄電機を利用したオーディオユーザーからもリクエストがあったとのことで、それらをふまえオーディオ専用モデルの開発がスタートしたのだという。

こちらがベースモデルの「E500」。ホワイトカラーのほかに、レッドやブラックのカラバリも

こちらがベースモデルの「E500」。ホワイトカラーのほかに、レッドやブラックのカラバリも

オーディオ用途としての進化がガチ!

続いては、E500からE500 for Musicになっての変更点を見ていこう。まず電源プラグを挿入するコンセントが、有名オーディオアクセサリーメーカーであるフルテック社の「GTX-D NCF」に変更されている。接点部の純銅にロジウムメッキを施した電極を採用しており、すぐれた導電性を確保した。

また、筐体内部の電源ケーブルには、導電率102.3%IACSを誇るオヤイデ電気の精密導体「102 SSC」を使用。さらに筐体内面には電磁波シールド材を採用するほか、フロントのコントロールパネルは、マグネシウム保有のアルミ合金「ヒドロナリウム」に変更された。

電磁波に対して効果を発揮する複合機能性顔料を配合したシールド材を投入するなど、高周波領域のノイズの放出・流入EMC(Electro Magnetic Compatibility:電磁両立性)まで対策される念の入れようだ。ここから垣間見えることは、オーディオファンのツボをついた音質アップに貢献しそうなパーツが随所に採用されているということ。きっとホンダ内部の開発者の中にオーディオ好きがいるに違いない。

E500(右)と、E500 for Music(左)を並べてみたところ。本体の形は同じだが、E500 for Musicは外装のカラーがシルバーになり、より先鋭的なデザインになっている。また、よく見るとフロントのコントロールパネルもアルミ合金に

E500 for Musicの分解図。パーツを1つひとる見てみると、かなりガチな進化を遂げている

E500 for Musicの分解図。パーツを1つひとる見てみると、かなりガチな進化を遂げている

コンセント部にフルテック社の「GTX-D NCF」を採用

コンセント部にフルテック社の「GTX-D NCF」を採用

オヤイデ電気の精密導体「102 SSC」を内部の電源ケーブルに使用

オヤイデ電気の精密導体「102 SSC」を内部の電源ケーブルに使用

シャーシの内側に電磁波シールド材まで配置している

シャーシの内側に電磁波シールド材まで配置している

E500 for Musicの実力は? 自宅のオーディオルームでチェック!

ホンダは本モデルのバッテリー容量を考慮して、ハイエンドオーディオユーザーが使用するセパレートアンプ方式におけるプリアンプへの使用や、CD/ネットワークプレーヤー、アナログプレーヤー/フォノイコライザーなどのソース機器での使用を推奨している。そこで今回は、「デジタル再生」「アナログ再生」「ヘッドホン再生」の3シーンで試聴テストを行った。「デジタル再生」では、ベースモデルであるE500との比較試聴もしてみた。

筆者が普段オーディオを楽しんでいる自宅オーディオルームにE500 for Musicを導入してテスト開始! ちなみに付属のアダプターを本体に接続すると、アダプターのLEDがイエローに点灯して充電状態を知らせてくれる。空状態からの充電時間は約6時間で、充電が完了するとLEDがグリーンになる

【1】デジタル再生
→LINNのプリアンプ 「Klimax Kontrol SE」+ネットワークプレーヤー「Klimax DS/1」に使用してスピーカー再生

LINNのプリアンプ「Klimax Kontrol SE」(140万円・税別/公称消費電力20W)と、ネットワークプレーヤー「Klimax DS/1」(280万円・税別/公称消費電力13W)の電源をE500 for Musicに接続!

まずはLINNのプリアンプ 「Klimax Kontrol SE」とネットワークプレーヤー「Klimax DS/1」の電源として使用してみた。パワーアンプは「Klimax SOLO」を2台用意するという、ハイエンドオーディオマニアが使用するセパレートアンプ方式で試してみる。スピーカーにはデンマークのスピーカーブランド・ディナウディオの「Contour 30」を利用した。

最初はすべての機器を通常の壁コンセント(商用電源)から電源供給するスタンダードな方式で試聴し、次にE500 for Musicからプリアンプとネットワークプレーヤーに電源供給を行って比較した(※パワーアンプ2台はずっと通常の壁コンセントから給電)。

E500 for Music本体のメイン電源を入れ、AC OUTボタンを押し、プリアンプとネットワークプレーヤーの電源を挿入して音を出してみると、これが予想以上に音がよい。ジャズボーカルやポップス、そしてクラシックなどさまざまなハイレゾ楽曲ファイルを再生したのだが、ノイズフロアが低く、抜群に透明感ある音がする。

ジャズボーカル曲のダイアナ・クラール&トニーベネットのアルバム「Love Is Here to Stay」から「ス・ワンダフル」(96kHz/24bit FLAC)を聴くと、ボーカルがより明瞭になり、バックミュージックから一歩前に浮き出るリアルな表現。クラシック曲のアンネ=ゾフィー・ムター「Across The Stars」から「シンドラーのリストのテーマ」(96kHz/24bit FLAC)を再生したときは、オーケストラを構成するさまざまな楽器の付帯音が明らかに減り、粒立ちが大きく上がってきた。

特筆点としてはサウンドステージの奥行きが増すこと。これはノイズフロアの低下による小レベルの音の明瞭度が上がり、ステージを構成する微小な音がスポイルされないからだろうと推測できる。良質な電源関係のアクセサリーを一挙に導入したような効果が本機1台で得られる。

気になる消費電力とバッテリーの持ち時間だが、通常の音量で再生する限りは、コントロールパネルのAC出力インジケーターは、左側の1メモリが点滅する程度で全く余裕があり、バッテリー残量灯は1メモリ減るのに約30〜40分ほどだった。

ちなみに、ベースモデルのE500とも同じ環境で聴き比べてみた。結論から言うとE500の音も決して悪くない。基本的な音質改善傾向は同様で、音の力感もほぼ変わらず、違いとしては小レベルの音の明瞭度が若干異なる。奥行きや高さが正確に表現されたサウンドステージ表現や、バイオリンなどのアコースティック楽器の倍音の伸びなどは、E500 for Musicに分があるように感じられた。

【2】アナログ再生
→テクニクスのレコードプレーヤー「SL-1500C」に使用してスピーカー再生

テクニクスのレコードプレーヤー「SL-1500C」(10万円・税別/公称消費電力8W)の電源をE500 for Musicに接続!

次にコストパフォーマンスの高さで話題になっているテクニクスのレコードプレーヤー「SL-1500C」に使用してみた。本機はフォノイコライザーを内蔵しており、プレーヤー部とフォノイコライザー部の両方をバッテリーで駆動する形にする(プリアンプとネットワークプレーヤーは商用電源に戻した)。

先ほどと同様に最初はコンセントから給電して試聴したあと、E500 for Musicに接続したのだが、こちらも大幅な音質向上効果を聞き取ることができた。オーディオ的な音質表現をするならば、レコードの溝に刻まれた情報や空間の再現性が上がってくる。

たとえば、ダイアナ・クラールでは中高域の見晴らしがよく、低域はよりタイトで引き締まった音に変化する。オーディオマニアならご存知の通り、カートリッジから出力されるフォノ信号は特に微弱であり、フォノイコライザー周りの電源品質が上がることのアドバンテージはより大きそうだ。

【3】ヘッドホン再生
→ゼンハイザーのヘッドホンアンプ「HDVD 800」に使用してヘッドホン再生

ゼンハイザーのヘッドホンアンプ「HDVD 800」(実売価格22万円前後/公称消費電力18W)の電源をE500 for Musicに接続!

最後は、ゼンハイザーのハイエンドヘッドホンアンプ「HDVD 800」に電源供給を行い、同社の解放型ヘッドホンフラグシップモデル「HD800S」を駆動した。この再生環境では、すばらしい音質向上効果を体感した。どのジャンルの楽曲を使用しても、中高域の歪み感が減少する。特にアコースティック楽器が奏でる音の強弱や細かい諧調表現がより表現できるようになり、音の距離感もつかみやすくなるのだ。コアなヘッドホンファンにはぜひ1度試してほしい。

まとめ

今回E500 for Musicを使用した結論としては、大幅な音質向上効果が感じられ、大きなインパクトがあった。ベースモデルE500の音も悪くなかったので、製品としての素性も高そうだが、E500 for Musicでは、要所にオーディオファンから評価の高いパーツが追加されたツボを得た設計が魅力。本当にその音質向上幅は予想以上で、改めて高品位な電源によるオーディオ機器の駆動メリットを実感した。

また、クリーンな電源供給と同時に、プリアンプやレコードプレーヤー/フォノイコライザーなどのアナログ専用機器の電源を、デジタル機器やスイッチング電源を使用する家電製品などと完全にセパレートできるメリットはあまりにも大きい。

それに、昨今の台風や暴風雨により、蓄電機の注目度は大きく上がっているが、本製品を普段はオーディオ用として使用しつつ、災害時には非常用電源として使用できるのも大きなメリットだろう。

異業種であるホンダがオーディオに参入してきたこと、しかもニッチな部類の製品であることを、ひとりのオーディオファンとしてうれしく思う。また、大容量のリチウムイオン電池は海外メーカーからも発売されているが、ホンダの製品ということで安心感を持って使用できるのもいい。

なおE500 for Music は、11月4日まで開催されていた「第46回 東京モーターショー 2019」でも展示されており、僕の周りのオーディオファンも本機を目当てに現地へ行った方が多いようで、かなり話題になっていた。その注目度と期待値を裏切らない、すばらしいプロダクトであったことを最後に記しておこう。

土方久明

土方久明

ハイレゾやストリーミングなど、デジタルオーディオ界の第一人者。テクノロジスト集団・チームラボのコンピューター/ネットワークエンジニアを経て、ハイエンドオーディオやカーAVの評論家として活躍中。

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