レビュー
「HEOS」対応でストリーミングサービスとの相性が抜群!

デノンの小型プリメイン「PMA-150H」で話題の「Amazon Music HD」を聴いてみた

「Amazon Music HD」最速対応の理由

デノン「PMA-150H」は、スタイリッシュかつ高音質を旗印に掲げるデザインシリーズの最新モデル。歴代デザインシリーズはデジタルとポータブルに照準を合わせた製品が多く、クアルコムのフルデジタルアンプ「DDFA」をいち早く採用するなど進取の気性を持ち合わせている。デノンの音を継承しつつもひと味違う、"尖った"製品群だ。

HEOSテクノロジーを採用したデノン「PMA-150H」

HEOSテクノロジーを採用したデノン「PMA-150H」

PMA-150Hの背面。USBポートや有線LAN・無線LANなど、多彩なインターフェイスを備える

PMA-150Hの背面。USBポートや有線LAN・無線LANなど、多彩なインターフェイスを備える

PMA-150Hは最新世代のDDFAを2基搭載し、BTL接続で利用する。ここでいうBTL接続とは、2基のDDFAをモノラルアンプとして逆相で駆動し、その正相・逆相2つの信号によりスピーカーを駆動することで、グラウンドのノイズによる影響を抑えられるなどのメリットがある。前世代のDDFAは2チップ構成で扱いが難しく、PMA-50などデザインシリーズの製品もシングルエンドでの利用にとどまっていたが、PMA-150Hでは意欲的な取り組みを行った。DDFAでBTL接続を実現した製品はこれまでなく、THD+N 0.0006%という数値もBTL接続だからこそなし得たものといえる。

そしてもう1つ、PMA-50との比較でいえば、「HEOS」の採用が大きな変更点としてあげられる。HEOSについて言及されるとき、インターネット接続などの機能を提供するネットワークモジュールで...などという紹介をよく見かけるが、本稿ではもう少し具体的にHEOSの役割を説明しておこう。

HEOSは、D&Mグループが開発した「オーディオ再生に特化したプロセッサーとOS」の技術名称であり、デノンおよびマランツ製品に採用されている。AVレシーバーやネットワークプレーヤーといったコンポーネント製品からワイヤレススピーカーなど小型製品に至るまで、すでに両ブランドから多数のプロダクトが発売されている。

そのソフトウェア基盤はLinux(リナックス)だ。テレビやビデオレコーダー、DAPなどLinuxで動くデジタル機器はいまどき珍しくないが、HEOSはオーディオ再生に最適化された作り込みがポイント。ffmpegなど各種デコーダーのほか、WEBサーバやXMLパーサーを利用したWebUI実装を備え、スマートフォンアプリやOSDメニューからの操作を可能にしている。スマートフォンアプリ「HEOS」は、そのクライアントという位置付けだ。

HEOSを構成するソフトウェアはLinuxがベースだ

HEOSを構成するソフトウェアはLinuxがベースだ

柔軟性もHEOSの特長といえる。Spotifyなどのストリーミングサービスは、WEB標準技術を利用した開発キット(WEB API)を提供することでサードパーティーによる対応を促しており、開発環境の自由度が高いLinuxは好都合。D&Mがオーディオメーカーでもっとも速く「Amazon Music HD」に対応できたのは、米国に拠点を持つSound Unitedグループに属していることもあるだろうが、HEOSを擁していることが最大の理由だろう。

ヘッドホンで「Amazon Music HD」を聴く

デノンのオーバーイヤーヘッドホン「AH-D7200」でヘッドホンアンプとして利用してみた

デノンのオーバーイヤーヘッドホン「AH-D7200」でヘッドホンアンプとして利用してみた

PMA-150HでAmazon Music HDを聴く場合、スマートフォンアプリ(以下、HEOSアプリ)を利用する。「ミュージック」タブにあるAmazon Musicボタンをタップすると、WEBブラウザが起動してAmazonのサイトに接続し、Amazonが持つ情報へのアクセス許可を求められる。筆者はAmazon Musicのアカウント(HDにアップグレード済み)を保有しているので、メールアドレスとパスワードを入力するだけでセットアップは完了した。

HEOSアプリのミュージックソース(画面はiOS版)

HEOSアプリのミュージックソース(画面はiOS版)

Amazon Music HD利用開始前にAmazonのサーバへサインインする

Amazon Music HD利用開始前にAmazonのサーバへサインインする

あとは曲名やアーティスト名で検索し、再生するだけ。Amazon Music HDにはロッシー音源(AAC)も含まれるが、かなりの割合がHD品質(44.1kHz/16bit)以上となっているため、音源としての価値が高いことは疑いようがない。HEOSアプリは、SpotifyやAWAといったほかのストリーミングサービスも選択できる「ワンストップ」的な役割を担うため、PMA-150Hユーザには必須の存在といえる。

Ultra HD品質(44.1kHz/16bit以上)の音源も再生できる

Ultra HD品質(44.1kHz/16bit以上)の音源も再生できる

音量調整以外の操作はスマートフォンからとなるが、Amazon Music HDで配信されている最大192kHz/24bitのハイレゾ音源を思うがままに楽しめることは、このクラスのプリメインアンプ/ネットワークプレーヤーとしては大きなアドバンテージになるはずだ。

肝心の音質も、ロッシー音源を配信するストリーミングサービスとは一線を画す。試聴には同じくデノンのオーバーイヤーヘッドホン「AH-D7200」を利用したが、ハイハットの細かい刻みもクラッシュシンバルの余韻も、50mm径フリーエッジ・ナノファイバードライバーならではの繊細さで表現する。PMA-60と比較して5.5倍にアップしたヘッドホンアンプの出力ゆえか、出力バッファー回路に工夫して疑似A級動作を可能にした効果か、余裕とともに見通しのよさが感じられる。

だが、HEOSアプリではネイティブのAmazon Musicアプリ(PC/スマートフォン)とはプレイリストを共有できない。作成済のプレイリストは現れず、履歴を確認しても「Ultra HD J-POP」などの既成のプレイリストがいくつか表示されるばかり。現在のところ、Amazon側との完全な情報共有は行われていないようだ。

曲をキューに登録できないことも気になる。楽曲のありかを一意のURLで表記できる再生系ではないため、USBメモリーやDLNA/OpenHomeの楽曲と混在できないことにはやむを得ない部分はあるが、せめてプレイリストに登録する機能があるとうれしい。

Amazon Music(HD)のトラックはキューに登録できない

Amazon Music(HD)のトラックはキューに登録できない

ところで、HEOSアプリでプレイリストを作成できない問題は、Amazon Musicアプリを使うことでひとまず解決できる。音楽を再生中にキャストボタンをタップし、再生する端末としてPMA-150Hを指定すればいいのだ。 iOS/Android版ともスマートフォンは曲操作のリモコンに過ぎず、楽曲データは直接PMA-150Hに送信される(だから再生中スマートフォンを機内モードに変更しても音は途切れない)※。ただし、Amazon Musicアプリ経由でハイレゾ音源をキャスト再生するとHD相当にダウングレードされる仕様のようで、完璧な代替え案というわけではない点は注意してほしい。いつかHEOSアプリ側にもプレイリスト作成機能を実装してほしいものだが、当面はこの方法でしのぐしかなさそうだ。

※掲載後、仕様をメーカーに確認したところ、Amazon Musicアプリ経由でUltra HDをキャスト再生するとHDにダウングレードされることが判明しましたので、上記のとおり訂正致しました。[2020年1月29日 10:30]

Amazon Musicアプリで音楽を再生中にキャストボタンをタップすると、HEOSアプリを

Amazon Musicアプリで音楽を再生中にキャストボタンをタップすると、HEOSアプリを

Amazon Musicアプリを実質的にリモコンとして利用できる

Amazon Musicアプリを実質的にリモコンとして利用できる

従来のプリメインアンプPMA-50/60と比較すると価格が大幅アップ、プリメインアンプを兼ねるネットワークプレーヤーという位置付けだったDRA-100よりも高価になったPMA-150Hだが、試すうちに割高感は消えた。やはり、Amazon Music HD対応のメリットはあまりに大きい。サンプリングレート/ビット深度とも完全に同じ曲をファイル再生(USBメモリー)と聴き比べると、微妙なディテールの再現力はファイル再生に軍配が上がるが、ストリーミングには新しい音楽を発見する喜びがある。BTL接続された新世代DDFAの描写能力もさることながら、デノンのアイデンティティである「Advanced AL32 Processing Plus」、HEOSの採用による拡張性/ソフトウェアアップデートの楽しみもあり、実のところかなり買い得感があるモデルでは? というのが正直な感想だ。

海上 忍

海上 忍

IT/AVコラムニスト、AV機器アワード「VGP」審査員。macOSやLinuxなどUNIX系OSに精通し、執筆やアプリ開発で四半世紀以上の経験を持つ。最近はAI/IoT/クラウド方面にも興味津々。

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