レビュー
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中国のCIEMメーカー、NF AUDIOの侮れない実力! ユニバーサルイヤホン「NA2」「NM2」を試す

NF AUDIOというIEMメーカー

ここ数年で一気に存在感が増した中国のポータブルオーディオ製品。当初は価格面ばかり注目された感もあるが、最新かつ斬新な機能を出し惜しみせず投入する姿勢が次第に評価され、いまでは敬遠どころか歓迎するオーディオファンのほうが多い。その背景には中国メーカーの製造技術・品質向上もあるが、世界に通じる製品企画力・感性を身に着けたこともあるのは間違いない。

今回「NA2」と「NM2」という2つの製品を発売したNF AUDIO(エヌエフオーディオ)も、質と感性に訴える中国のCIEM(カスタムIn-Ear-Monitor)メーカーだ。設立は2014年と若いが、2015年にはBAドライバー3基搭載の「NF3」が評価を博し、翌年には独自チューンのBAユニットを開発。いずれの製品も音質はもちろんのこと、デザインと仕上がりのよさで話題を集めている。

NF AUDIOのユニバーサルイヤホン「NA2」(左)と「NM2」(右)

NF AUDIOのユニバーサルイヤホン「NA2」(左)と「NM2」(右)

レビューにあたりいくつか不明な点があったため、昨年中国を訪れた折に知己を得たNF AUDIOの創業CEO・Felix Yang(楊賀捷)氏にWeChatで連絡を取り、質問を行った。かの地では名刺代わりにWeChat IDを交換するので、一度面識を持てば次から気軽にコンタクトできるのだ。

NF AUDIOというブランドの成り立ちだが、「2013年にサウンドミキサー、ヘッドフォンエンジニア、10年以上の経験を持つ補聴器制作エンジニア、そして中国で著名なロックフォトグラファーと出会い、すべてが始まった。当時中国にはカスタムIEMブランドがほとんどなかったことを受け、翌年NF AUDIOをスタートさせた」という。社歴こそ浅いものの、イヤホン設計・音響制作で経験豊富な面々がNF AUDIOをけん引しているのだ。

NF AUDIOがこれまで製造したカスタムIEMたち(提供:NF AUDIO)

NF AUDIOがこれまで製造したカスタムIEMたち(提供:NF AUDIO)

ユニバーサルモデルとカスタムIEMとの設計の違いについてたずねると、「カスタムIEMは専用設計のイヤーカップでサウンドチューニングできるが、ユニバーサルモデルはそうはいかない。当初からターゲットを2つに分け、NM2は色付けなしの音楽制作者/プロ向けを、NA2はわずかに音の傾向を調整しメロウでアンビエントな音調を目指した」とのこと。もっと噛み砕いて説明してくれと頼んだところ、「(AKGの)K701とK702の関係に似ている」というわかりやすいたとえが返ってきた。なるほど、あとは実際に聴いてみるしかなさそうだ。

「NA2」と「NM2」の違い

「NA2」と「NM2」はいわば兄弟機で、スペックは共通。ドライバーユニットのほか、ギターのピックを意識したというフェイスプレート、リケーブルが可能なCIEM 2Pin(0.78mm)コネクターは同じだ。違いはつや消し(NA2)とクリア(NM2)というボディの仕上げとチューニングで、CEOのYang氏が説明してくれたとおり、NA2は音楽の量感や雰囲気を重視したサウンドリスニング用途に、NM2はステージモニタリングや音楽制作などサウンドクリエイター向けに、それぞれ最適化されているという。

パッケージにはCDをモチーフにした凝ったデザインを採用している

パッケージにはCDをモチーフにした凝ったデザインを採用している

付属のイヤホンケースはファブリック調で質感が高い

付属のイヤホンケースはファブリック調で質感が高い

2種類/3サイズのシリコンイヤーピースとケーブル、標準変換プラグが付属している

2種類/3サイズのシリコンイヤーピースとケーブル、標準変換プラグが付属している

共通のドライバー「MC2L-10」は直径10mmのダイナミック型で、かなり凝った設計だ。ダイアフラムは薄さ5μmmのポリマー製で、最近採用事例が多い超硬質ではなくほどよい硬さの素材をあえて採用。これを1テスラ以上という高磁力のネオジウムマグネット2基で駆動する「テスラダブルマグネティックサーキット」、2つのリアキャビティを設ける「ダブルキャビティ構造」により、狙ったサウンドを実現している。

なお、MC2L-10は2019年発売のNA1に採用された「MCL2-10」と名称がよく似ているが、設計は異なる。MCL2−10には特殊な3D保護カバーがあり、ボイスリングを両側から出し歪み低減を狙う構造(バランスボイスコイル)を採用しているが、NA2/NM2に採用のMC2L-10ではチューニング回路が統合された保護カバーに片側リードのボイスリングとなっている。

もうひとつの特長は、人間工学に基づき設計された高強度ポリカーボネート製のハウジング。多くのIEMイヤホンは、ノズルの付け根から手前方向に向かって膨らむハウジング形状を持つが、このNA2/NM2はその膨らみが削がれている。アジア人の外耳道形状を研究したところ、このデザインに行き着いたのだそう。昨年発売された同じユニバーサルモデルのNA1と並べてもデザインに違いがある点からすると、常に最適解を求めて検討を重ねているということなのだろう。

聴きやすさの「NA2」とモニターライクな「NM2」

試聴は付属の3.5mmシングルエンド端子シルバーコート無酸素銅(5N OFC)ケーブルを利用し、DAP「HiBy R5Pro」で実施した。NA2とNM2それぞれの音質、サウンドキャラクターの違いを感じとろうというわけだ。

試聴はHiBy R5Proで実施した

試聴はHiBy R5Proで実施した

まず、NA2とNM2ともにいえることだが、きめ細かさが際立つ。トランジェント性能の高さか、ピアノアタックの余韻は曇りなく、アコースティックギターのハーモニクスも澄みわたる。ウッドベースは弦の微妙なたわみまで表現しつつ、ダイナミックドライバーらしい張りとドライブ感がいい。ドラムブラシの細やかさ、カッティングギターの立ち上がりの鋭さは、BAドライバーを思わせるキレがあり、モニターのような正確性を感じさせる。

NA2とNM2の比較でいえば、NM2のほうが反応が生真面目でよりモニターライクなテイスト。反応の鋭さや解像感に格段の差は感じられないものの、低域の量感はNA2のほうがやや多く、全体の重心も低めに設定されている印象だ。NA2はモニター調でありつつも聴きやすさを意識したチューンがなされているようで、シンバルロールやスネアアタックが長く続いてもキツさがない。ボーカルの定位も一歩前に出るような自然さがあり、音ではなく音楽を聴いていると実感できる。

だから長時間の試聴ともなれば、自然とNA2のほうに手が伸びてしまう。ギターの高速なパッセージは団子にならず自然に解れ、それでいてサスティーンも心地よく続くから、作業中にBGMとして聴いても違和感でふと我に返るということがない。モニターらしい忠実さを保ちつつ角々しさを削いだ、清涼で聴き心地いいサウンドを実現している。

それにしても、これだけの品質、パッケージの充実度で1万円台前半という価格は驚きだ。ケーブルにしてもφ6.35標準変換プラグにしても、付属品ひとつひとつに至るまで作りが丁寧で粗さがない。強いていえば、付属のシリコンイヤーピースがやや硬めだが、数百円出せば豊富なバリエーションから選べるこのご時世、取るに足らないこと。製品コンセプトとサウンドキャラクターからして、繊細で余計な味付けのないモニター系が好みだが"BA一発"では低域と音の勢いに不満、という向きに好適なイヤホンといえそうだ。

海上 忍

海上 忍

IT/AVコラムニスト、AV機器アワード「VGP」審査員。macOSやLinuxなどUNIX系OSに精通し、執筆やアプリ開発で四半世紀以上の経験を持つ。最近はAI/IoT/クラウド方面にも興味津々。

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