新型コロナウイルス感染拡大の影響で、外出自粛の日々が続いている。休日もほとんどを自宅で過ごし、テレビを見る時間が増えている人はかなり多いだろう。それを裏付けるように、「Netflix」など映像配信サービスの加入者が世界的に増加しているようだ。
さて、そこで考えたいのは「テレビの音質」について。せっかく家にいてゆっくり映画やライブ配信を見るなら、スピーカーを接続して「イイ音」で聞きたい。何しろ音声のクオリティが高いと、映像作品への没入感や感動の値も段違いになるからだ。映画やドキュメンタリーではシーンの迫力が増大してセリフも明瞭に聞こえるし、歌番組やミュージカル映画など音楽系の映像コンテンツなら楽曲から受ける感動値が増してくる。
そこで今回は、テレビと接続できる代表的な4つのスピーカー類と、それぞれの選択ポイントおよび魅力をまとめてみた。この機会に、自宅のテレビの音質向上を図ってみてはいかがだろう?
まず候補になるのは、何と言っても「サウンドバー(シアターバー)」だろう。テレビの前に手軽に置けるバータイプの一体型スピーカーで、アンプを内蔵しているので、これ単体で使用でき、HDMIケーブルや光/アナログケーブルを使ってテレビと簡単に接続できるのが特徴。4Kテレビの普及と合わせて人気が出ている製品カテゴリーで、近年、テレビ用のスピーカーと言えばまずサウンドバーがあがる。
選択ポイントとしては、まず自宅のテレビに合うサイズ/デザインであること。テレビ本体の横幅よりはみ出さず、テレビの画面を隠さない高さの製品を選びたい。さらにテレビの枠(ベゼル)やテレビラックと同系統のカラーを選ぶと、センスよく設置できる。
続いて大事なのが音質。映画の迫力に直結する低域の再生能力をチェックしつつも、音楽再生にも利用したいなら自然な音を出せるモデルだとよい。ちなみに低域重視なら、別筐体のサブウーハーが付属する2ユニット型モデルも有力な選択肢だ。
また、「Dolby Atmos」などの立体的なサウンドを作り出す「バーチャルサラウンド機能」の有無も見ておきたい。製品によって、2.1ch〜7.1chと対応チャンネル/フォーマットに差異がある。何にせよ、音がスピーカー左右上下に広がりつつ、中心部の音の輪郭が明瞭な製品がよい。
そのほか、音楽再生用のスピーカーとしても使う場合はBluetooth機能やWi-Fi機能の有無をチェックしておこう。さらにWi-Fi対応モデルの中では、GoogleアシスタントやAmazon Alexaに対応し、スマートスピーカーとして使える高機能な製品も登場している。
ソニー独自のバーチャルサラウンド技術を搭載したデュアルサブウーハー内蔵のサウンドバー。最新のオブジェクトオーディオ「Dolby Atmos」「DTS:X」の両方に対応する
原音をストレートに再生する「Pureモード」を搭載したサウンドバー。バーチャル3Dサラウンド技術「DTS Virtual:X」に対応する
サウンドバー本体と単体サブウーハーがセットになった2ユニット型モデル。バーチャルの3Dサウンド創出技術「DTS Virtual:X」に対応するほか、「Amazon Alexa」対応のスマートスピーカーとしても使える
次に、テレビの左右に1本ずつスピーカーを設置する従来型の手法(2チャンネル再生)だ。そのアドバンテージは、真正面から音を放出するサウンドバーと比べ、左右の音の広がり感が高いこと。テレビの脇に設置スペースが必要なのがややネックとなるが、コンパクトな製品を選んで最小限のスペースで設置するよう工夫もできる。
アンプを内蔵する「アクティブタイプ」と、別途アンプが必要な「パッシブタイプ」の2種類がある。アクティブタイプはアンプを別途購入する必要がないので、スピーカーをテレビに接続して本体電源を入れるだけのシンプルな構成で使用できる。BluetoothやWi-Fiに対応するモデルもあるので、音楽再生用に使いたい場合も手軽でよい。
パッシブタイプは別途アンプが必要になるものの、コンパクトな機種から大型モデルまで、市場に数百種類はある製品群から好みに合わせて大きさやデザインをチョイスできるのが大きなメリット。そして、スピーカー自体はもちろんアンプにもこだわることで、驚くほどの高音質化が可能だ。テレビを豊かなサウンドで楽しむことができるようになる。
モニタースピーカーで有名なGENELECが、ホームオーディオ用として手掛けたアクティブスピーカー。プロの世界で鍛えられた原音忠実再生サウンドを家庭内で楽しめる
高音質化技術「SMCマグネット・システム」搭載した、パッシブタイプのブックシェルフスピーカー。抜群のコストパフォーマンスが人気の定番モデル
抜群の臨場感で映画館のような表現やライブ映像を楽しみたいなら、複数のスピーカーとAVアンプを使ったホームシアター環境を構築することが理想だ。テレビを設置しているリビングにスペース的な余裕があるなら、ぜひトライしたい。サウンドバーの臨場感を大きく超えて、映画館に一歩近づくサラウンド環境が実現できる。
ポイントとしては、まずスピーカーの数=チャンネル数を決定しよう。一般的に「サラウンド」と言った場合、フロントスピーカー2基+センタースピーカー1基+リアスピーカー2基で視聴者を取り囲み、サブウーハー1基で低域の迫力を上げる5.1チャンネル再生が基本となる。さらに贅沢なものだと、そこに2基のスピーカー(サラウンドバックスピーカー)を後方に加えた7.1チャンネルもある。逆に、背面のリアスピーカーを省略してフロント部だけで構成する3.1チャンネル(フロント+センター+サブウーハー)というシンプル構成もアリだ。
いずれにせよ、スピーカーが多いと前後左右の音の移動感が自然になるが、その半面スペースを占有するので、部屋の広さや設置スペースについてしっかり把握するのが大切だ。また、組み合わせるAVアンプはテレビラックに収納できるスリムなタイプを選ぶと設置しやすい。
以下は、エントリー層にもとっつきやすいよう、5.1chスピーカーがセットになっている製品を例としてあげてみた。もちろん単体のスピーカー複数台とAVアンプを組み合わせ、映画館に迫る精密なサラウンド再生にチャレンジするのもよいだろう。
薄型テレビのデザインにマッチするグロスブラック仕上げの5.1chスピーカーパッケージ。楽器メーカーらしい音色を大切にしたハイファイサウンド
フロントスピーカーとリアスピーカーに、Bose独自の「OmniJewelスピーカー」を採用した5.1chサラウンドシステム。躍動感ある低域が魅力
ネックスピーカーは、首回り・肩に乗せて使うウェアラブル型のスピーカー。ユーザーの耳元から音が出るため、サウンドを聞き取りやすい。また周囲の音を遮断しないので、キッチンなどで料理をしながらテレビや音楽を楽しむ「ながら聴き」も可能。「スピーカーとヘッドホンのいいとこ取りした製品」として人気上昇中の製品カテゴリーである。テレビで使う場合の仕組みとしては、テレビの音声出力端子にワイヤレス送信ユニットを接続し、そこからワイヤレスでネックスピーカー本体に音声信号を飛ばして音を出す。
選択ポイントとして、テレビに接続するワイヤレス送信ユニットが同梱されているどうか、音質重視モデルか装着感重視モデルか、バッテリー持続時間、無線伝送方式(Wi-FiかBluetooth)などがある。テレビに利用する場合は必ずワイヤレス送信ユニット同梱モデルを選ぼう。ワイヤレス送信ユニットとテレビは光デジタルケーブル等で接続できる。
現在市場で売られているネックスピーカーは、大きく分けて音質重視タイプと装着感重視タイプの2種類がある。前者はボディが太くウエイトも重いが、音質がよく低域の迫力もある。それに対して後者は装着感にすぐれ長時間使用できるなど、それぞれにメリットがある。
本体に弾力性がありしなやかなに曲がるモデルは装着/脱着もスムーズだ。なお、Bluetoothタイプでゲームを本格的に楽しみたい場合は、低遅延の接続コーデック「AptX」「AptX LL」「Fast Stream」等に対応しているモデルを選んだほうがよい。そのほか、スマホアプリと連携してスマホから音質調整ができるモデルもある。
テレビ用2.4GHzの無線送信機を同梱するモデル。低音を増強する「パッシブラジエーター」を搭載しており、映画のアクションシーンなどで低音に連動して振動を発生させる。同時に2台をつないで家族や友人と一緒に楽しむこともできる(※2020年5月8日追記:初出時、本製品のワイヤレス伝送規格をBluetoothと記載しておりましたが、正しくは2.4GHzの無線伝送です。お詫びし訂正いたします)
テレビ用Bluetooth送信機を同梱したモデル。JBLサウンドを受け継ぎ、デュアルマイク、エコー&ノイズキャンセレーション機能を搭載しており、スマホ接続時には音楽再生や通話操作を首元でコントロールできる
近年、テレビがネットワークに接続できるようになったことで、テレビで楽しめるコンテンツの種類はどんどん増えている。好きな映像・音楽コンテンツを見るのに合わせて、テレビ周りの音質環境のアップデートもぜひ行っていこう。
今回はテレビに接続できるスピーカーの種類を大きく4つに分けて紹介したが、誰でも手軽に設置できるサウンドバーと、パーソナル空間で音を鳴らすネックスピーカーは、特に近年大きなトレンドになっているカテゴリーだ。いっぽう、テレビの左右に1台ずつスピーカーを設置するオードソックスな2chスタイルや、サラウンドスピーカーでホームシアターシステムを構築する方法は、設置スペースに余裕があって音質と迫力を追求したい人にはぜひチャレンジしていただきたい。家でゆっくり映画やライブ配信を見る時間が増えている今こそ、自宅環境に合わせてテレビ用スピーカーを探してみよう。
ハイレゾやストリーミングなど、デジタルオーディオ界の第一人者。テクノロジスト集団・チームラボのコンピューター/ネットワークエンジニアを経て、ハイエンドオーディオやカーAVの評論家として活躍中。