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IMAX体験が家庭でも楽しめるように

映画の「IMAX」って何がスゴいの? いま改めて歴史・基礎知識を解説!

近年、映画をよりよい画質、よりよい音響、よりよい空間で見たいというニーズが高まっており、各地の映画館では通常よりもちょっとぜいたくなプレミアムシアターが多数登場しています。鑑賞料金こそ、通常料金よりも少し上乗せされるのですが、それでも多くの観客に支持されています。

コロナ禍において、感染対策を徹底しながら多くの映画館が営業を再開している今、せっかく映画を見に行くならとプレミアムな映像体験を求める人も増えていると思われます。なかでもIMAXシアターの人気は非常に高いですが、「よくスゴいって言うけど、IMAXってそもそもどういう映像なの?」と思っている方もいることでしょう。そこで、改めてIMAX映画の歴史を振り返りながら、その魅力について解説したいと思います。

池袋「グランドシネマサンシャイン」のプレスリリース資料より

フルサイズのIMAXスクリーンが楽しめる池袋「グランドシネマサンシャイン」(グランドシネマサンシャインのプレスリリース資料より)

始まりは1970年大阪万博! IMAXの歴史を振り返る

カナダのIMAX社が開発した大型映像システム「IMAX」の始まりは、実に50年以上昔にさかのぼります。IMAXの映画は、1970年に大阪で行われた日本万国博覧会内の富士グループ・パビリオンで、世界に先駆けて初上映されました。高さ13m、幅19mという巨大スクリーンに、210mmフィルムを使って上映されたのです。これは70mmフィルム3コマ分を従来の垂直方向ではなく、横方向に送ることで、3コマ分を1コマとして使用するという仕組みで、これにより巨大画面に上映することが可能となりました。そして翌年には、カナダ・トロントのオンタリオ・プレイスに常設館がオープンしました。

IMAXはそのシステム上、高価な70mmフィルムを大量に使い、かつ撮影機材も巨大となってしまいます。そのため、はじめのうちは劇映画ではなく、科学館やテーマパークなどを中心に、ドキュメンタリー作品を上映するフォーマットとして普及するようになりました。かくいう筆者も、かつて新宿のタカシマヤタイムズスクエア内にあった「東京アイマックス・シアター」でIMAXドキュメンタリーを体験し、天井から足元まであるような巨大な画面と迫力に度肝を抜かれたことを思い出します。

そんなIMAXに転機が訪れたのは2000年のこと。ディズニーの歴史的傑作アニメ映画「ファンタジア」を現代によみがえらせたアニメ映画「ファンタジア2000」がIMAX上映で行われることになり、劇映画としてのIMAX上映の道筋をつけたのです。そしてその後、IMAX社が特許を持つ独自の映像処理技術 デジタル・メディア・リマスタリング技術の「DMR」を開発。一般上映用のフィルムを、IMAX上映用のフォーマットに変換することが可能になりました。これにより、IMAXシアターで「アポロ13」「スター・ウォーズ エピソード2」といった劇映画が上映され、IMAXが身近になるきっかけとなりました。

そしてIMAXのもうひとつの転機となったのが、2008年に発表された「IMAXデジタル・シアター・システム」です。これは従来のIMAX用の70ミmmフィルムに代わり、2台のDLP Cinemaプロジェクターを使って上映するデジタル上映のこと。完璧にチューニングされたサウンド、レーザー調整による音響配置、抜群の明るさと鮮明度、独自の反射型スクリーンで一層の明るさを実現させました。

このデジタル化によって、IMAXは身近なシアターシステムとして劇場鑑賞者だけでなく、映画製作者たちの間でも存在感を高めていきます。2009年には、日本の109シネマズで「IMAXデジタルシアター」がオープン。「トランスフォーマー」「トロン:レガシー」「アバター」のIMAX 3D版が上映されました。IMAXならではの明るい画面と、画面いっぱいに広がる巨大な3D映像とは相性もよく、これらの作品がIMAXの認知度を高めることに寄与しました。

IMAX映画の特徴とは?

一般に映画館に使われる主な画面アスペクト比(縦横のサイズ)といえば、スタンダードサイズ(1.375:1)、アメリカンビスタ(1.85:1)、シネマスコープ(2.35:1)と横に広がっていくのが特徴。映画館でも、予告編が終わってカーテンが横に広がると、いよいよ映画が始まるんだというワクワク感を抱く人が多いのではないでしょうか。

それに対して、IMAXスクリーンの画面アスペクト比のフルサイズは1.43:1と、通常の映画スクリーンより上下に広がって、正方形に近い形になっているのが特徴です。そして、IMAX(R)シアターでのみ、IMAX(R)カメラで撮影されたシークエンスがスクリーン全体に広がり、観客はこれまでにない鮮明さと明瞭さでより多くの画像を体験できます。これにより、従来よりも映像空間が広がることとなり、映画に包み込まれるような没入感が体感できるのです。

通常スクリーンとIMAXスクリーンの比較イメージ。通常スクリーンに比べて、画角が上下合計で約40%も拡がります

通常スクリーンとIMAXスクリーンの比較イメージ。通常スクリーンに比べて、画角が上下合計で約40%も拡がります

ちなみに現在、日本でこのフルサイズ画面を体感できる劇場は、大阪の「109シネマズ大阪エキスポシティ」(IMAX初上映が行われた大阪の万博記念公園の一角で営業するシネコン)と、東京・池袋の「グランドシネマサンシャイン」で、4Kデュアル・プロジェクター「IMAXレーザー/GTテクノロジー」という最新技術を導入した2劇場のみ。もし近くにこの劇場がある場合は、体感しに行ってみてはいかがでしょうか?

IMAXを語るうえで外せない名作映画

さて、これまで上映システムとしてのIMAXの歴史を振り返ってみましたが、IMAXのポテンシャルを生かすためには、やはりIMAX社が開発したIMAXカメラを使用して撮影されていることが有効となります。しかし当然ながらこのIMAXカメラは非常に高価になりがちであり、台数も少なく、それゆえにIMAXカメラで撮影された劇映画はそれほど多くはありません。

IMAXを語るうえで重要人物をあげるとするならば、まずクリストファー・ノーラン監督の名前は外せないところです。「メメント」で注目を集めた彼は、「ダークナイト」をはじめとした「バットマン」シリーズで一躍ヒットメーカーの仲間入り。その後も作家性と娯楽性を兼ね備えた映像作家として、孤高の地位を確立しています。

完璧主義と呼ばれる彼は、このデジタル全盛の時代に、アナログにこだわりを見せていることでも知られています。そんな彼が近年の作品でこだわっているのが、フィルムのIMAXカメラで撮影するということ。その理由として「フィルムのほうが、画質がいいから」だと言いきっています。

「ダークナイト」
監督:クリストファー・ノーラン/出演:クリスチャン・ベール、マイケル・ケイン、ヒース・レジャーほか

『ダークナイト』ダウンロード販売中、デジタルレンタル中/<4K ULTRA HD&ブルーレイセット>(3枚組)5,990円 (税別)/ブルーレイ 2,381円(税別)/DVD 1,429円(税別)/ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント/(C)2008 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. BATMAN and all related characters and elements are trademarks of and (C)DC Comics.

「ダークナイト」ダウンロード販売中、デジタルレンタル中/<4K ULTRA HD&ブルーレイセット>(3枚組)5,990円 (税別)/ブルーレイ 2,381円(税別)/DVD 1,429円(税別)/ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント/(C)2008 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. BATMAN and all related characters and elements are trademarks of and (C)DC Comics.

▼あらすじ
ゴッサム・シティに、究極の悪が舞い降りた。ジョーカー(ヒース・レジャー)と名乗り、犯罪こそが最高のジョークだと不敵に笑うその男は、今日も銀行強盗の一味に紛れ込み、彼らを皆殺しにして、大金を奪う。この街を守るのは、バットマン(クリスチャン・ベール)。彼はジム・ゴードン警部補(ゲイリー・オールドマン)と協力し、マフィアのマネー・ロンダリング銀行の摘発に成功する。資金を絶たれて悩むマフィアのボスたちの会合の席に、ジョーカーが現れる。「オレが、バットマンを殺す」。条件は、マフィアの全資産の半分。しかし、ジョーカーの真の目的は、金ではなかった。ムカつく正義とやらを叩き潰し、高潔な人間を堕落させ、世界が破滅していく様を特等席で楽しみたいのだ。ジョーカーが仕掛ける生き残りゲームがついに始まった。

公開当時の資料によると「ダークナイト」では、冒頭の6分間を含め、6つの大きなアクションシーンで65mmフィルムのIMAXカメラを使用。部分的にでもIMAXカメラを使って撮影された長編大作映画はこれが初だったそうです。カーチェイスのシーンでは、1台30万ドルとも言われる巨大で重いIMAXカメラをアクションシーンに持ち込んだことにより、当時4台しかなかったという貴重なIMAXカメラのひとつが壊れてしまうというハプニングも逸話として残っています。しかし、カメラは壊れてもフィルムは無事だったため、我々は今でもその映像を楽しむことができるのです。

その後も彼は、「ダークナイト ライジング」「インターステラー」「ダンケルク」など、新たな作品を発表するごとにIMAXカメラの革新的な使用法を模索、提示してきました。そして、2020年9月18日に日本で公開が始まったばかりの最新作「TENET テネット」でも、IMAXカメラで撮影を敢行しています。

本作については、IMAX社CEOリチャード・ゲルフォンド氏があるインタビューで「映画に入り込む体験がこんなにすばらしいものだということを忘れていました。『TENET テネット』は本当に美しくすばらしい映画だと、ポストプロダクションに参加した多くのスタッフから聞いています」とコメントしたことが報じられており、公開前から期待が高まっていた作品でした。ぜひ、映画館へ体験しに行ってみてはいかがでしょう?

「TENET テネット」/(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved/IMAX(R) is a registered trademark of IMAX Corporation. IMAX 3D and IMAX DMR are trademarks of IMAX Corporation./IMAXコーポレーションによると、グランドシネマサンシャインの「TENET テネット」IMAXのオープニング興行収入(公開後4日間の興行収入)は、全世界のIMAXシアターにおいて世界第1位となる成績を収めたそうです(グランドシネマサンシャインのプレスリリース資料より)

「TENET テネット」/(C)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved/IMAX(R) is a registered trademark of IMAX Corporation. IMAX 3D and IMAX DMR are trademarks of IMAX Corporation./IMAXコーポレーションによると、グランドシネマサンシャインの「TENET テネット」IMAXのオープニング興行収入(公開後4日間の興行収入)は、全世界のIMAXシアターにおいて世界第1位となる成績を収めたそうです(グランドシネマサンシャインのプレスリリース資料より)

いっぽう、IMAXカメラのデジタル化も進んでいます。2016年の「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」では、本編中のおよそ15分のシークエンスをARRI社の「Alexa IMAX」というデジタルカメラで撮影。この作品で手応えをつかんだ監督のルッソ兄弟は、続く「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」と「アベンジャーズ/エンドゲーム」の2部作を全編ARRI社の「Alexa 65 IMAX」というデジタルカメラで撮影しました。

デジタルIMAXカメラで映画全編を撮影するのは、これがハリウッド映画初のこととなります。ちなみにこの作品がIMAXシアターで上映された際は、IMAX画角が1.90:1に広がり、通常シアターに比べて約26%増となって情報量も増えました。

家庭でもIMAX体験を楽しめるように

さて、劇場ならではの極上体験をもたらすIMAXですが、このIMAX体験を家庭でも楽しめるようにした認証・ライセンスプログラム「IMAX Enhanced」が2018年に発表されました。画質、色彩、音質などIMAXが要求する数多くの厳格な性能基準を満たした認証機器と、IMAX独自にデジタルリマスターされた4K/HDRコンテンツ、DTSオーディオテクノロジーを組み合わせることで、家庭でもIMAX体験を楽しめるというものです。

IMAX Enhancedに対応する機器を揃えれば、おうちにいながらIMAX体験できる!

IMAX Enhancedに対応する機器を揃えれば、おうちにいながらIMAX体験できる!

日本では、現時点でソニーのテレビ「BRAVIA」や、オンキヨー/パイオニア/デノン/マランツのAVアンプがIMAX Enhanced対応機器として一般発売されています。

そして、IMAX Enhancedに対応したコンテンツは「TSUTAYA TV」が独占配信中です。IMAX独自のアスペクト比で特別に制作された40分間のシーンを含む「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」をはじめ、「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」「バイオハザード:ザ・ファイナル」といった作品がIMAX Enhanced対応作品として配信されています。IMAX Enhancedはまだ始まったばかりですが、今後の展開に注目したいところですね。

IMAX Enhanced対応作品は、TSUTAYA TVにて配信中

IMAX Enhanced対応作品は、TSUTAYA TVにて配信中

「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」(C) 2019 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved. | MARVEL and all related character names: (C) & (TM) 2020 MARVEL./「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」(C) 2017 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved./「バイオハザード:ザ・ファイナル」(C) 2016 Constantin Film Produktion GmbH. All Rights Reserved.

「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」(C) 2019 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved. | MARVEL and all related character names: (C) & TM 2020 MARVEL./「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」(C) 2017 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved./「バイオハザード:ザ・ファイナル」(C) 2016 Constantin Film Produktion GmbH. All Rights Reserved.

IMAX Enhancedに対応するソニーの有機ELテレビ「BRAVIA A9G」シリーズ

IMAX Enhancedに対応するソニーの有機ELテレビ「BRAVIA A9G」シリーズ

同じく、IMAX Enhancedに対応するマランツのAVアンプ「SR6015」

同じく、IMAX Enhancedに対応するマランツのAVアンプ「SR6015」

まとめ

以上、簡単にIMAXの歴史と魅力について振り返ってみました。先述した「TENET テネット」のほか、「007ノータイムトゥダイ」「ワンダーウーマン1984」などの作品が今後IMAXでの上映を予定しています。「映画に行く」ということが少し特別なことになった今こそ、改めてIMAX映画を楽しみに出かけてみるのもいいのではないでしょうか?

IMAX(R) is a registered trademark of IMAX Corporation.

壬生智裕

壬生智裕

福岡県生まれ、東京育ち。映像制作会社勤務を経て、フリーランスの映画ライターとして活動中。編集者として、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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