選び方・特集

自宅にいる時間が増えた今だからこそじっくり聴きたい定番ヘッドホン

自宅にいる時間が増えた今だからこそじっくり聴きたい定番ヘッドホン

コロナ禍の影響も徐々に低減してきた感のある昨今ながら、まだまだ予断を許さない状況であるのは確か。withコロナ時代のライフスタイルとして、テレワークはまだまだ続いており、同時にインドア趣味にも注目が集まっている。そんな時代だからこそ、自宅でもじっくりと音楽を楽しんではいかがだろうか。

自宅で音楽を聴く場合、屋外で利用していた完全ワイヤレスイヤホンをそのまま使っている人がいるかもしれない。しかし、完全ワイヤレスイヤホンはワイヤレスという便利さがあるものの、カナル型イヤホンは長時間装着し続けるには厳しい面もある。そこでぜひ注目してほしいのが、アラウンドイヤータイプの有線ヘッドホンという選択肢だ。

ヘッドホン、とくにアラウンドイヤータイプの本格派ヘッドホンは、長時間の装着も快適に過ごせるし、何よりも音がいい。いや、正確にいうのであれば、ワイヤレスよりも音質面でのコストパフォーマンスが高い。有線ヘッドホンは回路構成がシンプルで、かつBluetoothワイヤレスのようなコーデック等の縛りがないため、良音質を低価格で実現できるからだ。また、バッテリーなども搭載していないため、同じヘッドホンタイプの製品よりも重量が軽く、装着感も軽快だったりする。

そんな、“ケーブルがあること”以外は数多くのメリットをもつ有線ヘッドホンを、これを機会に、手に入れてみるのはいかがだろうか。なかでも、ロングセラーを続ける定番ヘッドホンは手元に1台は置いておきたい。ロングセラーを続けている、ということは、音質や装着感にアドバンテージを持っている証拠だったりもする。シンプルに、出来のよいヘッドホンだからこそ、ロングセラーモデルたりうるのだ。

そこで、今回は数多くある定番ヘッドホンの中から、筆者の注目モデルを紹介していこう。どれを手に入れても間違いのないものばかりなので、ぜひこの記事を読んでしっくり吟味し、自宅オーディオの友として大いに活用して欲しい。

注目機種1 ソニー「MDR-1AM2」

ソニー「MDR-1AM2」

ソニー「MDR-1AM2」

ソニーは定番モデルのヘッドホンと呼べるものがいくつもある。しかしながら、そのなかでも特にイチオシなのが「MDR-1AM2」だ。

軽快な重量と、スイーベル機構など持ち運びが手軽なポータブルヘッドホンともいえる「MDR-1AM2」だが、小柄なハウジング部ながらしっかりアラウンドイヤーパッドを採用しているし、装着感もなかなかに良好。そして、肝心の音質面でも緻密でていねいな表現を持ち合わせている。どんな音楽でもそつなくこなすというか、描写は正しいのにとても音楽が楽しく感じられるサウンドに仕立てられているのだ。

人によってはモニターヘッドホンとして利用しているほど緻密な表現が伝わり、それでいて躍動感あふれる表現によって迫力のサウンドが楽しめる。正直いって、ここまで優等性なヘッドホンはそうそうない。一度その音を聴くと手放したくなくなる、ずっと聴いていたくなる魅力的な製品だ。

注目機種2 ゼンハイザー「HD600」

ゼンハイザー「HD600」

ゼンハイザー「HD600」

モニターヘッドホンの雄、ゼンハイザーからは「HD600」を取り上げたい。

数あるゼンハイザーのヘッドホンの中から「HD600」シリーズ、それも元祖といえる「HD600」をピックアップしたのか。一時中断していた製造が復活したほど、モニターヘッドホンとして根強い人気を保ち続けている定番中の定番ということもあるが、後継モデルとして「HD650」があり、さらにどんな環境でも実力を発揮できるなりやすさを実現した「HD660S」もある中、あえて「HD600」をイチオシとするには理由がある。それは、「HD600」のサウンドが長時間聴きやすく、かつ音の本質が伝わりやすいからだ。

「HD600」は、DF補正カーブという、人間の耳の構造に合わせた帯域バランス補正にのっとってサウンドチューニングされた製品となっている。実はこのDF補正カーブ、“前方の音”に対する補正のみ対応していることから、現在はあまり利用されていないのだが、単純に音色傾向としてみると、高域が鋭過ぎることなく、低域も無駄に膨らまず締まりがあったりする。よって、長時間聴きやすく、開放型ハウジングの恩恵も手伝って音もクリアに聴こえる。元々プロ用モニターヘッドホンなので言わずもがなかもしれないが、自宅で長時間活用するには相性のよい製品だ。

注目機種3 AKG「K240 MKII-Y3」

AKG「K240MKII-Y3」

AKG「K240 MKII-Y3」

モニターヘッドホン、もうひとつの雄であるAKGからは、AKGらしいサウンドを楽しめる「K240 MKII-Y3」を推したい。

こちら、定番中の定番といえるプロ向けのモニターヘッドホンで、いまでも高い人気を保ち続けているシリーズだ。密閉型の「K271 MKII-Y3」も存在するが、半開放型という音漏れが多少あるのにもかかわらず、こちらの方が人気が高かったりする。それは、AKGらしい広がり感のあるサウンドを持ち合わせているからだ。
AKGらしいサウンド、というのは人によっていろいろな感じ方があるかもしれないが、多くのユーザーに共通しているのが、ヌケのよい音と、空間的に広がり感を感じる音、という2つだろう。女性ボーカルの存在感がとても強く、かつ伸びやかな歌声を聴かせてくれるので、本当にこれがモニターヘッドホンなのだろうか、と疑ってしまうほど。それほどまで、魅力的なサウンドを楽しませてくれるのだ。ゆえに、自宅リスニングにはもってこいの製品といえる。

ちなみに、「K240 MKII-Y3」のオリジナルモデル「K240-Y3」も現在まで継続販売されており、こちらも悪くない。聴き比べてどちらが好みに合うかじっくり吟味するのもいいし、価格もそれほど高くないので、筆者のように両方入手するというのもいいだろう。

注目機種4 AKG「K701-Y3」

AKG「K701-Y3」

AKG「K701-Y3」

AKG好きの筆者から、もうひとつ紹介したい製品がある。それは「K701-Y3」だ。

以前記事を書かせてもらったが、「K701」シリーズの出発点といえるオリジナルモデルが、なんと、現在も販売されているのだ。生産がオーストリアから中国へと代わり、細かい部分が多少変わっているものの、そのサウンドは健在。本当にヘッドホンなのだろうか、と思えるくらい大きな空間的広がり感を持つ、清々しいサウンドを聴かせてくれる。しかも、オーストリア生産モデルを購入した筆者が思わず涙してしまうほど、格安の金額で販売されていたりもする。あのサウンドクオリティでこの金額は、かなりお買い得と言えるだろう。

注目機種5 オーディオテクニカ「ATH-AD900X」

オーディオテクニカ「ATH-AD900X」

オーディオテクニカ「ATH-AD900X」

ポータブルから本格派モニター、DJ用まで、さまざまなヘッドホンをラインアップしているオーディオテクニカだが、室内でじっくりと音楽を楽しむなら、ぜひ開放型の定番ロングセラーモデル「ATH-AD900X」に注目だ。

ADシリーズの特徴は、なんといっても開口部の広い開放型ハウジングと大型ドライバーユニットが生み出す、良好なステージングと、クリアで伸び伸びとしたサウンドだろう。もちろん、ADシリーズにはその上に2モデル、さらにフラッグシップとして「ATH-ADX5000」も存在しているが、ADシリーズならではの魅力をしっかり保ちつつコストパフォーマンスのよさも両立させている、というと、やはり「ATH-AD900X」だろう。女性ボーカルが生き生きとした歌声を聴かせてくれるし、Jポップからクラシックまで、素直な音色で迫力を損なわず表現してくれるので、どんなジャンルの音楽でも十分に楽しむことができる。ただし重低音は皆無なので、EDM型を存分の迫力でという人は要注意。その分、長時間に渡って音楽を楽しみ続けられる良質なサウンドを持ち合わせている。こちらも、いちどはチェックしてみて欲しい、魅力的なサウンドを持つ製品と言える。

注目機種6 STAX「SR-L300」+専用アンプ「SRM-353X」

STAX「SR-L300」

STAX「SR-L300」

ここからは、趣を変えて高額な製品を2つほど紹介していこうと思う。まずはSTAXから。
いまでこそ音楽再生機器の主流となっているものの、その昔、ヘッドホンといえばオーディオアクセサリーのひとつにカテゴライズされ、“本格派のオーディオ製品ではない”とまで言われることもあった。そんなヘッドホンの冬の時代にも、唯一、多くの人に認められていた例外中の例外といえる製品がある。それがSTAXブランドのヘッドホンだ。

静電型(エレクトロスタティック)やコンデンサー型と呼ばれる特殊なドライバーユニットを採用し、専用のヘッドホンアンプを使用するSTAXは、その表現力の高さ、緻密さから、音楽の本質がしっかり伝わってくると、高い評価を得て現在まで製造が続けられている。実際、静電型ユニットを搭載する製品は他のメーカーからいくつも発売されているが、その大半はSTAXの規格に準拠した仕様となっている。それほどまでに、STAXの影響力は強く、かつ、長く愛され続けているヘッドホンブランドなのだ。

そんなSTAXらしさがしっかりと味わえるのが、「SR-L300」と専用アンプ「SRM-353X」の組み合わせだ。STAXには「SRS-3100」という「SR-L300」と専用コンパクトアンプを組み合わせたモデルも用意されているが(こちらはこちらで静電型ユニットのよさが味わえる)、よりSTAXらしさを堪能できるのは「SR-L300」+「SRM-353X」の組み合わせだろう。こちらであれば、空間表現やディテールのきめ細やかさなど、STAXならではの別世界サウンドの魅力をそん色なく享受できるからだ。もちろん、ヘッドホンもアンプも上位モデルにシフトすればするほど段階的に音質がよくなっていくので、ある意味、泥沼に一歩踏み出すきっかけの製品、といえないこともないが。ともかく、静電型ユニットの魅力をしっかりと享受できる製品であることは確かだ。

このようにSTAX製品は、アンプが専用となるため金額面では不利な部分もあるが、今回取り上げた「SR-L300」+「SRM-353X」システムであれば10万円強で入手できるし、クラシックや映画&アニメのサウンドトラックなどをメインに聴く人には、真っ先に検討してほしい製品だったりもする。ぜひ一度、そのサウンドを体験して欲しい。

注目機種7 HEDD「HEDDphone」

HEDD「HEDDphone」

HEDD「HEDDphone」

最後に紹介するのは、定番ではなく、今年登場したばかりの製品。新興ブランドHEDDの「HEDDphone」だ。

新興ブランドとはいっても、こちらモニタースピーカーで有名なADAM Audioの創業者であるクラウス・ハインツ氏が新たに起こしたメーカーで、「HEDDphone」に使われているドライバーユニットも、ADAMスピーカーなどに採用されているAMT(エアモーショントランスフォーマー)をフルレンジ化したもの。

最初その情報を知ったとき、いやいやそれ無理でしょうと思ったものの、実際のサウンドを聴いてみるとこれがなかなかのもの。ハイスピード、かつ正確な抑揚描写で、エネルギッシュさとクリアさを併せ持つ、とても上質なサウンドを聴かせてくれたのだ。

当然ながら、組み合わせるヘッドホンアンプはそれなりの実力を要求するため、スマートフォンはおろか、DAP直でも厳しい(PC直も論外)。イヤーパッドに厚みがあるため、装着感こそ良好であるものの、大柄な本体であることは確かなので、決して扱いやすいとはいえず、室内専用といえる製品となっている。しかしながら、このサウンドを聴けばどうしても欲しくなってしまう、音質的な魅力にあふれている製品だったりもする。確かに高価だが、それでも欲しくなる、なかなかに魅力的なサウンドを持つ製品だ。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどのオーディオビジュアル系をメインに活躍するライター。TBSテレビ開運音楽堂にアドバイザーとして、レインボータウンFM「みケらじ!」にメインパーソナリティとしてレギュラー出演。音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員も務める。

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