選び方・特集
Lightningポートに挿すだけで使える3モデルを紹介

Apple Musicでハイレゾ配信が開始された今だから選ぶ「Lightning DAC」

ついにApple Musicでロスレス/ハイレゾ配信がスタート。2021年4月時点でカタログにある7,500万曲がALAC(Apple Lossless)を利用したロスレスフォーマットで配信され、48kHz/24bit以上のハイレゾはそのうち100万曲でスタートする。これだけの刷新にもかかわらず価格は据え置きの980円/月というのだから、エンドユーザとしては大歓迎だ。

ポータブルオーディオファンとして気になるのは、そのうち「ハイレゾ」の部分。Bluetoothは再生時に必ず非可逆圧縮(ロッシー)されるため除外するとして、Lightningポートに挿して使うヘッドホンジャックアダプターはチップの制約上48kHz/24bitが上限で、ハイレゾ再生環境としては満足できない。

ハイレゾ再生に対応することはもちろんLightningポートに挿すだけで使えてコンパクト、音質にこだわったDAC兼ヘッドホンアンプ、名付けて「Lightning DAC」はないものか? ということで、3つの製品をピックアップした。Apple Musicでロスレス/ハイレゾ再生を楽しむための参考にしていただきたい。

ついにApple Musicのロスレス/ハイレゾ再生がスタート。「Lightning DAC」に注目だ

ついにApple Musicのロスレス/ハイレゾ再生がスタート。「Lightning DAC」に注目だ

「Lightning DAC」に求められる条件とは

Lightning端子は仕様としてフルデジタルであり、iPhoneなどハードウェアから出力されるオーディオ信号もデジタルのみ。このLRのデジタル信号をどう処理するかが、「Lightning DAC」に求められるのだ。

Lightningポートに挿して使うヘッドホンジャックアダプターには、必ずDAC回路を備えたチップが搭載されているものの、iOSの制約により扱えるオーディオ信号は48kHz/24bitが上限なうえ、LAM(Lightning Audio Module)と呼ばれるApple認定のICを搭載せねばならない都合上、それ以上のサンプリング周波数/ビット深度を実現することが難しい。

しかし、信号を変換すると事情は変わってくる。Apple純正のアクセサリーとして提供されている「Lightning - USBカメラアダプタ」のように、Lightningの信号をUSBに変換すれば、いわゆる「USB DAC」などのUSBオーディオ機器で入力できる。この方法でiPhoneをデジタルトランスポーターとして活用しているオーディオファンも多いはずだ。

簡単にいえば、このしくみをコンパクトにまとめたデバイスが「Lightning DAC」だ。ただし、全体をコンパクトにまとめる都合上、USBホスト機能(USB OTG)を利用するため、オーディオデバイス側はUSB OTGをサポートしなければならず、接続にもOTG対応のLightningケーブルを利用することになる(iPhoneに付属のLightning - USB-Cケーブルは利用できない)。DAPがUSB DAC機能とType-C端子を備えているからといって、必ずしもLightning DACとして使えるわけではないことには留意したい。

Apple Musicでアルバムを表示すると、ロゴの有無でロスレス/ハイレゾ配信かを確認できる

Apple Musicでアルバムを表示すると、ロゴの有無でロスレス/ハイレゾ配信かを確認できる

Apple Musicでハイレゾ再生する時には、設定アプリで「ハイレゾロスレス」を選択する

Apple Musicでハイレゾ再生する時には、設定アプリで「ハイレゾロスレス」を選択する

1. Lotoo「PAW-S1」

Lotoo「PAW-S1」

Lotoo「PAW-S1」

ハイエンドDAPで名を馳せるLotooの「PAW-S1」は、PAWシリーズのいわば末弟。しかし、基本アーキテクチャは兄貴分たる「PAW Gold Touch」や「PAW 6000」と同じ、DACチップにはDSD128/PCM384kHz対応の「AKM4377」、独立したアンプチップ(TI OPA1622)、4.4mmバランスと3.5mmシングルエンドのデュアル出力という"てんこ盛り"の内容だ。THD+Nも-108dB(0.0004%)と、スティック型のポータブルアンプとは思えない瞠目すべき特性を備えている。

Lightning DACとしての使い方はシンプル、付属の(OTG対応)Lightningケーブルを使いiPhoneと接続するだけ。ボリュームボタンを搭載しているため、手もとで音量調整できるのがうれしい。再生中の曲のサンプリング周波数/ビット深度を内蔵するOLEDディスプレイで確認できることも、スティック型ポータブルアンプではなかなか得られない体験だ。ファンクションボタンを押せば、ゲインやEQ(プリセット)を変更することもできる。

Lotoo「PAW-S1」の同梱物

Lotoo「PAW-S1」の同梱物

LEDディスプレイにサンプリングレートなどのステータス情報が表示される

LEDディスプレイにサンプリングレートなどのステータス情報が表示される

側面にはボリュームボタンも用意されている

側面にはボリュームボタンも用意されている

特筆すべきは、そのサウンド。一聴してSNが高く、再生開始直後はこれがApple Musicの音かと一瞬疑ったほど。音の際が明瞭で立ち上がり/立ち下りが速く、アコースティックギターの透明感、ピアノのサスティーンの細やかさも自然だ。約1時間続けて試聴したが、ボディはそれほど熱くならなかったことにも言及しておきたい。

エントリークラスのDAP並みの価格帯だが、スマートフォンでストリーミング音源を中心にやり繰りしようと考える場合、この音質と取り回しのよさは十分比較対象になりうる。4.4mmバランス端子を装備することも、背中を押す材料になりそうだ。

2. Shanling「UA2」

Shanling「UA2」

Shanling「UA2」

巨艦DAP「M30」など意欲的なポータブル機器を立て続けに発表しているShanlingも、「UA2」というスティック型ポータブルアンプを発売している。製品に同梱されているケーブルはType-C to CとType-C to Aの2種類で、OTG対応Lightningケーブルは購入者特典扱い(しかも数量限定・なくなり次第終了)だが、その点さえ納得できればコストパフォーマンスにすぐれたLightning DACとなる。

DACチップにはESSの「ES9038Q2M」を採用、この小ささでDSD512/PCM768kHzに対応する。しかもオペアンプは独立型、LDOレギュレータまで搭載する念の入りようだ。端子は2.5mmバランスと3.5mmシングルエンドのデュアル出力、再生中の曲のサンプリング周波数により色が変化するLEDも用意されている。ボリューム機構はなくiPhone側で操作する点には留意したい。

Shanling「UA2」。2.5mmバランスと3.5mmシングルエンドのデュアル出力に対応

Shanling「UA2」。2.5mmバランスと3.5mmシングルエンドのデュアル出力に対応

iPhoneとともに持ち歩いてもじゃまにならないサイズ感だ

iPhoneとともに持ち歩いてもじゃまにならないサイズ感だ

Doobie Brothersの「Minute by Minute」(Apple Musicでは最大192kHz/24bit)を再生したところ、LEDがイエローに変わった

Doobie Brothersの「Minute by Minute」(Apple Musicでは最大192kHz/24bit)を再生したところ、LEDがイエローに変わった

音の傾向は明るめでエナジー感がありつつも、繊細な描写を思わせる。アコースティックな楽曲を主体に試聴したが、歪み感は皆無といっていいほどで、ハーモニクスの倍音成分が気持ちよく伸びる。立体・奥行きというよりは横方向に広い音場だが、静謐な音空間は圧縮音源では表現しきれなかった部分。10分ほど再生を続けるとボディがやや熱くなるものの、この小さなデバイスをiPhoneに挿すだけでこれだけの音を楽しめるのだから、むしろ取るに足りないことと思えてしまう。高い満足度を得られる1台だ。

3. IKKO「Music Patch ITM05」

IKKO「Music Patch ITM05」

IKKO「Music Patch ITM05」

IKKO(アイコー)の「Music Patch ITM05」は、先に紹介した2製品とは異なり、ケーブルを換装するのではなくType-CとLightningでそれぞれ別モデルとなっている。スティック型ではなく、スマートフォンの裏側に回り込むデザインとなっており、手に接する部分は合成皮革素材でクッションが効くうえ、粘着シートでぴたりと張り付いているため、iPhoneを手に持つ時もじゃまにならない。当然、ディスプレイを下向きにして置くと目立つものの、スティック型はiPhoneに傷をつけそうで抵抗がある、という向きにはいい代替案となるだろう。

DACチップにはCirrus Logicの「CS43918」を2基採用、DSD256/PCM384kHzをサポート。イヤホンジャックは2.5mmバランスと3.5mmシングルエンドの2系統が向きを180度変えて並ぶ(2.5mmジャックは本体の上側、Appleロゴの下あたり)。専用Dockユニットを使えばPCのUSBヘッドホンアンプとして活用できることも、ITM05独特の機能といえるだろう。

「Music Patch ITM05」はiPhoneの裏側に回り込ませて使用する

「Music Patch ITM05」はiPhoneの裏側に回り込ませて使用する

2.5mm端子を接続したところ。太身のプラグでもiPhone背面に干渉しないよう、高さが考慮されている

2.5mm端子を接続したところ。太身のプラグでもiPhone背面に干渉しないよう、高さが考慮されている

専用Dockユニットを使えばMacBook Air(M1)にも接続できる

専用Dockユニットを使えばMacBook Air(M1)にも接続できる

そのサウンドは見通しよく、明瞭な定位感が印象に残る。デュアルDACの恩恵か左右のセパレーションにすぐれ、ボーカルの立ち位置がくっきりと感じられる。端子がiPhoneの中央部に位置する2.5mmジャックも、端子がやや大きめのリケーブル(SAEC SHC-B120FS)を挿してもスペースに余裕があったことから、本体が浮き上がってしまうのでは? という心配はいらない。

惜しむらくは、サンプリングレートの違いを示す機構がない(再生中LEDは常にオレンジ)ことだが、Dockユニットに載せMacBook Airで確認したところ、Apple MusicやAmazon Music HDの192kHz/24bitの音源を正しく再生できていた。仕様として割り切るしかないだろう。

まとめ

2021年6月現在、iPhoneに直結してハイレゾ再生を可能にするコンパクトな「Lightning DAC」は、数が多いとはいえない状況だ。しかし、Apple Musicでロスレス/ハイレゾ配信が開始されたとなっては話が変わる。潜在的な市場規模を考えれば、今後より魅力的なデバイスが登場するはずで、ポータブルオーディオファンとしてはその動向を固唾を呑んで見守っていきたい。

海上 忍

海上 忍

IT/AVコラムニスト、AV機器アワード「VGP」審査員。macOSやLinuxなどUNIX系OSに精通し、執筆やアプリ開発で四半世紀以上の経験を持つ。最近はAI/IoT/クラウド方面にも興味津々。

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