選び方・特集

実力派5モデルを厳選! “Hi-Fi”な小型アクティブスピーカーの魅力とチェックポイント

近年、「Spotify」や「Amazon Music HD」といった、定額制で聴き放題の音楽配信サービスの登場で、昔よりさらに音楽が身近になってきたことを感じる。特にロスレスやハイレゾで配信するサービスも増えてきている今、オーディオファンとしてはやはり、音のよいスピーカー再生で音楽を満喫したい。そこで筆者が最近注目しているのが、パソコンやスマホと組み合わせる「音のよいアクティブスピーカー」である。

アクティブスピーカーと聞くと、ひと昔前まで「パソコンの横に置くチープなスピーカー」という印象だった人も多いだろう。しかし現在は、多くのオーディオメーカーで音質にこだわった製品が開発されており、なかにはオーディオマニアもうなるような“Hi-Fi”と呼べる高音質モデルも登場しているのだ。

そこで今回は、そんな音のよい「Hi-Fiアクティブスピーカー」について解説していこう。その選択ポイントや魅力をはじめ、記事の後半では注目モデル5機種を紹介する。

アクティブスピーカーの魅力

最初に、そもそも音楽再生でアクティブスピーカーを使用することのアドバンテージを振り返ろう。それは何よりもまず、「スピーカー本体にアンプを内蔵していること」だろう。スマホやパソコン等のソース機器と組み合わせれば、スピーカーだけで音が出る、この手軽さがいいのだ。

別途アンプを購入しなくてもよいので、シンプルなシステムを構築できるのが強み

別途アンプを購入しなくてもよいので、シンプルなシステムを構築できるのが強み

また、一部のモデルはWi-Fi/有線LANに対応しており、家庭内のLAN環境を利用してインターネットに接続すれば、それ単体でSpotifyなどの音楽配信サービスを再生できるものもある。この場合、スピーカー本体のほかには、リモコン代わりとなるスマホ/タブレットだけあれば音楽ストリーミング再生を楽しめる。

続いて、アンプを設置する必要がないため、設置スペースに余裕が生まれるのもよい。リビングからデスクトップまで幅広い場所に置きやすいのは、アクティブスピーカーならでは。さらに最近では、小型でも音がよいモデルが多い。スピーカーユニットとマッチングが取れたアンプが最初から搭載されているので、スピーカーとアンプの音色/音調の相性がよく、低域のリニアリティが高いのも魅力だ。

このように魅力的な特徴が多いアクティブスピーカーだが、欠点としては、逆に「アンプを選べないこと」があげられる。つまり、自分好みに音色/音調をもつアンプを組み合わせたり、スピーカーケーブルを変えて音の変化を楽しむという、オーソドックスなオーディオ的楽しみは少ない。アクティブスピーカーで音色や音調を変えたい場合は、パソコン等のソース機器とスピーカーをつなぐデジタル/アナログのケーブルを変えるくらいしか方法がない(音質調整機能が付いているストリーミング/音楽再生用アプリがあれば、低域や高域の量を変えることは可能である)。

高域や低域を可変できるトーンコントロール機能付きモデルは、音色を自分好みに調整したり、部屋の壁面などの設置時に時折起きる低域のダブつきも低減できる

高域や低域を可変できるトーンコントロール機能付きモデルは、音色を自分好みに調整したり、部屋の壁面などの設置時に時折起きる低域のダブつきも低減できる

Hi-Fiなアクティブスピーカーの選択ポイント

音のよいアクティブスピーカーを選択するとき、音質以外にも多くのポイントがある。ここからはそれを解説していこう。

▼エンクロージャー(ボディ)サイズとデザイン

結論から言ってしまうと、自分の好みに合わせるのが最もよいのだが、一般的にはエンクロージャーが大型のモデルほど低域の再生能力に余裕があり、低域の迫力やリアリティが増える傾向にある。ただ上述のとおり、最近は小型でも音がよいモデルが多い。デザインについては、先進的なものもあれば、昔ながらのトラッドなものまでさまざまなモデルが出ているので、部屋のインテリアとの相性も合わせつつ選びたい。

▼入力インターフェイスの種類

有線接続の場合はデジタル入力とアナログ入力があり、前者はUSBポートか、光/TOSのデジタル音声入力端子、後者はRCAのライン入力端子か、3.5mmステレオミニジャック用の入力端子を備える。なお、無線接続ではBluetooth、さらには有線/Wi-FiなどのLAN入力に対応したモデルもある。

▼ボリュームの有無

意外と盲点になりやすいのがボリュームの有無。多くの製品にはつまみなどのボリューム調整機能が搭載されているが、業務用モデルの流れを汲む一部のアクティブスピーカーだとボリューム調整機能が付いていないモデルもあるので注意したい。この場合は、再生機器となるスマホやパソコンのOS/ソフトウェアでボリューム調整する必要がある。

入力インターフェイスやボリュームの有無などは製品によって仕様が異なるので、自分の再生環境に合うものを必ず購入前に確認しよう

入力インターフェイスやボリュームの有無などは製品によって仕様が異なるので、自分の再生環境に合うものを必ず購入前に確認しよう

▼スピーカーユニット構成

主にデスクトップで使用するアクティブスピーカーのユニット構成は、1基のユニットで高域から低域まですべてを担当するフルレンジタイプか、高域と中低域がそれぞれ1基のユニットで独立する2ウェイタイプになる。フルレンジタイプは音のまとまりがよく、2ウェイタイプは高域から低域までがワイドに聞こえるが、どちらかが絶対すぐれているというわけではない。

▼アンプの出力(ワット)数

アンプのワット数については、一般的に数字が大きいほうが大音量に強く、小音量時も音が明瞭だと言われるが、こちらも絶対ではないので参考程度にとらえていただきたい。それよりも、スピーカーの音を決めるのは、キャビネットの剛性やスピーカーユニットの性能、内部の音声処理の精度、内蔵アンプ性能などの影響力のほうが大きい。また、2ウェイ型モデルの一部には高域と中低域ユニットをそれぞれ1基のアンプで駆動し、音質を高める「バイアンプ」方式を採用したモデルもある。

また、アンプやソース機器などと比べると、スピーカーはいちばんコスト(金額)の音質的な影響が大きいオーディオ機器である。よい音を出そうと思ったら、コストのかかっているスピーカーのほうが特に有利となる場合が多い。

接続方法の音質的なポイント

アクティブスピーカーとパソコンの接続方法は、搭載される入力端子に左右されるが、最も汎用的で音がよいのはUSBケーブルによる有線接続だ。どこまでのスペックに対応するかはモデルによるが、現在日本で公式に聴取できる音楽配信サービスの中で最上の音質である「Amazon Music HD」の最大192kHz/24bitまでUSB入力でサポートするHi-Fiアクティブスピーカーも多くある。

そのほか、パソコンのヘッドホン出力端子とアクティブスピーカーのアナログ入力端子をアナログケーブルで接続する方法がある。この場合はデジタル接続ほどの音質は期待できないものの、手軽に接続できるというメリットがある。

Bluetooth接続に対応しているモデルであれば、パソコンやスマホとスピーカーをワイヤレス接続して、ケーブルレスで音声伝送が可能だ。最近のBluetooth対応アクティブスピーカーは、高音質コーデック「aptX」や「LDAC」に対応しているモデルもあるので注目されたい。

注目のHi-Fiアクティブスピーカー5選

ここからは、筆者がこれまで聴いたHi-Fiアクティブスピーカーの中から、注目したいモデル5機種を紹介しよう。特にコンパクトで設置性もよい製品を厳選してみた。なお先述した通り、スピーカーは特にコスト的な影響が大きいオーディオ機器である。今回ピックアップした5機種が、本体サイズを問わず一般的なスピーカーより比較的高価格な部類に入るのも、そのあたりの理由が大きい。

▼プリンストン「Edifier S880DB」

1996年5月に中国・北京に設立された、現在はPCスピーカーメーカーとして製品を世界展開しているEdifier(エディファイア)社製のモデル。95mmメタルダイヤフラムベースと19mmチタンラミネートツイーターを搭載する2ウェイ型で、実用最大出力はツイーター部が12W+12W、バス部が32W+32W。再生周波数帯域は55Hz〜40kHzをカバーし、ハイレゾ対応認証も取得していることに注目。本体サイズは138(幅)×230(高さ)×168(奥行)mmで、重量は約7.5kg(1基あたり)。

内部には、XMOS社製およびTexas Instruments社製のオーディオプロセッサーを搭載。音声入力端子は、RCAアナログ/光デジタル/同軸デジタル/USBを備え、USBと光/同軸デジタル経由で192kHz/24bitまでの入力ソースに対応するほか、Bluetooth接続にも対応する。スピーカー背面には、低音・高音の音量調節ダイヤルを搭載。実際に鳴らしてみると、音離れがよく明るいサウンド。コンパクトなわりに低域もしっかりとしており、スピード感が高い。

▼クリプトン「KS-11」

これまでクリプトンが手がけてきたアクティブスピーカー「KSシリーズ」に共通する、フルデジタル信号処理思想を継承したモデル。フルデジタルアンプの出力は35W+35Wを確保。筐体は高剛性アルミ押し出しフレームを採用したバスレフ方式としており、内部にはデンマークのTymphany社製6.3cmコンケーブ・メタルコーンフルレンジ型ユニットを搭載する。再生周波数特性は70Hz〜20kHz。ネオフェードカーボンマトリックス3層材をインシュレーターとして使用するなど、同社のピュアオーディオのノウハウを生かした設計になっている。本体サイズは89.5(幅)×176.5(高さ)×105(奥行)mmで、重量は約8.0kg(1基あたり)。

音声入力端子はUSB/3.5mmステレオミニジャック/光デジタル(TOSLINK)を装備し、USB入力経由で最大192kHz/24bitまでのハイレゾに対応する。Bluetooth接続にも対応しており、高音質コーデック「aptX HD」もサポートしている。今回紹介する中では最もコンパクトなモデルだが、一聴して再生能力の高さが感じられる。中高域はスムーズで低域のレスポンスも良好だ。

▼AIRPULSE「AIRPULSE A80」

英国の有名スピーカーデザイナーおよびオーディオエンジニアであるフィル・ジョーンズ氏が手がけるモデル。正統派のHi-Fiスピーカーの設計思想を受け継ぎ、11.5cmアルミニウム・コーン・フェライト・マグネット・ウーハーと、ホーン・ローデッド・リボン・ツイーターを搭載する2ウェイ型。再生周波数特性は52Hz〜40kHzの広域をカバー。内部には2基のTexas Instruments製クラスDアンプを搭載しており、それぞれウーハーとツイーターのL/Rチャンネルにブリッジモードで接続されている。筐体は厚さ18mmの高硬度MDF材で構成され、TRANSPARENT製の内部配線を採用するなどの高音質設計としている。本体サイズは140(幅)×250(高さ)×220(奥行)mmで、重量は約4.8kg(1基あたり)。

音声入力はRCAを2系統のほか、USBと光デジタルを備え、USBおよび光デジタル経由で最大192kHz/24bitまでの入力サンプルレートをサポートする。Bluetooth接続にも対応する。その音は、ホーン型のアドバンテージである飛び出しのよいサウンドで、低域も立体的で前へグイグイと音楽が迫ってくる。躍動的な音調を持つスピーカーだ。

▼GENELEC「G1」

近年、高性能モニタースピーカーを代表する存在となっているGENELEC(ジェネレック)が、ホームオーディオ用に手がけたモデル。音響的に配慮した流線型のフォルムと最適化されたアルミ・ダイキャスト構造、高性能レフポート・デザイン、低歪ドライバーなど、スタジオスピーカーゆずりの仕様を備える。メタルドームを採用した3/4インチツイーターと5インチウーハーを搭載する2ウェイ型で、それぞれのユニットを25W(合計50W)のクラスDアンプでドライブするバイアンプ構成としている。再生周波数特性は67Hz〜25kHz(-6dB)。本体サイズは121(横幅)×195(高さ)×114(奥行)mmで、重量は約1.4kg(1基あたり)。

音声入力端子はRCAアナログ入力を装備。そのほか、背面のディップスイッチで高域と低域のレベル調整が可能で、さらに室内の音響特性に再生音を最適化させるルーム・レスポンス補正機能も搭載するなど、機能性も高い。音を聴いてみると、やはりモニタースピーカー出身らしく帯域バランスはフラットで、コンパクトなサイズを感じさせない情報量と分解能にすぐれている。サウンドステージと音像表現もソースに忠実だ。

▼KEF「KEF LSX」

英国を代表するデザイナー、Michael Youngによる監修のモデルで、左右のスピーカー間をワイヤレスで接続することができる設計になっている。さらにIEEE 802.11a/b/g/nのWi-Fiに対応し、音楽配信サービスの再生にも対応。内部には、点音源再生を実現するKEF独自のドライバー「Uni-Q」と、115mmマグネシウム/アルミウーハー、19mmベンテッド・アルミドームツイーターを搭載しており、低域用70W、高域用30Wのアンプを左右独立に搭載する構成。また、KEF独自のDSP技術も採用。再生周波数特性は52Hz〜47kHz(スタンダード)の広域をカバーし、ハイレゾ対応認証も取得している。本体サイズは155(横幅)×240(高さ)×180(奥行)mmで、重量は約3.6kg (7.9lbs)/3.5kg (7.7lbs) (1基あたり)。

上述の通りWi-Fi接続に対応しており、専用アプリ「KEF Control」からのコントロールが行える。「Spotify」「TIDAL」などの音楽配信サービスのほか、「Roon」や「AirPlay 2」などにも対応する機能性の高いモデルとなっている。Wi-Fi以外の音声入力は光デジタル(TOSLINK)/3.5mmステレオミニで、Bluetooth接続にも対応。光デジタル経由で192kHz/24bitまでのハイレゾをサポートする。その音は、KEFが得意とするUni-Qドライバーの採用により、サウンドステージの立体感に長けている。音色、音調もソースに忠実で音楽表現の懐が深く、さすがといったところ。

まとめ

いかがだったろうか? 今回紹介した5つの注目モデルは、外観から接続方法、そして音質までオリジナリティがあり、選択の楽しみがある。もちろん、シンプルかつイイ音で音楽を楽しめることは共通のアドバンテージだ。

手軽に音楽を楽しめる配信サービスがソフトウェアとしての高いユーザビリティをもたらすなら、ハードウェア側としてそれをもたらしてくれるのがHi-Fiアクティブスピーカー。ぜひ自分と相性のよいアクティブスピーカーを見つけて、音楽ライフを豊かにしよう。

土方久明

土方久明

ハイレゾやストリーミングなど、デジタルオーディオ界の第一人者。テクノロジスト集団・チームラボのコンピューター/ネットワークエンジニアを経て、ハイエンドオーディオやカーAVの評論家として活躍中。

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