レビュー

Esoteric「N-05XD」とGENELEC「8331A」で試す“2点豪華主義的DACプリ&アクティブスピーカー”の世界

ネットワークDACプリ「N-05XD」

Esoteric「N-05XD」とGENELEC「8331A」で試す“2点豪華主義的DACプリ&アクティブスピーカー”の世界

かねてから関心があったものの導入しかねていたジャンル(?)の製品がある。いわゆる「DACプリ」、プリアンプとしての機能を備えたDACだ。パワーアンプの導入が前提となるため、普段プリメインアンプを使う拙宅ではDACの機能しか検証できていなかったが、ふと思いついた組み合わせをどうしても試してみたくなった。

その組み合わせとは、EsotericのネットワークDACプリ「N-05XD」と、GENELECの同軸3Wayスタジオモニターで最もコンパクトな「The Ones 8331A」。できるだけ空間をとらない、言ってしまえばミニコンポサイズで、1点ならぬ"2点豪華主義"の音を聴いてみたかったのだ。

改めて説明するまでもないが、デジタルオーディオにおいてDACは核心部分と言っていい。その点、N-05XDには「Master Sound Discrete DAC」がある。チャンネル当たり16のエレメントで構成される完全自社設計のディスクリートDAC -- コンデンサや抵抗など多数の部品で集積チップ(DACチップ)相当の機能を実現する回路 -- は、フラッグシップモデル「Grandioso D1X」の回路をベースに開発。現時点におけるEsotericの粋を集めたDACなのだ。

DACに加えてネットワーク再生機能を備えるところもポイント。USBメモリー/ストレージのファイル再生はもちろん、NASなどネットワークストレージ、さらにはSpotifyやTIDALといったストリーミングサービスまでカバーする。USB入力時はDSD 22.5MHz、PCM 384kHz/32bitに対応、MQAのフルデコードも可能と、対応フォーマットも申し分ない。

プリアンプ部にも妥協なし。フルバランスデュアルモノ構成、さらには正負の独立性を確保した「ESOTERIC-QVCSアッテネーターシステム」、スルーレート2,000V/μsというハイスピード素子を用いて電流伝送能力とスピードを追求した「ESOTERIC-HCLDバッファー」など、歴代Esotericプリアンプで培われた回路技術を採用する。バランスヘッドホン出力にまで対応するから、1台でいろいろ賄えてしまうのだ。

EsotericのネットワークDACプリ「N-05XD」

EsotericのネットワークDACプリ「N-05XD」

リアパネルには端子群がシンメトリーな状態で並ぶ(写真はR側)

リアパネルには端子群がシンメトリーな状態で並ぶ(写真はR側)

GENELEC「The Ones 8331A」

このネットワークDACプリをどう扱うべきか。パワーアンプをあてがうのが常道とはいえ、それではミニコンポサイズに収まるわけがないし、予算も果てしなく増えてしまう。だからアクティブスピーカーというのも...N-05XDのポテンシャルを引き出せるものがあるかどうか、という話だ。

その点、GENELECのThe Onesシリーズは期待できそう。同軸/2ウェイとスリット奥に隠れた2基の楕円形ウーハーによる3ウェイ構造で、点音源の理想を追求する。サイズ的にも、できるだけ空間をとらないという今回の趣旨に合う。これまで何度か試聴したことがあり、このアクティブスピーカーの素性ならN-05XDの実力を引き出せる、そう考えたのだ。

今回チョイスした8331Aはシリーズ中最も小ぶりながら、アンプ出力は低域用72Wに中域用36W、高域用36Wとパワーは十分。それらが500Hzと3kHzでクロスし、GENELECのアドバンテージ「SAM(Smart Active Monitoring)システム」により設置場所に応じた自動補正を行うという仕掛けだ。

N-05XDとはXLRケーブルで接続すればOK。あとは3基分(N-05XD×1、8331A×2)の電源ケーブルと、N-05XDをLANに接続するためのEthernetケーブルを用意すれば、"2点豪華主義"オーディオシステムの完成というわけだ。果たしてその音は?

防振テーブルスタンドは角度調整も可能

防振テーブルスタンドは角度調整も可能

今回はXLRアナログ入力を利用したが、XLRデジタルAES/EBU入力にも対応する

今回はXLRアナログ入力を利用したが、XLRデジタルAES/EBU入力にも対応する

いざキャリブレーション

"2点豪華主義"オーディオシステムは、テレビ台というハイエンドオーディオの作法では首を傾げてしまうような場所をあえて選んだ。床からの高さは35cm、しかもフローリング直というライブすぎる場所、R側は窓に近くL側は部屋の内側と、通常のセットアップでは音のバランスがとりにくい悪条件。そのうえ背後に調音パネルの類を一切置かない、ポン置きに近い状態だ。

そうした理由のひとつは、SAMシステムの実力を知るため。GLM(Genelec Loudspeaker Manager、マイクと組み合わせて使うPC用キャリブレーションソフト)を利用して部屋の状態を計測、その結果に応じて音を自動補正するから、前述した悪条件は緩和されるはず。

N-05XDの特性もある。ヘッドホンやBluetooth機器との組み合わせもOKなうえに"映える"ルックスだから、人の出入りが多いリビングへ置いてもいいはず。となると、テレビ台に類した場所へ設置されることもあるだろうし、スピーカーのすぐ近くに棚があったりテーブルがあったりしてもおかしくない。

まずはEthernetでつないだ2台の8331Aをテレビ台の上に置き、うち1台をGLMの測定環境(GLM Kit/8300-601)をUSBでMacに接続。GLMを起動してスピーカーの配置を決め、リスニングポジションにマイクを立て測定を行った。"ピュー"というスイープ音が聞こえたら測定完了、要した時間はわずかに5分。あとはLRにバラしたXLRケーブル(オヤイデ d+XLR class B/1.0)でN-05XDと8331Aをつなげばセットアップ完了だ。

キャリブレーションソフト「GLMv4」

キャリブレーションソフト「GLMv4」

"2点豪華主義"オーディオシステムを聴く

試聴は、N-05XDの豊富なソースを生かして2通りの方法で行った。1つめは、組み込みのネットワーク再生機能のうち、ストリーミングサービス(TIDALやQOBUZなど)を利用したもの。2つめは、スマートフォンやPCで再生するUSB入力。もちろんNASやUSBメモリーも音源として利用できるが、"いまどき"のリスニングスタイルはこの2つだろう。

Esoteric N-05XDとGENELEC 8331Aの組み合わせを聴いた

Esoteric N-05XDとGENELEC 8331Aの組み合わせを聴いた

ネットワーク再生用アプリ「Esoteric Sound Stream」

ネットワーク再生用アプリ「Esoteric Sound Stream」

1曲目は、TIDALで見つけたスティーリー・ダン「バビロン・シスターズ」。冒頭のスネアからしてタイトでソリッド、これまで聴いた同サイズのシステムと音の印象がまるで違う。続くリムショットも輪郭が明瞭で収束がスピーディー、定位もはっきりキマる。ハイハットの音もピーンと伸び、曇りを感じない。前面にフローリング、Rスピーカーのすぐ横にカーテンがあるとは思えないほど音のバランスもとれている。GLMv4で測定する前の音に比べると改善は明らかで、音場表現に感じていた違和感/定位のズレもなくなった。

2曲目はピアノを試そうということで、同じくTIDALから菊地雅章「黒いオルフェ」をチョイス。東京文化会館小ホールで収録されたこの曲は、ややリバーブが効いたECMらしくも透明感ある音色が整然と再現される。やはりモニターライクな印象が強いものの、タッチの鮮明さ、サスティーンの自然な伸びと解像度の高さは、N-05XDの力量によるところが大きそうだ。

以降は入力をUSB(Android端末)に切り替え、Amazon Musicのハイレゾ再生を実行。いろいろなジャンルの曲を思いつくまま流してみたが、アンドリュー・ヨーク「ララバイ」は6弦の音が妙にリアル。定位の明瞭さもあるが、一音一音に肉感と芯があり、アコースティックギターらしい響きだ。トム・ミッシュ「ディスコ・イエス」はスネアのキレとベースの沈み込みが印象的で、しかもドライブ感がある。ピアノなど生楽器のみならずエレキ系も違和感なくこなしてしまうところは、得手不得手のないモニターシステムならではと言えるだろう。

Roonによる再生が便利

このN-05XDと8331Aという組み合わせは、想像をはるかに超えていた。セットアップの容易さもさることながら、ディスクリートDACやフルバランスデュアルモノ構成などEsotericのレガシーによる緻密な再生、それを忠実にトレースする8331Aのドライバー性能に加え、GENELECならではのSAMシステムによる補正効果、そして設置場所を選ばないコンパクトさ。ビジュアルにも華があり、我ながらよくぞ実践したものよ、と独り言してしまった。

個人的に便利だったのが「Roon」による再生だ(N-05XDは最新ファームウェアでRoon Readyに対応)。MacBook Airで試したが、内蔵ストレージに保存されたファイル音源も、TIDALなどクラウドにある音源も、アーティストの情報を確認しながら別け隔てなく再生できるのはなんとも楽しい。

同じネットワークに接続し、Roonを起動すればN-05XDが認識される

同じネットワークに接続し、Roonを起動すればN-05XDが認識される

選曲や曲情報の表示だけでなく、ボリュームコントロールできることもポイント

選曲や曲情報の表示だけでなく、ボリュームコントロールできることもポイント

オーケストラより室内楽を、ビッグバンドよりコンボを、UKはファーストよりセカンド(Danger Money)を好む自分としては、今回堪能したトリオ編成システムをかなり気に入ってしまった。モニタリングとリスニング両方のニーズを同時に満たせる組み合わせと思うが、どうだろう?

海上 忍

海上 忍

IT/AVコラムニスト、AV機器アワード「VGP」審査員。macOSやLinuxなどUNIX系OSに精通し、執筆やアプリ開発で四半世紀以上の経験を持つ。最近はAI/IoT/クラウド方面にも興味津々。

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