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テレビで本格サラウンドを目指すなら、手軽で音がよい3.1chから始めてみない?

昨今、テレビで楽しめるサラウンド対応コンテンツが一気に充実してきた。Blu-rayや一部のテレビ放送のほか、「Netflix」「Amazonプライム・ビデオ」といった動画配信サービスも、ドルビーデジタルやDolby Atmosなどのサラウンドフォーマット音声に対応してきていて、テレビ周りの音質グレードアップに注目が集まっている。

テレビ環境でサラウンドを楽しむなら、やはり手軽な「サウンドバー」という選択肢が第一候補にあがるだろうが、音にこだわりを持つ人は、リアルなサラウンドを再生する5.1ch以上のスピーカー環境に憧れるのではないだろうか。しかし現実的には、テレビ周り=リビングに5.1chスピーカーを設置するのは、スペース的な問題でなかなか難しいことが多い。

そこで、いっそのこと「とりあえず」のワンステップとして、テレビ側にだけスピーカーを置く「3.1chスタイル」から始めてみるのはいかがだろうか? ……というのが、本企画の主旨である。まずは設置しやすいフロント側からスピーカーを導入して、ゆくゆくは5.1ch以上のリアルなマルチチャンネルにアップグレードしていこうというわけだ。というわけで今回は、テレビシアターのはじめの一歩として「3.1chのススメ」を解説していく。

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リアルなマルチチャンネルへ、はじめの一歩

上述の通り、シンプルにテレビの音質を向上させたいのであれば、手軽なのはサウンドバーだ。特に近年は、バーチャルでサラウンドを再現する機能が強化された製品も増えていて、人気を得ている。しかし、音質を根本的に向上させ、自分自身を取り囲むような本格的なサラウンド再生を楽しみたいなら、やはりAVアンプ+5.1ch以上のスピーカー設置ということになる。音質にこだわりがあり、「いつかはリアルなマルチチャンネルを」と夢見ている人も多いだろう。

しかし、このオーソドックスなAVアンプ+5.1chスピーカー環境を、特にテレビ周りに構築するときにネックとなるのが「リアスピーカー」の存在だ。テレビと並べて壁側に設置するフロントスピーカー、センタースピーカー、サブウーハーはまだしも、視聴者の背後に配置してAVアンプと有線接続するリアスピーカーは、リビングの生活動線を優先するとなかなか設置スペースが確保しづらい。

ホームシアター専用の個室なら問題ないのだが……。AVアンプからリアスピーカーへの配線が床を這うという問題もあり、普段から家族が生活して行き来するリビングにリアスピーカーを置くのは現実的ではない場合が多い

ホームシアター専用の個室なら問題ないのだが……。AVアンプからリアスピーカーへの配線が床を這うという問題もあり、普段から家族が生活して行き来するリビングにリアスピーカーを置くのは現実的ではない場合が多い

そこで、まずは設置ハードルの低いフロントスピーカー(L/R)、センタースピーカー、サブウーハーだけを使った3.1chからスタートしてみようと提案したい。

ちなみに、サラウンド音声と言えば、オーソドックスな5.1chを基本として、さらにスピーカー数が多い7.1ch/9.1ch以上の構成や、天井にもスピーカーの設置が必要な「Dolby Atmos」「DTS:X」といったイマーシブサラウンドも存在するが、いずれも3.1chからステップアップして目指すことができると思えば夢もふくらむだろう。

3.1ch構成から始めるメリットと効果

フロントスピーカー(L/R)、センタースピーカー、サブウーハーの合計4つのスピーカーを使った3.1ch構成でスタートするメリットは、上述の通り、リアスピーカーのスペースを確保しなくてよいので、とにかく設置性のハードルが低くなることだ。AVアンプからリアスピーカーへの配線もないので、室内をスッキリとまとめられる。また、リアスピーカーを省略することで導入コストを抑えられるという面もある。

それでいて、テレビ側に本格的なスピーカーを3本(フロントスピーカーL/R、センタースピーカー)設置し、低域の再生能力を飛躍的に高めるサブウーハーも導入することで、音の迫力や情報量はしっかり増す。リアスピーカーがなくても、これだけで映像作品への没入感は段違いに高まる。現実的にスピーカー設置のハードルを下げつつ、AVアンプ+スピーカーを使ったサウンドのうまみも味わえる構成が3.1chというわけだ。

というわけで、こちらが3.1ch構成の接続イメージ。AVアンプとテレビはHDMIケーブル1本で接続できるので、とても手軽だ(使用するAVアンプは4K放送に対応する最新のサラウンドフォーマットに対応したモデルを推奨)。現行のAVアンプのほとんどが、GUIで説明してくれる設定ウィザードを搭載しているので、画面に出てくる案内にならってスピーカーを接続していけばさほど難しくないはず

というわけで、こちらが3.1ch構成の接続イメージ。AVアンプとテレビはHDMIケーブル1本で接続できるので、とても手軽だ(使用するAVアンプは4K放送に対応する最新のサラウンドフォーマットに対応したモデルを推奨)。現行のAVアンプのほとんどが、GUIで説明してくれる設定ウィザードを搭載しているので、画面に出てくる案内にならってスピーカーを接続していけばさほど難しくないはず

実際にやってみるとこうなる。テレビと同じフロント側=壁際にのみスピーカーを設置するので、床を這うリアスピーカーへのケーブルもないし、室内が見るからにスッキリ!

実際にやってみるとこうなる。テレビと同じフロント側=壁際にのみスピーカーを設置するので、床を這うリアスピーカーへのケーブルもないし、室内が見るからにスッキリ!

参考までに、こちらは従来の5.1ch環境。最近はリビングにもなじむスタイリッシュなスピーカーが増えているものの、リアスピーカーを設置するスペースが必要となる

参考までに、こちらは従来の5.1ch環境。最近はリビングにもなじむスタイリッシュなスピーカーが増えているものの、リアスピーカーを設置するスペースが必要となる

3.1chサウンドの聴こえ方は? サウンドバーとの違いは?

では、実際に3.1ch構成にした場合はどんなサウンドになるのか? 一般的なテレビの内蔵スピーカーやサウンドバーと比較しながら解説したい。

▼ドルビーサラウンドなど、サラウンドフォーマットの映像ソースを再生した場合

通常のテレビ内蔵スピーカーから3.1ch構成に変えると、絶対的な音の情報量が格段に増え、さらに音のディテール表現が明瞭になる。映画などのコンテンツの中に、高域から低域まで多くの情報があることがしっかりわかる。音の明瞭度についても、静かなシーンでの細かい音が聴き取りやすくなったり、大音量でも音が崩れなくなる。このあたりはサウンドバーと比べてもその差が感じやすいポイントだ(その度合いについては、設置するスピーカーの大きさや品質にも若干左右される)。

実際に体験してみると、3.1chでも没入感は十分。やはりフロントスピーカーを設置することによって音の広がり感が増し、セリフの明瞭度がしっかりわかる。そして迫力という意味では、サブウーハーの有無も大きい。

実際に体験してみると、3.1chでも没入感は十分。やはりフロントスピーカーを設置することによって音の広がり感が増し、センタースピーカーによってセリフの明瞭度がしっかりわかる。そして迫力という意味では、サブウーハーの有無も大きい。

さらに、テレビの左右にフロントスピーカーを1台ずつ設置することで、音の広がりも豊かになる。映画やドラマ、ドキュメンタリー作品など、さまざまなソースで環境音が広大に聴こえてきて、たとえばスタジアムのシーンなどでは観衆の声援もテレビの外まで広く聴こえるようになる。

もちろん、サウンドバーのバーチャルサラウンド機能でも広さは出るのだが、画面センターを中心に幅広く聴こえるサウンドバーに対し、3.1chでは物理的に広い位置にスピーカーを設置することで、より自然な音の広がりが生まれるのが魅力だ。主にセンタースピーカーから聴こえる登場人物のダイアローグ(セリフ)と環境音の対比が、立体的な表現を生み出してくれる。加えて、サブウーハーから迫力ある低域が再生されることで、爆発音や雷などの迫力も大きく増す。

これらの効果により、3.1chでは画面と音声のシンクロ(同調)が強くなり、テレビ内蔵スピーカーやサウンドバーと比べて物語への没入感が圧倒的に高まるのである。

▼一般的な2chソースを再生した場合、センタースピーカーやサブウーハーはどのような動作になるか?

では、3.1ch環境で一般的なステレオ(2ch)ソースを再生すると、センタースピーカーやサブウーハーはどのような動きになるのか? これには環境によって2つのパターンがある。「1:擬似的にセンタースピーカーやサブウーハーから音が出る」「2:左右のスピーカーからだけ音が出る」。どちらの動作になるかは、アンプの機種やアンプの設定によって違ってくるので注意されたい。

さらにセンタースピーカー&サブウーハーを抜くと……?

ちなみに、センタースピーカーやサブウーハーも省略して、シンプルな2chシステムにすることももちろんできる。その場合、聴こえ方はどうなるか? 現在のサラウンド音声フォーマットは、5.1〜7.1chなどの各チャンネルにそれぞれ音が記録されている「ディスクリート(独立)サラウンド」方式だ。そのような音声を、それより少ない数のスピーカーで再生した場合は、AVアンプ内で「ダウンミックス」という処理が行われ、実在するスピーカーにだけ音声が割り振られることになる。

テレビ周りがよりスッキリする2ch構成。集合住宅などでサブウーハーの振動が気になる場合は、シンプルに2chから始めるのもアリ

テレビ周りがよりスッキリする2ch構成。集合住宅などでサブウーハーの振動が気になる場合は、シンプルに2chから始めるのもアリ

たとえばセンタースピーカーを省くと、本来センターから出るはずのセリフなどの音声がダウンミックスされて左右のフロントスピーカーに割り振られるので、セリフの絶対的な明瞭度は下がる。しかし、左右のスピーカーセンター(画面中央)に座ってひとりで視聴するような場合なら、その環境でもセリフの立体感はある値度確保できたりする。

余談だが、そもそもセンタースピーカーがあっても、それが画面底部よりも大きく下の位置に設置されていたら、当然ダイアローグも画面より下から出てしまい若干不自然に聴こえることもあるわけで、センターチャンネルの扱いは結構奥が深い。なので、むしろこういった環境を楽しみ、あえてセンタースピーカーレスでの再生を突き詰めているコアなビジュアルマニアも少なくない(センターレスのファントム再生と言われる)。ただし、家族や仲間など複数の人数で見るときは、個人的にはセンタースピーカーがあったほうが便利だと思う。

また、サブウーハーを外した場合の音はどうなるか? 当然低域の迫力は減少するのだが、特に2本のフロントスピーカーが小型モデルの場合は、迫力低下が顕著になる。ただし、フロントスピーカーが中型以上のモデルであれば、サブウーハーがなくても低域の量感や迫力はある程度担保できる。

逆に5.1chにアップグレードすると?

では、3.1chからステップアップして、視聴者のバックに2本のリアスピーカーを追加し5.1chにすると、どんな風に音のグレードが変わるのかについても触れておこう。もちろん、その効果は圧巻だ。私たちが生活する自然界の空間では、360°すべての方向から音が聴こえ、耳はそれを検知して距離感や方向を認識している。視聴者のバック=リア側に置かれた2本のスピーカーにより、それが再現される。

3.1chでは音の広がりや迫力が増して、サウンドの情報量がしっかりと聞き取れたが、5.1chにアップグレードすることでそこに包まれるようなサラウンド感が出る。やはりよい

3.1chでは音の広がりや迫力が増して、サウンドの情報量がしっかりと聞き取れたが、5.1chにアップグレードすることでそこに包まれるようなサラウンド感が出る。やはりよい

たとえばカーレース映画などでは、前方から迫る車両が後方へ抜けていく音、ホラー映画では背後からヒタヒタと迫るモンスターの足音などが、実際さながらに聴こえ、圧倒的な臨場感を出してくれる。映画館のクオリティに1歩近づくことができるわけだ。これがDolby Atmosなどの立体音響になると、さらに上下方向の音が加わるわけで、その臨場感には憧れるし、目標にしたいところだ。

AVアンプとスピーカーの組み合わせを考えるのも楽しい

さて、マルチチャンネル環境を作るとき、使用するAVアンプとスピーカーをどのように組み合わせるかを考えるのも楽しい。3.1chからスタートする場合でも、5.1ch以上にステップアップすることを念頭に置きたいので、AVアンプについては対応チャンネル数や対応フォーマットについて吟味しておく必要がある。

ちなみに今回の撮影では、マランツのAVアンプ「NR1711」と、Polk Audioのスピーカー「XTシリーズ」を使用した。ご参考までにこちらのモデルを紹介して、本記事を締めくくろう。

▼マランツ「NR1711」

高さ105mmのスリムな薄型デザインのAVアンプ。テレビラックにもスッキリと収まる設置性の高さが特徴だ。単体のAVアンプらしく内部構成はかなりの本格派で、実用最大出力100W/chを誇る7chフルディスクリート・パワーアンプを全チャンネル同一構成で搭載。組み合わせるスピーカーの能力を引き出すことができる。Dolby Atmosはもちろん、8K/60p信号やHDR10+、新4K8K衛星放送で使用される5.1chフォーマットMPEG-4 AACなど、最新の映像/音声フォーマットに対応する人気モデルである。

▼Polk Audio「XTシリーズ」

2021年に日本再上陸を果たしたアメリカの人気スピーカーブランド・Polk Audioが手がける、エントリーグレードのコンポ―ネントスピーカー。同社のスピーカーラインアップの中で最も安価なシリーズでありながら、上位モデルと同様に米ボルチモアの研究所で培われたスピーカー設計技術で開発されており、そのサウンドクオリティを考えるとコストパフォーマンスの高さが光る。今回の撮影では、フロントスピーカー「XT60」、センタースピーカー「XT30」、サブウーハー「XT12」を使用した。

土方久明

土方久明

ハイレゾやストリーミングなど、デジタルオーディオ界の第一人者。テクノロジスト集団・チームラボのコンピューター/ネットワークエンジニアを経て、ハイエンドオーディオやカーAVの評論家として活躍中。

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