レビュー

これは名機の予感! 売り切れ続出の新生ハイエンドウォークマン「NW-WM1AM2」を聴く

ここ数年のポータブルオーディオ界隈における最大の変化といえば、「ロスレス/ハイレゾストリーミング」の普及だろう。Amazonに続けてアップルもサービスを開始、しかも月額千円以下のサブスクリプション方式で数千万曲を聴き放題となると、導入へのハードルは一気に下がる。とりあえずはスマートフォンで楽しむとしても、腰を据えてDAPで聴きたいと考えるポータブルオーディオファンは多いはずだ。

そこに登場したのが、ソニーの新型ウォークマン。ストリーミング対応を前面に打ち出しつつ、元祖ポータブルプレーヤーとしての矜持を感じさせる新機能・改良点の数々は、ポータブルオーディオファンにとって関心の的であることは確か。本稿では、その「音」に迫ってみたい。

アルミ切削の新ウォークマン「NW-WM1AM2」

アルミ切削の新ウォークマン「NW-WM1AM2」

ついに出た、"新にして真の"ストリーミングウォークマン

ウォークマンが「ストリーミング」を掲げることは今に始まった話ではなく、2019年発売の「NW-ZX500」「NW-A100」シリーズではすでに「ストリーミングウォークマン」を標榜。今回発表された「NW-WM1AM2」および「NW-WM1ZM2」は、ストリーミングと名乗りこそしないものの方向性に変更はなく、基本的にはNW-ZX500/NW-A100シリーズの上位モデルという位置付けだ。

すなわち、「ストリーミング対応の都合上、独自Linux OSからアプリを選べるAndroid OSへ」と「WM-PORTからUSB Type-Cへ」は既定路線。NW-ZX500/NW-A100シリーズから何が変わったか、音質面がどのように改善されたかが見どころだ。

そのポイントは大きく3つ、「ハードウェア」と「DSEE Ultimate」、そして「DSDリマスタリングエンジン」。ハンドリングへ進む前に、それらの概要を確認しておこう。

ハードウェアの見どころは、ノイズ対策と電源部。NW-WM1AM2はアルミ切削でNW-WM1ZM2は無酸素銅切削の金メッキと素材は異なるが、いずれもアンテナモジュールとアナログブロックに物理的な距離を置くことで、相互干渉を防止。デジタルブロック(SoC周辺)を切削無酸素銅製シールドで覆うことにより、グランド安定化とノイズ抑制を狙う。電源部にはソニー独自開発のコンデンサー「FTCAP3」を採用、バッテリーと結ぶ電源ケーブルには純度99.96%のOFCを使うという念の入りようだ。

イヤホン端子は4.4mmバランスと3.5mmシングルエンドの2基

イヤホン端子は4.4mmバランスと3.5mmシングルエンドの2基

NW-WM1AM2の背面

NW-WM1AM2の背面

NW-WM1AM2の右側面

NW-WM1AM2の右側面

NW-WM1AM2の左側面

NW-WM1AM2の左側面

DSEE Ultimateは、非ハイレゾ/ロッシー音源をハイレゾ相当(最大192kHz/32bit)にアップスケーリングするソニー独自技術の最新版。NW-ZX500/NW-A100シリーズでは(アップデートにより)搭載されたが、適用できるのは「W.ミュージック」アプリのみという制限があった。それがすべてのアプリに適用できるようになったほか、ワイヤレス/Bluetoothイヤホンでも利用可能に。CD相当のロスレス音源再生時におけるアップスケーリングアルゴリズムも改良されたという。

CD相当ロスレス音源のアップスケーリングが改良されるなど進化した「DSEE Ultimate」

CD相当ロスレス音源のアップスケーリングが改良されるなど進化した「DSEE Ultimate」

強化された「DSDリマスタリングエンジン」も見逃せない。独自アルゴリズムによりオリジナルデータを損なうことなくDSD信号に変換するという本機能、すでに「DMP-Z1」や「HAP-Z1ES」に採用実績を持つが、NW-WM1ZM2/NW-WM1AM2ではDSD 11.2MHz相当への変換を行う。有線接続かつ「W.ミュージック」アプリ再生時のみ有効という制約はあるものの、この機能に注目する向きは多いはずだ。

すべてのPCM音源をDSD 11.2MHzにアップコンバートする「DSDリマスタリング」

すべてのPCM音源をDSD 11.2MHzにアップコンバートする「DSDリマスタリング」

NW-WM1AM2をあれこれハンドリング

最初にWi-Fi周りをチェック。AndroidベースのDAPの中には、いざストリーミング再生を開始すると音途切れしがちなものが少なくないからだ。特に192kHz/24bitなどデータ量の多いハイレゾ音源は、Wi-Fiルーターに近い場所で再生しなければストレスの元。事前ダウンロードが必要ないほどWi-Fi受信感度が高く、それでいてノイジーに感じないものが、望ましいストリーミング対応DAPなのではなかろうか。

5GHz帯のアクセスポイントに接続しAmazon Musicで試聴を開始したが、再生は至って順調だ。一般的に5GHz帯の電波は減衰しやすく、樹脂製筐体のほうが有利と考えられるが、NW-WM1AM2の筐体はアルミ製。だが音途切れは感じられず、近くに置いたiPhone 13 Proと"Wi-Fiのアンテナ本数"に差はない。

試聴は4.4mmバランスにリケーブルしたNF Audio NE4 Evolutionで行った

試聴は4.4mmバランスにリケーブルしたNF Audio NE4 Evolutionで行った

それにしても、再生音にザラつきが感じられない。記者向け説明会でうかがった「アナログブロックとアンテナモジュールの物理的な距離を取り、アイソレーションを図ることで高周波の影響を排除する」という設計構造が効いているのか。金属シールドによるノイズ遮蔽やGPSの除去が効果をもたらしたのか。いずれにしても、電波やノイズに備える設計ノウハウがそこかしこにあり、それがストリーミング再生時の良好なS/N感に寄与しているようだ。

音楽アプリはAudioFlingerをパスする設計だからSRC変換は行われない(画面はAmazon Music)

音楽アプリはAudioFlingerをパスする設計だからSRC変換は行われない(画面はAmazon Music)

続いて純正プレーヤーアプリ「W.ミュージック」でファイル再生を試してみたところ、これが存外にいい。CD品質かハイレゾか、WAVかFLACかを問わず片端から聴いたのだが、どれも滑らかというかシルキーというか、不自然に尖ったところがない。アコースティックギターのハーモニクスの伸び、ピアノの長いサスティーンの自然さはまさに悶絶モノ。それもそのはず、すべてのPCM信号をDSD 11.2MHzにアップコンバートする「DSDリマスタリング」が有効になっていたからだ。

このDSDアップコンバートは、専用ハードウェア(FPGA)で処理される。超弩級DAP「DMP-Z1」に搭載され話題を集めた「DSDリマスタリングエンジン」の後継であり、DMP-Z1では5.6MHz変換だったところがNW-WM1ZM2/NW-WM1AM2では11.2MHz変換へと進化した。バッテリーがみるみる減少するのはご愛嬌として、この機能が新ウォークマンの目玉機能のひとつであることは間違いない。

DSDリマスタリングエンジンをオフにすると様子は変わるが、今度はいい意味での"PCMっぽさ"が現れる。音源のサンプリング周波数によってマスタークロックを44.1kHz系と48kHz系に切り替えるからか、キレよく整然とした印象だ。AudioFlingerをパスするなど正しいアプローチで設計されていることもあり、安心して使えるプレーヤーアプリだ。

ハードウェアとしての質感も上々。約299gとスマートフォンと比べればぐっと重量級で、気軽に持ち運ぶ相棒というよりは腰を落ち着けて音楽を楽しむセミ・ポータブルプレーヤーだが、この音なら外へ連れ出したくなるかな、という気はする。aptX HDとLDACをサポートしているからBluetoothイヤホンと組み合わせてもいいし、DSDリマスタリングエンジンをONにしなければ丸一日再生できるバッテリーも用意されている。

Bluetooth再生ではLDACとaptX HDをサポートしている

Bluetooth再生ではLDACとaptX HDをサポートしている

悩ましい点があるとすれば、NW-WM1ZM2とNW-WM1AM2のどちらにするかだ。機能的、ハードウェア性能的には両者の差はほとんどなく、筐体素材(ZM2は無酸素銅金メッキ、AM2はアルミ)と内部のバランス出力用ヘッドホンケーブル(ZM2のみキンバーケーブル)くらいなものだが、実際に聴いてみるとS/N感、高域の繊細さなど体感レベルで印象が違う。コストパフォーマンスという点では断然AM2で、かなり満足度は高いのだけれど...ポータブルオーディオの試聴が難しいご時世だが、もし機会があれば聴き比べていただきたい。

海上 忍

海上 忍

IT/AVコラムニスト、AV機器アワード「VGP」審査員。macOSやLinuxなどUNIX系OSに精通し、執筆やアプリ開発で四半世紀以上の経験を持つ。最近はAI/IoT/クラウド方面にも興味津々。

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