ノイズキャンセリング機能を搭載したイヤホン・ヘッドホンの代名詞となっている、ソニーの「1000X」シリーズに待望の新モデルが登場した。
今回ソニーが発表したのは、オーバーヘッドタイプのノイズキャンセリングヘッドホンの最上位モデル「WH-1000XM5」。カラーバリエーションは、ブラックとプラチナシルバーの全2色。発売は5月27日、市場想定価格は5万円前後となる。
1000Xシリーズは、これまでもさまざまな進化を遂げてきたが、最新の「WH-1000XM5」は、ヘッドバンドタイプの1000Xシリーズ史上最大の進化を遂げているという。なお、2020年発売の「WH-1000XM4」は継続販売となり、「WH-1000XM5」は「WH-1000XM4」の上位モデルとして展開される予定だ。
ソニー「WH-1000XM5」。カラーバリエーションは、ブラックとプラチナシルバーの全2色
「WH-1000XM5」の進化ポイントで真っ先に注目したいのが、「ノイズキャンセリング性能」だろう。
先代のフラッグシップモデルである「WH-1000XM4」は、左右2ずつのマイクを活用してノイズを収音する「デュアルノイズセンサーテクノロジー」を搭載。ノイズキャンセリング処理のプラットフォームに、高音質ノイズキャンセリングプロセッサー「QN1」を採用し、「QN1」とBluetoothチップの連携を高めて毎秒700回以上という超高速のセンシング(ノイズ採取)を行うことで、先々代の「WH-1000XM3」からノイズキャンセリング性能を引き上げていた。
いっぽう、今回投入される「WH-1000XM5」は、ノイズの収音精度をさらに高めるため、「WH-1000XM4」の2倍となる左右4つずつのマイクを搭載した「マルチノイズセンサーテクノロジー」を新たに導入した。
外側に左右あわせて6つ、内側に左右あわせて2つの計8基のマイクを活用した「マルチノイズセンサーテクノロジー」を搭載
マイク数が単純に2倍に増えたということだけでもかなりすごいことがわかるが、「WH-1000XM5」では、合計8つに増えたマイクから収音するノイズを処理するためにノイズキャンセリング処理のプラットフォームも刷新。「WH-1000XM4」や「WH-1000XM3」に搭載されていた高音質ノイズキャンセリングプロセッサー「QN1」に加え、完全ワイヤレスタイプのノイズキャンセリングイヤホン「WF-1000XM4」に搭載されている統合プロセッサー「V1」も追加で搭載し、8つのマイクから収音したノイズをデュアルチッププラットフォームで高精度に処理することで、今までにないレベルのノイズキャンセリング性能を実現したという。
音質ノイズキャンセリングプロセッサー「QN1」と統合プロセッサー「V1」を組み合わせたデュアルチッププラットフォームを採用
さらに、このデュアルチップを用いた強力な処理能力を生かし、ユーザーに合わせてノイズキャンセリング性能を最適化する「パーソナルNCオプティマイザー」も「オートNCオプティマイザー」へと進化。ユーザーの髪型やメガネの装着の有無、装着ズレ、気圧といったデータを測定音なしでリアルタイムにモニタリングし、ノイズキャンセリング性能を常に最適化することで、ノイズキャンセリング効果を高めることに寄与しているという。
ドライバーユニットについても、「WH-1000XM5」では専用設計の30mmドライバーユニットを新たに搭載。口径サイズが「WF-1000XM4」よりもひと回りほど小さくなっているが、ドーム部に軽量かつ高剛性なカーボーンファイバーコンポジット材料を、エッジ部にやわらかな材料を用いることで、低音域の感度を引き上げ、低音域のノイズキャンセリング性能を高めているという。
「WH-1000XM5」に専用設計された30mmドライバーユニットを搭載
このように、マイクを用いたセンサーテクノロジー、ノイズキャンセリング処理のプラットフォーム、ノイズキャンセリングの自動最適化技術、専用設計ドライバーユニットの採用というハードとソフトの両面で1000Xシリーズ史上最大の進化を遂げたことで、ヘッドバンド型ワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホン市場において業界最高クラスのノイズキャンセリング性能を実現。「WF-1000XM4」と比べると、人の声などの中高音域のノイズカット率が大きく向上しているそうだ。
実際に「WH-1000XM5」と「WF-1000XM4」のノイズキャンセリング性能を比べてみたが、確かに日常生活で聴こえる人の話し声や雑踏に対するノイズ低減効果は、「WF-1000XM4」よりも「WH-1000XM5」のほうが上に感じられ、ノイズに対する反応速度的な部分も「WH-1000XM5」のほうが圧倒的に素早くスムーズに低減してくれる感じを受けた。耳に入るノイズの丸め方がうまくなっている、といった感じだろうか。
もうひとつ、「WH-1000XM5」と「WF-1000XM4」を比べてみて驚いたのが、外音取り込みの自然な聴こえ方だ。「WF-1000XM4」の外音取り込み機能はマイクを通して収音している違和感が多少残っているのだが、「WH-1000XM5」はそのような違和感が一切なく、ヘッドホンを装着していることを忘れるくらい自然な聴こえ方なのだ。この外音取り込み機能だけでも「WH-1000XM5」を導入する価値は大いにありそうだ。
今回、「WH-1000XM5」のノイズキャンセリング性能を引き上げるために導入した技術は、通話品質や音質部分にも大きく寄与しているという。
特に通話品質については、新しく導入されたマイクシステムと強力な処理能力を有したデュアルチップが大きく貢献。「WH-1000XM5」では、左右2つずつの計4つのマイクに搭載されているビームフォーミング技術でユーザーの口元から出る声を検出しているのだが、ここで高精度に検出した声に対して、「LinkBuds」にも導入されている、装着者の声とそれ以外の環境ノイズを分離するフィルターアルゴリズムを5億サンプル以上機械学習させたというAIを用いた高精度ボイスピックアップテクノロジーと組み合わせることで、騒音下でも正確かつクリアな通話品質を実現したという。
また、通話中の風ノイズを最小限にするために、内部のマイク周辺機構を新規に設計。風ノイズが入ってくることを防ぐ新構造とすることで、風が強い中でもクリアな音楽と通話が楽しめるようになったのも「WH-1000XM5」の大きな進化点と言えそうだ。
フィードフォワードマイクには、風ノイズが入ってくることを防ぐ新構造を採用
音質については、専用設計の30mmドライバーユニットが低音域から高音域まで豊かな音を生み出すことに寄与。さらに、ウォークマン開発で培った金入り高音質はんだや銅メッキを施した大型高音質抵抗、専用に最適化された基板レイアウトを採用することで、S/N感の向上による微細な音の再現性向上、広がりや定位感の向上を実現したという。
ここまで「WH-1000XM5」のノイキャン性能や通話品質、音質面での進化をいろいろと紹介してきたが、「WH-1000XM5」は見た目のデザインも従来の1000Xシリーズから大きく変更されたのも大きなトピックだ。
従来の1000Xシリーズで採用されていた折りたたみ機構こそないものの、ヘッドバンド部が細くなったことで、全体的なシルエットがスマートになり、近未来的なデザインへと大きくシフト。合成皮革よりやわらかく、頭部の形状に柔軟に追従するので締め付け感が少なくて遮音性と装着性の両面に寄与するとというソフトフィットレザーをイヤーパッドとヘッドバンドに採用することで、スリムなヘッドバンドとは思えない快適な装着感を実現するとともに、ヘッドバンド部はサイズ調整後もデザインが変わらない無段階スライダーや、シームレスなスイーベル、内蔵ハンガー構造などを新たに採用することで、軽い着け心地で快適に長時間使用できる装着性と洗練されたデザインの両立を実現したそうだ。
ちなみに、高性能化にともなってマイクや基板、内蔵バッテリーといった内部パーツが大きく増えたそうだが、スリムヘッドバンドの採用などの工夫で軽量化を徹底することで、本体重量は250gと、先代の「WH-1000XM4」から4gほど軽量化されている。
「WH-1000XM5」(写真左)と「WH-1000XM4」(写真右)
ソフトフィットレザーを採用したイヤーパッド。イヤーカップ内部にあるセンサーは見えない位置に移動したそうだ
ヘッドバンド部は細くなっているが、ソフトフィットレザーを使用したクッション部の厚みはしっかりと担保
内部パーツが増えているものの、イヤーカップは「WH-100XM4」とほぼ同じ厚みに抑えたという
「WH-1000XM5」を装着したところ
横から見たところ。ヘッドバンド部が細くなったことで、すっきりとしたシルエットになった
キャリングケースの大きさも比較。折りたたみ機構が省かれたため、キャリングケース自体はやや大型化している
キャリングケースは、ヘッドホン本体が収納されていない時はたたんで小さくなるギミックを搭載し、携帯性を担保
バッテリー性能については、ノイズキャンセリング機能ONで最大30時間(OFF時は最大40時間)と、全般的に高性能化を果たしたのにも関わらず、「WH-1000XM4」と同等のスペックを確保。高速充電機能は、3分充電で最大1時間再生が可能なクイック充電に加え、3分充電で最大3時間再生(出力9 V/2.3 A以上が必要)できるUSB Power Deliveryを用いた高速充電に新たに対応したのもトピックと言えそうだ。
このほか、ユーザーの行動や場所に連動してノイズキャンセリング/外音取り込み設定などを切り替える「アダプディブサウンドコントロール」、最大96kHz/24bitまでアップスケーリングできる「DSEE Extreme」、ハウジング部をおさえると一時的に外音を取り込む「クイックアテンション」、ヘッドホンを装着したままでも会話ができる「スピーク・トゥ・チャット」、ソニーが展開する立体音響技術「360 Reality Audio」への対応、複数のデバイスを同時待ち受けできる「マルチポイント」、簡単にペアリングできるGoogle「Fast Pair 3.0」&マイクロソフト「Swift Pair」への対応など、「WH-1000XM4」と同等の機能を搭載。使い勝手の面では、サウンドUIがボイスから電子音に変更となったのもポイントとなっている。
そのほかの仕様は、BluetoothバージョンがVer. 5.2で、対応コーデックはSBC、AAC、LDAC。有線接続もサポートする。充電端子はUSB Type-Cだ。
これまで同様、有線接続もサポートする
PC・家電・カメラからゲーム・ホビー・サービスまで、興味のあることは自分自身で徹底的に調べないと気がすまないオタク系男子です。PC・家電・カメラからゲーム・ホビー・サービスまで、興味のあることは自分自身で徹底的に調べないと気がすまないオタク系男子です。最近はもっぱらカスタムIEMに散財してます。