レビュー

時間を忘れるくらいの心地よさ! 音楽好きにはたまらないHIFIMANヘッドホンアンプ「EF400」の魅力

オーディオ製品には、大きく分けて2つの方向性というか、製品コンセプトにわけられることがある。そのひとつはモニター、もうひとつはリスニングだ。両者は主に使い勝手の面が異なっているが、当然、音作りも異なっていて、モニターは音をチェックするためのもの、リスニングは音楽を楽しむためのもの、という方向性がある。

今回、リスニング向けの製品としてとても魅力的な、絶品といいたくなるほどに聴き心地のよいサウンドを聴かせてくれるヘッドホンアンプに出会うことができた。それがHIFIMAN「EF400」だ。

HIFIMAN「EF400」

HIFIMAN「EF400」

実際、この製品が手元に来てから音楽を聴いている時間が大幅に増えた。仕事柄、音を聴いている時間は1日3〜4時間程度と比較的多い方だと思うが、それはあくまでも製品をチェックするための試聴時間。それに追加で“音楽を楽しむ”数時間が増えてしまっているのだ。当然、耳を休めるために試聴時間を抑える必要があるのだが、お気に入りのヘッドホンで音楽を存分に楽しみたいという衝動には抗えず、ついつい「EF400」で何時間も音楽を聴き込んでしまっている。自分にとっては、まるで悪魔の誘いのような製品だ。

そんな「EF400」だが、外観は至って普通だ。228(幅)×246.5(奥行)×61(高さ)mmというスマートなボディに、入力はUSB Type-CとUSB Type-Bというデジタル2系統のみ。XLR 4pinや4.4mmバランス、6.3mm&3.5mmの4系統のヘッドホン出力に加えて、XLRとRCAのライン出力も持ち合わせることで単体DACとしても活用できる、どちらかというとシンプルなシステム構成にまとめ上げられている。

フロントには、6.3mmシングルエンド、3.5mmシングルエンド、4.4mmバランス、XLR 4ピンバランスの合計4種類の出力が並ぶ

フロントには、6.3mmシングルエンド、3.5mmシングルエンド、4.4mmバランス、XLR 4ピンバランスの合計4種類の出力が並ぶ

バックには、バランス出力、RCA出力を搭載。USBはType-CとType-Bの2系統が用意されている

バックには、バランス出力、RCA出力を搭載。USBはType-CとType-Bの2系統が用意されている

しかしながら、その内部にはBluetoothモジュールなどで好評を博しているHIFIMANオリジナルのR2R DAC「ヒマラヤDAC」モジュールや高出力のヘッドホンアンプ回路を搭載し、フルバランス出力を確保。さらに、OFC巻き線トロイダルトランスの採用によってノイズを大きく低減させているなど、スマートな外観とは裏腹な、オーディオ製品にとって王道といえる高音質技術の集合体、といいたくなる内容となっている。

R2R DACとは?

ラダー型とも呼ばれるマルチビットDAコンバーターのこと。一体型チップとして提供されているものもごくわずかにあるが、大半は抵抗を無数に並べてDAC機能を実現させるモジュールタイプとなっている。音質的にはさまざまなメリットがいわれているが、精度の高い製品を作成するのに手間がかかるため製造は難しいとされている。

また、機能面でも至ってシンプルで、操作はゲイン切り替えと音量調整のみ。こちらも、さまざまなスイッチ類を設けることで生じる可能性のある音質劣化を回避する意図があるのかもしれない。

とはいえ、ゲイン切り替えはハイ/ローだけでなく、OS(オーバーサンプリング)とNOS(ノンオーバーサンプリング)も切り替えられるなどR2R DACならではの内容も持ち合わせているし、変換ケーブルの必要がない4系統のヘッドホン出力、USB Type-C入力によってスマートフォンやポータブルDAPなども直接接続できるなど、趣味性、使い勝手の両面からユーザーのニーズに配慮した製品作りが行われている。ライン出力を活用してUSB DACとして利用できる点もなかなか便利だ。

ハイゲイン/NOS、ハイゲイン/OS、ローゲイン/OS、ローゲイン/NOSの4種類のゲインに切り替えられる

ハイゲイン/NOS、ハイゲイン/OS、ローゲイン/OS、ローゲイン/NOSの4種類のゲインに切り替えられる

そんな「EF400」最大の魅力は、さまざまなヘッドホンをバランスよく、心地よいサウンドで奏でてくれること。そこで、今回は改めていろいろなヘッドホンで試聴を行い、どんな音を聴かせてくれるのかを紹介していきたいと思う。ちなみに、プレーヤーとしてはWindows11ノートPC(「LG gram」)をメインに、Astell&Kern「A&ultima SP2000T」も試してみた。

「EF400」にさまざまなヘッドホンを組み合わせてみた

「EF400」にさまざまなヘッドホンを組み合わせてみた

まずはHIFIMAN同士の組み合わせ、価格帯的にもバランスのよい「Edition XS」から。アンバランス3.5mmで接続してみると、パワフルな低域とクリアな中高域の組み合わせによる、印象的なサウンドを持つ「Edition XS」の特徴はそのままに、平面駆動型振動板ならでは、低域のフォーカス感のよさが実感できるうえ伴奏がいちだんとノリよく感じる。中高域は、音数の多さと音場の広さに驚く。定位もしっかりしていて揺るぎがない。

同ブランド、かつ価格帯的にもマッチングのよい組み合わせだけに、抜群の相性を見せてくれた。特にクラシックとの相性がよく、臨場感ある壮大なスケール感の演奏を楽しませてくれる。楽器のひとつひとつがリアルな音色に感じられるのも好印象。いっぽう、Jポップはベストな相性とまではいわないものの、臨場感の高い演奏にグッと引き込まれるので、これはこれで楽しい。なによりも、中高域の聴き心地のよさは秀逸で、キレはよいのに耳障りさはなく、女性ボーカルがほんの少し鼻にかかりつつも、はつらつとした明るいトーンの歌声を聴かせてくれる。リスニング、というカテゴリー分けがピッタリの、聴いていてとても楽しいサウンドだ。

HiFiMAN「Edition XS」は、低域のフォーカス感のよさが実感できる

HiFiMAN「Edition XS」は、低域のフォーカス感のよさが実感できる

さらに下のグレード「SUNDARA」でも試して見た。こちらも「Edition XS」同様、開放型ハウジングを持つヘッドホンだ。「Edition XS」と音色傾向が異なり、多少中域重視のバランスに感じられる。ボーカルの存在感が強くなり、声の調子も落ち着いて聴こえる。女性ボーカル系をよく聴くという人には、こちらも悪くない組み合わせだ。

HiFiMAN「SUNDARA」との組み合わせは、女性ボーカル系をよく聴くという人にぴったり

HiFiMAN「SUNDARA」との組み合わせは、女性ボーカル系をよく聴くという人にぴったり

ちなみに、Bluetoothモジュールを採用する「DEVA Pro」も「EF400」との有線接続を試してみたところ、「SUNDARA」に近い傾向で、さらに落ち着きのあるしっとりとしたサウンドを楽しむことができた。Bluetoothモジュールが同じR2R DACを採用しているためか、ワイヤレス試聴時と音色的な違いが少ない点は興味深い。普段はワイヤレス、じっくり聴き込みたい場合は「EF400」との有線を楽しむ、という使い分けがよさそうだ。

HiFiMAN「DEVA Pro」の組み合わせ。Bluetoothモジュールを使用したワイヤレスリスニングと音色的な違いがあまりない

HiFiMAN「DEVA Pro」の組み合わせ。Bluetoothモジュールを使用したワイヤレスリスニングと音色的な違いがあまりない

続いて、オーディオテクニカ「ATH-ADX5000」を4.4mmバランス接続で試してみる。これがもう、最高に心地よい音を聴かせてくれる。ボーカルはそれぞれの声の特徴がしっかり伝わる、表現豊かなサウンドで、上田麗奈が独得の甘さを残しつつ、はつらつとした歌声を聴かせてくれる。AimerやMYTH & ROIDなども、近い距離感で大人っぽい歌声を聴かせてくれるので、とても感動的だ。特にAimerは、彼女の声とチェロとの重なり合いが感動的なまでの一体感を見せ、歌声の印象を一段も二段も高めてくれる。同じブランド同士の組み合わせを超える、抜群の相性をみせる組み合わせだ。

オーディオテクニカ「ATH-ADX5000」は、抜群の相性をみせる組み合わせ

オーディオテクニカ「ATH-ADX5000」は、抜群の相性をみせる組み合わせ

ソニー「MDR-Z1R」との組み合わせも悪くない。Aimerを聴くとほんの少しかすれた、全体的にはウォーミーな音色傾向となるが、そのぶん普段よりも聴き心地のよいイメージだ。さらに、女性ボーカルの心地よさという点ではAKG「K712 Pro」も捨てがたい。立ち位置が少し奥に引っ込むが、存在感はあるし、なによりも声が艶やかに感じる。今回試したヘッドホンのなかで、Aimerの魅力がいちばん伝わってくる組み合わせだった。

ソニー「MDR-Z1R」との組み合わせも悪くない

ソニー「MDR-Z1R」との組み合わせも悪くない

AKG「K712」との組み合わせでは、声が艶やかに感じる

AKG「K712 Pro」との組み合わせでは、声が艶やかに感じる

イヤホンとの相性も良好だった。特にfinal「A8000」は、特徴的な高域の刺さりがあまり目立たなくなり、それでいて解像度の高さやキレのよさはしっかりと伝わる、絶妙なバランスのサウンドにグレードアップ。歌声、演奏ともに正確な描写でありながらも耳に心地よい、上質なサウンドを楽しませてくれた。正直、「A8000」がここまで心地よい音のイヤホンだったのかと、我が目(耳?)を疑ったくらいだ。

final「A8000」との組み合わせ。解像度の高さやキレのよさはそのままに、高域の刺さりが少なくなり、心地よい上質なサウンドにシフト

final「A8000」との組み合わせ。解像度の高さやキレのよさはそのままに、高域の刺さりが少なくなり、心地よい上質なサウンドにシフト

このように「EF400」は、ヘッドホンやイヤホンそれぞれのよさや特徴をしっかりと引き出しつつも、聴き心地のよい音色へとシフトしてくれる、リスニング向けヘッドホンアンプとしてはなかなかに優秀な製品だと思う。実際、筆者も先日導入してから音楽を楽しむ時間が増えている。音楽好きならきっとお気に入りの1台になってくれるはずだ。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどのオーディオビジュアル系をメインに活躍するライター。TBSテレビ開運音楽堂にアドバイザーとして、レインボータウンFM「みケらじ!」にメインパーソナリティとしてレギュラー出演。音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員も務める。

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