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エントリーもハイグレードも、デノンAVアンプの充実ぶりが目覚ましい!

デノンは2022年9月15日、2022年モデルの新AVアンプを発表した。「AVR-X3800H」「AVR-X2800H」「AVR-X580BT」3製品がラインアップされ、価格と発売日は以下のとおり。

「AVR-X3800H」 希望小売価格181,500円(税込) 10月下旬発売

「AVR-X2800H」 希望小売価格121,000円(税込) 10月下旬発売

「AVR-X580BT」 希望小売価格58,300円(税込) 9月下旬発売

DSPの強化で11.4chプロセッシングや360RAに対応した「AVR-X3800H」

さっそく、「AVR-X3800H」の概要を中心に見ていこう。本製品は9chアンプを内蔵したAVアンプで、最大11.4ch分の信号処理に対応する。プリアウトを活用すれば、「7.4.4」や「5.4.6」構成のサラウンドシステムが構築できるという。オーバーヘッド(トップ/ハイト)スピーカーの最大数は6本。

9ch分のアンプを内蔵した「AVR-X3800H」。単体で「5.1.4」構成のドルビーアトモス再生が可能。プリアウトを介して外部アンプを使えば、最大で「7.4.4」システムを構築できる

9ch分のアンプを内蔵した「AVR-X3800H」。単体で「5.1.4」構成のドルビーアトモス再生が可能。プリアウトを介して外部アンプを使えば、最大で「7.4.4」システムを構築できる

型番が“3000番台”の AVアンプが日本で展開されるのは久しぶりのこと。おそらく「AVC-3310」以来、10年以上が経っているはず。デノンのAVアンプは「AVC-X8500H」(8000番台)を頂点に「AVC-X6700H」「AVR-X4700H」「AVR-X3800H」「AVR-X2800H」「AVR-X1700H」「AVR-X580R」とエントリーモデルに近づくにつれて型番の数字が若くなる。欠番だった“3000番台”が復活したことで、さらにラインアップが充実した。AVアンプのリリースが停滞気味の昨今、デノンのこの展開は頼もしい限りだ。

同時に発表された3製品はどちらかと言えばエントリークラスに属する。なお、「AVR-X1700H」は継続販売される

同時に発表された3製品はどちらかと言えばエントリークラスに属する。なお、「AVR-X1700H」は継続販売される

「AVR-X3800H」の主要スペックは以下のとおり。

●内蔵パワーアンプ:9ch
●定格出力:105W(8Ω、2ch駆動時)
●HDMI入力6系統、HDMI出力2系統(すべて8K/60Hz映像信号のパススルー対応)
●11.4chプリアウト装備
●独自のネットワークオーディオ再生機能「HEOS」(ヒオス)対応
(Amazon Music、AWA、Spotifyなどが再生可能)
●ドルビーアトモス、DTS:X、Auro-3D、360 Reality Audio、MPEG-4 AAC、IMAX Enhanced対応
●寸法:幅434×高さ167×奥行389mm(アンテナ除く)
●質量:12.5kg

全ch同一のディスクリートパワーアンプ

「AVアンプはアンプである」とはかつてデノンが謳っていた標語。映像やサラウンド音声の処理も兼ねるAVアンプだが、「アンプ」を名乗る以上はその本質はアンプのクオリティと音質である、という意味だ。「AVR-X3800H」でも、製品の特徴紹介での筆頭はアンプについて。全ch同一構成のディスクリート(個別の部品で構成された)パワーアンプを9個搭載。出力素子についてはパーツメーカーと共同開発することで、半導体内部の回路パターンにまでこだわった。

ヒートシンクに取り付けられているのが2枚に分けられたパワーアンプ基板。ヒートシンクはアルミ押し出し材。厚みを持たせて効率的な放熱を目指した

ヒートシンクに取り付けられているのが2枚に分けられたパワーアンプ基板。ヒートシンクはアルミ押し出し材。厚みを持たせて効率的な放熱を目指した

アンプの定格出力は上記のように105W(8Ω、2ch駆動時)。これは2ch同時駆動時の数値だが、デノンでは、5ch同軸同時でもこの70%の出力値を保証する。ただ大出力を訴求するではなく、安定した、均一な多チャンネル同時駆動を求める姿勢にユーザーは注目すべき。それがサラウンド再生の高音質化につながるのだ。パワーアンプが「全ch同一」であることを示すのも同じ理由だろう。

マニア必見! オーバーヘッドスピーカー6本&サブウーハーの「指向性」モード

もう一点注目すべきポイントはDSPの進化だ。ここで言う「DSP」とは、デジタル信号処理チップ(Digital Signal Processor)のこと。採用されたDSPチップは、上位モデル「AVC-X8500H」のDSPを超える処理能力を持つという「Griffin Lite XP」。これにより、最大で11.4chの音声信号処理に対応。これまで上位グレードでしか実現していなかったオーバーヘッド(トップ/ハイト)スピーカーの最大数が6本になった。

さらに、「AVR-X3800H」は「プリアンプモード」を搭載する。これは内蔵されたパワーアンプの電源を落として使うというかなりマニアックな機能。「AVR-X3800H」をプリアンプ/サラウンドプロセッサーとして使うということだ。下記スライドのように、任意のchのオン/オフを指定できるため、より使いやすく仕上げられた。たとえば、フロントL/Rchだけを「プリアンプモード」として、サラウンドスピーカーは「AVR-X3800H」の内蔵アンプで鳴らす、ということが可能だ。もちろん、このときフロントL/Rchの信号はプリアウトから出力し、別途ユーザーが用意した好みのパワーアンプを使うことになる。

新しいDSPチップを搭載したのは新製品中「AVR-X3800H」のみ。上位モデル「AVC-X8500H」には「Griffin Lite」というチップが2枚搭載されるが、それよりも処理能力が高いという。今後は「Griffin Lite XP」が上位モデルに採用されることが期待される

新しいDSPチップを搭載したのは新製品中「AVR-X3800H」のみ。上位モデル「AVC-X8500H」には「Griffin Lite」というチップが2枚搭載されるが、それよりも処理能力が高いという。今後は「Griffin Lite XP」が上位モデルに採用されることが期待される

さて、「11.4ch」の「.4」とはサブウーハーを4台扱えることを意味するが、実はここにAVR-X3800Hだけの新提案がある。サブウーハーからすべて同じ音を出力する「スタンダード」のほかに、「各サブウーハーの近くにある『小』設定されたスピーカーの低音を再生する『指向性』の2モードを選択」できるのだ。サブウーハーを一個使う場合、『小』設定されたスピーカーの低音はすべてひとつのサブウーハーから出力される。サラウンドや天井にあるハイトスピーカーであってもだ。この不合理を解決できる提案はとても珍しい。

これまでもヤマハのAVアンプで2つのサブウーハーから異なる音を出す機能があったが、それをさらに発展させた機能だと思って間違いない。例外としてフランスのAVアンプ、トリノフ・オーディオの製品があるが、あまりに高価なので一般的とは言えなかった。トリノフ・オーディオでは低音の出どころを任意に設定できる(オーバーヘッドスピーカーの低音をサラウンドスピーカーから出すなど)が、そこまでできる必要はないだろう。サラウンド、特に「イマーシブサウンド」を極めたいと考えているならば必見の機能だ。

写真はサブウーハー「2台」の「指向性」モード設定画面。レイアウトは「左右」「前後」が選択可能だ。サブウーハーは「3台」「4台」も選べる。なお、「4台」を選ぶと、「サブウーハーレイアウト」は「フロント左右/リア左右」に固定される

写真はサブウーハー「2台」の「指向性」モード設定画面。レイアウトは「左右」「前後」が選択可能だ。サブウーハーは「3台」「4台」も選べる。なお、「4台」を選ぶと、「サブウーハーレイアウト」は「フロント左右/リア左右」に固定される

サブウーハーを複数台使う場合、リスニング位置からの距離や音量は個別に調整できる

サブウーハーを複数台使う場合、リスニング位置からの距離や音量は個別に調整できる

さらに、後日(2023年)の有償アップデートではあるものの、音場補正機能「Dirac Live」に対応することも見逃せない。これはスウェーデンのDirac Research社が提供する音質・音場補正技術のこと。マイクとPCを使って部屋の音響を測定し、「周波数特性だけでなく、部屋内の反射やスピーカーの位置のずれに起因する音の遅延についても測定、補正を行う」。現在の製品でも同じように自動音場補正機能を備えているが、より高性能な補正を期待できる。

特に天井にまで数多くのスピーカーを設置してドルビーアトモス音声を再生したいとなれば、デジタル領域での補正は必須。映画だけでなく音楽でもドルビーアトモスや360 Reality Audio音源が登場している今、高精度な補正はこれまで以上に求められているのだ。

「イマーシブサウンド」の再生に熱心なユーザーはオーディオフォーマットへの対応も気になるところだろう。「AVR-X3800H」はAmazon Musicなどで配信される360 Reality AudioやBS4K放送で採用されているMPEG-4 AACにも対応する

「イマーシブサウンド」の再生に熱心なユーザーはオーディオフォーマットへの対応も気になるところだろう。「AVR-X3800H」はAmazon Musicなどで配信される360 Reality AudioやBS4K放送で採用されているMPEG-4 AACにも対応する

ビデオフォーマットへの対応も万全。HDMI入力6系統、HDMI出力2系統はすべて8K/60Hz、4K/120Hz(最大40Gbps)の映像信号パススルーに対応する

ビデオフォーマットへの対応も万全。HDMI入力6系統、HDMI出力2系統はすべて8K/60Hz、4K/120Hz(最大40Gbps)の映像信号パススルーに対応する

HDMI入出力のほか、11.4ch分のプリアウト、フォノ入力(MM)などを備える。入出力端子が充実していることも「AVR-X3800H」の特徴だ

HDMI入出力のほか、11.4ch分のプリアウト、フォノ入力(MM)などを備える。入出力端子が充実していることも「AVR-X3800H」の特徴だ

独自のネットワークオーディオ機能HEOS(ヒオス)に対応。写真はHEOSのモジュール基板だ。ハイレゾを含むAmazon MusicやSpotifyの再生に対応するため、音楽再生のためのプレーヤーにもなる

独自のネットワークオーディオ機能HEOS(ヒオス)に対応。写真はHEOSのモジュール基板だ。ハイレゾを含むAmazon MusicやSpotifyの再生に対応するため、音楽再生のためのプレーヤーにもなる

HDMI周辺機能をアップデートした「AVR-X2800H」

「AVR-X2800H」は従来モデル「AVR-X2700H」のアップデート版という位置づけ。従来モデルとのスペック上の違いは大きくないが、HDMI入力の8K対応端子が1系統から3系統に増えたことは特筆すべき点だ。最新の機能を備え、新たなハードに合わせたチューニングが施されたと見るのが適当だろう。

7chアンプがディスクリート構成であることやパーツ選定に注意を払ったことは上位モデルと同様。DSPチップこそ「AVR-X3800H」とは異なるが、スピーカー設定時のGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェイス)をより見やすく改めるなどのアップデートが施された。

7chアンプ搭載モデル「AVR-X2800H」。ドルビーアトモス、DTS:Xのデコードに対応し、「5.1.2」構成での再生が可能だ

7chアンプ搭載モデル「AVR-X2800H」。ドルビーアトモス、DTS:Xのデコードに対応し、「5.1.2」構成での再生が可能だ

「AVR-X2800H」の主要スペックは以下のとおり。

●内蔵パワーアンプ:7ch
●定格出力:95W(8Ω、2ch駆動時)
●HDMI入力6系統、HDMI出力2系統(HDMI入力の8K/60Hz映像信号のパススルー対応は3系統のみ)
●サブウーハー用プリアウト装備
●独自のネットワークオーディオ再生機能「HEOS」(ヒオス)対応
(Amazon Music、AWA、Spotifyなどが再生可能)
●ドルビーアトモス、DTS:X、MPEG-4 AAC対応
●寸法:幅434×高さ167×奥行341mm(アンテナ除く)
●質量:9.5kg

HDMI入力は6系統。そのうち3系統が8K映像信号のパススルー対応端子だ。プリアウトについては基本的にサブウーハー用(隣はゾーン用出力)。こうした拡張性にも上位モデルとの差がある

HDMI入力は6系統。そのうち3系統が8K映像信号のパススルー対応端子だ。プリアウトについては基本的にサブウーハー用(隣はゾーン用出力)。こうした拡張性にも上位モデルとの差がある

「AVR-X2800H」の内部。ヒートシンクへパワーアンプ基板の取り付ける手法などに上位モデルの考え方が垣間見える。パーツの選定や機能の省略でコストダウンを図っているが基本思想は一貫している

「AVR-X2800H」の内部。ヒートシンクへパワーアンプ基板の取り付ける手法などに上位モデルの考え方が垣間見える。パーツの選定や機能の省略でコストダウンを図っているが基本思想は一貫している

GUIが改められ、見やすくなったことは3製品共通。初期設定時には、どこにどこのケーブルをつなげばよいか、図版で指示してくれる

GUIが改められ、見やすくなったことは3製品共通。初期設定時には、どこにどこのケーブルをつなげばよいか、図版で指示してくれる

シンプルに徹して音質を磨いた「AVR-X580BT」

最後に紹介する「AVR-X580BT」は「AVR-X550BT」の後継モデル。機能をそぎ落として「サラウンドの楽しさを1人でも多くの人に」伝えるための製品だという。そのため、内蔵アンプは5chでドルビーアトモスには非対応。ネットワークオーディオ機能も持たない。それでもデノンの「サウンドマスター」(音質のチューニング、最終決定者)が目指す「Vivid & Spacious」なサウンドのために、信号経路の最短化などの作り込みに努めた。HDMI入出力が8K映像パススルーに対応したこともうれしいポイント。

機能は少ないが、音のよさを追求した「AVR-X580BT」。「BT」の型番が示すようにBluetoothの受信機能を備えるほか、フロントパネルのUSB TypeA端子にUSBフラッシュメモリーを接続すればハイレゾファイル(最大192kHz/24bit)の再生も可能だ

機能は少ないが、音のよさを追求した「AVR-X580BT」。「BT」の型番が示すようにBluetoothの受信機能を備えるほか、フロントパネルのUSB TypeA端子にUSBフラッシュメモリーを接続すればハイレゾファイル(最大192kHz/24bit)の再生も可能だ

シンプルな端子構成だが、HDMI入出力はすべて8K映像信号のパススルーに対応する。また、スピーカー端子は従来いわゆるプッシュ式だったところ、スクリュータイプに変更された

シンプルな端子構成だが、HDMI入出力はすべて8K映像信号のパススルーに対応する。また、スピーカー端子は従来いわゆるプッシュ式だったところ、スクリュータイプに変更された

「AVR-X580BT」の主要スペックは以下のとおり。

●内蔵パワーアンプ:5ch
●定格出力:70W(8Ω、2ch駆動時)
●HDMI入力4系統、HDMI出力1系統(すべて8K/60Hz映像信号のパススルー対応)
●サブウーハー用プリアウト装備
●寸法:幅434×高さ151×奥行330mm(アンテナ除く)
●質量:7.6kg

全ch同一のディスクリートパワーアンプを搭載することはもちろん、安定した大出力を支えるために大型EIコアトランスを搭載。電源部のブロックコンデンサーには「AVR-X580BT」専用にチューニングされたカスタム品を採用した。

従来モデルからの変更という意味では、セレクターとボリュームICを分離したことも大きなポイントだ。従来はそれらが一体となったICを使用していたが、入力セレクター、ボリューム、出力セレクターそれぞれにカスタム品を採用。これにより基板上の回路の最適化を図れる。「AVC-X8500HA」で効果を実証済みのデノン定番の手法だ。

入出力セレクター、ボリュームICを分離したことが従来からの変更点のひとつ。このICは半導体メーカー(JRC)と共同開発したカスタム品だ

入出力セレクター、ボリュームICを分離したことが従来からの変更点のひとつ。このICは半導体メーカー(JRC)と共同開発したカスタム品だ

スペックには表れない部分でも、ビスの選定や緩衝材の見直しなど細かなケアがされたという

スペックには表れない部分でも、ビスの選定や緩衝材の見直しなど細かなケアがされたという

オーディオ信号回路に多くのディスクリートパーツを使用したほか、光デジタル音声入力の端子をデジタル基板内に収めたことも経路短縮に寄与している

オーディオ信号回路に多くのディスクリートパーツを使用したほか、光デジタル音声入力の端子をデジタル基板内に収めたことも経路短縮に寄与している

機能が省略されている分、内部もシンプル。それを生かせば、信号経路の最短化や配線の引き回し方の検討はしやすいという。担当者によれば、歴代のデノンAVセンターの中でも経路の短さは随一とのこと

機能が省略されている分、内部もシンプル。それを生かせば、信号経路の最短化や配線の引き回し方の検討はしやすいという。担当者によれば、歴代のデノンAVセンターの中でも経路の短さは随一とのこと

これぞ高コストパフォーマンス。「AVR-X580BT」の懐の深さに驚く

製品の発表に合わせて試作機に触れる機会を得られたのだが、最も感心させられたのは、エントリーモデルの「AVR-X580BT」だった。「Pure Direct」モードで2ch音源を再生すると、しっかりと広い音場が展開されるのだ。HDMIのパススルー機能が強化されたこの製品ならば、テレビとつないでおけばARC/eARCやCEC機能でうまくリンクしてくれるはず。しかも、やろうと思えば5.1chのサラウンドシステムの構築も可能。この懐の深さにはぜひ注目いただきたい。

とはいえ、製品が上位グレードになるにつれて、情報量が増え、ウーハーの制動力が上がってくるように感じられるのは事実。かけられたコストの差はしっかりと音の差となって表れる。「AVR-X3800H」では、派手な映画音響再生でもへこたれないというだけでなく、静かなシーンの静けさを再現できるようになるのだ。こうしたあたりもデノンの「サウンドマスター」による管理の賜物なのだろう。

試作機に触れたのはD&Mホールディングス内のデノン視聴室。スピーカーはBowers&Wilkinsの802D3を中心とした「5.2.4」サラウンドシステムだ

試作機に触れたのはD&Mホールディングス内のデノン視聴室。スピーカーはBowers&Wilkinsの802D3を中心とした「5.2.4」サラウンドシステムだ

柿沼良輔(編集部)

柿沼良輔(編集部)

AVの専門誌を編集して10年超。「(デカさ以外は)映画館を上回る」を目標にスピーカー総数13本のホームシアターシステムを構築中です。映像と音の出る機械、人が一生懸命つくったモノに反応します。

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