選び方・特集

ノイキャン性能トップは? ソニー・アップル・Boseのノイキャンイヤホン・ヘッドホン6機種をガチ比較

2022年9月下旬にアップル「AirPods Pro(第2世代)」、Bose「QuietComfort Earbuds II」という話題のノイズキャンセリングイヤホンが登場したことで、ノイズキャンセリング性能に対するユーザーの関心度がますます高まってきている。「AirPods Pro(第2世代)」と「QuietComfort Earbuds II」の2機種については発売直後の記事で僕なりの結論を出しているが(https://kakakumag.com/av-kaden/?id=18826)、「ソニーのノイキャンイヤホンと比べてどうなの?」「ノイキャンヘッドホンと比較したらどっちが強力なの?」など、まだまだユーザーが気になることも多いことだろう。そこで今回は、ソニー・Bose・アップルの3社のノイズキャンセリングイヤホン・ヘッドホン混在による、ノイズキャンセリング性能頂上対決を企画した。

用意したのは、完全ワイヤレスタイプのノイズキャンセリングイヤホンとして、ソニーの「WF-1000XM4」、Boseの「QuietComfort Earbuds II」、アップルの「AirPods Pro(第2世代)」。オーバーヘッドタイプのノイズキャンセリングヘッドホンは、ソニーの「WH-1000XM5」、Bose「QuietComfort 45 Headphones」、アップル「AirPods Max」だ。

ソニー、アップル、Boseのノイズキャンセリングイヤホン・ヘッドホン全6機種を持ち出し、純粋なノイズキャンセリング性能のみを比べてみた

ソニー、アップル、Boseのノイズキャンセリングイヤホン・ヘッドホン全6機種を持ち出し、純粋なノイズキャンセリング性能のみを比べてみた

ノイズキャンセリング性能の検証環境として選んだのは、行き交う自動車や雑踏でかなりノイズの多い渋谷駅付近の路上と、JR東日本の電車内。それぞれの場所で機種ごとに高域・中域・低域のノイズキャンセリングの具合を5段階で評価した。なお、今回は純粋なノイズキャンセリング性能のみを評価するため、音楽を流さない無音状態で検証を行っている。採点はあくまで今回テストした6機種の中の相対評価だ。

また、複数の機種で「特定の音がノイズキャンセリング対象から外れて妙に残る」「ひとつの場所でノイズキャンセリングを試していると、効果にムラがある」など単純に強弱で採点しにくい要素を確認できた。これを踏まえて、安定についても採点を行っている。それでは実際にフィールドテストで確認できた各モデルの特徴を機種ごとに紹介していこう。

ソニー「WF-1000XM4」

ソニー「WF-1000XM4」を渋谷駅付近の路上でテスト

ソニー「WF-1000XM4」を渋谷駅付近の路上でテスト

ノイズキャンセリング評価(街頭)
高域 ★★★
中域 ★★
低域 ★★★
安定 ★★★★★

2021年の発売と完全ワイヤレスイヤホンとしてはロングセラーの域に入る「WF-1000XM4」。渋谷の雑踏はあまりにうるさく、正直言ってノイズキャンセリング機能をオンにしても周囲のノイズに負け気味。自動車の走行音や人の話し声など、ボリュームダウンはすれども結構聞こえてしまう。なお、ノイズキャンセリング性能の挙動に特別なクセはなく安定感は良好だった。

ソニー「WF-1000XM4」を走行中の電車内でテスト

ソニー「WF-1000XM4」を走行中の電車内でテスト

ノイズキャンセリング評価(電車)
高音 ★★★
中音 ★★
低音 ★★★
安定 ★★★★★

電車内のノイズキャンセリングの効果は、全体的にボリュームダウンするが、強度としてはやや物足りない。特に気になるのは中域で、レールがガタガタ鳴るようなノイズは、耳に飛び込む音の尖りが強めに残ってしまうので気になりやすい。軽めの走行音が少し気になったことも報告しておこう。

Bose「QuietComfort Earbuds II」

Bose「QuietComfort Earbuds II」を渋谷駅付近の路上でテスト

Bose「QuietComfort Earbuds II」を渋谷駅付近の路上でテスト

ノイズキャンセリング評価(街頭)
高域 ★★★★★
中域 ★★★★★
低域 ★★★★★
安定 ★★★★★

2022年9月29日に発売したばかりのBoseの最新ノイズキャンセリングイヤホン。装着した瞬間から、ノイズに対するボリュームダウン具合が桁違いで強烈に効く。特に自動車の走行時の重低音は完全になくなり、走り抜ける際の中高域が残るのみ。また人の雑踏もゼロではないがわずかと呼べる水準まで落ちた。ノイズキャンセリングが働く対象に特別なクセもなく、動作が安定しているところもすばらしい。

Bose「QuietComfort Earbuds II」を走行中の電車内でテスト

Bose「QuietComfort Earbuds II」を走行中の電車内でテスト

ノイズキャンセリング評価(電車)
高域 ★★★★★
中域 ★★★★★
低域 ★★★★★
安定 ★★★★★

電車内では全帯域に対してノイズキャンセリングがかなり有効に働く。電車の走行時の重低音はほとんど消えるし、レールのガタガタとしたランダムな音も音量を大幅に落としつつ、音の尖りが取れて音も自然。高域側もかなり無音に近く、そよ風のような(?)音が残るのみになる。なお、テスト途中から同じ車両内でにぎやかな家族が会話をしだしたら、さすがに人の声は結構聞こえてしまったことは付け加えておく。

アップル「AirPods Pro(第2世代)」

アップル「AirPods Pro(第2世代)」を渋谷駅付近の路上でテスト

アップル「AirPods Pro(第2世代)」を渋谷駅付近の路上でテスト

ノイズキャンセリング評価(街頭)
高域 ★★★★
中域 ★★★★★
低域 ★★★★
安定 ★★★

2022年9月23日に発売したばかりのアップル「AirPods Pro」シリーズの最新モデル。ノイズキャンセリング性能は比較的強力で、特に雑踏の中域の抑え具合はなかなか優秀。自動車の走行音などもよく抑え込まれているが、注意深く聞いてみると低音部も若干残っているようだ。渋谷駅付近のテストでは“シー”と高域で鳴るノイズが常に聞こえていたところがマイナス。

アップル「AirPods Pro(第2世代)」を走行中の電車内でテスト

アップル「AirPods Pro(第2世代)」を走行中の電車内でテスト

ノイズキャンセリング評価(電車)
高域 ★★★★
中域 ★★★★★
低域 ★★★★★
安定 ★★★

電車内のテストでも、ノイズキャンセリング効果はそれなりに強力だ。特にレールのすれる音やガタガタした中域の消し具合が特徴的で、ノイズキャンセリングの自然さなんて気にせず、無理矢理にボリュームダウンして消し込むような効果がよくわかる。ただ、検出したノイズとそれ以外で効果にムラがあること、高域に“シャワシャワ”と鳴る不思議なノイズが残った。また、ノイズキャンセリングによって生じる耳への圧迫感は、今回試した6機種の中で最も強かった。

ソニー「WH-1000XM5」

ソニー「WH-1000XM5」を渋谷駅付近の路上でテスト

ソニー「WH-1000XM5」を渋谷駅付近の路上でテスト

ノイズキャンセリング評価(街頭)
高域 ★★★★
中域 ★★★
低域 ★★★
安定 ★★★★

2022年5月発売のソニーのノイズキャンセリングヘッドホンの最上位モデル。ヘッドホンなので優秀なノイキャンを期待したのだが……率直に言って渋谷の雑踏に対するノイズキャンセリングはあまり強くない。雑踏の中域の音が漏れ聞こえるし、自動車の低域側の走行音も残る。装着したまま頭を動かすと、露骨にノイキャンの入り具合が切り替わる挙動がわかるのも気になるところだ。

ソニー「WH-1000XM5」を走行中の電車内でテスト

ソニー「WH-1000XM5」を走行中の電車内でテスト

ノイズキャンセリング評価(電車)
高音 ★★★★
中音 ★★★
低音 ★★★
安定 ★★★★

「WH-1000XM5」の電車内のノイズキャンセリングは、とにかくやさしくナチュラル志向な働きが特徴的。全帯域ボリュームダウンしていて、高域側も自然に抑えてくれるのだが……自然過ぎてちゃんと働いているのか不安になる。重低音のノイズは消えているが、それより少し高めの低域側の帯域が残り気味。また、レールのすれる音や窓がガタガタ鳴る音の消し込みも得意ではない。顔を真横に向けたりすると、ノイズキャンセリングがリセットされ、別のフィルターがかかるような挙動も気になる。

Bose「QuietComfort 45 Headphones」

Bose「QuietComfort 45 Headphones」を渋谷駅付近の路上でテスト

Bose「QuietComfort 45 Headphones」を渋谷駅付近の路上でテスト

ノイズキャンセリング評価(街頭)
高域 ★★★★★
中域 ★★★★
低域 ★★★★★
安定 ★★★★★

2021年10月発売のBose「QuietComfort 45 Headphones」はノイズキャンセリングヘッドホンの最定番モデルのひとつ。実際に渋谷の街頭でテストしてみても、ノイズキャンセリングは今でもトップクラスで、特に自動車の走行音など重低音はほとんど聞こえなくなる。中域側は若干残っているが、音の尖りがなくなるため不快感がとても小さい。装着感による影響や特定の音が残るなどのマイナスがまったくないところも優秀だ。

Bose「QuietComfort 45 Headphones」を走行中の電車内でテスト

Bose「QuietComfort 45 Headphones」を走行中の電車内でテスト

ノイズキャンセリング評価(電車)
高域 ★★★★★
中域 ★★★★
低音 ★★★★★
安定 ★★★★★

電車内のノイズキャンセリングについてもほぼ同傾向。電車走行時の振動のような重低音はしっかりと抑え込まれており、とても優秀だ。ガタガタというランダムなノイズや、レールのすれる甲高い音は若干残り気味だが、全体のボリュームダウンとともに残る音から音の尖りがなくなるので気になりにくい。ノイズキャンセリングの動作も安定していて、ノイズキャンセリングが効いていること自体が気になりにくいのも好印象だ。

アップル「AirPods Max」

アップル「AirPods Max」を渋谷駅付近の路上でテスト

アップル「AirPods Max」を渋谷駅付近の路上でテスト

ノイズキャンセリング評価(街頭)
高域 ★★★★★
中域 ★★★★★
低域 ★★★★
安定 ★★

2020年12月に発売したアップル「AirPods Max」。今回、渋谷駅前の雑踏でかなり強力なノイズキャンセリングを体感できた1台だ。すべての帯域に効果的にノイズキャンセリング機能が効果的に効いているほか、ヘッドホン自体のパッシブなノイズキャンセリング性能が高いのも手伝っているようだ。完全ワイヤレスイヤホンの「AirPodsPro(第2世代)」の強度に近いが、本機は中低域のノイズの抑え込み具合に違和感はない。ただ、ノイズキャンセリングからハッキリと外れる音があり、重低音が“ブーン”と鳴り続けるとことはマイナスだ。どうやら道路の下を走っている地下鉄の音が伝わっているようだ。また、顔の向きをけるとノイズキャンセリングの挙動が変化するようで、ノイズキャンセリングがオンであることがわかってしまうところもやや気になった。

アップル「AirPods Max」を走行中の電車内でテスト

アップル「AirPods Max」を走行中の電車内でテスト

ノイズキャンセリング評価(電車)
高域 ★★★★
中音 ★★★★★
低音 ★★★★★
安定 ★★★

電車内のノイズキャンセリングは、走行時の重低音部分に対するノイズの抑え込みがとても優秀だった。ガタガタと揺れるような中域に対しても、違和感があろうがお構いなしといった感じで強力にノイズを抑え込みにくる。ただ、同様の傾向がある「AirPodsPro(第2世代)」よりマシだ。高域側もノイズは低減しているのだが、なぜか“ヒュウヒュウ”と強めの風が吹くようなノイズが残るようだ。また、首を横に動かした時にノイズキャンセリングの挙動が変化するため、周囲の音がやや聞こえることがある。

まとめ ノイキャン性能の最優秀はBose「QuietComfort Earbuds II」

以上、合計6機種を渋谷駅付近の街頭、電車内でテストしてみた。ノイズキャンセリング評価の★マークは、渋谷駅付近の街頭と電車内で得点に違いが出ればと独立採点をしたつもりだったが、アップル2製品以外は同じだった。内容が重複して見えるかもしれないが、そうした経緯なのでご容赦いただきたい。

6機種の採点内容を見ると結果は一目瞭然。Boseの完全ワイヤレスタイプのノイズキャンセリングイヤホン「QuietComfort Earbuds II」がすべての項目で★5つ評価で文句なしの1位、そしてノイズキャンセリングヘッドホンのBose「QuietComfort 45 Headphones」が2位と続く形となった。ノイズキャンセリングの効果の強さだけでもトップだが、Bose製品は同時に弱点とする音や不自然な挙動がないところがとても優秀だ。

3位、4位は★の数では同点でアップルのノイズキャンセリングイヤホン「AirPods Pro(第2世代)」とノイズキャンセリングヘッドホン「AirPods Max」が並んでいるが、実用上は「AirPods Max」を上に評価したい。アップル製品もノイズキャンセリングはなかなか強力だが、特に中域のノイズを低減するために違和感をいとわない処理が働くためひとくせある。また明確に残る音があったり、首を動かすとノイズキャンセリングの挙動が変化して効果が弱わることがあるなど、動作の安定でポイントを落とした。

5位はソニーのノイズキャンセリングヘッドホン「WH-1000XM5」、そして、6位はノイズキャンセリングイヤホンの「WF-1000XM4」。理由は単純で、ノイズキャンセリング効果が周囲の騒音レベルに負けている。騒音レベルの大きい環境だけでなく、静かな環境でも違和感のないノイズキャンセリングを目指しているためだと思うが、Boseやアップルに比べると、騒音レベルの大きい環境下でやや課題が残った。また、個人的に5位の「WH-1000XM5」の結果が残念だった。価格.comマガジンの発売時のレビュー記事(https://kakakumag.com/av-kaden/?id=18512)で「WH-1000XM4」からノイズキャンセリング性能の低下を指摘したが、今回のテストでもそれが裏付けられた形だ。今後のソニーの奮起に期待したい。

折原一也

折原一也

PC系版元の編集職を経て2004年に独立。モノ雑誌やオーディオ・ビジュアルの専門誌をメインフィールドとし、4K・HDRのビジュアルとハイレゾ・ヘッドフォンのオーディオ全般を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。

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