アップル「Apple TV 4K」(第3世代)が2022年11月4日に発売される。Wi-Fi+EthernetモデルとWi-Fiモデルの2機種がラインアップされており、アップルストア価格は前者が23,800円(税込、以下同)、後者が19,800円。発売前にひと足早く実機を試すことができたのでレビューをお届けしたい。
「Apple TV 4K」(第3世代)。本体はコンパクトな黒色の箱型。リモコンには第2世代の「Siri Remote」が付属する。今回はWi-Fi+Ethernetモデルを試した
「Apple TV 4K」はテレビに接続して利用するセットトップボックス(STB)。第3世代モデルは、SoCが第2世代モデルの「A12 Bionic」から「A15 Bionic」に強化され、CPU性能が最大50%、GPU性能が最大30%向上しているという。実動作ではアプリの起動が20%高速化しており、アプリが立ち上がるまでの待ち時間が短くなっているとのこと。
また、ストレージ容量が2倍にアップし、Wi-Fi+Ethernetモデルが128GB、Wi-Fiモデルが64GBとなった。最近はコンテンツの大容量化が進んでいるので、ストレージ容量のアップはありがたい。
画質面では、新たに「HDR10+」に対応。より高画質で映画などの動画を楽しめるようになった(「HDR10+」については、こちらの記事1、記事2を参照)。使い勝手の面では、「tvOS 16」の機能強化により、「Siri」がコンパクトなデザインに変更されている。さらに、「Siri」に話しかける声でユーザーを判断する機能とリフレッシュレートの自動切り替え機能が年内に追加される予定だ。
「ビデオとオーディオ」という設定項目の中に、「HDR10+を使用」という項目が追加されている
「Siri」の検索結果がコンパクトに表示されるようになった。これにより、動画を見ながら、別の動画を探しやすくなった
続いて実機をチェックしていこう。本体は箱型で、大きさは第2世代モデルからひとまわりほど小さくなっている。ファンレス仕様になったことがその理由で、重量も半分ほどの重さになった。手のひらにのるほどコンパクトなので、テレビの近くや裏側に設置しやすいだろう。パッケージの中には、本体のほかに、「Siri Remote」や電源ケーブルなどが入っている。説明書はアップルらしくシンプルなものだ。HDMIケーブルは別売なので、自身で用意しなければならない。今回試したのはWi-Fi+Ethernetモデルなので、本体の背面に有線LANポートが備わっている。
本体サイズは第2世代モデルよりひとまわり小さい93(幅)×93(奥行)×31(高さ)mm。重量は今回試したWi-Fi+Ethernetモデルが214g、Wi-Fiモデルが208g。第2世代モデルの重量は425gだったので、半分以上軽くなっている。ファンレス仕様になったのが小型・軽量化の理由だ
無線LANは2×2MIMO対応のWi-Fi 6をサポート。Wi-Fi+Ethernetモデルはギガビット対応の有線LANポートを搭載する
ほかのアップル製品と同様、数ステップで使い始められるのも「Apple TV 4K」(第3世代)の魅力。電源をつなぎ、テレビとHDMIケーブルで接続する。電源を入れて言語や地域を設定すると、「iPhoneで設定」と「手動で設定」という選択肢があるので、「iPhone」ユーザーなら迷わず、「iPhoneで設定」を選ぼう。すると、「iPhone」を「Apple TV 4K」(第3世代)に近づけるように指示が出るので、指示に従って近づける。テレビに4桁の番号が表示され、この番号を「iPhone」上で入力すれば、各種設定は完了だ。アップルIDやパスワード、Wi-Fiのパスワードなどを入力する必要はなく、2分か3分で使い始められる。
「iPhone」ユーザーなら、「iPhone」を使っての自動設定が可能
接続しているテレビがHDRに対応しているかどうかも初期設定時に確認可能。第2世代モデルで導入された、「iPhone」の「Face ID」を使ってのカラーバランスの調整機能も引き続き搭載されている。
「iPhone」の「Face ID」を使ったカラーバランスの調整に対応
セットアップが完了したので、実際に使っていこう。アプリの起動や切り替え、移動などのスピードは第2世代モデルと比べて、速くなった印象は受けなかった。厳密に比較すれば速くなっているのかもしれないが、体感ではそれほどの差はない。
「Apple TV 4K」(第3世代)ではいろいろなことができるが、個人的には以下の3つの用途がメインになると考えている。
1.テレビで動画を見る
2.iPhoneやiPad、Macのミラーリング&AirPlay
3.Apple Arcadeでゲームを楽しむ
ひとつ目の「テレビで動画を見る」は、「Apple TV 4K」(第3世代)のメインの用途だろう。「Apple TV+」や「Disney+」「Amazonプライム ビデオ」「Hulu」「FOD(フジテレビオンデマンド)、「DAZN」などさまざまな動画配信サービスが利用できる。
最近のテレビでは単体でも動画配信サービスを利用できるが、「Apple TV 4K」(第3世代)のいいところは、家族で使いやすいこと。たとえば、パパとママ、子どもで見たい動画は違うだろう。そんなときに、「Siri Remote」のTV/ホームボタンを長押ししてユーザーを選ぶと、素早くユーザーを切り替えられる。利用するユーザーを変更すると、「次に観る」にその人におすすめの動画が表示されるのだ。これにより素早く自分専用の「Apple TV 4K」(第3世代)になるのだ。なお、ユーザーを声で判別する機能も年内に追加される予定で、より家族で使いやすいSTBになるはずだ。
「Apple One」のファミリープランに入っている家族だと、それぞれの端末で「Apple TV+」を楽しんでいるだろうし、家族で加入している動画配信サービスも違う場合もあるだろう。そんな場合でも、「Apple TV 4K」(第3世代)ならユーザーを素早く切り替えられる
筆者の「今すぐ観る」。子どもが好きなアニメなども表示される。サービスに関係なく横串でレコメンド動画が表示される
家内の「今すぐ観る」。動画配信サービスをほぼ使ってないので、各配信サービスの人気動画や、「Apple TV+を楽しむ方法」などが表示される
付属の「Siri Remote」も動画視聴に便利だ。タッチ対応のクリックパッドで早送りや巻き戻し操作ができるほか、「Siri」を使って音声でも5秒や10秒など細かく指定して早送り・巻き戻しが可能。リモコンだと戻りすぎたり、進みすぎたりしてイライラするといったちょっとしたストレスもない。
「Siri Remote」
右側面に「Siri」ボタンを搭載
2つ目のミラーリングおよび「AirPlay」も個人的によく使っている機能だ。「iPhone」や「iPad」の画面をテレビに映すというシンプルな機能ではあるが、撮影した写真や動画は大画面で見られるのは便利だ。「AirPlay」は家族に見せたい「YouTube」などを再生するときに重宝する。テレビに接続したサウンドバーなどを使って、音楽を再生するといった場合も「AirPlay」が役立つ。
「iCloud共有写真ライブラリ」を使っているユーザーなら、共有した写真を「Apple TV 4K」(第3世代)を使って、表示することも可能だ。
「iPhone」や「iPad」の画面をミラーリングして、大画面で映し出せる
3つ目は「Apple Arcade」。このゲームプレイで新しい「A15 Bionic」のパワーが生きてくる。「Apple Arcade」のゲームは年々リッチ化しており、そのゲームを快適に楽しむためにはパワフルなチップが欠かせないのだ。目立ったキラータイトルこそないが、日本のクリエイターやメーカーも参加しているので、「Apple Arcade」に加入している人はぜひ試してみてほしい。なお、「PlayStation 5」や「Xbox」のコントローラーと接続すれば、家庭用ゲーム機と変わらない感覚で楽しめるのもポイントだ。
バスケットボールゲーム「NBA 2K」の最新作「NBA 2K23 Arcade Edition」。選手の動きが滑らかで、顔もよく似ている
「DualSense ワイヤレスコントローラー」を接続して遊んでみたが、家庭用ゲーム機と変わらない感覚でゲームを楽しめた
上記の3点以外にも「Homekit」に対応した家電のコントロールや「SharePlay」を使って、離れている友人と同じ映画を楽しんだり、さまざまなことが可能だ。
去年に続き、新しいモデルが登場した「Apple TV 4K」。買い替えを検討すべきなのは、「Apple TV HD」以前のモデルを使っている人たちになるだろうか。対応テレビは必要だが、4KやHDRに対応しており、画質面ではかなりの向上が期待できるはずだ。また、家族で動画を楽しみたいという人にも「Apple TV 4K」(第3世代)をチェックしてもらいたい。簡単にユーザーを切り替えられるので、家族それぞれ好きな動画を満喫できるはずだ。
価格面では、第2世代モデルは21,800円からだったので、2,000円ほど安くなった。円安の影響で値上げが続くアップル製品の中では、お買い得感がある。
ガジェットとインターネットが好きでこの世界に入り、はやいもので20年。特技は言い間違いで、歯ブラシをお風呂、運動会を学芸会、スプーンを箸と言ってしまいます。お風呂とサウナが好きです!