最近、オーディオ界隈でブームの“アナログレコード”と巷でブームの“レトロ”。昭和末期〜平成初期1980年代前半はバブル景気の時代でもあるし、その時代の空気感があったと思う。
そんな時代に存在したアナログレコードプレーヤー、オーディオテクニカの“サウンドバーガー”が令和に復活を果たした。製品型番は「AT-SB2022」。11月7日にオンラインストア限定販売で、全世界7000台限定とのことだ。価格は23,800円。
僕自身は80年代リアルタイムの記憶はまったくないのだが、オーディオテクニカの“サウンドバーガー”の存在は以前から知っていた。それはレコードを挟んで再生するという、今では失われた再生スタイルで、レトロでカッコイイと思っていたためだ。
そんな“サウンドバーガー”が復刻販売されるとなればもう、買うっきゃないとオンラインの争奪戦に参戦。通販サイトのサーバー落ちを経て、無事に1台購入できたのでレビューしていきたい。なお、サウンドバーガーは12月1日にも再販売されるとのこと。気になる方はぜひチェックしていただきたい。
11月7日に全世界7000台限定で復刻販売された“サウンドバーガー”こと「AT-SB2022」。オンライン購入した製品が自宅に到着したので、さっそくレビューしていこう
“サウンドバーガー”とは、オーディオテクニカが1980年代に発売していたレコードを挟んで再生するレコードプレーヤー。復刻モデルでは外見やコンセプトはそのままに、ステレオミニ出力のほかにBluetooth 5.2によるワイヤレス接続に対応。また、バッテリー内蔵でポータブルに使えるというコンセプトもあり、最大12時間の連続再生が可能となっている。ちなみに誤解しそうになるが、スピーカーは内蔵していないので、これ単体ではアナログレコードの音を楽しめないという点は注意してほしい。
80年代感ありまくりのレトロデザイン。見た目は当時のままだという
実際に僕の手元に届いた“サウンドバーガー”を見てみると……なんというか外見デザインが80年代過ぎるのだ。まず、赤×黒のカラーリングに時代を感じてしまうし、“SOUND BURGER”ってネーミングセンスもプリントされるフォントもレトロ感ありまくり。そして極めつけは、筐体表面にギザギザした加工があるところも時代を感じる。
個人的に時代を感じるのはこの表面にあるギザギザ
外形寸法は100(幅)×290(奥行)×70(高さ)mmで重さは900g。持ち歩きも可能だ
レコードプレーヤーとしての基本スペックは、ベルトドライブ式、33回転(正確には33 1/3)、および45回転レコード対応とスタンダード。VM型のステレオカートリッジを搭載している。トーンアームはバネにより針圧をかけるダイナミックバランス方式で、針先はオーディオテクニカの交換針「ATN3600L」に交換可能だ。
レコード針は交換可能な仕様。付属品のほかには、別売りの「ATN3600L」に対応している
実際にレコードを再生する流れは、まずトーンアーム固定ネジを抜いてから、スライド式のロックを動かして上ふたをオープン。
名前のとおりレコードを挟んでセットするスタイル
45RPMアダプターを外し、トーンアームを“カチッ”と鳴るまで横に開いてから、レコードをセット。一般的なLPレコードなど33回転のレコードを再生する場合は、レコードの上に45RPMアダプターをセットする。
45RPMアダプターを外してトーンアームを外側まで開く
一般的なLPレコードの場合、レコードをセットした上に45RPMアダプターを配置する形だ
あとは電源を入れ、Bluetoothワイヤレスで接続する際にはイヤホン・ヘッドホンやBluetoothスピーカーなどのペアリングを行う。なお、2回目以降は自動的に再接続が行われるので、この手順は省略可能だ。
電源を入れてBluetooth機器をペアリング
今回はまずソニー「WH-1000XM3」というワイヤレスヘッドホンを接続。トーンアームを動かすと回転がスタートするので、針をレコードの上に落とすと、再生が始まる。
あとはレコードの端に針をセット。もちろんアナログなので、盤面の途中に針を落として再生することもできる
最初に再生したレコードは『ラ・ラ・ランド La La Land オリジナル・サウンドトラック』。まずはヘッドホン接続だし「WH-1000XM3」という高音質な機種で聴いているわけで自然と音質もわかってしまうのだが……正直言ってナローで情報量も弱く、今どきのデジタル音源を聴き慣れた人間からすると高音質とは呼べない。若干ピッチも怪しい。だが、むしろブチブチと入るノイズをアナログの味として味わうべきなのかもしれない。
続いて、再生デバイスをワイヤレススピーカーのSonos「SONOS ROAM」に切り替えてみた。こちらは音量がしっかりと確保されて聴き取りやすくなり、迫力も十分出てきた。レコードを定番のノラ・ジョーンズ『Come Away With Me』に変えてみたが、アナログの質感がすばらしくマッチしていて、BGMとして音楽を流すならかなりイケると感じた。
Bluetoothにも対応したSonosのポータブルワイヤレススピーカー「SONOS ROAM」で再生
“サウンドバーガー”にはアナログのライン出力があるため、スピーカーはワイヤレスではなく有線接続も可能。試しにクリエイティブの定番PCスピーカー「Pebbles v2」を接続して再生してみると、これは大いにアリだった。ちなみに、“サウンドバーガー”から出力される音量は固定でそれほど大きくはないので、できるだけボリュームを上げられるスピーカーを用意してほしい。
クリエイティブ「Pebbles v2」との組み合わせは意外とアリだった
オーディオテクニカが創業60周年記念モデルとして限定復刻された“サウンドバーガー”。僕的には“外見のみ重視で購入して遊んでみた”で十分価値があるように思える。ただ実はほかにもおすすめするポイントがあって、“サウンドバーガー”は購入時点ですでに完成品で、組み立て不要というところもお手軽でうれしい。それに省スペースというところもほかの機種にはないメリットだ。音質うんぬんじゃなく、遊びとしてレコードプレーヤーが欲しい人、12月1日午前10時の”サウンドバーガー”再販をお見逃しなく!
レコードを挟むスタイルに憧れた人は購入必須
PC系版元の編集職を経て2004年に独立。モノ雑誌やオーディオ・ビジュアルの専門誌をメインフィールドとし、4K・HDRのビジュアルとハイレゾ・ヘッドフォンのオーディオ全般を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。