LGエレクトロニクスが“自由に曲げられる”有機ELテレビ「LG OLED Flex」を発表した。ラインアップは画面サイズ42V型の「42LX3QPJA」1モデルのみ。2023年1月18日発売で、市場想定価格は44万円前後だ。
元々はゲーミング用途を強く意識して開発された製品だそうだが、あくまでもチューナーを搭載したテレビ。ゲームに限定されない、さまざまなコンテンツを楽しめる新しいテレビとして売り出していくという。
なによりの特徴は、画面を最大900Rの曲率で“曲げられる”こと。映画館のスクリーンのように、両端が内側に丸まった形だ。この曲率は20段階の調整が可能。「R」は半径を表しており、この数値が小さいほど円が小さくなり、曲がり方は急になっていく。
2022年9月のエレクトロニクスショー「IFA」でこの“曲げられるテレビ”が発表されてから、日本国内での発売を心待ちにしていた人もいることだろう。まさに筆者もそのひとりで、「42LX3QPJA」の日本発表を待ちきれず、LGエレクトロニクスの42V型有機ELテレビ「OLED 42C2PJA」をPCモニターとして使う実験を行い、これはかなり“イケる”と確信を持っていた。画面が曲がるのであれば映像への没入感はより高まるはずだ、と。
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そんな待望の製品と言える「42LX3QPJA」について、まずは基本的な製品スペックから見ていこう。
「42LX3QPJA」の主要スペック
●画面サイズ:42V型
●画面解像度:水平3,840×垂直2,160画素(120Hz駆動)
●HDR対応:Dolby Vision、HDR10、HLG
●画面曲率:平面〜最大900R(20段階調整)
●内蔵チューナー:地上デジタル×3、BS/110度CS×3、BS4K/110度CS4K×2
●接続端子:HDMI入力4系統(すべてHDMI2.1仕様の48Gbps対応)、光デジタル音声出力1系統、ヘッドホン出力1系統、USB Type-A 3系統(スイッチングハブ機能搭載)
●映像エンジン:α9 Gen5 AI Processor 4K
●Wi-Fi 6(IEEE802 11ax)対応
上記のとおり、「42LX3QPJA」はBS4K放送の受信もできるれっきとした4Kテレビだと言える。関連記事でも触れていたことだが、有機ELテレビが発売された当初は“画面を曲げやすい”ことが有機ELパネルのメリットとしてあげられていた。その特徴を表したのが、2013年にLGエレクトロニクスが発表したカーブド画面有機ELテレビ。しかしながら、カーブド画面のテレビは普及にはいたらなかった。
製品発表会で改めて語られたのだが、その原因はカーブド画面特有の問題として、正面から見た場合の条件はよいものの、斜めから見た場合には見づらいという点にもあったそうだ。
この問題を根本から解決したのが「42LX3QPJA」。必要に応じて平面とカーブド画面を使い分けることによって、シーンに合わせた使い方を提案しようという製品だ。その実際の挙動は以下動画からご確認いただきたい。
LGエレクトロニクスが有機ELテレビを発売してから、もう10年が経とうとしている
日本でカーブド画面の有機ELテレビが発売されたのは2015年。“曲げやすい”という特徴はサイネージで活用されているほか、スクリーンのように巻き取れる「ローラブル有機ELテレビ」が北米などで製品化されている
製品発表会で紹介された画面が曲がっていることのメリットは大きく2つ。ひとつは包み込まれるような感覚を得られること。冒頭で触れた映像への没入感と言ってもいいだろう。もうひとつは目のピント調整による負担が少なくなるため、目にやさしいというもの
至近距離でゲームをする場合には最大曲率に、少し後ろにもたれかかって画面を見る場合には曲率を低めに、遠くから引いて見る場合にはフラットに、というようにシーン別での使い分けも提案された
画面が曲がること以外の機能は基本的にはレギュラーの有機ELテレビ「C2」シリーズをベースとしている。映像エンジン「α9 Gen5 AI Processor 4K」を搭載し、AIによるジャンル検知やシーン検出を駆使して、画質の最適化を図る。特にHDR映像についてはフレームごとに映像を参照し、さらにそのフレームを5,000ブロックに分けて最適化を図るという入念なシステムだ。また、基本OSは独自の「webOS」。さまざまなアプリの追加が可能で、サブスクリプション制の動画サービス対応が充実している。
ゲーム関連で重視される機能も「C2」シリーズ譲りの充実した仕様だ。4系統のHDMI入力すべてがHDMI2.1仕様であり、ALLM、VRR、NVIDIA G-SYNC Compatibleに対応する。
「C2」シリーズとの違い、つまり「42LX3QPJA」ならではの特徴を以下に紹介しよう。主にゲームを楽しむための機能拡張だ。
有機ELテレビ「C2」シリーズはグレアパネルを採用していたため、明るい部屋で使う場合に映り込みの問題を避けられなかった。そこで、「42LX3QPJA」は「Super Anti Reflection」技術を採用して映り込みの低減に努めた。従来比で反射を25%低減しているという
「C2」シリーズでは2.0ch/アンプ総合出力20Wだったスピーカーシステムが、2.2ch/アンプ総合出力40Wへ大幅に強化された。付属リモコンのマイクを使った音響の最適化機能を継承し、Dolby Atmosの「7.1.2」バーチャル再生も可能だ。
「42LX3QPJA」はエコーキャンセリングマイク機能を搭載する。ゲームの効果音とユーザーの声を区別することで、ヘッドセットなしでもボイスチャットがスムーズに行えるという
そのほか、一体型のスタンドはチルトに対応していたり、USB端子はスイッチングハブとして利用できたりと、PCモニターに寄った製品企画はとても珍しい。LGエレクトロニクスは、これまでも「応答速度0.1ms」として有機ELテレビをゲーム用にも訴求してきた。しかし、このモデルはさらにそこに深く切り込んだ意欲作だ。「C2」シリーズの自宅試用に続く企画として、ぜひこの「42LX3QPJA」を使ってみたいと考えている。
「42LX3QPJA」はスタンド一体型。このスタンドは140mmの高さ調整のほか、前10度〜後ろ5度のチルト調整にも対応する
プレイするゲームによっては42V型の画面は大きすぎることもあるはず。その場合は32/27インチの表示も可能だ。また、標準的なアスペクト比16:9の映像だけでなく、21:9の映像表示もできる
「42LX3QPJA」はスイッチングハブ機能を搭載する。右側面にあるスイッチングボタンを押すと、テレビのUSB端子に接続したキーボードやマウス、テレビ内蔵マイクを、接続したPCでも使える
HDMIなどの入出力端子は画面裏側にあるスタンド部に用意される。この部分は付属のカバーで隠すこともできる。また、背面から見える部分にはLEDライトも搭載。ライティングのパターン設定やオン/オフの設定が可能だ
最大曲率にしたときの「42LX3QPJA」。かなりの曲がり具合であることがわかっていただけるはず
画面曲率の変更はリモコンのダイレクトボタンからスムーズにアクセス可能。なぜかボタンの名称は「ゲーム」。なお、テレビの電源をオフにすると自動でフラットになり、オンにすると終了時の曲率に戻る仕様だ
AVの専門誌を編集して10年超。「(デカさ以外は)映画館を上回る」を目標にスピーカー総数13本のホームシアターシステムを構築中です。映像と音の出る機械、人が一生懸命つくったモノに反応します。