巣ごもり需要の高まりもあって、ここ数年、家庭用テレビの売り上げは堅調だ。特に40V型以上の大画面人気は根強く、20〜30万円の中・高級機への関心度は高いと聞く。この流れも徐々に落ち着き始めているが、メーカーの大画面・中高級機(特に有機ELテレビ)への注力はしばらく続くと見て間違いないだろう。
さて年末に向けて「そろそろ我が家もテレビを新調しようか」とお考えの方も多いと思うが、ここで必ずと言ってよいほど悩まされるのが、最先端の機能を装備した最新モデルにするのか、価格がこなれた一世代前の旧モデルにするのかという問題だ。
カタログやネットで製品を調べると、当然ながら新製品の露出が多く、「やっぱり最新モデルか……」という気分になるが、価格を調べていくと、旧モデルが魅力的に思えてくる。最近はメーカーのきめ細かな生産調整もあって、“旧モデルは新モデルの半額”というような超お買い得な状況は影をひそめたが、それでも発売当初よりも2割、3割以上安く購入できる旧モデルは珍しくない。
ここで大切なのは、その内容の違いと価格の差を吟味して、慎重に判断することだ。ポイントは新モデルに搭載された機能が自分にとって有用なのかどうか見極めること。この機能は「絶対にほしい!」なら新モデルを選ぶ。もし「それは使わない」と思うのなら、一世代前の旧モデルでもまったく問題ない。
ちなみに現在、一般的な4K解像度を持ったテレビの場合、4Kチューナーは標準装備しているケースがほとんどで、動画配信サービスへの対応も進んでいる。この部分については、新モデルでも旧モデルでもほぼ変わらないと考えてよいだろう。
ここでは2021年モデル、2022年モデルを取り混ぜて、特に画質的に評価の高い各社の4Kテレビの中・高級機を中心にスポットを当てる。新旧モデルの実力と価格.com最安価格をじっくりと検証しながら、お値打ちの製品を浮き彫りにしていくことにしよう。
※記事内で参照している価格.com最安価格はすべて2022年12月5日現在のデータです
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「X9900L」vs.「X9400S」
登録した地デジチャンネルの番組をすべて録画し、過去番組表から気になる番組を素早く呼び出せる「タイムシフトマシン」や、クラウドに用意された詳細ジャンルや番組単位ごとの画質調整データと連携し、視聴中のコンテンツ(主に地デジ、BS放送)の画質を最適化してくれる「クラウドAI高画質テクノロジー」など、独自の技術を上位モデル中心に積極的に搭載し、マニア筋を中心に根強い人気を誇るREGZA(レグザ)。
有機ELレグザ2022年モデルのハイエンドライン「X9900L」シリーズは2サイズ展開。もちろん、全録機能「タイムシフトマシン」を搭載する。48V型製品はスタンダードラインの「X8900L」シリーズでラインアップされる
有機ELレグザ2021年モデルのハイエンドライン「X9400S」シリーズは48V型モデルを含む3サイズ展開。「タイムシフトマシン」などの主要機能は最新シリーズと同等。ただし、HDMI2.1規格のサポートはALLMのみ。4K/120p入力やVRR、eARCに対応しないことには注意
有機ELレグザの2022年モデル「X9900L」シリーズと2021年モデルの「X9400S」シリーズの大きな違いは、@表示パネル、A映像処理エンジン、B音響システムの3点。
「X9900L」シリーズの有機ELパネルは新世代品に切り替わり、表面処理が光沢から低反射に変更された。映像処理エンジンも「ダブルレグザエンジン Cloud PRO」から「レグザエンジンZRα」に変わっている。新エンジンは8K映像処理も可能な新世代のエンジンで、ノイズ処理や色補正など、より高度な画像処理が可能だという。表示パネル、映像処理エンジンが進化したわけだが、「タイムシフトマシン」「クラウドAI高画質テクノロジー」は従来どおりで、2021年モデルの「X9400S」シリーズでも搭載済みだ。
「X9400S」シリーズの場合、光沢の表面処理の映り込みは気になりやすいが、照明を抑えた環境ではより黒が締まって見えるし、画質的にそれほどは見劣りしない。
音響システムは「レグザパワーオーディオX-PROU」から「重低音立体音響システムXHR」に変わっているが、実際に試聴した限り、音質自体は両者互角だ。ただ「X9400S」シリーズには、市販のスピーカーがそのまま接続できる外部スピーカー端子がある。
高効率デジタルアンプを専用に装備しているため、好みのスピーカーがそのまま接続可能で、イコライジング機能も使える。付属のリモコンひとつで外部スピーカーの音質調整もできる、これは便利だ。
音響システムまわりで「X9900L」シリーズにはない「X9400S」シリーズの機能が、外部スピーカー接続用のアンプを備えること。外部スピーカーとの組み合わせ記事は以下記事を参照のこと
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技術の先進性では最新の「X9900L」シリーズと同等とはいかないが、「X9400S」シリーズの映像処理エンジン「ZRα」の内容は現在でも相当にレベルが高く、使い慣れた技術だけにその持ち味を積極的に引き出せるという強みがある。実際に視聴しても、55/65V型ともに階調性やノイズの処理などのチューニングが巧く、画質的にはまとまりがいい。
画面の映り込みが気になる場合は、2022年モデル「X9900L」シリーズを選ぶことになるが、価格.com最安価格の差を考えると「X9400S」シリーズは実に魅力的。55V型で比べると「X9900L」と「X9400S」シリーズの差は3万円弱だが、65V型で比べると6万円弱。65V型の「65X9400S」は割安感が半端ない。
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「Z870L/Z875L」「Z770L」vs.「Z740XS」
液晶レグザ2022年モデルの高級ライン「Z」の注目点は、ハイエンドラインの「Z875L/Z870L」シリーズと、それに続く「Z770L」シリーズで量子ドット技術が搭載されたこと。これは光源(液晶の場合はバックライト)から出る光の波長をナノサイズの半導体粒子で変換することで純度の高い三原色(赤緑青)をつくり出すことができる技術で、液晶テレビの場合は光源に青色LEDが用いられるのが一般的だ。同技術を採用した液晶テレビは、白色LEDバックライトを採用した一般的な液晶テレビに比べ、鮮やかな色彩を再現できるのが特徴だ。特に「Z875L/Z870L」シリーズは、画面全体の明るさ向上と高コントラスト化が期待できるミニLED技術も組みこまれ、立体感のあるメリハリの効いた映像を描きだす。
ただ、実機を見る限り、レグザの場合は絶対的な明るさよりも階調性やノイズ感など、全体のバランスを重視した傾向。ソニー、シャープのミニLEDモデルに比べると、映像の明るさは控え目に感じられるかもしれない。とはいえ、家庭のリビングルームで使うなら、その明るさに不満を感じることはまずないだろう。
ミニLEDバックライト+量子ドット技術で明るさと色再現性を高めた「Z875L/Z870L」シリーズ。「タイムシフトマシン」対応製品であることも見逃せないポイントだ
悩ましいのは価格が高いこと。液晶テレビにとってバックライトが占めるコスト負担は大きく、「Z875L/Z870L」シリーズではここに新技術が投入されたため、65V型の価格.com最安価格は一世代前の有機ELテレビ「X9400S」シリーズと同等。ユーザーから見ると、これはかなりハードルが高い。
価格変動次第だが、狙い目はパネル直下に従来型高輝度LEDバックライトを配置した「Z770L」シリーズ(55V型は2022年12月から価格.com最安価格が上昇気味)。ミニLEDに比べると明るさは落ちるが、量子ドット技術が採用されているため、色の純度は高く、見た目にも鮮やかで、抜けがよい。もちろん「タイムシフトマシン」「クラウドAI高画質テクノロジー」ともに搭載済み。特に65V型は、2021年モデル「Z740XS」シリーズよりも価格がこなれており、割安感がある。
目障りなノイズを抑えながら、自然な階調性、奥行き感を重要視するという基本的な画作りは「Z740XS」シリーズにも共通している。ただ「Z770L」シリーズでは、量子ドット技術が入ったことで、「Z740XS」シリーズよりも鮮やかな、見栄えのする色再現が可能になった。
例えば、黄色、橙、紅赤など、多彩な色で楽しませる木々の紅葉も、濁りが少なく、微妙な色味の違いまで描き分けられる。この豊かな色調こそ、量子ドットの真骨頂と言えるだろう。
ミニLEDバックライトではないが、量子ドット技術を搭載。色再現性の向上を図った「4K量子ドット液晶レグザ」。「Z770L」シリーズは「タイムシフトマシン」を搭載する
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「A95K」「A80K」vs.「A90J」「A80J」
これまで家庭用テレビ用の有機ELパネルと言えば、ほぼすべて韓国LGディスプレイ製だったが、ソニーBRAVIA(ブラビア)の2022年ハイエンドライン「A95K」シリーズでは韓国サムスンディスプレイ製のQD-OLEDの採用に踏み切った。このパネルは、液晶テレビでも導入が始まっている量子ドット技術を応用した有機ELで、高効率(高輝度)、広色域が強みだ。
サムスンディスプレイ製の有機ELパネルQD-OLEDを採用した「A95K」シリーズ
色再現について、現状の映像作品でその優位性を認識するのは難しいが、明るさでは既存のLGディスプレイ製パネルを凌駕している。LGディスプレイ製パネルを採用した2021年モデル「A80J」シリーズを横に置くと、その輝度パワーの違いは明らか。高効率の発光素子とグリーンレイヤーを追加した新世代パネルを搭載した2021年のハイエンドモデル、「A90J」シリーズとの比較でも、映像の明るさが際立つ。
問題は非常に高価なこと。「A90J」シリーズとの価格差は比較的小さいが、「A80J」シリーズと比べると、価格.com最安価格は55V型で約1.6倍。ソニーはGoogle TV OSを早くから導入しており、2021年モデルについても、機能面のハンデはほとんどない。
とにかくハイエンド液晶テレビ並みに、明るい有機ELテレビがほしい! というのなら「A95K」シリーズを選ぶしかない。ただ通常のリビングで映画やドラマをじっくり楽しみたいのなら、割安感のある「A80J」シリーズでも十分満足できるだろう。
「A80J」も、人間の感覚まで考慮して画作りする映像処理エンジン「XR」や、画面自体がスピーカーとなり、画面から音が出る「アコースティック サーフェス オーディオ プラス」を搭載済だ。
2021年モデルのスタンダードライン「A80J」シリーズも、映像処理エンジンである「XR」や、アクチュエーターで画面を振動させて音を発する「アコースティック サーフェス オーディオ プラス」を搭載する
しかし、現在の価格.com最安価格と内容を見極めていくと、55/65V型ともに最新の「A80K」シリーズが魅力的だ。確かに「A80J」シリーズには割安感があるが、テレビの性能を大きく左右する表示パネルが一世代古い。
「A80K」シリーズはパネルの表面処理が反射を抑えたハーフグレアだが、性能的には「A90J」シリーズ(表面はグレア仕上げ)と同等の新世代パネルが搭載された模様で、「A80J」シリーズを横に置くと明るさに余裕がある。
ハーフグレア処理はグレア処理に対して黒が締まらない、という側面もあるが、液晶のように黒が浮くわけではない。確かに好き嫌いがあるが、一般的なリビングユースでは、窓からの光や正面の映り込みが少なく、テレビを消している時も目障りな反射が抑えられるなど、メリットは多い。
このほか、「XR」や「アコースティック サーフェス オーディオ プラス」、あるいはソニー・ピクチャーズの名作映画を2年間見放題で楽しめる「BRAVIA CORE」など、機能面でも「A90J」シリーズと大きな違いはない。
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「X95K」「X90K」 vs. 「X95J」「X90J」
2022年のソニー液晶ブラビアの型番を見ると、「X95J」が「X95K」に、「X90J」が「X90K」に、といった具合に、シリーズ末尾のアルファベットが「J」から「K」に変わっている。サイズバリエーションがより大型へとシフトしているものの、内容的にもそれほど大きな変化はないモデルが多く、マイナーチェンジの印象はぬぐえない。
唯一、大きな変化を遂げているのがハイエンドラインの「X95K」シリーズだ。65/75/85V型のラインアップは2021年モデルの「X95J」シリーズから変わらないが、新たに画面全体の輝度向上と高コントラスト化に寄与するミニLEDバックライト技術を投入。明るく色濃い、ソニーらしい画作りに仕上げられている。液晶の弱点でもある視野角による画質への影響を軽減する独自技術「X-Wide Angle」「X-Anti Reflection」も搭載済みだ。
画質最優先で選ぶのなら、「X95K」シリーズが最有力モデルとなる。ただ65V型で言えば価格帯は有機ELテレビのスタンダードライン「A80K」シリーズと同等で、液晶テレビとしてはかなり高い。一般家庭のリビング環境で楽しむのであれば、一世代前のモデルを選ぶという手もある。
ミニLEDバックライトを採用した「X95K」シリーズ。「XR バックライトマスタードライブ」によるバックライト制御で高コントラストを志向する。大画面VA液晶パネルで問題となりがちな視野角の改善に取り組んだ「X-Wide Angle」の効果が高い
個人的には「X-Wide Angle」を搭載した液晶ブラビア2021年モデルのハイエンドライン「X95J」シリーズをプッシュしたい(65V型は反射を抑える「X-Anti Reflection」非搭載)。55V型以下サイズの狙い目は、液晶ブラビアの2021年モデルミドルハイライン「X90J」シリーズ。視野角対策はないが、バックライトはパネル直下の配置。「X95J」と精度は異なるにしても、表示する内容に応じてLEDの光量を制御する部分駆動技術も搭載済み。 しかもLEDと液晶制御の合わせ技で、VA液晶ながら、視野角による悪影響も軽減している。画質を見て、特に気に入ったのは油絵を思わせるタッチの強い映像が特徴的な55V型の「XRJ-55X90J」。価格的にもこなれている。
液晶ブラビア2021年のハイエンドライン「X95J」シリーズ。サイズ展開は65V/57V/85V型の大画面が中心で、広視野角技術「X-Wide Angle」を全モデル搭載している
「X95J」「X95K」シリーズのサイズ展開は65V型以上。50V型前後の製品を狙うならば、2021年モデルのミドルハイライン「X90J」シリーズをチェックしてみてほしい
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「LZ2000」「LZ1800」vs. 「JZ2000」「JZ1000」
他社に先駆けて独自設計、製造の有機ELパネル(画像表示のセル部分はLGディスプレイ製)を実用化して、画質のよさ(特に明るさと色再現)で高い評価を得ているパナソニックの有機ELビエラのハイエンドライン「2000」シリーズ。2021年モデルの「JZ2000」シリーズでも独自開発のパネルを採用していた。標準的な有機ELパネルを搭載したモデルに比べると、輝度表現に余裕があり、ダイナミックレンジの広さを生かした奥行き感豊かな再現性が持ち味だ。
2022年モデルの「LZ2000」シリーズでは、さらにその性能に磨きをかけた「Dynamicハイコントラスト有機ELディスプレイNEO」を開発している。「有機ELビエラ史上最高峰」(パナソニック資料より)というコピーからも、その自信のほどがうかがえる。
「LZ2000」シリーズの魅力は、ダイナミックレンジを拡張しつつ、自然で、滑らかな階調性を実現していること。特に黒に近い部分のグラデーションが豊かで、ナイトシーンの多い映画鑑賞では、暗部の見通しがよく、そのありがたみが実感できる。色再現も赤や緑など、原色を誇張するようなことはなく、脚色の少ない、自然なトーンで楽しませてくれるのもよい。
とにかく画質のよい製品を、と考えるならば旧モデルよりも最新の「LZ2000」シリーズが優位だ。「高輝度有機ELパネル」の採用が、「LZ1800」シリーズとの違い
画質で選ぶなら、最新の「LZ2000」シリーズがベストだが、価格は高め。価格.com最安価格で見ると、55V型は2021年のスタンダードライン「TH-55JZ1000」の2倍近い価格となっている。55V型で16万円台という「TH-55JZ1000」の価格はなかなか魅力的。「TH-55JZ1000」の画質はスタンダードな有機ELテレビとして不満を感じさせないレベルだが、「JZ2000」「LZ1800」シリーズとの比較では明るさ感、色の抜け感、階調性といった部分で、やや見劣りする。
そこで、価格と内容から考えていくと、2021年モデルのハイエンドライン「JZ2000」シリーズのバランスのよさがクローズアップされる。カタログを見ると、「JZ2000」シリーズと22年の実質的スタンダードモデル「LZ1800」シリーズの画質はほぼ同等のようにも思えるが、実際に画質を見比べてみると、映像の明るさ感、奥行き感、階調性など、「JZ2000」シリーズのほうが優勢だ。
在庫薄なのが気になるが、狙い目は65V型の「TH-65JZ2000」。「LZ2000」シリーズのラインアレイスピーカーのような派手な音響システムは持たないが、音質的に不満を感じることはないし、機能面で不足はない。「LZ1800」シリーズの65V型モデル「TH-65LZ1800」に数万円プラスすれば購入できるのは魅力だ。
2021年モデルの「JZ2000」シリーズもパナソニック独自構造の有機ELパネルを搭載して高画質を目指したモデルだ。55/65V型については2022年の「LZ1800」シリーズと同等のパネル設計とされているが、画質の違いについては上記のとおり
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「LX950」vs.「JX950」
有機ELテレビを彷彿とさせる、薄く、スマートなデザインで人気を集めている液晶ビエラのハイエンドシリーズを比較しよう。テレビ台にピタッと吸着する「転倒防止スタンド」も好評。特にいたずら盛りの小さなお子さんのいるファミリー層から根強い支持があり、このスタンドが購入の決め手になるケースも珍しくないという。
ビエラの上位グレード製品に搭載される「転倒防止スタンド」。2022年モデルでは、有機ELテレビの「LZ2000」「LZ1800」「LZ1000」シリーズ、液晶テレビの「LX950」「LX900」シリーズが採用している
2021年モデルの「JX950」シリーズと2022年モデルの「LX950」シリーズを比較すると、スタンド部分の形状が楕円からスクエアに変わっているが、広視野角のIPS液晶(LEDバックライトはエッジ配置)、上向きのイネーブルドスピーカーを備えた音響システム、そして多彩なコンテンツが楽しめるネット動画対応と、基本的な部分はほとんど変更がないようにも思える。
最大の注目点は「LX950」シリーズでは自社設計・組み立ての「プレミアム液晶ディスプレイ」を採用していること。パネルメーカーから購入して組み上げる一般的な液晶テレビに比べると、LEDバックライトと内部の部材構成を最適化しやすく、液晶テレビで問題になりやすい画質のバラツキ(特に明るさ、色のムラ)が抑えられる。
自慢の薄型構造のデザインについても、パネル面とフレームの段差を抑えたフラット構造となることで、従来に増してすっきりとした、スマートな外観になった。「JX950」シリーズがすでに品薄の状況。おのずと狙いは、最新モデルの「LX950」シリーズということになる。
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「ES1」vs.「DS1」
AQUOS(アクオス)と言うと、どうしても液晶テレビのイメージが強いが、有機ELテレビの商品化も意欲的で、ラインアップも充実している。そのハイエンドラインとなるのが、2022年モデルの「ES1」シリーズと2021年モデルの「DS1」シリーズ。
シャープでは「DS1」シリーズから新世代パネルを搭載し、従来比で約20%の高輝度化を実現している。「ES1」シリーズでは、さらに熱上昇を抑える独自構造「クールダウンシールド」が導入され、製品としての信頼性を高めている。実際の画質を見る限り、特に高輝度化が進んだという印象はないが、画像処理の進化により、再生コンテンツの持ち味を積極的に引き出す絵画作りを可能にしている。
2022年モデルの「ES1」シリーズの表示パネル以外で新たに実用化された主な技術は、AI高画質プロセッサー搭載の映像処理エンジン「Medalist S3」と、Dolby Atmosに対応した音響システムの2点。前者の特徴はAI技術を駆使し、人の顔や空などの情報と、映画やドラマ、スポーツなどの放送ジャンル情報をと照らし合わせて、色彩、明暗、精細感を最適化するというもの。
映像処理エンジン「Medalist S3」による自動画質調整モード「AIオート」を備えた「ES1」シリーズ
2021年モデルの「DS1」シリーズにはこの「AIオート」の映像モードはないが、8K高画質技術を応用した高性能エンジンを搭載しており、コントラスト制御やノイズ除去といった基本的な画像処理能力では見劣りしない。後者の音質面についても、スピーカーネットのない構造で、大容量・薄型スピーカーボックスを生かして、明瞭度の高い、生きのよいサウンドを楽しませる。
「ES1」シリーズの先進的な内容もなかなか魅力的だが、その内容と両者の価格.com最安価格の差を鑑みるに、55/65V型ともに「DS1」シリーズのお得感は否定できない。
2021年モデルの「DS1」シリーズ。高輝度有機ELパネル「S-Brightパネル」を搭載することは2022年モデルの「ES1」シリーズと同様
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「EP1」vs.「DP1」
数ミリ径のLED素子を液晶セル直下に敷き詰めたミニLEDバックライトと、高効率の波長変換により明るく、高純度な発色を実現する量子ドット技術を組み合わせたシャープの「XLED(エックスレッド)」。
「XLED」の特徴は、高輝度化に加えて、多数のLEDライトできめ細かなエリア駆動が可能なこと。実際、その輝度パワー、発色の鮮やかさには目を見張るものがあり、ハイエンド液晶テレビの明るさと、有機ELテレビの黒の締まりの両方をあわせ持つ。シャープでは液晶、有機ELに続く「第3のテレビ」としてとらえ、その可能性に大きな期待を寄せている。
2021年発売の「DP1」シリーズは55/65V型の2機種だったが、2022年の「EP1」シリーズでは55/60/65/70/75V型と、一気にサイズバリエーションを拡張。ただその内容に注目してみると、画質、音質面で大きく変わった印象はない。
ミニLEDバックライトを採用した「EP1」シリーズ。「XLED」として第2世代製品であり、55V型から75V型まで、計5製品をラインアップする
映像処理エンジン「Medalist S4X」が新たに採用されているが、これもまだ完成途上という印象を受けた。具体的には、明るさを追求するあまり、白飛びが目立ったり、バックライトの部分駆動に伴う明るさ制御がときおり不安定になったりすることがあった。本来の威力を発揮するには、もう少し成熟させる必要があるだろう。
「DP1」シリーズはAndroid TV、「EP1」はGoogle TV OSが採用されているため、機能は異なるが、ネット動画コンテンツ対応という意味では、「DP1」シリーズに不満を感じさせるようなところはない。
気になる価格だが、「EP1」が発売されたばかり(75V型は2023年発売)ということもあって、価格.com最安価格の差は予想以上に大きい。画面サイズは55/65V型限定となるが、今「XLED」から選ぶなら、2021年モデルの「DP1」シリーズが狙い目だ。
「DP1」シリーズは、ミニLEDバックライトを採用した2021年発売の「XLED」第1世代モデル。サイズは55/65V型に限定されるが、価格.com最安価格はかなりこなれている
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「C2」vs.「C1」
グループ会社LGディスプレイからテレビの表示パネルを調達して、製品化できるLGエレクトロニクスの強みは、最新パネルをいち早く入手して、製品化できること。しかも全世界でビジネスを展開しているため、日本メーカーに比べると、製品数も多い。日本では、唯一8K有機ELテレビを発売しているメーカーでもある。
冒頭のとおり、ここでは4Kテレビをピックアップしよう。有機ELテレビの主力はスタンダードラインの「B」シリーズ、ミドルハイライン「C」シリーズだが、画質重視なら、映像エンジンが高性能な「C」シリーズで決まりだ。2022年モデルの「C2」シリーズと、2021年モデルの「C1」シリーズを比較すると、まずサイズバリエーションの違いに気がつく。
42/48/55/65/83V型の「C2」シリーズに対して、「C1」シリーズは48/55/65/77/83V型という内容。いずれもサイズは5種類だが、「C2」シリーズでは新サイズの42V型が追加され、77V型が姿を消している。これは日本の市場を想定した対応で、特に42V型を要望する声が大きかったという。
2022年モデルのミドルハイライン「C2」シリーズは、新機軸の42V型を擁する
2021年モデルの「C1」シリーズでは77V型をラインアップしていた
映像エンジンは、「α9 Gen4 AI Processor」から「α9 Gen 5 AI Processor」に変わり、より明るく(特にハイライト)、メリハリの効いた映像表現が可能になる「ブライトネスブースター」機能を追加している。ただ全体としてマイナーチェンジの域を出ず、実際の映像を見ても、変化は控えめ。
また、パネルについてもLGエレクトロニクスではいち早く高効率の次世代パネルを入手し、2021年モデルの「C1」シリーズで実用化しているため、2022年の「C2」シリーズでもほぼ同等のパネルを搭載していると見てよい。
42V型4K有機ELテレビの超高精細の世界は実に魅力的で、思わず手をさしのべて触れたくなるようなリアリティに富んだ映像が体験できる。ただ、ほかのサイズであれば、「C1」シリーズの価格が魅力的(55V型の「OLED55C1PJA」はすでに在庫僅少で価格は上昇している)。特に65V型については、ここまで安い設定は他メーカーでは考えにくい。有機ELテレビをできるだけ安く手に入れたい方は、品薄になる前に決断すべきだろう。
雑誌編集者を経てオーディオビジュアル評論家へ転身。近年は山中湖畔に「7.1.8」スピーカー+プロジェクターのホームシアターを構築。この“ラボ”で「自宅で再生する映画と音楽」のクオリティを追究している。