今やコンシューマー向けのプロジェクターで一大勢力になりつつあるのがモバイルプロジェクターだ。そんなモバイルプロジェクターで不動の人気を誇るのが、Ankerの「Nebula Capsule」シリーズだ。そんな人気シリーズに、最新モデル「Nebula Capsule 3 Laser」が新たに追加された。直販サイトの価格は119,900円だ。
Anker「Nebula Capsule 3 Laser」。直販サイトの価格は119,900円
「Nebula Capsule 3 Laser」最大の特徴は、名前にもあるとおり、レーザー光源を採用して300ルーメン(ISOルーメン、ANSIルーメン)を実現したこと。モバイルプロジェクターにとって明るさは画質・利用シーンを決める最重要スペックで、シリーズ初代の「Nebula Capsule」は100ルーメン、Android TVをシリーズ初搭載した「Nebula Capsule II」は200ルーメンだった。「Nebula Capsule 3 Laser」では、これまでの製品群では物足りなかった輝度性能を引き上げた形だ。表示解像度もフルHD(1920×1080ドット)となり、純粋にスペックアップした上位モデルと言えるだろう。
まずは「Nebula Capsule 3 Laser」の本体から紹介。サイズは高さ約167mm×直径約83mmで、イメージとしては500mlペットボトルを少し太くした程度。重さは約950gだ。モバイルプロジェクターなので持ち運び可能だが、バッテリー駆動時間は約2.5時間なので、基本的にはちょっと移動させてカジュアルに使うというスタイルだろう。
付属品一式。充電器含めてオールインワンで付属する
内蔵ソフトウェアはAndroid TV 11.0で、クアッドコアのCPUにRAMは2GB。背面にはHDMI端子(最大4K入力対応)、USB type-C端子を搭載。USB type-C端子にはUSBメモリーなどを接続することも可能だが、充電兼用となっており、充電中は利用できない点は注意したい。
500mlペットボトルを太くしたような本体
僕の部屋の棚から約1.3mの距離で壁に向かって画面を映し出すと、画面幅105cm、高さ57cmで対角約1.26メートル、約48インチとなった。なお、設置の際にはAF(オートフォーカス)と縦横とも自動台形補正が働くので、基本は置くだけでセットアップが完了する。
ちなみに「Nebula Capsule 3 Laser」は底辺に三脚穴も搭載しているので三脚設置も可能。90度倒せる三脚シューなどを使えば天井投写も可能だと思うが、公式には想定していないようだ。
まずは明るい部屋で「Nebula Capsule 3 Laser」を使って画面を映し出してみると……輝度スペックは300ANSIルーメンなので一応は見られる。ただ、正直言って“レーザー光源だから超明るい”というのをイメージすると面食らってしまうというか……実のところ以前レビューした「Nebula Vega Portable」(https://kakakumag.com/av-kaden/?id=16720)のほうが500ANSIルーメンで明るかったりする。
照明オンの状態で壁に画面を投写。約1.3mの距離だと画面サイズはと約48インチだ
フルHD解像感になったことで、全体的にくっきりに(写真は暗室で撮影)
「Nebula Capsule 3 Laser」は、あくまで“コンパクトで結構明るい”くらいの立ち位置だ。ただ照明を落としてみると輝度による明るさは感じられるし、フルHD化した解像度のメリットもある。
暗室による投写では十分輝度を感じられる
外光の入る日中にテストした様子(外は曇り空で日中にしてはやや暗め)
無粋なことを言わずに本来のライバルである「Nebula Capsule 3 Laser」と「Nebula Capsule II」を比較してみると、確かに明るくなったし、明るい部屋での対応度も着実に上がっている。ちなみに「Nebula Capsule 3 Laser」を前機種の「Nebula Capsule 2」と比較した画像はこちら。
「Nebula Capsule II」(写真左)と「Nebula Capsule 3 Laser」(写真右)を比べてみた
暗室で壁に投写した画面を比較。「Nebula Capsule 3 Laser」(写真左)と「Nebula Capsule II」(写真左)を見比べると、「Nebula Capsule 3 Laser」のほうが明るくくっきりとしているのがわかる
確かに明るくキレイになったと言えそうだ。ただ実は写真を見比べるとわかるが、本体サイズも大きくなっていたりするので、パワーアップというよりはスペックアップ版というイメージが最も近い。
「Nebula Capsule 3 Laser」のソフト面は、Android TV 11.0に進化。リモコンからはGoogleアシスタントの音声操作も利用できる。
付属リモコンはGoogleアシスタントの音声操作にも対応
アプリ面ではYouTube、Amazonプライム・ビデオは標準対応。Google Playも使えるので、さまざまなアプリをあとから導入して利用できる。AirPlayなども初期導入のアプリで利用可能だ。「Nebula Capsule 3 Laser」はHDMI端子を搭載しているので、ゲーミング目当てでも問題なし。
Amazonプライム・ビデオは問題なく視聴可能
HDMI端子に「Nintendo Switch」などのゲーム機を接続すれば、大画面でゲームをプレイできる
そして、AnkerのNebulaシリーズが登場するたびに話題になるのが“Netflixを視聴できない”という問題。結論から述べると、「Nebula Capsule 3 Laser」になっても正規のNetflixアプリには対応していない。ただし、非正規のアプリを導入するまでの流れがNebula Playというアプリからリンクが貼られていて簡単に導入できるようになった。ただ、Netflixのカーソル操作にスマホアプリが必須なのは相変わらずだ。
セットアップ時に自動インストールされるNebula PlayからNetflix視聴までていねいにガイドがある。これまでの「Nebula Capsule」シリーズに比べれば、Netflix視聴までのハードルはだいぶ低くなったと言えるだろう
最後にというか、検証に使った部屋では投写距離が取れないので、壁がコンクリート製であることを覚悟し、距離が稼げるリビングでの大画面投写にも挑戦してみた。画面サイズは約201cm✕102cm、約88インチサイズを投写した際の様子がこちら。
リビングのコンクリート製の壁にYouTube動画を投写してみた
あえて完全暗室ではない状態で試してみたが、「Nebula Capsule 3 Laser」ならレーザー光源のおかげで結構クッキリ見られる。そして照明を落とせば、荷物で散らかった部屋も超大画面のスクリーンに早変わり。この体験がもう、非日常感として最高なのだ。
画質については明るい部屋は少々苦しいが、照明を落とせば輝度感は文句ナシ。そして思いのほかよかったのが内蔵スピーカーの音質。8Wスピーカー搭載で、中高域のクリアさ、低音のパワーは外見以上。Dolby Digital Plus対応なのでサラウンド的な広がりを感じられるところも優秀だ。
暗室で投写すれば周囲の荷物もまったく気にならなくなる
最後に「Nebula Capsule 3 Laser」についてまとめると、面白みのないコメントではあるが輝度と解像度アップを果たした「Nebula Capsule II」……それだけだ。値段も直販サイトの価格は119,900円、約12万円もするので安くはないし、コスパもあまりよくはない。どうしてもペットボトルサイズでフルHDで明るい画面じゃないとダメということなら「Nebula Capsule 3 Laser」が候補になるのは間違いないが、コスパ重視なら以前レビューした「Nebula Vega Portable」(https://kakakumag.com/av-kaden/?id=16720)が価格もこなれてお得感がある。モバイルプロジェクターは価格と性能が正直に比例しているので、よいものは高いんだな……としみじみ感じてしまうところだ。
今ならAbemaアプリで大画面でスポーツ観戦なんて使い方もアツいかもしれない
PC系版元の編集職を経て2004年に独立。モノ雑誌やオーディオ・ビジュアルの専門誌をメインフィールドとし、4K・HDRのビジュアルとハイレゾ・ヘッドフォンのオーディオ全般を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。