レビュー

単体プレーヤーの意義を感じさせる高コスパ機。iFi audioの「NEO Stream」レビュー

“サブスク”による音楽ストリーミングサービス全盛の昨今、趣味のオーディオの世界ではそのサービスをいかに高音質で再生するか、がひとつのポイントになっている。

そんな潮流に合わせた製品がiFi audio(アイファイオーディオ)「NEO Stream」やLUMIN(ルーミン)「U2 MINI」といったネットワークオーディオプレーヤー。音楽ストリーミングサービスを高音質で再生するために、ソフトウェアを最適化して音楽再生をするモードを実装したのだ。

「U2 MINI」を試して、「Roon Only」というソフトウェア最適化機能の劇的と言える音質改善効果に驚いたのが少し前のこと。「Roon Only」とは、音楽再生ソフト「Roon」でしか動かなくなる代わりに音質の向上を図るというものだ。詳細は以下記事をご覧いただきたい。

ストリーミング再生最適化のひとつ「NEO Stream」の「Exclusive Mode」

注目すべき動きとして、姉妹ブランドであるティアックとエソテリックが「Roon Only」に似た機能「RAAT(Roon Advanced Audio Transport)専用モード」をファームウェアアップデートで実装したと発表した。対応製品は、ティアックが「UD-701N」、エソテリックが「N-01XD」「N-03T」「N-05XD」。音楽ストリーミング再生への最適化の波がオーディオ界で盛り上がりつつあるな、と感じさせるニュースのひとつだ。

「NEO Stream」は横幅214mmのいわゆるハーフサイズ。コンパクトな本体はデスクトップでの使用にもフィットするだろう

「NEO Stream」は横幅214mmのいわゆるハーフサイズ。コンパクトな本体はデスクトップでの使用にもフィットするだろう

さて、ここからが本題のiFi audioについて。「NEO Stream」は「Exclusive Mode(排他モード)」という名称の音楽ストリーミング再生専用モードを持ったネットワークオーディオプレーヤーだ。希望小売価格は198,000円(税込)。

前回レビューした「U2 MINI」の希望小売価格はシルバーが396,000円(税込)、ブラックが435,600円(税込)だったので、それと比べればだいぶ「安い」ことになる。これはぜひ一度試してみたいと思い、今回の借用とレビューとなった。

ハード/ソフトの両面から音質改善に取り組んだ「NEO Stream」

まずは「NEO Stream」の基本的な製品スペックから見ていこう。「U2 MINI」はD/Aコンバーター(DAC)を内蔵しない「ネットワークトランスポート」とも呼ばれる製品だが、「NEO Stream」はDACを内蔵したプレーヤーだ。しかし、今回のレビューでは内蔵DACを使用しない。

これはプリアンプでの音声処理がデジタルであるという自宅システムの都合による。ただし、iFi audioではソフトウェアの負荷を減らすこととハードウェア的なノイズ対策を考えると、役割ごとに機器を分けたほうがよいと考えているそうだ。つまりネットワークオーディオプレーヤーとDACは分けたほうがよいと考えているということ。そのためか、単体DAC「NEO iDSD」とのバンドルセットの販売もされている。「NEO Stream」の内蔵DACを使わないことはある種正しい姿だということだ。

「NEO Stream」の主なスペック
●再生対応フォーマット:〜22.6MHz/1bit(DSD)、〜768kHz/32bit(PCM)
●MQAフルデコード対応
●Roon Ready、TIDAL Connect、Spotify Connect対応
●接続端子:アナログ音声出力2系統(RCA、4.4mmバランス)、デジタル音声出力7系統(同軸、光、AES/EBU、USB Type-A×2、USB Type-C、I2S)
●光メディアコンバーター「OptiBox」付属

アナログ/デジタル音声出力ともに端子が豊富。今回のテストでは同軸デジタル出力を使った

アナログ/デジタル音声出力ともに端子が豊富。今回のテストでは同軸デジタル出力を使った

デジタルファイルの再生対応フォーマットについては、DSD、PCM系ともにフルスペックと言ってよい。現実的に必要かどうかはともかく、ハイサンプリング音源でも安心して再生できるのはありがたい。

「NEO Stream」のスペックで特徴的なのは、光メディアコンバーター「OptiBox」と光ファイバーケーブルが付属すること。これは一般的な有線LAN(RJ45)接続を光変換して本体へとつなぐためのもの。信号経路を独立させてノイズの影響を避ける“光アイソレーション”という手法だ。以前この手法のためにSFP端子付き無線LANルーターを購入した記事を書いたが、「NEO Stream」は製品単体で“光アイソレーション”が実現できる。

本題の「Exclusive Mode」とは、「Roon」や「TIDAL」での音楽再生時にソフトウェアを最適化させるモードのこと。「エクスクルーシブ」つまり「排他」仕様となり、ソフトウェア動作の負荷を減らし、音質の向上を図るという機能だ。たとえば「Roon」の「Exclusive Mode」とした場合は「Spotify」などの再生はできない。LUMIN「U2 MINI」の「Roon Only」と趣旨は同じだと見てよいだろう。

こうして基本的なスペックを確認すると、「Exclusive Mode」の導入でソフトウェア的に、“光アイソレーション”の導入でハードウェア的に、どちらも昨今のオーディオのトレンドをおさえた製品だとわかる。しかもそれぞれにオリジナルで開発された対応策だそうだ。これはクオリティに期待が高まる。

光メディアコンバーター「OptiBox」と光ファイバーケーブル(右)、と単品販売もされているACアダプター「iPowerII」(左)が付属する。テストはどちらも装着した状態で行った。縦置き用のスタンドも付属品だ

光メディアコンバーター「OptiBox」と光ファイバーケーブル(右)、と単品販売もされているACアダプター「iPowerII」(左)が付属する。テストはどちらも装着した状態で行った。縦置き用のスタンドも付属品だ

S/Nのよさが際立つ「Exclusive Mode」はぜひとも常用したい

まずはハイレゾ対応の音楽ストリーミングサービス「TIDAL」を、「TIDAL Connect」機能で再生してみることにした。「AIO(All In One)」という汎用のモードを使い、「TIDAL」をiPhoneアプリで再生する。その指示だけを「NEO Stream」に送り、実際のファイル再生を「NEO Stream」が行う形だ。iPhoneでの再生を無線で“飛ばしている”わけではないので、ハイファイ志向の再生方法のひとつと言える。しかも、スマホのアプリで再生楽曲を選ぶスムーズさが確保されているのが、「TIDAL Connect」対応のメリットだ。外出先ではワイヤレスイヤホンで再生し、帰宅後は「NEO Stream」で……というようにシームレスに連携できる。

さて、気になる音質だが、基本的な傾向として低域の量感のしっかりした元気のある音だと感じる。薄味にはならず安っぽい感じのしない、立派なクオリティだ。

iPhoneの「TIDAL」アプリを使って、まずは「TIDAL Connect」を試した。写真のBlue Note All-Stars「Our Point of View」はMQAでハイレゾ音源が配信されているため、右上に「MASER」の表示がされた。「NEO Stream」がMQAをデコードして、ハイレゾ(この音源は96kHz/24bit)再生をしていることの証だ

iPhoneの「TIDAL」アプリを使って、まずは「TIDAL Connect」を試した。写真のBlue Note All-Stars「Our Point of View」はMQAでハイレゾ音源が配信されているため、右上に「MASER」の表示がされた。「NEO Stream」がMQAをデコードして、ハイレゾ(この音源は96kHz/24bit)再生をしていることの証だ

本体で「TIDAL Connect」の専用の「Exclusive Mode」に切り替えると、元気のよさはそのままに、一段と音楽のS/N感が上がる。たとえば、Gabrielsの「Angels & Queens」では、埋もれがちだった冒頭のボーカルのリップノイズがしっかりと再現されるようになるのだ。ミュート気味のベースラインの輪郭も鮮明だ。

それでは、と「Roon」の再生に移る。使う音楽ストリーミングサービス自体は同じ「TIDAL」。「Roon」では独自の通信プロトコル「RAAT(Roon Advanced Audio Transport)」を使うため、これが音質向上に寄与すると言われている。

実際に、我が家で聞く限りは「Roon」での再生に音質的メリットを感じた。急に音質傾向が変わるわけではないが、やはりS/Nのよさに違いがあると思う。こちらでも「Roon」専用の「Exclusive Mode」に切り替えると、同じように再生クオリティが上がっていく。

いろいろと再生してみたが、「NEO Stream」を導入するならば「Roon」専用の「Exclusive Mode」を常用すべきだと思った。もちろん、DLNAやUPnPでNASからの音源を再生するなど使い方は人それぞれ。ただし、「Exclusive Mode」はぜひとも利用したい機能だ。本体のフロントパネル操作で簡単に操作できるため、デメリットはほとんどないと言っていいのだから。

「AIO(All In One)」や「Exclusive Mode」の切り替えは本体のフロントパネル操作で行える。ソフトウェアの動作が音質にどれほどの影響があるのか? 手軽に体感できるという意味でも面白い機能だ

「AIO(All In One)」や「Exclusive Mode」の切り替えは本体のフロントパネル操作で行える。ソフトウェアの動作が音質にどれほどの影響があるのか? 手軽に体感できるという意味でも面白い機能だ

まとめ:単体プレーヤーの意義を感じさせる、間違いないコスパの高さ

LUMIN「U2 MINI」の記事でも触れたとおり、昨今ではネットワークオーディオプレーヤー機能を内蔵した複合機が多い。そんな中、あえて本格的な単体ネットワークオーディオプレーヤーを導入するなら、ここから、と言いたくなるのが「NEO Stream」だ。希望小売価格は198,000円(税込)。決して安い製品ではないが、音質を考えれば間違いなくコストパフォーマンスは高い。

今回は「NEO Stream」内蔵DACを使わない方法での(ネットワークトランスポートとしての)試用だったが、まずは内蔵DACを利用しつつ、後日単体DACを購入してシステムアップを図る……というように道筋ができる点もすばらしい。本格的なオーディオシステム構築のためのエントリーモデルとしても、すでに単体DACを持っているというマニアのネットワークオーディオ専用機としても十分に使える、価値ある1台だ。

アウトロ:トランスのうなりを抑える「DC Blocker」を購入した話

「NEO Stream」の話はここまでなのだが、iFi audioから気になる新製品が発売されたので、ここで紹介しておきたい。オーディオ機器に搭載されるトランスからハムノイズ(うなり)が発生してしまうというのはよくある話。電源に含まれる直流(DC)電圧がトランスを通過することで発生するという仕組みだそうだが、このDCをブロックして、うなりを抑えるのが「DC Blocker」だ。

「DC Blocker」は対象の機器の電源インレットに挿して使う。電源ケーブルとの間に挟む形だ。定格電圧は90〜240V、定格電流は最大7A、連続4A、定格電力は400W(100V)、880W(220V)

「DC Blocker」は対象の機器の電源インレットに挿して使う。電源ケーブルとの間に挟む形だ。定格電圧は90〜240V、定格電流は最大7A、連続4A、定格電力は400W(100V)、880W(220V)

我が家で使っている電源ユニット(タップ)がトランスを搭載しており、ずっとこのうなりが気になっていた。もしやと思って「NEO Stream」取材のついでに「DC Blocker」も借用したところ、かなりうなりを抑えられることがわかったのだ。これまでは無音時にいちばん気になるノイズとしてトランスのうなりが目立っていたのだが、それがほぼなくなった。音質上のデメリットも感じなかったため、即購入。

iFi audioは低ノイズで音質向上を目指したACアダプター(「NEO Stream」に付属する「iPowerII」など)も発売する技術志向のメーカーなわけで、さすがユーザーのツボを心得ているなあ、と改めて感心した一連の取材だった。

トランスを搭載するオーディオ機器としてはプリメインアンプやパワーアンプがあげられる。我が家では電源ユニット(タップ)に「DC Blocker」を装着した

トランスを搭載するオーディオ機器としてはプリメインアンプやパワーアンプがあげられる。我が家では電源ユニット(タップ)に「DC Blocker」を装着した

柿沼良輔(編集部)

柿沼良輔(編集部)

AVの専門誌を編集して10年超。「(デカさ以外は)映画館を上回る」を目標にスピーカー総数13本のホームシアターシステムを構築中です。映像と音の出る機械、人が一生懸命つくったモノに反応します。

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