ソニーから、Android OSを搭載したストリーミングウォークマンの新モデル「NW-ZX707」が発表された。2019年に発売されたミドルクラス「NW-ZX500」シリーズの後継モデルという位置づけだ。
ソニーストリーミングウォークマン「NW-ZX707」
発売日は1月27日で、市場想定価格は105,000円前後。同時発表された下位モデルの「NW-A300」シリーズは、以下の別記事で紹介しているので、本稿では「NW-ZX707」の進化ポイントを詳しく解説していこう。
昨年3月に「NW-WM1ZM2」と「NW-WM1AM2」が発売されるまで、Android OSを搭載したストリーミングウォークマンの最上位モデルとして展開されていた「NW-ZX500」シリーズ。同時に発売された「NW-A100」シリーズにはないバランス接続にも対応し、本体サイズと音質のバランスがよく、本格的なサウンドで音楽ストリーミングサービスを楽しめるちょうどよいミドルクラスのDAPとして、2019年の発売から3年近くたった今なおロングセラーを続けている。
そんな「NW-ZX500」シリーズのバランスのよさを継承しつつ、昨年3月に発売が開始された「NW-WM1ZM2」「NW-WM1AM2」で盛り込まれた数々の高音質化技術を盛り込み、「NW-ZX500」シリーズの課題であったバッテリー性能を改善させ、さらに使いやすいモデルへと進化させたのが、今回登場する「NW-ZX707」だ。
NW-ZX707とNW-ZX500シリーズスペック比較
上に掲載した画像は「NW-ZX707」と「NW-ZX500」シリーズの主なスペックを比較したもので、赤字で書かれている部分が進化したポイントだ。「NW-ZX500」シリーズから画面サイズが大型化し、それに合わせてバッテリーもより大容量なものが搭載できるようになったことで、バッテリー性能が大きく向上している。「NW-WM1ZM2」「NW-WM1AM2」ほどではないが、「NW-ZX500」シリーズの課題だったバッテリー性能については、大きく改善していると言えるだろう。
そしてもうひとつ、「NW-ZX707」の進化点を語るうえで欠かせないポイントが、フラッグシップモデル「NW-WM1ZM2」「NW-WM1AM2」で盛り込まれた数々の高音質化パーツが採用されたことだろう。
本体は、アルミ切削シャーシを採用し、アルミ切削リアカバーを組み合わせることで、シャーシの低インピーダンス化と高剛性を実現。加えて、「NW-WM1ZM2」「NW-WM1AM2」にも採用された無酸素銅を切削加工したシールドカバーをデジタルブロックにかぶせることで、アナログブロックへの影響を排除。静寂から立ち上がるクリアな音質に寄与するという。
アルミブロックから複数回の工程をかけて切削したシャーシを採用。低インピーダンス化のため、塗装した後に基板が触れるねじ止め部分をさらに削り出すなど、細部まで徹底的に追求
デジタルブロックに無酸素銅を切削加工したシールドカバーをかぶせることで、アナログブロックへの影響を排除
さらに、オーディオブロックの電源部には、「NW-WM1ZM2」「NW-WM1AM2」にも使われた「FTCAP3」や、「FTCAP3」の高音質技術を継承した新開発の大容量固体高分子コンデンサーを採用。電源インピーダンスを「NW-ZX500」シリーズの約1/10まで低減させ、クリアで力強く濁りのない低音再生を実現したという。バッテリーパックについても、電池保護回路基板の低抵抗化を実現した専用のバッテリーパックを新たに開発して搭載。ボーカルや楽器の透明感をさらに向上させたという。
NW-WM1ZM2」「NW-WM1AM2」にも使われた「FTCAP3」を採用。音場が広くなり、音の透明感も増すという
電源インピーダンス低減に寄与する「FTCAP3」の高音質技術を継承した新開発の大容量固体高分子コンデンサー
新開発の専用バッテリーパック。電池保護回路基板の低抵抗化により、ボーカルや楽器の透明感がアップするという
このほかにも、全周波数帯域にわたって音の解像度を向上させるため、ヘッドホンバランス出力のLCフィルターに「NW-WM1ZM2」「NW-WM1AM2」と同じ8mm角のデジタルアンプ用大型コイルを採用したり、微細音の再現力、音の広がりや定位を向上させるために金を添付した高音質はんだをリフローはんだにも展開するなど、さまざまな高音質化技術を惜しみなく投入したという。なお、スペック上の数値では「NW-WM1ZM2」「NW-WM1AM2」と「NW-ZX707」で大きな差はないが、「NW-WM1ZM2」「NW-WM1AM2」に比べてスタイリッシュなデザインに仕上げるため、「NW-ZX707」では基板上のパーツ実装を片面に集中させたという。
8mm角のデジタルアンプ用大型コイルをヘッドホンバランス出力のLCフィルターに採用
金を添付したおなじみの高音質はんだをリフローはんだにも展開
スタイリッシュなデザインに仕上げるため、基板上のパーツ実装は片面に集中させている
ちなみに、画面サイズやバッテリーの大容量化、そして高音質パーツ・高音質化技術を搭載したことで、「NW-ZX707」の本体サイズは「NW-ZX500」シリーズからやや大型化しており、デザインにいたってはまったく別ものと呼べるほどに変化している。「NW-WM1AM2」ほどではないが、「NW-ZX500」シリーズよりは確実に大きく、そして重くなっている点は注意したいところだ。
「NW-ZX707」を手に持ったところ。中にパーツがぎっしりと詰まっているため、しっかりとした重さを感じる
大型の高音質パーツをレイアウトした関係で、本体背面は一部がやや飛び出ている
ヘッドホン出力は本体天面部分に搭載
ヘッドホン出力部分の金属パーツも削り出しパーツを採用している
本体右側面には再生コントロール/ボリューム調整用ボタンが並ぶ
本体底面にはUSB Type-C端子とストラップホールを用意
「NW-ZX500」シリーズ(写真左)と「NW-ZX707」(写真中央)、「NW-WM1AM2」(写真右)の大きさを比較したところ
機能面は、圧縮音源をハイレゾ相当の高音質にアップスケーリングしてくれる「DSEE Ultimate」がアプリ制限なし/有線・無線(Bluetooth)問わず利用可能になったほか、入力されたすべてのPCM音源を11.2MHz相当のDSD信号に変換する「DSDリマスタリングエンジン」を新たに搭載するなど、「NW-WM1ZM2」「NW-WM1AM2」と横並びのものへと進化。バランス接続・アンバランス接続それぞれ何時間音楽再生に使用したか確認できる「エージングカウンター」の機能も盛り込まれた。
メモリー容量は64GB(実使用可能領域は約47GB)で、カラーバリエーションはブラックの1色のみ。再生フォーマットはMP3/WMA/FLAC/WAV/AAC/HE-AAC/Apple Lossless/AIFF/DSD(DSF/DSDIFF)/APE/MQA、PCMは最大32bit/384kHzまで、DSDは1bit/11.2MHzまでの再生となる。ヘッドホン出力は3.5mmステレオミニと4.4mm標準バランスの2系統で、実用最大出力はステレオミニが50mW+50mW(ハイゲイン出力時)、バランスが230mW+230mW。無線LANはIEEE 802.11 a/b/g/n/ac(2.4GHz/5GHz)に対応。BluetoothはVer 5.0で、コーデックはSBC、AAC、LDAC、aptX、aptX HDをサポートする。
なお、「NW-ZX707」専用アクセサリーとして、フリップタイプの本革レザーケース「CKL-NWZX700」も同時発売される。ケースを取り外さずにmicroSDメモリーカードの挿抜ができるほか、フタを閉じた状態でもヘッドホン接続、サイドキー操作、充電が可能となっている。市場想定価格は10,000円前後だ。
フリップタイプの本革レザーケース「CKL-NWZX700」。市場想定価格は10,000円前後
ケースを装着した状態でも各種インターフェイスやボタンにアクセスできるようになっている
AV家電とガジェット系をメインに担当。ポータブルオーディオ沼にどっぷりと浸かっており、家のイヤホン・ヘッドホンコレクションは100を超えました。最近はゲーム好きが高じて、ゲーミングヘッドセットも増えてます。家電製品総合アドバイザー資格所有。