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パワーアンプを強化した“9.4chアンプの最高峰モデル”デノン「AVR-X4800H」

デノンが9chアンプ内蔵のAVアンプ「AVR-X4800H」を発売する。希望小売価格は313,500円(税込)。

既発売製品「AVR-X3800H」の上位モデルで、内蔵アンプは9ch、音声信号のプロセッシング数は最大で11.4chという点は同様。「AVR-X3800H」と同じく、最新のDSP(Digital Signal Processor)を搭載して信号処理能力を向上させたことが大きなアップデートポイント。オーバーヘッド(トップ/ハイト)スピーカーのアサインは最大6本。別途外部パワーアンプが必要になるが、プリアウトを活用すれば「5.4.6」や「7.4.4」のスピーカー構成が可能だ。さらに、パアーアンプ部をグレードアップしたことが何よりのトピックとなる。

AVR-X4800H」の主要スペックは以下のとおり。
●内蔵パワーアンプ:9ch
●定格出力:125W(8Ω、2ch駆動時)
●HDMI入力7系統、HDMI出力3系統(ゾーン用のHDMI出力1系統を除いて、8K/60Hz[40Gbps]映像信号のパススルー対応)
●11.4chプリアウト装備
●「プリアンプモード」搭載
●サブウーハーの「指向性」モード搭載
●独自のネットワークオーディオ再生機能「HEOS」(ヒオス)対応
(Amazon Music、AWA、Spotifyなどが再生可能)
●Dolby Atmos、DTS:X、Auro-3D、360 Reality Audio、MPEG-4 AAC、IMAX Enhanced対応
●有償アップデートで「Dirac Live」に対応予定
●寸法: 434(幅)×389(奥行)×167(高さ)mm(アンテナ除く)
●重量:13.4kg

リアパネルで目を引くのは11.4ch分の充実したプリアウト端子。プリアウトを使う場合、任意のchの内蔵パワーアンプをオフにする「プリアンプモード」が役立つ。また、「AVR-X3800H」にはない特徴として、コンポジット映像入力と3RCAの色差コンポーネント映像入力端子を備える

リアパネルで目を引くのは11.4ch分の充実したプリアウト端子。プリアウトを使う場合、任意のchの内蔵パワーアンプをオフにする「プリアンプモード」が役立つ。また、「AVR-X3800H」にはない特徴として、コンポジット映像入力と3RCAの色差コンポーネント映像入力端子を備える

マニアへの朗報として、「プリアンプモード」の搭載のほか、Dolby AtmosとAuro-3Dの共存も紹介された。これまでのAuro-3D対応デノン/マランツ製AVアンプでは、Auro-3D再生時はオーバーヘッドスピーカーを「フロントハイト」および「リアハイト」に設定する必要があった。3月のソフトウェアアップデート以降は「トップフロント」「トップミドル」「トップリア」でもAuro-3D再生が可能になる。これは2023年モデルのデノン/マランツのAVアンプ共通のアップデートだという(Auro-3D対応モデルに限る)

マニアへの朗報として、「プリアンプモード」の搭載のほか、Dolby AtmosとAuro-3Dの共存も紹介された。これまでのAuro-3D対応デノン/マランツ製AVアンプでは、Auro-3D再生時はオーバーヘッドスピーカーを「フロントハイト」および「リアハイト」に設定する必要があった。3月のソフトウェアアップデート以降は「トップフロント」「トップミドル」「トップリア」でもAuro-3D再生が可能になる。これは2023年モデルのデノン/マランツのAVアンプ共通のアップデートだという(Auro-3D対応モデルに限る)

最新のDSP(Digital Signal Processor)を採用し、従来よりも多ch信号をプロセッシングできるようになった

最新のDSP(Digital Signal Processor)を採用し、従来よりも多ch信号をプロセッシングできるようになった

DSPの刷新にともない、360 Reality Audioのデコードに対応した。これも「AVR-X3800H」と同様で、HDMI入力したデータ処理に限定される。現状で360 Reality Audioの音声をHDMI出力できる機器は「Chromecast Ultra」などに限られるとのこと。この点には注意

DSPの刷新にともない、360 Reality Audioのデコードに対応した。これも「AVR-X3800H」と同様で、HDMI入力したデータ処理に限定される。現状で360 Reality Audioの音声をHDMI出力できる機器は「Chromecast Ultra」などに限られるとのこと。この点には注意

11.4chプロセッシングの「.4」部分はサブウーハーを4台つなげるという意味。しかも、「指向性」モード時には独立した音声信号を発することもできる

11.4chプロセッシングの「.4」部分はサブウーハーを4台つなげるという意味。しかも、「指向性」モード時には独立した音声信号を発することもできる

弟機である「AVR-X3800H」とは希望小売価格で10万円以上の差があるが、スペック上の差異はとても小さい。11.4chプロセッシング対応で、サブウーハー最大4台を「指向性」モードで扱えること、オーバーヘッドスピーカー6本の構成が可能なことなどを含めて、主要機能は基本的に同等だと言ってよい。

それではどこが違うかと言えば、最も大きいのはアンプの定格出力。「AVR-X3800H」の定格出力が105W(8Ω、2ch駆動時)なので、20W大出力化を果たしている。しかし、ここで重要なのは単なる出力値ではない。「AVR-X4800H」は、「9.4chアンプの最高峰モデル」として、パワーアンプ部のグレードアップを図った意欲作なのだ。

グレードアップしたパワーアンプ構成は「AVR-X6700H」相当

従来モデル「AVR-X4700H」のパワーアンプ基板は2枚に分けられた構成だった。もちろんデノンらしくディスクリート(単体パーツによる)構成の同一クオリティで揃えられたものだ。しかし、「AVR-X4800H」では「モノリス・コンストラクション・パワーアンプ」レイアウトを採用。これまでは「AVR-X6700H」以上の上位グレードモデルで採用されていた手法で、1chごとにモジュール化された基板を使うことでch間の相互干渉を防ぎ、音質を向上させようという趣旨だ。実際に、回路自体は「AVR-X6700H」と同等だという。

パワーアンプの構成に「モノリス・コンストラクション・パワーアンプ」レイアウトを採用

パワーアンプの構成に「モノリス・コンストラクション・パワーアンプ」レイアウトを採用

モジュール化されたモノラル(1ch)パワーアンプ基板が9枚並ぶ。増幅素子がヒートシンクに取り付けられる格好だ

モジュール化されたモノラル(1ch)パワーアンプ基板が9枚並ぶ。増幅素子がヒートシンクに取り付けられる格好だ

また、パワーアンプ構成を改めたことと同時に信号経路の最適化も施されている。こちらもノイズの干渉を防ぐ工夫のひとつだ。なかでもD/Aコンバーター(DAC)回路、プリアンプ、マルチルーム機能用DACを1枚の基板に集約したことが以前からの大きな変更点だろう。

DAC回路、プリアンプ、マルチルーム用のDACの基板を1枚の新基板にまとめ、シグナルパスの最適化を図った。

DAC回路、プリアンプ、マルチルーム用のDACの基板を1枚の新基板にまとめ、シグナルパスの最適化を図った。

新基板のサンプル。DAC素子は現在の「AVR-X4700H」と同じTI製2ch仕様モデル「PCM5102A」

新基板のサンプル。DAC素子は現在の「AVR-X4700H」と同じTI製2ch仕様モデル「PCM5102A」

アンプ部の変更に合わせて、ワイヤリングの再検討も実施されている

アンプ部の変更に合わせて、ワイヤリングの再検討も実施されている

オーディオ基板とパワーアンプ基板の間はワイヤーでの接続を廃止。製品ごとのばらつきを抑えている

オーディオ基板とパワーアンプ基板の間はワイヤーでの接続を廃止。製品ごとのばらつきを抑えている

そのほか、試聴を繰り返してカスタム品のコンデンサーを使うなど、パーツ選定にもこだわったこともデノンの定番的手法だ

そのほか、試聴を繰り返してカスタム品のコンデンサーを使うなど、パーツ選定にもこだわったこともデノンの定番的手法だ

こうした組み上げの徹底した管理を行うためにも、「AVR-X4800H」は福島県白河市にあるD&Mホールディングスの白河工場で生産される。白河工場とは、デノン/マランツの高級AV機器を生産する同社の主要機関。従来モデル「AVR-X4700H」はベトナム工場での生産だったところ、新モデルでは白河工場での生産に切り替えられた。「AVR-X4700H」の希望小売価格が198,000円(税込)だったことを考えればかなりの値上げのようにも見えるが、実際には内容を充実させて、名実ともに“格”を上げたということのようだ。

「AVR-X4800H」は、D&Mホールディングスの白河工場で生産される「Made in Shirakawa Japan」

「AVR-X4800H」は、D&Mホールディングスの白河工場で生産される「Made in Shirakawa Japan」

雑味の減った、より“Spacious”な表現力

D&Mホールディングスの試聴室で従来モデル「AVR-X4700H」と新モデル「AVR-X4800H」の比較試聴の機会を得たが、CDの2ch音源を聞いてもわかるのが、雑味の少なさ。近年のデノンの音作りのテーマ「Vivid & Spacious」がより鮮明になったと感じさせる。

試聴機に触れたのはD&Mホールディングスの試聴室。「AVR-X3800H」の記事とはまた別の部屋で、この日のフロントスピーカーはBowers&Wilkinsの「702 S3」。埋め込み型のオーバーヘッドスピーカーなどもBowers&Wilkinsで揃えた「5.3.4」システムだ

試聴機に触れたのはD&Mホールディングスの試聴室。「AVR-X3800H」の記事とはまた別の部屋で、この日のフロントスピーカーはBowers&Wilkinsの「702 S3」。埋め込み型のオーバーヘッドスピーカーなどもBowers&Wilkinsで揃えた「5.3.4」システムだ

左が「AVR-X4800H」で右が「AVR-X4700H」。シャーシの寸法はまったく変わらない

左が「AVR-X4800H」で右が「AVR-X4700H」。シャーシの寸法はまったく変わらない

サラウンド(Dolby Atmos)音源Ultra HDブルーレイ「トップガン マーヴェリック」ではどうか。この日はデノンのメイン試聴室ではなく、組み合わせたスピーカーはBowers&Wilkinsの「702 S3」を中心とした「5.3.4」システム。このスピーカーキャラクターもあってか低音が深く沈み込むという印象ではないが、戦闘機が発する中低域の厚みがしっかりとしていて、その移動の軌跡の明瞭さが映像の臨場感を盛り上げる。サラウンド音源は従来モデルと比較したわけではないが、この移動感はサブウーハーの「指向性モード」の効果にも支えられているだろう。

同じくDolby Atmos収録のUltra HDブルーレイ「ウエスト・サイド・ストーリー」の冒頭では、空間の広さ、鳴り物の鋭い響き方が印象的。この日の部屋はいつものメイン試聴室よりも狭めなのだが、それを感じさせないまさに「Spacious」な鳴り方だ。上記のとおり試聴室こそ異なるが総じて「AVR-X3800H」を聞いたときよりも情報量が多く、ソフトごとの音響設計をより明確に提示してくれていると思う。

「AVR-X4800H」の内蔵アンプは9ch。これを多いと思うか少ないと思うかはユーザー次第だが、ハイグレードなサラウンドシステムを志向するユーザーがフロントL/Rスピーカー用のパワーアンプを専用に用意することもあると考えると、結構合理的な数字だ。無理なく2ch分の外部パワーアンプを用意してもらい、最大プロセッシング数を使った「5.4.6」や「7.4.4」システムが可能なのだから。

これ以上のアンプ数を一体型で、となると、2023年モデルとして告知されているのは15chアンプを内蔵する「AVC-A1H」のみ。こちらの音質にも期待が高まるが、かなり高価になることが予想される。むだのない内蔵アンプ数、コストパフォーマンスを考えれば「AVR-X4800H」には独自の魅力があると言えるだろう。

オーバーヘッドスピーカー(フロントハイト/リアハイト)は天井埋め込み型で、スピーカー設定は「小」。クロスオーバー周波数は「150Hz」。このとき、フロントハイト/リアハイトスピーカーの150Hz以下の低音は、各スピーカー近傍のサブウーハーから出力される

試聴時のオーバーヘッドスピーカー(フロントハイト/リアハイト)は天井埋め込み型で、スピーカー設定は「小」。クロスオーバー周波数は「150Hz」。「指向性」モードとしているため、フロントハイト/リアハイトスピーカーの150Hz以下の低音は、各スピーカー近傍のサブウーハーから出力される

柿沼良輔(編集部)

柿沼良輔(編集部)

AVの専門誌を編集して10年超。「(デカさ以外は)映画館を上回る」を目標にスピーカー総数13本のホームシアターシステムを構築中です。映像と音の出る機械、人が一生懸命つくったモノに反応します。

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