レビュー

オンキヨーとパイオニアのAVアンプは何が違うのか? じっくり比較してみた

パイオニア「VSX-LX305」(上)とオンキヨー「TX-RZ50」(下)

パイオニア「VSX-LX305」(上)とオンキヨー「TX-RZ50」(下)

オンキヨー、パイオニアというホームオーディオとAV機器の老舗ブランドを持っていたオンキヨーホームエンタテインメント社が、経営不振によって2022年5月に倒産した。

両ブランドに愛着を持つ古くからのファン(僕もそのひとり)の多くは心を痛めていたと思うが、ブランドの譲渡先としてオンキヨーテクノロジー社が発足、オンキヨー/パイオニアのオーディオ&AV機器開発が再開され、2022年11月から両ブランドのAVアンプ(欧米ではAVレシーバーと呼ばれることが多い)が市場導入された。オンキヨー「TX-RZ50」とパイオニア「VSX-LX305」だ。

経緯について触れると、オンキヨーホームエンタテインメントの倒産後、スピーカーメーカーのクリプシュなどを傘下に収める米国のオーディオ企業体Premium Audio Company(PAC)が声を上げ、シャープとの合弁でオンキヨーテクノロジーを発足させた。この会社に旧オンキヨー/パイオニアのエンジニア約80人が集結し、AV機器開発を再スタートすることになったわけである。

商品企画はPAC(米国)、設計開発はオンキヨーテクノロジー(東大阪市)、生産はシャープのマレーシア工場、そして日本国内の販売はティアックが受け持つことになる。

再スタートを切った両ブランドから最初に登場した、先述のAVアンプ2モデルを自室で試聴する機会を得たので、ここではそのインプレッションをお伝えしよう。製品単体の紹介については関連記事を参照いただきたい(※2023年2月11日、「VSX-LX305」の記事を公開しました)。

パイオニア伝統の自動音場補正機能「MCACC」とは

「VSX-LX305」

「VSX-LX305」

最初にセットアップしたのがパイオニアブランドの「VSX-LX305」。簡便なパワーICなどを使わないディスクリート構成のアナログAB級9chアンプを内蔵、天井や高い壁に設置するオーバーヘッドスピーカーを用いるDolby Atmosなどのイマーシブオーディオ再生に対応する。内蔵アンプだけで5.1chにトップスピーカーを4本加えた「5.1.4」、または7.1chにトップ2本を加えた「7.1.2」再生が可能となる。

またネットワークオーディオ機能を搭載し、DSD11.2MHz、PCM192kHz/24bitまでのハイレゾ再生が可能。Amazon Music(ハイレゾは非対応)、Spotifyなど各種ストリーミングサービスにも対応する。加えて興味深いのが、パイオニア・オリジナルの「Advanced MCACC」と欧州流儀の「Dirac Live」(ディラクライブ)という2種類の自動音場補正機能を有していることだ。

パイオニア独自の自動音場補正機能「MCACC」と、スウェーデンのDirac Research社による「Dirac Live」2つを使い分けできるのが「VSX-LX305」の特徴のひとつ。「VSX-LX305」に搭載された「Advanced MCACC」は、スピーカー間の位相管理などに加えて定在波の低減機能、ソフトに含まれる低域の遅れを補正する「オートフェイズコントロールプラス」機能を含む

パイオニア独自の自動音場補正機能「MCACC」と、スウェーデンのDirac Research社による「Dirac Live」2つを使い分けできるのが「VSX-LX305」の特徴のひとつ。「VSX-LX305」に搭載された「Advanced MCACC」は、スピーカー間の位相管理などに加えて定在波の低減機能、ソフトに含まれる低域の遅れを補正する「オートフェイズコントロールプラス」機能を含む

AVアンプの多くは自動音場補正機能を搭載している。多くのスピーカーを用いるサラウンド再生はさまざまな調整が要求されるうえ、ルームアコースティック(室内音響)補正が高音質を得るうえでステレオ(2ch)再生以上に重要となるからだ。

つまり自動音場補正機能とは、サラウンドシシテムに用いられる各スピーカーからテスト信号を発生させ、リスニングポイント(とその近傍)に置いたマイクを用いてスピーカー込みの部屋の音響特性を計測、各スピーカーの距離やレベル差を自動補正するとともに部屋固有の条件(寸法比など)によって生じる定在波が引き起こす周波数特性の凸凹(特に問題となるのが低音)を較正(こうせい)しようというもの。

その先鞭をつけたのがパイオニアで、「MCACC(Multi Channel Acoustic Calibration System)」と名づけられたその技術は、2001年の「VSA-AX10」で初搭載されている。

「VSA-LX305」に搭載されたのは「Advanced MCACC」で、これには録音時に生じるコンテンツ内の低域の遅れを補正する「オートフェイズコントロールプラス」という機能が加えられている。

パイオニアは1990年代以降、室内音響環境に大きな問題を抱えるカーオーディオの売り上げが大きく、自動音場補正機能による高音質化にいち早く取り組んでいた。その成果が22年前からAVアンプ用にリファインされて盛り込まれたというわけである。

いっぽうの「Dirac Live」は、スウェーデンの音響技術会社が提案した自動音場補正機能。「MCACC」同様、テスト信号を発生させて部屋固有の音響上の問題を精査、周波数特性を整えるとともに、各チャンネルの音が立ち上がるタイミングを揃えるインパルス・レスポンス較正(こうせい)機能が盛り込まれている。

ここで、わが家のサラウンドスピーカーについて触れておこう。メインのL/Rスピーカーは、15インチウーハーと4インチコンプレッションドライバー(ツイーター)を用いたJBL「Project K2 S9900」、サラウンドスピーカーとオーバーヘッドスピーカーにはLINN(リン)の「Classik Unik(クラシックユニーク)」を主に用いた「6.1.6」構成だ。センタースピーカーは必要を感じないので、L/Rスピーカーにセンター成分を振り分けている。サブウーハーは、イクリプス「TD725SW」。ここでは、4.1chにトップスピーカーを2本(トップミドル)使用する「4.1.2」再生でテストしてみた。

テストはすべて自宅試聴室にて実施。フロントスピーカーにJBL「Project K2 S9900」、サラウンドとトップミドルスピーカーにLINNの「Classik Unik」、サブウーハーにイクリプス「TD725SW」を使った「4.1.2」システムを鳴らした。トップミドルスピーカーは写真の天井に見える2本だ

テストはすべて自宅試聴室にて実施。フロントスピーカーにJBL「Project K2 S9900」、サラウンドとトップミドルスピーカーにLINNの「Classik Unik」、サブウーハーにイクリプス「TD725SW」を使った「4.1.2」システムを鳴らした。トップミドルスピーカーは写真の天井に見える2本だ

部屋の後方にはプロジェクターのほか、サラウンド、サラウンドバック、トップリアスピーカーなどが設置されている。テストで使ったサラウンドスピーカーは横側の壁に付けられた白い「Classik Unik」

部屋の後方にはプロジェクターのほか、サラウンド、サラウンドバック、トップリアスピーカーなどが設置されている。テストで使ったサラウンドスピーカーは横側の壁に付けられた白い「Classik Unik」

【VSX-LX305】:音楽の再生も本格的な高S/Nサウンド

「Advanced MCACC」と「Dirac Live」それぞれのテスト信号を発生させて距離・レベル補正を行ったのち、イコライザーなどの補正がオフになる(距離やレベル調整、スピーカーのラージ/スモール判定は生きる)「PURE DIRECT」モードで愛聴盤CDを再生、まず2chステレオの基本音質をチェックしてみた。プレーヤーとして使ったのはパナソニックのUltra HDブルーレイプレーヤー「DP-UB9000」。両者はHDMI接続している。

強く印象づけられるのが低音の反応の速さ。力感も十分で、ボーカルの質感もきわめてよい。クラシックのオーケストラ曲で印象的なのは、ローレベルの静けさ。マルチチャンネルパワーアンプやサラウンドデコーダー、映像信号処理回路を搭載しなければならないAVアンプがこれまで最も苦手としてきたのはこの音の消え際や休止符の表現で、何かこうザワザワする印象が否めない製品が散見されたが、このアンプ、実に本格的な音を聴かせるのだ。同価格帯の2chタイプのプリメインアンプと本気で聴き比べみたいと思わせる高S/Nサウンドなのである。

次に「Dirac Live」と「Advanced MCACC」の、周波数特性の凸凹を較正(こうせい)するイコライザー(ターゲットカーブはフラットのみ)のオン/オフを切り替えながらDolby Atmos収録のUltra HDブルーレイを再生してみた。まず「Dirac Live」から。

「Advanced MCACC」と「Dirac Live」はどちらも付属のマイクで測定を行う仕組み。この日は3か所による簡易測定を実施。後述の「TX-RZ50」でも、「Dirac Live」を利用する手順はまったく同じだった

「Advanced MCACC」と「Dirac Live」はどちらも付属のマイクで測定を行う仕組み。この日は3か所による簡易測定を実施。後述の「TX-RZ50」でも、「Dirac Live」を利用する手順はまったく同じだった

付属のマイクを本体前面の専用端子につなぐと、自動音場補正機能を利用できる。初めに選ぶのは「Advanced MCACC」(表記はフルオートMCACC)と「Dirac Live」どちらにするか。「Dirac Live」は上級者向けという位置づけのようだ

付属のマイクを本体前面の専用端子につなぐと、自動音場補正機能を利用できる。初めに選ぶのは「Advanced MCACC」(表記はフルオートMCACC)と「Dirac Live」どちらにするか。「Dirac Live」は上級者向けという位置づけのようだ

「Advanced MCACC」はつないだテレビやプロジェクターなどの画面で、「Dirac Live」は写真の専用アプリ「Pioneer Remote App」で操作を行う。

「Advanced MCACC」はつないだテレビやプロジェクターなどの画面で、「Dirac Live」は写真の専用アプリ「Pioneer Remote App」で操作を行う。

「Dirac Live」ではチャンネルごとの周波数特性と補正後の特性を一覧できる。右肩下がり気味の、フラットに近い特性を志向しているようだ。下記のように補正のカーブを手動調整も可能

「Dirac Live」ではチャンネルごとの周波数特性と補正後の特性を一覧できる。右肩下がり気味の、フラットに近い特性を志向しているようだ。下記のように補正のカーブを手動調整も可能

測定後、アプリから「Dirac Live」のオン/オフは簡単に操作できる。リスニングモードを「AUTO/DIRECT」として、アプリで「Dirac Live」のオン/オフを切り替えて比較試聴を行った。また、同画面から各チャンネルの周波数特性の補正カーブを任意に調整可能。調整後のデータは3パターンを記憶しておける

測定後、アプリから「Dirac Live」のオン/オフは簡単に操作できる。リスニングモードを「AUTO/DIRECT」として、アプリで「Dirac Live」のオン/オフを切り替えて比較試聴を行った。また、同画面から各チャンネルの周波数特性の補正カーブを任意に調整可能。調整後のデータは3パターンを記憶しておける

テスト時はDolbyの「Loudness Management」(音量に応じたダイナミックレンジの自動圧縮機能)は「オフ」に設定。他社製AVアンプでも同様の項目が用意されることは多いので、ぜひ一度確認していただきたいポイントだ

テスト時はDolbyの「Loudness Management」(音量に応じたダイナミックレンジの自動圧縮機能)は「オフ」に設定。他社製AVアンプでも同様の項目が用意されることは多いので、ぜひ一度確認していただきたいポイントだ

「Advanced MCACC」の結果はオンスクリーン表示で確認する。壁や天井に設置した比較的小型の「Classik Unik」のスピーカーサイズを「ラージ」と判定するところが「MCACC」らしい。ここを「スモール」とすると、「クロスオーバー」で設定した周波数以下の低域をサブウーハーから出力する。なお、「Dirac Live」での判定は「ハイト1」(トップミドルスピーカー)のみ「スモール」判定で、クロスオーバー周波数は「80Hz」とされた。方式の違いか誤差かは不明だが、この結果を生かして試聴を実施している

「Advanced MCACC」の結果はオンスクリーン表示で確認する。壁や天井に設置した比較的小型の「Classik Unik」のスピーカーサイズを「ラージ」と判定するところが「MCACC」らしい。ここを「スモール」とすると、「クロスオーバー」で設定した周波数以下の低域をサブウーハーから出力する。なお、「Dirac Live」での判定は「ハイト1」(トップミドルスピーカー)のみ「スモール」判定で、クロスオーバー周波数は「80Hz」とされた。方式の違いか誤差かは不明だが、この結果を生かして試聴を実施している

「Advanced MCACC」でも、オンスクリーンであればイコライザーの調整が可能だ

「Advanced MCACC」でも、オンスクリーンであればイコライザーの調整が可能だ

「音の整い」が優先される「Dirac Live」

音楽録音が断然すばらしいスピルバーグ版「ウエスト・サイド・ストーリー」のUltra HDブルーレイでは、「Dirac Live」オフのほうが開放感に満ちた音となり、オンにすると「音の勢い」は削がれる印象だが「音の整い」はよくなった。

こちらもUltra HDブルーレイ、大ヒット作「トップガン マーヴェリック」はトム・クルーズとジェニファー・コネリーのバーでの会話場面を見てみたが、「Dirac Live」をオンにすると、2人の声質が整うが、オフのほうがより音がビビッドで細かな効果音もよく聴こえる印象となる。

約14帖の僕の部屋は、反射面と吸音面を最適化するなど音響条件を整えた空間なので、あえてイコライザーで周波数特性を較正する必要がなかったということなのだろうか、総じて「Dirac Live」オフの音のほうが個人的には好ましかった。

「音の勢い」が失われない「Advanced MCACC」。「オートフェイズコントロールプラス」の効果も顕著だ

次に「Advanced MCACC」のイコライザーを含めたオン/オフを、「PURE DIRECT」モードと「AUTO/DIRECT」モードで比較してみた。

「ウエスト・サイド・ストーリー」のバーンスタインが書いたオリジナル・スコアをグスターボ・ドゥダメルが指揮したニューヨーク・フィルの音楽で聴き比べてみると、ここでは「Advanced MCACC」の補正が「オン」となる「AUTO/DIRECT」の再生音がより好ましかった。オーケストラ・サウンドがタイトに切れ味よく聴こえるのである。これは「Advanced MCACC」に含まれる、コンテンツ内の低域の遅れを補正する「オートフェイズコントロールプラス」うまく機能しているからだろう。

「トップガン マーヴェリック」でも「Advanced MCACC」が「オン」(「AUTO/DIRECT」)の音のほうが好ましかった。音の生々しさは「PURE DIRECT」モードとあまり変わらず、オンにすると音場の整いがよくなり、ペニー(ジェニファー・コネリー)のバーの喧騒がスムーズに広がるイメージが得られるのである。

いずれにしても、「VSX-LX305」はパイオニア製AVアンプの美質をただしく受け継いだ、価格以上の魅力を感じさせる製品に仕上がっていると実感させられた。

【TX-RZ50】:ワイドレンジで「VSX-LX305」以上にハイフィデリティ志向

「TX-RZ50」

「TX-RZ50」

オンキヨーブランドの「TX-RZ50」もディスクリート構成のアナログAB級9chアンプ内蔵機で、「VSX-LX305」同様に内蔵アンプだけで5.1chにオーバーヘッドスピーカーを4本加えた「5.1.4」、または7.1chにオーバーヘッドスピーカー2本を加えた「7.1.2」再生が可能となる。

また「VSX-LX305」と同じくネットワークオーディオ機能を持ち、最大でDSD11.2MHz、PCM192kHz/24bitデータを再生可能。もちろん各種ストリーミングサービスにも対応するのは「VSX-LX305」と同様。自動音場補正機能は「Dirac Live」のほか、「AccuEQ Room Calibration」が採用されている。「Dirac Live」の利用はインターネットへの接続が必須のため、インターネットへの接続が難しいユーザー向けに「AccuEQ Room Calibration」が用意されているそうだ。

上が「TX-RZ50」で下が「VSX-LX305」のリアパネル。希望小売価格の違いは端子の充実度にも表れている。「TX-RZ50」ではプリアウトの端子は9.2ch分に対して、「VSX-LX305」のプリアウトはサブウーハー用の2系統(0.2ch分)のみ。このあたりも選択のポイントになりそうだ

上が「TX-RZ50」で下が「VSX-LX305」のリアパネル。希望小売価格の違いは端子の充実度にも表れている。「TX-RZ50」ではプリアウトの端子は9.2ch分に対して、「VSX-LX305」のプリアウトはサブウーハー用の2系統(0.2ch分)のみ。このあたりも選択のポイントになりそうだ

ボタンの割り当ては異なるが、付属リモコンはほぼ同じ。左が「VSX-LX305」で、右が「TX-RZ50」の付属品だ

ボタンの割り当ては異なるが、付属リモコンはほぼ同じ。左が「VSX-LX305」で、右が「TX-RZ50」の付属品だ

オンキヨーのAVアンプは、昔から米国のハイエンドオーディオメーカーに影響を受けたのでは? と思わせる設計ノウハウが盛り込まれている。アイドリング電流をたっぷりと流すとか、出力段にインバーテッド3段ダーリントン接続を採用するなど、スピーカーに対する駆動力の向上に徹底的にこだわってきたわけだが、本機「TX-RZ50」の設計にも従来培ってきたオンキヨー流儀をそのまま継承している。

担当エンジニアと少し話すことができたが、PAC企画担当者の音質面での要求レベルはきわめて高く、そのリクエストに応えるべくD/Aコンバーター(DAC)周りのノイズ対策と高音質化に注力したそうだ。

まず各種補正機能がオフになる「Pure Audio」モードでCDを2チャンネル再生してみたが、「VSX-LX305」以上にワイドレンジな音調でハイフィデリティ志向。空間の広がりのスムーズさはDAC周りのノイズ対策がきいているのだろう。「VSX-LX305」よりも高い値付けになっているが、それが十分うなずける仕上がりのよさを実感させた。

やはり「4.1.2」で再生したUltra HDブルーレイ「ウエスト・サイド・ストーリー」のDolby Atmos再生(リスニングモードは「Direct」)でも、「VSX-LX305」以上に細かな環境音を精妙に描写する高S/Nサウンドに感心させられた。

同「トップガン マーヴェリック」で「Dirac Live」のオン/オフを試してみたが、「VSX-LX305」のときとほぼ同じような印象。僕の部屋ではオフのほうが、音が開放的で鳴りっぷりがよい印象だった。狭くて低音がボンつき気味だとか音響特性的に問題がある再生空間でこそ「Dirac Live」の補正をお試しいただきたい。

「TX-RZ50」の「Dirac Live」測定では、スピーカーのラージ/スモール判定が「VSX-LX305」での測定と大きく異なったことを記しておきたい。写真のとおり、フロントスピーカーを含めて、一定周波数以下の帯域をサブウーハーが受け持つ設定となった。これは、「Dirac Live」にスピーカーのラージ/スモール判定(ベースマネージメント)の基準がないことによるという。つまり、ブランドの特徴が表れた部分のひとつだ。もちろん、お好みで修正してもよいが、この日の設定はこの結果を生かしている

「TX-RZ50」の「Dirac Live」測定では、スピーカーのラージ/スモール判定が「VSX-LX305」での測定と大きく異なったことを記しておきたい。写真のとおり、フロントスピーカーを含めて、一定周波数以下の帯域をサブウーハーが受け持つ設定となった。これは、「Dirac Live」にスピーカーのラージ/スモール判定(ベースマネージメント)の基準がないことによるという。つまり、ブランドの特徴が表れた部分のひとつだ。もちろん、お好みで修正してもよいが、この日の設定はこの結果を生かしている

まとめ:基本音質だけで選ぶなら「TX-RZ50」、サラウンドの補正能力を重視するならば「VSX-LX305」

総括すると、「VSX-LX305」「TX-RZ50」ともに最新映画音響の妙味を心ゆくまで楽しませてくれるAVアンプであることは間違いなく、この価格帯の製品を狙っている人には自信を持って推薦したい。予想を上回る仕上がりのよさに、復活なった両ブランドの関わる人々の頑張りを強く実感した次第。

ステレオ再生時、Dolby Atmos再生時ともにパイオニア「VSX-LX305」よりもオンキヨー「TX-RZ50」のほうが基本音質は上との実感を得たが、これは価格差がそのまま反映された結果といえるかもしれない。

いっぽう「VSX-LX305」は「Advanced MCACC」を活用してDolby Atmos再生したときの魅力が大きい。サブウーハーから発せられる低域の遅れを較正(こうせい)する「オートフェイズコントロールプラス」が特にきいているのだろう。

いずれにしても、AVアンプは筐体の大きさといい、結線の大変さといい、調整項目多さといい、気軽に付き合えるAV機器ではないが、最新の音のよい映画館に負けないホームシアターを構築してみたいと考える剛毅な方にはぜひ挑戦してみてほしい。映画好き・音楽好きの人の趣味製品として、これほど面白い存在はないと思うが、いかがだろうか。

山本浩司

山本浩司

AV専門誌「HiVi」「ホームシアター」の編集長を経てオーディオビジュアル(AV)評論家へ。JBL「K2 S9900」と110インチスクリーンを核としたホームシアターシステムで、最高の画質・音質で楽しむAVを追い続けている。

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