レビュー

TWSと組み合わせが最適解!? ソニー小型ウォークマン「NW-A300」の魅力を探る

ストリーミング対応を前面に打ち出した小さなウォークマン「NW-A100」シリーズが発売されたのは、2019年11月のこと。それから約3年、製品コンセプトとサイズ感を継承したニューモデル「NW-A300」シリーズがついに登場した。物量重視のDAPが増える中、"新しいA"はどのような方向に舵を切ったのか。本稿では「ワイヤレス」と「DSEE Ultimate」を切り口に、その魅力を探っていきたい。

最新の小さなウォークマン「NW-A300」シリーズ

最新の小さなウォークマン「NW-A300」シリーズ

ウォークマン「NW-A300」シリーズの注目ポイント

小さい、お手ごろ、高音質と3拍子揃ったウォークマンAシリーズには固定ファンが多く、新モデル「NW-A300」シリーズにも"待ってました"という声がちらほらとあがっているが、その変更点・新機能やいかに。試聴へ進む前に、まずは注目ポイントをおさらいしておこう。

特徴の1つ目は「キープコンセプト」。サイズは55.7×98.2(高さ)×11.8(奥行)mmに重量は約113gと、前モデル「NW-A100」シリーズ(同55.2(幅)×98.9(高さ)×11.0(奥行)mm/約110g)に比べ若干大きくなったものの、ほとんど誤差のレベル。ディスプレイも3.6型/HD解像度と変化なし。底面に3.5mmイヤホンジャックやmicroSDメモリーカードスロット、USB Type-Cポートとストラップホールが集められていることも、「NW-A100」シリーズと同様だ。

本体サイズは55.7×98.2(高さ)×11.8(奥行)mm、重量は約113g。ディスプレイは3.6型/HD解像度だ。ちなみに、再生画面にはカセットテープデザインも選べる

本体サイズは55.7×98.2(高さ)×11.8(奥行)mm、重量は約113g。ディスプレイは3.6型/HD解像度だ。ちなみに、再生画面にはカセットテープデザインも選べる

底面に3.5mmイヤホンジャックや各種インターフェイスが集められているのも、「NW-A100」シリーズと同様だ

底面に3.5mmイヤホンジャックや各種インターフェイスが集められているのも、「NW-A100」シリーズと同様だ

ただし、背面パネルと側面には波状デザインが施され、手にしたとき滑りにくくなった。音量ボタンが楕円形に変更されたのも、操作性向上を意識してのことだろう。カラバリが5色から3色に減少したものの、ウォークマンロゴがプリントからデボス加工(凹型刻印)に変更されるなど細かい部分も含め、質感は向上している。

背面パネルと側面には波状デザインが施されている

背面パネルと側面には波状デザインが施されている

ウォークマン「NW-A300」シリーズの右側面

ウォークマン「NW-A300」シリーズの右側面

音量ボタンは楕円形に変更されている

音量ボタンは楕円形に変更されている

2つ目は「パフォーマンス」。詳細は非公表だが、おそらくは最新のQualcomm製SoC(aptX HD対応から推定)を採用しているのだろう。アプリを操作したときのレスポンスは悪くない。内蔵バッテリーの容量はほぼ同じというが、「W.ミュージック」での音楽再生時間(MP3 128kbps)が26時間から36時間へと大幅に改善。新世代SoCのみならず基板デザイン全体を刷新したことが、広い意味でのパフォーマンス向上につながったようだ。

3つ目は「ワイヤレス」。「NW-A300」シリーズは有線イヤホンで聴くだけにあらず、BluetoothオーディオコーデックにLDACにaptX HDをサポートするため、対応イヤホン/ヘッドホンを用意すれば"ハイレゾ級"サウンドを楽しめるところに、ソニー独自の高音質化技術「DSEE Ultimate」のワイヤレス対応が加わった。有線イヤホンは4.4mmバランスがメインというポータブルオーディオファンが増えた現在、3.5mmジャックしか持たない「NW-A300」シリーズにワイヤレスの再生環境を期待する向きも多いはずだ。

LDAC対応完全ワイヤレスイヤホンと相性バツグン

前段の流れから察していただけると思うが、筆者が「NW-A300」シリーズのテストを申し出た最大の理由は「LDAC対応イヤホンでDSEE Ultimateの効果をじっくり検証したい」から。「DSEE」といえば、圧縮過程で失われた高域方向の音を予測・補完しハイレゾ相当で聴かせるMP3やAACをターゲットとした技術だが、拡張が重ねられLDACでの出力が可能に。最新版の「DESS Ultimate」ではストリーミングサービスアプリにも対応、Amazon MusicやApple Musicといったアプリの音もハイレゾ相当で聴けるようになった。

OSはAndroid 12を採用、Google Playも利用できる

OSはAndroid 12を採用、Google Playも利用できる

Bluetoothイヤホンの詳細画面に「HDオーディオ」スイッチがある

Bluetoothイヤホンの詳細画面に「HDオーディオ」スイッチがある

今回のテストでは、試聴用のイヤホンにSOUNDPEATS 「Capsule3 Pro」を用意した。12mmバイオセルロース製ダイナミック型ドライバーを搭載し、最大43dB低減のハイブリッド型アクティブノイズキャンセリングに対応、LDACをサポートしつつも手ごろな価格というハイコストパフォーマンスなカナル型完全ワイヤレスイヤホンで、「DSEE Ultimate」の効果を実感できるかどうか、そこがポイントだ。

LDACをサポートするSOUNDPEATSのアクティブノイズキャンセリング対応完全ワイヤレスイヤホン「Capsule3 Pro」との組み合わせで試聴した

LDACをサポートするSOUNDPEATSのアクティブノイズキャンセリング対応完全ワイヤレスイヤホン「Capsule3 Pro」との組み合わせで試聴した

Bluetoothイヤホン使用時の音質に関わる設定項目は、ペアリング済みイヤホンの詳細設定画面にある「HDオーディオ」スイッチと、「設定」→「音」→「ハイレゾストリーミング」画面にある「ハイレゾストリーミングの使用」スイッチの2つがある。Amazon Musicのオーディオ出力情報(アプリ再生画面にある「ULTRA HD」ロゴのタップで表示)は、それらのスイッチをオン/オフしても変化はないようだ。

コーデックは「設定」→「接続済みのデバイス」→「接続の設定」→「Bluetooth」→「ワイヤレス再生品質」画面で選択可能

コーデックは「設定」→「接続済みのデバイス」→「接続の設定」→「Bluetooth」→「ワイヤレス再生品質」画面で選択可能

ハイレゾ対応ストリーミングサービスを利用する場合は、このスイッチをオンにしておこう

ハイレゾ対応ストリーミングサービスを利用する場合は、このスイッチをオンにしておこう

試聴には、Amazon Musicからシーウィンド「He Loves You」、マティア・バザール「Stasera Che Sera」、アンドリュー・ヨーク「Lullaby」をチョイス。いずれもロスレス/CD品質(44.1kHz/16bit)で、ストリーミング設定には「HD/Ultra HD」を選択、「DSEE Ultimate」をオフにした状態で聴いたあとにオンに切り替えて聴き直し、比較を行った。

LDAC接続時には、Amazon Musicは最大96kHz/24bitで再生できる

LDAC接続時には、Amazon Musicは最大96kHz/24bitで再生できる

最初の「He Loves You」は、ボーカルの位置が変わったことに気づく。音場の重心がやや上方へ移動した印象だ。といっても、いわゆる"腰高"になったわけではなく、見通しの改善とボーカル定位の明瞭化によるもので、全体のバランスは崩れていない。ジェリー・ヘイのフリューゲルホルンも、オフのときより光沢感が増した印象だ。

「Stasera Che Sera」は、冒頭で聴こえるギターのアルペジオからして響きが違う。後半で左右に移動するアントネッラの声も、定位が明確になり位置関係がよくわかる。「Lullaby」も、2:00前後のハーモニクスは生のアコースティックギターに近い、にわかに完全ワイヤレスイヤホンとは思えない繊細で伸びやかな音だ。

「DSEE Ultimate」の効果は、高域情報の付加と16bitから24bitへのアップサンプリングによるものだが、低中域など各帯域のバランスは崩さないところがミソ。ストリーミングサービスではCD品質しか配信されていない、何度も繰り返し聴いたけどいま一度新鮮さを感じたい、という楽曲を味わい尽くすにはちょうどいい機能であることは確かだろう。

同じ曲を使い慣れた有線イヤホンでも聴いてみたが、さすがにドラムブラシの消え際のように微細な音の輪郭は有線が有利なものの、取り回しのよさやアクティブノイズキャンセリングなど機能面を考えれば、外に持ち出したい組み合わせは「Capsule3 Pro」のほうだと言わざるを得ない。

バッテリー消費ペースは侮れない速度だが、旧作をワイヤレスで新鮮味をもって楽しめるのはなんともうれしい。LDACと「DSEE Ultimate」、それを実現する「NW-A300」シリーズと完全ワイヤレスイヤホンの組み合わせは、合理的かつ時宜を得たものだ。個人的には、「NW-A300」シリーズは「ハイレゾ相当コーデック+高音質化機能を生かし、完全ワイヤレスイヤホンでストリーミングを楽しむためのウォークマン」という呼称がふさわしいように思う。

海上 忍

海上 忍

IT/AVコラムニスト、AV機器アワード「VGP」審査員。macOSやLinuxなどUNIX系OSに精通し、執筆やアプリ開発で四半世紀以上の経験を持つ。最近はAI/IoT/クラウド方面にも興味津々。

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