ニュース

「360 Spatial Sound Mapping」の効果がすごい! ソニー7.1ch対応AVアンプ「STR-AN1000」

すでに米国では発表されており、ご存じの人もいるかもしれないが、ソニーから久々にAVアンプの新モデルが登場する。米国では、インストーラー向けの「ES」シリーズも発表されていたが、今回日本国内に投入されるのは、7.1ch対応の「STR-AN1000」1モデルのみ。3月18日発売予定で、市場想定価格は12万円前後だ。

ソニー7.1ch対応AVアンプ「STR-AN1000」

ソニー7.1ch対応AVアンプ「STR-AN1000」

トレンドを押さえた“全部盛り”。「360 Spatial Sound Mapping」に初対応

同社はここ数年、AVアンプの新モデル発表から遠ざかっており、国内では2018年の「STR-DH790」「STR-DH590」発売以来約5年ぶり、4桁の数字を冠したモデルとしては「STR-DN1080」以来の新モデルとして登場した「STR-AN1000」。主要な機能をカバーした、同社の主力モデルという位置づけだ。

ちなみに、先代モデルとなる「STR-DN1080」は、コロナ禍の影響とサプライヤーの不慮の事故が重なり、部品の安定供給が難しくなり、2017年の発売から3年も経たず、2020年年末に終売となっている。これも少なからず影響してか、一時はユーザーの間でいよいよソニーもAVアンプから撤退か?などとうわさされることもあったほどだ。本来ならもう少し早いタイミングで後継モデルを投入したかったそうだが、部材の安定調達と製品設計を念入りに行った結果、「STR-AN1000」はこのタイミングでの投入となったそうだ。

そんな「STR-AN1000」の主なスペックを以下にまとめてみたが、昨今の同社ホームシアター製品のトレンドをほぼすべて押さえた“全部盛り”という言葉がぴったりなモデルとなっている。

ソニー「STR-AN1000」の主なスペック
●最大プロセッシングch数:7.1ch(5.1.2ch構成に対応)
●Dolby Atmos、DTS:X、IMAX Enhancedに加え、ソニー独自の立体音響技術「360 Spatial Sound Mapping」に対応
●音場補正機能は最新の「D.C.A.C(Digital Cinema Auto Calibration) IX」を搭載
●6入力/2出力のHDMIはすべてHDMI 2.1対応。うち2入力/2出力は8K/4K120にも対応(40Gbps)
●Works with the Googleアシスタント、Chromecast built-in、Spotify Connect、Apple Airplay2、Works with SONOS、Roon Testedなど多彩なネットワーク機能に対応
●Bluetoothを搭載。独自の「DSEE Ultimate」やLDACにも対応
●DSDのネイティブ再生や360 Reality Audioの再生も可能
●ワイヤレスサブウーハーやワイヤレスリアスピーカーも接続可能
●対応BRAVIAとの「アコースティックセンターシンク」をサポート
●本体サイズ:430(幅)×331(奥行)×156(高さ)mm
●重量:10.3kg

なかでも注目したいのが、独自の「モノポールシンセシス技術」と「音場最適化技術」を活用し、実スピーカーからの音波を合成してファントムスピーカーを理想的な位置に配置することで、広大な音場空間を創り出す「360 Spatial Sound Mapping」に対応したこと。ホームシアターシステムの「HT-A9」、サウンドバーの「HT-A7000」などではすでに実装されている機能だが、AVアンプとしては今回の「STR-AN1000」が初めての対応となる。

実スピーカーからの音波を合成し、ファントムスピーカーを空間内に生成することで、広大な音場空間を創り出す「360 Spatial Sound Mapping」。サウンドバーなどではすでに導入されていたが、AVアンプにもついに導入された

実スピーカーからの音波を合成し、ファントムスピーカーを空間内に生成することで、広大な音場空間を創り出す「360 Spatial Sound Mapping」。サウンドバーなどではすでに導入されていたが、AVアンプにもついに導入された

「HT-A9」や「HT-A7000」では、スピーカーに内蔵されているマイクを活用して互いのスピーカー位置を正確に把握することで「360 Spatial Sound Mapping」を実現していたが、AVアンプでは組み合わせるスピーカーが千差万別なうえ、スピーカーにマイクが搭載されているわけでもいないため難しい。そこで、「STR-AN1000」では、音場補正機能「D.C.A.C(Digital Cinema Auto Calibration)」を最新の「D.C.A.C IX」にアップデートして搭載。付属のキャリブレーションマイクを活用して各スピーカーの配置を3次元で測定し、距離、音圧、周波数特性、角度などから精緻に補正することで、理想的なサラウンド空間を実現するというアプローチを採用した。

「D.C.A.C IX」では、GUIからスクリーンからの視聴位置までの距離、視聴位置の高さ、天井の高さ、スクリーンの高さなどを入力したうえで、キャリブレーション用マイクと専用スタンドを使用して計2回の測定を実施。1回目はスタンド上部に配置、2回目はマイクの向きを90度回転させた状態でスタンド下部に配置し、スピーカーからの距離や高さの異なる2か所で測定することで各スピーカーの配置を3次元で測定できるようになっている。

ソニー「STR-AN1000」のフロントパネル。キャリブレーションマイクはUSBポート脇に用意されたマイク端子に接続する

ソニー「STR-AN1000」のフロントパネル。キャリブレーションマイクはUSBポート脇に用意されたマイク端子に接続する

付属のキャリブレーション用マイクと専用スタンド。専用スタンドの上下の台座部分に設けられたくぼみにキャリブレーションマイクを配置し、合計2回の測定を実施する

付属のキャリブレーション用マイクと専用スタンド。専用スタンドの上下の台座部分に設けられたくぼみにキャリブレーションマイクを配置し、合計2回の測定を実施する

「D.C.A.C IX」の設定フロー。スピーカーアサインなどを選択していく

「D.C.A.C IX」の設定フロー。スピーカーアサインなどを選択していく

センタースピーカー成分を画面中央の位置から正しく再生できるように、スピーカーの位置だけでなく、画面の位置なども計測して入力していく

センタースピーカー成分を画面中央の位置から正しく再生できるように、スピーカーの位置だけでなく、画面の位置なども計測して入力していく

キャリブレーションした内容は2つまでプリセット登録できる

キャリブレーションした内容は2つまでプリセット登録できる

また、「D.C.A.C IX」では、すべてのスピーカーの位相特性をフロントに揃えて、スピーカー間のつながりを改善する「A.P.M(Automatic Phase Matching)」、スピーカーの音源位置を理想の位置・角度に再配置し、理想的な音場を再現する「スピーカーリロケーション」、5.1.2chのスピーカー設置でも、7.1.2ch相当のサラウンド体験を実現する「ファントム・サラウンドバック」、低い位置に置いたセンタースピーカーの音を上にシフトする「センタースピーカーリフトアップ」といったこれまでの「D.C.A.C」に実装されていた補正機能も搭載されている。

スピーカーの音源位置を理想の位置・角度に再配置し、理想的な音場を再現する「スピーカーリロケーション」など、これまでの「D.C.A.C」に実装されていた補正機能もしっかりと搭載されている

スピーカーの音源位置を理想の位置・角度に再配置し、理想的な音場を再現する「スピーカーリロケーション」など、これまでの「D.C.A.C」に実装されていた補正機能もしっかりと搭載されている

なお、「D.C.A.C IX」は2.1chといったスピーカー構成でも利用可能だが、「360 Spatial Sound Mapping」を有効化するには、最低でも4.0ch構成が必要となる。トップスピーカーやイネーブルドスピーカーを接続したり、ワイヤレスリアスピーカー「SA-RS5」を接続してトップスピーカー成分を生成できる場合は3次元方向にファントムスピーカーを配置できるため、3次元的に音場を広げることができるが、トップスピーカー成分がない場合は3次元方向にファントムスピーカーを配置できないため、2次元方向にのみ音場を広げる形となる点は注意してほしい。

HDMIやネットワーク機能も最新世代らしい充実した内容にアップデート

久々のAVアンプ新モデルということで、「STR-AN1000」は「360 Spatial Sound Mapping」対応以外にも注目ポイントは多い。

まずはコネクティビティ。今回の「STR-AN1000」では、6入力/2出力のHDMすべてがHDCP2.3、VRR(可変リフレッシュレート)、ALLM(自動低レイテンシーモード)に対応するほか、2入力/2出力は8K/60Hzや4K/120Hzにも対応(40Gbps)する。

HDMI以外では、ワイヤレスサブウーハーの「SA-SW5」「SA-SW3」、ワイヤレスリアスピーカー「SA-RS5」「SA-RS3S」との接続に対応したのもトピック。ちなみに、ワイヤレスサブウーハーに関しては、同じサブウーハーであれば2台まで同時接続することも可能となっている。AVアンプ設置のハードルのひとつであるスピーカー配線が少なくなる点は大いに歓迎したいポイントだ。

ソニー「STR-AN1000」のバックパネル。7.1chモデルということで、端子部分は意外に余裕のある設計だ。サブウーハー用のプリアウトは2つ搭載されているが、2系統とも同じ信号が出力される形。アナログ入力も一応用意されているが、4Kアプコン処理は省略されている

ソニー「STR-AN1000」のバックパネル。7.1chモデルということで、端子部分は意外に余裕のある設計だ。サブウーハー用のプリアウトは2つ搭載されているが、2系統とも同じ信号が出力される形。アナログ入力も一応用意されているが、4Kアプコン処理は省略されている

さらに、対応BRAVIAと接続することで、BRAVIAをセンタースピーカーとして使える「アコースティックセンターシンク」や、対応BRAVIAと接続することで、BRAVIAのリモコンからサウンドフィールドなどの主要な音響効果機能をコントロールできるなど、BRAVIAと組み合わせると便利に使える機能を搭載したのも、同社ホームシアター製品ならではの大きな特徴と言えるだろう。

ネットワーク機能についても、Works with the Googleアシスタント、Chromecast built-in、Spotify Connect、Apple Airplay2、Works with SONOS、Roon Testedなど、主要な機能をほぼすべて網羅。Bluetooth機能も、圧縮音源をハイレゾ相当の高音質にアップスケーリングする「DSEE Ultimate」や、最大96kHz/24bitのオーディオデータを伝送できるLDACコーデックのサポートなどかなり充実している。

スペックばかり注目されがちだが、オーディオ製品として内部設計もしっかりとアップデートされている。特にデジタル系回路基板は、最新の映像・音声規格への対応に合わせて刷新。放熱用のヒートシンク形状を見直し、フィンの長さを不均等にすることで、より共振しにくい構造へと変更した。また、音声処理についても、「STR-DN1080」では32bit DSPを3チップ使って処理を行っていたが、「STR-AN1000」ではすべての機能を1チップで行うSoCへと変更し、32bitのままDACに処理を受け渡す形に変更。回路をより短くできるようになり、音質のさらなる安定化を実現したという。

デジタル系回路基板は、最新の映像・音声規格への対応に合わせて刷新。放熱用のヒートシンク形状は共振が起こりにくい形状にしたそうだ

デジタル系回路基板は、最新の映像・音声規格への対応に合わせて刷新。放熱用のヒートシンク形状は共振が起こりにくい形状にしたそうだ

音声処理はを1チップで処理を行うSoCへと変更し、音質のさらなる安定化を実現したという

音声処理はを1チップで処理を行うSoCへと変更し、音質のさらなる安定化を実現したという

スクリーンの奥まで音が広がる「360 Spatial Sound Mapping」の効果がすごい

今回、短時間だが「STR-AN1000」を試聴する機会を得たので、インプレッションをお届けする。試聴環境は、フロントスーピーカー「SS-CS3」、リアスピーカー「SS-CS3」、センタースピーカー「SS-CS8」、トップスピーカー「SS-CS5」、サブウーハー「SA-CS9」の5.1.2ch構成で、「D.C.A.C IX」調整済みの状態だ。

まずは、Dolby Atmosのデモディスクの「Amaze」から試聴。トップスピーカーのある整備された環境だったこともあり、「360 Spatial Sound Mapping」をオフの状態でも轟く雷鳴や雨音などのDolby Atmosらしさはしっかりと感じられたのだが、驚いたのは「360 Spatial Sound Mapping」をオンにしたとき。鳥のさえずりや風音がまるでスクリーンの奥から聴こえてくるように感じられるのだ。

続いてUltra HDブルーレイ「トップガン マーヴェリック」のチャプター14を試聴してみた。「360 Spatial Sound Mapping」をオフにした状態だと、機内での会話とバックで鳴る劇伴が同じレイヤーで鳴っているように聴こえるのだが、「360 Spatial Sound Mapping」をオンにすると、劇伴が奥方向にシフトしたように感じられ、セリフがスッと耳に入ってくる。この奥行き感のある表現は「360 Spatial Sound Mapping」ならではの特徴と言える。

この効果と相性抜群だったのがライブコンテンツ。Official髭男dismのブルーレイ「Official髭男dism one-man tour 2021-2022 -Editorial- @SAITAMA SUPER ARENA」では、「360 Spatial Sound Mapping」の広大な音場表現により、広大な埼玉スーパーアリーナに響き渡る残響音や歓声がとてもリアル。まるでその場にいるかのような臨場感を楽しむことができた。

「360 Spatial Sound Mapping」はすでに「HT-A9」や「HT-A7000」でも提供されているが、やはり物理的にスピーカーを設置し、しっかりとキャリブレーションして追い込んだ環境での効果は絶大だった。「STR-AN1000」と今回使用したスピーカーを合わせると30万円弱。導入するなら「HT-A9」や「HT-A7000」のほうが設置は簡単だし、設置スペースの問題ですべての人が手軽に導入できるものではないが、もしスピーカー設置ができる環境であれば、効果を考えるとかなり魅力的な選択肢と言えるだろう。「360 Spatial Sound Mapping」を楽しめるAVアンプに興味のある人は、ぜひ「STR-AN1000」を試してみてほしい。

遠山俊介(編集部)

遠山俊介(編集部)

AV家電とガジェット系をメインに担当。ポータブルオーディオ沼にどっぷりと浸かっており、家のイヤホン・ヘッドホンコレクションは100を超えました。最近はゲーム好きが高じて、ゲーミングヘッドセットも増えてます。家電製品総合アドバイザー資格所有。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
プレゼント
価格.comマガジン プレゼントマンデー
SPECIAL
ページトップへ戻る