テレビレス派も必見! ホームシアターの世界

映像が「暗い」なら特に注意したい! プロジェクターとスクリーンの最適な設置場所とは

モバイル型や超短焦点型の登場で、Z世代にも注目のプロジェクター。前回までで、スクリーン選びがいかに重要か、それによって、スピーカーも含めたホームシアターシステム全体の設置方法まで決まってしまうというお話をしました。

それを踏まえて、今回からいよいよプロジェクター本体について論を進めていきましょう。

プロジェクターは部屋を暗くして使うのが基本

とある平日の昼間、映画館での映画祭取材まで時間があったので、某家電量販店に立ち寄りました。「オーディオビジュアル」のフロアには、メーカーごとに大型テレビと大きな赤札が華やかに並び、販売員もたくさん。

フロアの一角に、薄暗い“オトナの空間”かと見紛うような妖しい一角が……そう、プロジェクターコーナーです。8畳ほどのスペースに大小さまざまなプロジェクターが天井や壁面至る所に映像を投写しています。

販売員もいないので、薄暗い中をひとりしばらく滞留していると、子ども連れの母親らしき人が販売員を連れて入ってきました。

「これは、部屋を暗くしなきゃ見られないのね?」
「そうですね」
「あ、そう。じゃダメね」

……予想はしていましたが、わずか5秒で却下とは。想像以上で、がっくりしながら最上階の映画館へ取材に向かいました。

居室にプロジェクター。投写方向は東西南北どちら?

このように、「プロジェクター&スクリーンは、部屋を暗くしなきゃ使えない」というのがもはや“常識”となっています。ホームプロジェクターをお持ちでない人も、学校やオフィスでデータプロジェクターをお使いになったことがあると思います。

そのとき、スクリーンとプロジェクターはどこに置くでしょうか? わかりやすいように、学校の教室やオフィスを想定しましょう。

そもそもなぜプロジェクターを使うのか? それは、テレビでは画面が小さくて、みんなで共有できないから(今なら、ひとり1台PCなりタブレットがあり、画面共有にも慣れているかもしれませんが)。

そのとき映像を投写するスクリーンを置きたい場所は、みんなが目を向ける黒板やホワイトボードの場所と同じ。つまり、部屋の入り口と窓側を避けた、2面になるでしょう。裏を返すと、通常のプロジェクターはその対向面に設置することになります。

一般的に、プロジェクターはスクリーン(投写面)の対向面に置くことになります。出入り口と窓/ベランダ面を避けるとすると、図のような配置が想定されます

一般的に、プロジェクターはスクリーン(投写面)の対向面に置くことになります。出入り口と窓/ベランダ面を避けるとすると、図のような配置が想定されます

もっとも、もし、外光との関係を最優先して、映像が見やすい場所にスクリーンを設置するとすれば、どう置くでしょうか?

窓が南向きだとすれば、
(a)午前中から昼過ぎに使う教室のような場所なら、東からの朝日を避けて東側の壁にスクリーンを配置する、
(b)営業が帰社して夕方以降の会議によく使うなら西日を避けて西側に配置する、
それぞれに合わせてスクリーンを設置するだけで、スクリーンに直接映り込む外光が減りますから、ずいぶん見やすくなると思います。

図の窓が南向きの場合、(b西)側にスクリーンを置くと朝日の影響を強く受け、(a東)側にスクリーンを置くと夕日の影響を強く受けることになります。投写された映像(光)に日の光があたると、映像以外の光でコントラストが落ちてしまいます。つまり「暗く」見えてしまうことになります

図の窓が南向きの場合、(b西)側にスクリーンを置くと朝日の影響を強く受け、(a東)側にスクリーンを置くと夕日の影響を強く受けることになります。投写された映像(光)に日の光があたると、映像以外の光でコントラストが落ちてしまいます。つまり「暗く」見えてしまうことになります

実はこれ、テレビでも同じことが言えます。直射光が当たる場所に映像を置けば、たとえテレビでも、画面への照り返しでとても見づらくなってしまいます。

以上のことは、そのまま居室を想定したホームシアター(リビングシアター)でもあてはまります。

多くのホームシアターでは、(a東)または(b西)にスクリーンを設置、それに対応する場所にプロジェクターを置きます。常に窓からの光の影響を受けやすい(c北)側へのスクリーン設置は、外光とプロジェクターの光が混ざってしまうため、最も避けたい配置なのです。

南向きの窓の部屋で北側にスクリーンを設置すると、外からの光の影響を常に受けることになります。完全に遮光できるカーテンなどがあれば話は別ですが、外からの光がプロジェクターの光に混ざり、やはり映像のコントラストが落ちてしまいます

南向きの窓の部屋で北側にスクリーンを設置すると、外からの光の影響を常に受けることになります。完全に遮光できるカーテンなどがあれば話は別ですが、外からの光がプロジェクターの光に混ざり、やはり映像のコントラストが落ちてしまいます

意外によいのは、窓側にブラインドカーテンのように巻き上げスクリーンを配置する方法(d南)。外光を遮り、かつ、映像とその周りとの明るさの格差も少ないので、目にもやさしいのです。映像を見ないときは窓の外の自然の景色を眺め、スクリーンを下げれば映像を投写して世界各地の絶景を楽しむなんて「第2の窓」的な使い方も夢ではありません。

巻き上げ式スクリーンを選んで窓を遮るように設置すると、遮光ロールカーテン兼プロジェクター用スクリーンに。夜はいわゆる「第2の窓」になります

巻き上げ式スクリーンを選んで窓を遮るように設置すると、遮光ロールカーテン兼プロジェクター用スクリーンに。夜はいわゆる「第2の窓」になります

寝室やガレージなどを“秘密基地”に。リビングに限定されないホームシアターも検討しよう!

もちろん、部屋を全暗(真っ暗)にできれば、映像のクオリティの面では、スクリーンとプロジェクターをどこに置いても構わないように思えます。

ただしその場合でも、スクリーンに反射した光が周囲の壁に跳ね返り再びスクリーンを照らす「迷光(めいこう)」には注意です。白くてテカテカした壁紙は、それ自体が反射板の役割を果たしてしまいます。音と一緒で、拡散しやすい漆喰(しっくい)や多少デコボコした壁紙やタイル壁、ファブリックなどが望ましいでしょう。

プロジェクターから発せられた映像の光は、スクリーンにあたって部屋のさまざまな方向へ反射します。そうして反射された光が壁などに当たり、そこでさらなる反射が起こり、最終的に予期しない明かりがスクリーンに入ることがあります。これを「迷光」と言います

プロジェクターから発せられた映像の光は、スクリーンにあたって部屋のさまざまな方向へ反射します。そうして反射された光が壁などに当たり、そこでさらなる反射が起こり、最終的に予期しない明かりがスクリーンに入ることがあります。これを「迷光」と言います

実は、最もリラックスできて全暗が似合う部屋があります。「寝室」です。かつて「ベッドルームシアター」として、まさに“夢見心地”のシアター提案がなされました。

最近では10万円以下の手軽なプロジェクターの登場によって、より簡単に、単に寝る場所ではないプライベートなホームシアターが組めるようになりました。

リビングなど人が集まる場所ではなく、寝室や屋根裏、ガレージなど遮光できる“秘密基地”限定で使うと割り切れば、もっと選べる製品は増えるでしょう。

価格.comの人気売れ筋ランキング(2023年3月2日時点)を例に取ると、バッテリーを搭載したモバイルプロジェクター「Nebula Capsule」や「XGIMI Halo+」は、明るさは控えめですが、どこでも使える手軽さで人気です。

そのほかにも、シーリングライト一体型の「popIn Aladdin 2 Plus」であれば電源を照明用のソケットから取れるので導入のハードルは下がります。ただし、どれもやはり暗い部屋で使うのが基本であることは変わりません。まずはどこに置くか? と合わせて部屋の環境作りを検討するとよいでしょう。

遠藤義人

遠藤義人

ホームシアターのある暮らしをコンサルティングする「fy7d」代表。ホームシアターの専門誌「ホームシアター/Foyer(ホワイエ)」の編集長を経て独立、現在はインテリアとの調和を考えたシステムプランニングも行う。

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