ニュース

AV用にとどまらないハイファイ度! マランツ一体型AVアンプの最高峰モデル「CINEMA 40」

マランツの9ch AVアンプ「CINEMA 40」が3月下旬に発売される。希望小売価格は506,000円(税込)。2022年10月に発表されたマランツの新たなAVアンプ「CINEMA」シリーズの中で、アンプ内蔵一体型として最上位モデルにあたる。これで2023年のマランツAVアンプが出そろった格好だ。

AVプリアンプ「AV10」と16chパワーアンプ「AMP10」のセパレート型AVアンプを頂点とするマランツのAVアンプ「CINEMA」シリーズ

AVプリアンプ「AV10」と16chパワーアンプ「AMP10」のセパレート型AVアンプを頂点とするマランツのAVアンプ「CINEMA」シリーズ

マランツはAVアンプの外観を新たにして、2023年モデルを「CINEMA」シリーズとして展開してきたことは既報のとおり。この外観はマランツの「Hi-Fi」(2chオーディオ)製品にも採用されていて、現代のライフスタイルにもなじむように、というコンセプトでデザインされているという。

もちろん、現代のライフスタイルになじむ、とは外観だけではなく、使い勝手や機能についても同様だ。リビングルームでのコントロールセンターとしてなじみのよい製品を、という発想でプリメインアンプにARC対応のHDMI端子を装備した「MODEL 40n」などはそれを端的に表した製品だと言える。

「CINEMA 40」の発表会で改めて伝えられたのは、「MODEL 40n」と同じように「CINEMA」シリーズは今の時代に合ったAVアンプ/オーディオとは? という問いを再定義するべく展開されているということ。そして、そのテーマを最もよく体現しているのが「CINEMA 40」だということ。

つまり、「CINEMA 40」は上質なインテリアにもなりうるオーディオ機器として成り立つことを訴求するいっぽうで、「カテゴリーの枠を超えた、ひとつのマランツサウンドへの挑戦」というテーマのための音質追求も徹底したハイグレードオーディオ製品でもある。

ユーザーにとって「ハイファイ」「ピュアオーディオ」やAV製品という枠組みの意識が薄れていく中で、マランツとしてもその枠にとらわれないよい音を追求したモデルだという。

こうしたテーマの実現のためにどれほど注力されたか、弟モデル「CINEMA 50」とスペックを比較するとそれが浮き彫りになる。「CINEMA 40」の主要スペックは以下のとおりだが、機能性はもとより、内蔵アンプ数は同じであるうえ、アンプの定格出力値についても15Wの差がある程度。HDMI入力端子が1系統増えているものの、これを使い切るユーザーもなかなかいないだろう。

両機の希望小売価格には20万円以上の差があるが、その大部分のリソースが「カテゴリーの枠を超えた」音質改善に注ぎ込まれたと見ることができるのだ。

「CINEMA 40」
HDMI入力7系統(すべて40Gbps対応)
●内蔵パワーアンプ数:9ch
アンプ定格出力:125W+125W(8Ω、20Hz-20kHz、THD 0.05%)
●最大プロセッシングch数:11.4ch(5.4.6構成に対応)
●プリアウト:11.4ch(RCA)
●Dolby Atmos、DTS:Xのほか、360 Reality Audio、Auro-3D、IMAX Enhancedに対応
●「指向性」サブウーハーモード、プリアンプモード搭載
●ネットワークオーディオ機能「HEOS(ヒオス)」対応
●Dirac Liveに有償アップデート対応
●寸法:442(幅)×413(奥行)×188(高さ)mm(アンテナを除く)
●重量:15.1kg


「CINEMA 50」
HDMI入力6系統(すべて40Gbps対応)
●内蔵パワーアンプ数:9ch
アンプ定格出力:110W+110W(8Ω、20Hz-20kHz、THD 0.08%)
●最大プロセッシングch数:11.4ch(5.4.6構成に対応)
●プリアウト:11.4ch(RCA)
●Dolby Atmos、DTS:Xのほか、360 Reality Audio、Auro-3D、IMAX Enhancedに対応
●「指向性」サブウーハーモード、プリアンプモード搭載
●ネットワークオーディオ機能「HEOS(ヒオス)」対応
●Dirac Liveに有償アップデート対応
●寸法:442(幅)×404(奥行)×165(高さ)mm(アンテナを除く)
●重量:13.5kg

「CINEMA 40」のリアパネル。一列に並んだスピーカー端子など、「CINEMA 50」とよく似た構成と言える。プリアウトは11.4ch分を備え、最大4台のサブウーハーをそれぞれに調整できる「指向性」モードを備えることなどは「CINEMA 40」と同じ

「CINEMA 40」のリアパネル。一列に並んだスピーカー端子など、「CINEMA 50」とよく似た構成と言える。プリアウトは11.4ch分を備え、最大4台のサブウーハーをそれぞれに調整できる「指向性」モードを備えることなどは「CINEMA 40」と同じ

外観デザインで「CINEMA 50」と大きく異なるのは、トラップドアの中に大型ディスプレイを備える点。「AV10」(写真奥上)譲りの仕様で、LEDライトが仕込まれている。「CINEMA 40」は高級機らしい重厚感が増していて、真正面から見れば、質感も含めて「AV10」との差がほぼわからないくらいだ

外観デザインで「CINEMA 50」と大きく異なるのは、トラップドアの中に大型ディスプレイを備える点。「AV10」(写真奥上)譲りの仕様で、LEDライトが仕込まれている。「CINEMA 40」は高級機らしい重厚感が増していて、真正面から見れば、質感も含めて「AV10」との差がほぼわからないくらいだ

正攻法でプリアンプ/パワーアンプ部を強化した音質訴求型モデル

上記のとおり、HDMIまわりや6本のオーバーヘッド(トップ/ハイト)スピーカーアサイン対応、サブウーハーの指向性モードを備えることなどは「CINEMA 50」と同様だ。以下に音質改善のためのポイントを見ていこう。端的に言えば、セパレート型(「AV10」「AMP10」)の設計思想にならい、プリ/パワーアンプ部を強化した製品ということになる。それにともない、当然に電源部も強化され、キャビネットの容量も「CINEMA 50」よりも20%増している。

「AV10」のコンセプトを踏襲した、11.4ch電流帰還型プリアンプ

セパレート型の「AV10」と同等とはいかないが、プリアンプ部はマランツオリジナルの「HDAM-SA2」を11.4ch(15ch)分搭載。さらに電源を強化し、高いS/Nを目指した点に「AV10」との共通項があるという

セパレート型の「AV10」と同等とはいかないが、プリアンプ部はマランツオリジナルの「HDAM-SA2」を11.4ch(15ch)分搭載。さらに電源を強化し、高いS/Nを目指した点に「AV10」との共通項があるという

「HDAM」とは、フラットな周波数特性と高いスルーレート(応答速度)が特徴の電流帰還型のディスクリート(オペアンプなどを使わない、個々のパーツで構成された)アンプのこと。15ch分の「HDAM-SA2」が独立した基板にセットされることが「CINEMA 40」ならではの特徴だ。この基板はシールド効果のあるケイ素鋼板でノイズ対策される

「HDAM」とは、フラットな周波数特性と高いスルーレート(応答速度)が特徴の電流帰還型のディスクリート(オペアンプなどを使わない、個々のパーツで構成された)アンプのこと。15ch分の「HDAM-SA2」が独立した基板にセットされることが「CINEMA 40」ならではの特徴だ。この基板はシールド効果のあるケイ素鋼板でノイズ対策される

独立基板型のAB級増幅9chパワーアンプ

「CINEMA 40」のパワーアンプはchごとに独立した基板で構成される。この構成が「AMP10」譲り。ただし、基板自体は「AMP10」とは異なる。カスタム品のフィルムコンデンサーなどを使ったAB級増幅のアンプで、従来ながらのものが改良して使われている。この基板はアルミの押し出し材ヒートシンクに設置されているが、配列にもこだわりがある。中央にセンターchを置き、左右対称にL/Rのアンプ基板が並んでいるのだ。負荷が重く、発熱しやすいフロントL/Rを離し、負荷の軽めなハイト/トップch系をその周りに配置。すると、うまく発熱を平均化できるそうだ

「CINEMA 40」のパワーアンプはchごとに独立した基板で構成される。この構成が「AMP10」譲り。ただし、基板自体は「AMP10」とは異なる。カスタム品のフィルムコンデンサーなどを使ったAB級増幅のアンプで、従来ながらのものが改良して使われている。この基板はアルミの押し出し材ヒートシンクに設置されているが、配列にもこだわりがある。中央にセンターchを置き、左右対称にL/Rのアンプ基板が並んでいるのだ。負荷が重く、発熱しやすいフロントL/Rを離し、負荷の軽めなハイト/トップch系をその周りに配置。すると、うまく発熱を平均化できるそうだ

大容量化したパワーサプライ

パワーアンプ部を支える電源には、「CINEMA 50」の25%増しというEIコアトランスを搭載。ブロックコンデンサーも新規カスタム品で、こちらの容量も従来12,000μFだったところ15,000μFへ増量されている

パワーアンプ部を支える電源には、「CINEMA 50」の25%増しというEIコアトランスを搭載。ブロックコンデンサーも新規カスタム品で、こちらの容量も従来12,000μFだったところ15,000μFへ増量されている

容量20%アップのキャビネットは、ビルドクオリティに配慮された「Made in Shirakawa」

特にパワーアンプ部の回路構成が大きくなったことで、キャビネットの容量は「CINEMA 50」比で20%アップ。また、「CINEMA 40」は福島県白河市の自社工場で組み上げられる「Made in Shirakawa」製品だ

特にパワーアンプ部の回路構成が大きくなったことで、キャビネットの容量は「CINEMA 50」比で20%アップ。また、「CINEMA 40」は福島県白河市の自社工場で組み上げられる「Made in Shirakawa」製品だ

2chもサラウンドも、S/Nのよいハイファイ再生がかなう!

試聴はD&Mホールディングスの試聴室で実施。Bowers & Wilkinsの「800D4」シリーズを中心とした「5.2.4」システムでDolby Atmosや2ch音源を聞いた

試聴はD&Mホールディングスの試聴室で実施。Bowers & Wilkinsの「800D4」シリーズを中心とした「5.2.4」システムでDolby Atmosや2ch音源を聞いた

発表会の最後に、短い時間ではあるが「CINEMA 40」の音を体験できた。2chにしてもDolby Atmosのサラウンドにしても、芯のある、まさにハイファイ(高忠実度)再生だと感じさせてくれた。

SACD/CDプレーヤー「SA-10」を使って聞いた2ch音源では、ウッドベースやフルアコースティックタイプとおぼしきギターなどの胴鳴りの太さをごまかしなく再現してくれるし、ダイナミックレンジの広いクラシックの良録音の全体を解像してくれる。冒頭に紹介した「カテゴリーの枠を超えた」音というテーマを実現していると感じさせるのに十分なクオリティだと思う。

サラウンド再生に使ったのはパナソニックの「DMR-ZR1」。Ultra HDブルーレイ「グレイテスト・ショーマン」から定番の「ディス・イズ・ミー」のシーンを見ると、独唱から徐々に伴奏が加わる演奏の盛り上がりを的確に再現する。刻まれるバスドラムが深くタイト。同じ部屋で「AV10」「AMP10」のペアを聞いたときと相似形の、厚みがある再現だと感じた。楽曲終盤のシンセベースのような“遊んだ”動きのあるベースラインも混濁しない。こうした解像力、S/Nのよさが高級機ならではの魅力だろう。

この日の最後には、普段とは趣向を変えて、22.2chで放送された「浮世の画家」の録画を「DMR-ZR1」でDolby Atmosに変換して再生するというデモンストレーションが行われた。いわゆる「ドンパチ」の類いの音響効果のある作品ではないが、主人公の独白の厚みが心地よく、周到に巡らされた環境音が細かく再現される。実際の部屋の広さ以上に空間の広さを感じさせる表現力が見事だ。いち放送番組がここまでのクオリティを達成していることに驚くし、それを余さず再生できる「CINEMA 40」はさすがの実力だ。

同じD&Mホールディングスが展開するデノンのAVアンプの現行ラインアップを含めて見渡すと、2023年モデルとしては「CINEMA 40」と同価格帯の製品が存在しない。HDMIの接続性やオーバーヘッド(トップ/ハイト)スピーカーの6本接続など、最新の機能性とできるだけの高音質を一体型AVアンプで求めるならば、「CINEMA 40」は間違いなく有力候補になるだろう。

また、3月中旬をめどに、「CINEMA 40」を含むD&MホールディングスのAVアンプ2023年モデルの大きなソフトウェアアップデートが控えているという。以前から告知されていたDirac Liveへの対応が含まれるかどうかは不明だが、この動きにも期待したい。

柿沼良輔(編集部)

柿沼良輔(編集部)

AVの専門誌を編集して10年超。「(デカさ以外は)映画館を上回る」を目標にスピーカー総数13本のホームシアターシステムを構築中です。映像と音の出る機械、人が一生懸命つくったモノに反応します。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
プレゼント
価格.comマガジン プレゼントマンデー
SPECIAL
ページトップへ戻る