テレビレス派も必見! ホームシアターの世界

業務用プロジェクターはコスパがよい? 家庭用ならではの魅力とは?

モバイル型や超短焦点型の登場で、Z世代にも注目のプロジェクター。前回は、学校やオフィスでの使用例を持ち出しながら、家庭でのスクリーン&プロジェクターを置くべき場所についてお話しました。

今回は、オフィスなどで使う「ビジネス(業務用)」プロジェクターと、「家庭用(ホーム)」プロジェクターの違いについてご説明しましょう。

価格.comでのプロジェクターのスペック検索画面では、「用途」に「ホーム(家庭用)」のほか「ビジネス(業務用)」「スクール(学校用)」という分類があります。ここでは家庭用プロジェクターを「ホーム(家庭用)」、業務用プロジェクターを「ビジネス(業務用)」「スクール(学校用)」と大きくとらえ、それぞれの特徴を解説します

価格.comでのプロジェクターのスペック検索画面では、「用途」に「ホーム(家庭用)」のほか「ビジネス(業務用)」「スクール(学校用)」という分類があります。ここでは家庭用プロジェクターを「ホーム(家庭用)」、業務用プロジェクターを「ビジネス(業務用)」「スクール(学校用)」と大きくとらえ、それぞれの特徴を解説します

同じメーカーから業務用と家庭用プロジェクターが発売されているけれど……

私も20年ほど前にホームシアターを始めたころは、業務用プロジェクターを使っていました。

銀座のソニープラザで見た「VPH-G90」というアナログ「3管式」業務用ブラウン管方式プロジェクターのハイビジョン映像の大迫力に驚嘆するも、自宅の8畳和室に設置するのはもちろん不可能。そのころ、家庭用液晶プロジェクターも登場しはじめたのですが、画面のコーナーに紫色の「色むら」が出るのが気になり何度も買い替えた挙げ句、ようやく白羽の矢を立てたのが、NECのDLP方式業務用プロジェクターでした。

当時の液晶方式プロジェクターでは見えなかった、映画の暗いシーンで何かがガサゴソ動いているのがわかったときは、何か見てはいけないものを覗き見ているような興奮を覚えたものです(今考えると、黒が浮いてしまっていてつらい映像でしょうが)。

そんなわけで、家庭用プロジェクターの選択肢がまだ少なかった当時は、「3管式」と呼ばれる業務用をプロに調整してもらって使うのが普通でしたし、たくさん生産されている業務用から選ぶというのはよくあることでした。

しかし今は、家庭用プロジェクターがたくさん発売されており、同じメーカーからも業務用プロジェクターが同じような値段で複数発売されています。

それでも、価格.comの人気売れ筋ランキングには多くの「ビジネス(業務用)」プロジェクターがランクインしていて、目移りしてしまいます。それでも、あえて「ホーム(家庭用)」プロジェクターを選ぶ意味はあるのでしょうか?

業務用プロジェクターは「用途」に応じた「機能」が優先される

「たくさん生産されているであろう業務用プロジェクターはコスパがよいはず」と勘ぐりがちですが、そうとも言い切れないように思います。特に同じメーカーの製品の場合、コストを割り振る優先順位が違うだけだと考えます。

オフィスや学校で使う業務用プロジェクターは、まず、目的別に分かれています。

●「ホールや明るい場所でも見られるようにしたい」なら優先して明るさ(lm/ルーメン)が求められます。やや大き目ですが、それでもサイネージ用でない限り家庭用と同等です。

家庭用、業務用ともに製品が豊富なエプソンを例に取ってみましょう。「EB-992F」は4000lmの明るさが特徴です。

●出張先のプレゼンや会議のときだけ出して使うなら、薄型・軽量。台形補正などが簡単にできる機構があります。「EB-1795F」などがその例です。

●黒板やホワイトボードのように人が前に立って使うなら、影を作りにくい超短焦点。壁掛け設置にも対応する「EB-725W」などが例です。

ちなみに、プロジェクターにおける“高画質”の要素としては、解像度や明るさといった数値化できる仕様とともに、実はレンズが大きな要素を担っています。小型軽量を目指すと、必然的に小口径プラスチックレンズとなります。安価なプラスチックレンズは、熱で膨らみやすく、使っているうちにフォーカスがボケてくる、なんてこともあります。

そのほか、業務用プロジェクターの一般的な特徴として豊富な入力端子があげられます。HDMI入力だけでなく、D-Sub(コンポーネント)やRCA(コンポジット)入力など最近はテレビでも省略されがちなアナログ端子を備えるものが多く、逆に、ワイヤレスでスマホの画面をミラーリングできるモデルは限られています。

「EB-FH52」はD-SubやRCAの映像入力を持っています。さらに無線LANに対応しているほか、スマホのミラーリングも可能な業務用プロジェクターです

「EB-FH52」はD-SubやRCAの映像入力を持っています。さらに無線LANに対応しているほか、スマホのミラーリングも可能な業務用プロジェクターです

家庭用プロジェクターで重視されるのは「画質」と「静粛性」

いっぽうの家庭用プロジェクターは、基本的に、画質を優先して作られます。

そのため、レンズは大型になります。上記のとおり、価格.comの「スペック情報」には表れない部分ですが、特に画質を重視した家庭用プロジェクターではここにコストが掛けられます。あわせて、内部の熱を排出するためのファンの音を低減する構造を工夫するため、本体は大型になりがちです。

ほかにも、高級家庭用プロジェクターの中には、映像の明るさを犠牲にしてでも色の再現性を重視する(カラーフィルターを使う)製品もあります。

また、家庭用プロジェクターの本体が大きくなる理由のひとつに、「光学式レンズシフト」があります。カメラで言うところの「シフトレンズ」を使ったあおり撮影のようなもので、映像の投写位置を縦横1.5倍ぐらいの幅で画質をさほど損ねることなくずらすことができます。すべての家庭用プロジェクターが持っているわけではありませんが、実利をとりつつ、画質へのダメージを最小にできるとても便利な機能です。

中央の四角がシフトなしの映像の位置とした場合の、垂直(上下)方向96%、水平(左右)方向47%の「光学レンズシフト」イメージ。プロジェクターを動かすことなくおおよそグレーの位置に投写が可能となる、とても便利な機能です

中央の四角がシフトなしの映像の位置とした場合の、垂直(上下)方向96%、水平(左右)方向47%の「光学レンズシフト」イメージ。プロジェクターを動かすことなくおおよそグレーの位置に投写が可能となる、とても便利な機能です

モバイルタイプの業務用プロジェクターでは、プレゼン準備の時間を節約することを優先します。そのため、置いてすぐ投写できるように、デジタルで映像を補正するほか、ものによっては自動で「台形補正」やフォーカス合わせまでしてくれる機能も持っています。デジタルでの補正はせっかくの画素をむだにして解像度を下げてしまうので、画質の面では好ましくありません。

最近では家庭用プロジェクターが同じ機能を持っていることもあります。ただし、上記のとおり画質を考えれば必ずしも好ましくありません。この点には注意しましょう。

「光学レンズシフト」(左)と「台形補正(デジタルシフト)」(右)の最終的な違いは、画素がむだになるかどうか。「台形補正」を行うと、映像はまっすぐに補正されますが、表示素子の画素の内側だけを使って表示するため、解像度が落ちてしまうのです

「光学レンズシフト」(左)と「台形補正(デジタルシフト)」(右)の最終的な違いは、画素がむだになるかどうか。「台形補正」を行うと、映像はまっすぐに補正されますが、表示素子の画素の内側だけを使って表示するため、解像度が落ちてしまうのです

また、ホームプロジェクターでは映画用の「シネマ」、音楽ライブ用の「ライブ」、照明を残した環境でも使えるように明るさや見栄えを優先する「あざやか」、通常のテレビ視聴に適した「スタンダード」など、メーカーやモデルによっては業務用よりもたくさんの映像モードを用意しています。業務用プロジェクターでは、色の正しさよりも、見やすさ・明るさを優先することが多く、その結果、緑が強く出る場合もあります。

ソニーの家庭用高級プロジェクター「VPL-XW7000」のいわゆる映像モード。趣味用の製品とあって、映画視聴に最適化された映像モードも「シネマフィルム1」「シネマフィルム2」という2つの画質の異なるモードを持っています

ソニーの家庭用高級プロジェクター「VPL-XW7000」のいわゆる映像モード。趣味用の製品とあって、映画視聴に最適化された映像モードも「シネマフィルム1」「シネマフィルム2」という2つの画質の異なるモードを持っています

ちなみに「ゲーム」は、FPSゲームなどで相手に撃たれる前に撃つ! モード。製品によりますが、さまざまな映像処理回路をパスして映像の応答速度を重視するモードです。もちろん、格闘やレースなど、シビアなタイミングでの操作が求められるゲームで有効です。

自宅で使うなら、基本的には家庭用プロジェクターを選びたい

以上のように、業務用・家庭用プロジェクターともにコストの投下場所が異なります。家庭用製品の場合はそれがスペック情報として表れづらいのですが、「家庭用プロジェクターはコスパが悪い」ということは断じてありません。近時注目の4Kプロジェクターは家庭用プロジェクター中心で、オフィス向け業務用プロジェクターの大半はせいぜい2K(フルHD/1,920×1,080画素)、主流はWXGA(1,280×800画素)というところです。元々がPCの画面を大写しにして見やすくするためのものなので、当然と言えば当然です。

もっとも、業務用プロジェクターではホームシアターが楽しめないわけでもありません。日中は仕事で使いながら、夜は映画を楽しむのだって、立派な「ホームシアター」だと思います。

解像度の違いを面積で表すとこのようになります。Amazonプライム・ビデオやNetflixでは4Kの映像作品が配信されていますから、それらを100%楽しみたいと考えるならば、4K表示が可能なプロジェクターを選びたいところです

解像度の違いを面積で表すとこのようになります。Amazonプライム・ビデオやNetflixでは4Kの映像作品が配信されていますから、それらを100%楽しみたいと考えるならば、4K表示が可能なプロジェクターを選びたいところです

遠藤義人

遠藤義人

ホームシアターのある暮らしをコンサルティングする「fy7d」代表。ホームシアターの専門誌「ホームシアター/Foyer(ホワイエ)」の編集長を経て独立、現在はインテリアとの調和を考えたシステムプランニングも行う。

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