レビュー

レトロな見た目なのに機能は最新なORIONのラジカセ「SCR-B7」で懐かしのカセットテープを楽しむ

ラジカセにノスタルジーを感じ、もう一度手に入れたいけれど、保証期限の切れた当時の個体を自力で直すのは面倒だし、機能的にも不便だし…と考えている人や、部屋のインテリアに80年代の雰囲気を演出したい、という人にとってはベストな存在となってくれそうなのが、ドウシシャが展開するORION AUDIOブランドのラジカセ「SCR-B7」だ。

80年代に流行したフルサイズラジカセを彷彿とさせるレトロな見た目が特徴的な「SCR-B7」。<a href="https://www.doshisha-marche.jp/c/appliances/AL009/4550454987892" target="_blank" rel="noopener

80年代に流行したフルサイズラジカセを彷彿とさせるレトロな見た目が特徴的な「SCR-B7」。同社直販サイトでの価格は21,780円(税込)

というのも、こちらの製品、企画担当者がかなりのこだわりを持って製品作りを行ったようで、オレンジ色に照らし出されるUVメーターやイコライザー的な表示のインプットレベルメーター、大きなダイヤルによって調整するラジオチューナー、大型ウーハーを搭載した2ウェススピーカー、操作ボタンのデザインなど、リアル世代にも十分納得のいく外観に仕上げられているからだ。

唯一、スイッチ類などの細かな意匠が“ゴールド”となっているのが時代性というか当時の王道に反しているようにも思うが、これは弟モデル「SCR-B5」との差別化の意味合いが大きいのだろうし、実際には“最新のラジカセ”として悪くない演出だと思える。

ラジオチューナーや電源をオンにするとオレンジ色に照らし出されるVUメーターなど、マニア心をくすぐる意匠がたまらない

ラジオチューナーや電源をオンにするとオレンジ色に照らし出されるVUメーターなど、マニア心をくすぐる意匠がたまらない

12.5cmウーハー+3cmコーンツイーターを採用した2ウェイスピーカー構成を採用。低音を増幅する「BASS BOOST」機能も用意されている

12.5cmウーハー+3cmコーンツイーターを採用した2ウェイスピーカー構成を採用。低音を増幅する「BASS BOOST」機能も用意されている

スイッチ類は光沢感のあるゴールド仕様。シルバー系のカラーが多かった当時のラジカセを知る人だと、ちょっとだけ違和感を覚えるかもしれない

スイッチ類は光沢感のあるゴールド仕様。シルバー系のカラーが多かった当時のラジカセを知る人だと、ちょっとだけ違和感を覚えるかもしれない

いっぽうで、見た目は昭和レトロそのものだが、Bluetooth対応、USBメモリーやmicro SDメモリーカードからのデジタル音源再生が可能なことなど、中身は最新モデルならではの利便性を有している。Bluetoothでは、スマートフォンと簡単に接続してストリーミング配信などを楽しめるだけでなく、オーディオテクニカの「サウンドバーガーAT-SB2022」など、Bluetooth対応のレコードプレーヤーを組み合わせ、アナログレコードを手軽に楽しむといったこともできる。

メモリー再生も、FLAC形式の192kHz/24bit音源なども、たぶんダウンコンバートされていると思うがしっかり再生してくれる(メーカーの仕様ではMP3のみの対応となっていたので実際に試してみたところ192kHz/24bitのFLAC形式の音源は問題なく再生されたがWAVやDSD音源はダメだった)。サポート外となってしまうが、ひと昔前の無印ラジカセのようなMP3しか再生できないというわけではなく、いま流通する音源は幅広く再生できそう。少なくともBluetoothスピーカーとしては十分に活躍してくれそうだ。

本体右側面にUSB端子(Type-A)とmicroSDメモリーカードスロットを用意。各メディアに保存されている音源を手軽に再生できる

本体右側面にUSB端子(Type-A)とmicroSDメモリーカードスロットを用意。各メディアに保存されている音源を手軽に再生できる

とはいえ、いちばんの魅力はやはり“ラジカセ”であることだろう。チューナー部はFMとAMに対応、そのうちFMはワイドバンド(FM波でAM放送が楽しめるFM補完放送)の受信が可能となっているので、ラジオをBGM代わりに聴いている人とも相性がよさそうだ。

最近はあまり見かける機会が減ったラジオ受信用のロットアンテナは本体背面上部に搭載

最近はあまり見かける機会が減ったラジオ受信用のロットアンテナは本体背面上部に搭載

そして、注目のカセット部分は、2ヘッド式のステレオカセットメカを採用していて、再生と録音が可能となっている。また、カセットテープのテープが最後まで到達したとき、自動的に再生を止めてくれる「フルオートストップメカ機能」も搭載。テープを傷めることなく再生や録音が可能となっている。

カセットテープについては、録音機能も注目したい。カセットテープへはラジオやUSBメモリー、microSDメモリーカードからはもちろん、Bluetooth接続や有線の外部入力、内蔵マイクなどからも録音することができる。そうそう、昔はテレビにラジカセを近づけて録音したこともあった。いやはや、懐かしい。いっぽう、USBメモリーやmicroSDメモリーカードへは、ラジオやカセット、外部入力、そして内蔵マイクの音声がMP3フォーマットで録音できる。カセットテープのデジタル音源化や、外部入力を使ってのレコード録音など、いろいろなことに活用できる柔軟な録音対応になっているのはうれしいかぎりだ。

2ヘッド式のステレオカセットメカを採用。カセット音源の再生はもちろん、ラジオやUSBメモリー、microSDメモリーカード、Bluetooth接続や有線の外部入力、内蔵マイクなどから録音することも可能だ

2ヘッド式のステレオカセットメカを採用。カセット音源の再生はもちろん、ラジオやUSBメモリー、microSDメモリーカード、Bluetooth接続や有線の外部入力、内蔵マイクなどから録音することも可能だ

せっかくなので屋外にも持ち出して試聴。味わいのあるサウンドが魅力的

「BASS BOOST」機能付き、12.5cmウーハー+3cmコーンツイーターによる2ウェイシステムはいかなるサウンドを聴かせてくれるのか。ラジカセといえばやはり公園や海岸でしょ!ということで「SCR-B7」を屋外に持ち出し、試聴を行ってみることにした。

ラジカセといえばやっぱり外でしょ! ということで、屋外に持ち出していろいろと試聴してみた

ラジカセといえばやっぱり外でしょ! ということで、屋外に持ち出していろいろと試聴してみた

その際、ちょっと残念に思ったのが「SCR-B7」のポータブル再生に単1アルカリ乾電池が6本必要なこと。ラジカセなのだから乾電池利用はごく普通だが、家電量販店で探したところ6本セットで1200〜1300円ほど、100円ショップでも1本100円なので6本だと600円+税のコストがかかる。それでいて、20時間ほどしか再生できない(カセットテープやメモリー再生の場合)。当時としては当たり前だが、エコを重視したいいまどきの世の中にはちょっと合わない気もする。実際に屋外で使用する際はポータブル電源などを活用するのがよさそうだが、別売で(乾電池内蔵部分などを利用して一体感のある)バッテリーなどが登場してくれることにも期待したい。

ポータブル再生には単1アルカリ乾電池が6本必要。電源を確保できない屋外に積極的に持ち出して使う場合はそれなりにランニングコストがかかる点は注意したい

ポータブル再生には単1アルカリ乾電池が6本必要。電源を確保できない屋外に積極的に持ち出して使う場合はそれなりにランニングコストがかかる点は注意したい

ということで、最寄りの公園に「SCR-B7」を持ち込み、サウンドをチェックしてみた。もちろん、音源としてカセットテープを用意した。とはいえ、古いカセットテープだと絡まったり磁性体の剥離などによって最悪機材を壊してしまう恐れがあるため、今回は手元にあるものの中で比較的新しいカセットテープ作品、プリンス「BATDANCE」と河内美里「羽がくれた未来」の2つを使用した。

プリンスは時代的にデジタルマスターからカセットテープ化されたものだろうし、河内美里は行程を知っているのでデジタルマスターなのは明らかで、本当の意味でのカセット時代そのものの作品ではないが、それでもいい意味でアナログライクな音が魅力的に感じられた。ダイレクト感の低い音ではあるのだが、全体のなじみがよく、一体感のあるサウンドとなってくれている。言い換えると、すべての音は届かないがボーカルやリズムパートなど重要な聴かせどころが普段より強調されている、といったイメージか。音楽の表現として、これはこれで悪くない。今回、諸事情(手元になかったり死蔵していてトラブルになりそう)により多くのジャンルは聴けなかったが、アップテンポのポップスやハードロックなどとは相性がよさそうだ。

そして、余興といえる内容ながらポータブル・アナログレコードプレーヤー「サウンドバーガーAT-SB2022」をBluetooth接続して試聴してみた。プレーヤー側の最大音量がそれほど大きくできなかったものの、まずまずの音量が確保でき、いい雰囲気のサウンドが聴けた。アース、ウインド&ファイアもスティングも、あまり良好なS/Nとはいえなかったが、明瞭で自然な歌声がなんとも好ましい。ワイヤレスの前後でデジタル変換が入っているにも関わらず、とても耳ざわりのよい、アナログ然としたサウンドを楽しませてくれた。こういった組み合わせで活用するのも楽しそうだ。

オーディオテクニカのポータブル・アナログレコードプレーヤー「サウンドバーガーAT-SB2022」と組み合わせれば、屋外でもアナログレコードを楽しめる

オーディオテクニカのポータブル・アナログレコードプレーヤー「サウンドバーガーAT-SB2022」と組み合わせれば、屋外でもアナログレコードを楽しめる

ただし、屋外ではやや低域の量感に不足を感じたのも確かだ。音量的には十分な大きさにはなるが、あまり上げ過ぎると歪み感が目立ってしまう。ボリュームは2/3あたりが上限だろうか。それでも室内では十分以上の音量を確保できるので、常に屋外で使用するのでなければ、それほど不満には思わないだろう。逆に、屋外向けのパーティスピーカーを得意とするJBLやBoseのノウハウを改めて実感させられた次第だ。

ちなみに、そんな状況での利用時に「BASS BOOST」機能が大変重宝した。こちらをオンにすることで、屋外など騒音レベルの高い環境では不足しがちな低域を増強、バランスのよいサウンドを聴かせてくれるようになる。本来は迫力を増すための設定なのだろうが、屋外で使用する際には必須といえる機能になっていた。

低音を増幅する「BASS BOOST」機能は本体天面のスイッチからオン/オフできる

低音を増幅する「BASS BOOST」機能は本体天面のスイッチからオン/オフできる

最後に室内でも試聴を行ってみた。音質についてはこちらでのテストがいちばんわかりやすかったかもしれない。屋外で感じた“聴かせどころをわきまえたサウンド”という印象は変わらず、カセットテープはややウォーミーながら聴き心地のよい歌声を聴かせてくれた。microSDメモリーカードからの再生では、思った以上にS/N感が確保されていることも実感できた。Bluetoothスピーカーとしても悪くない出来映え。とはいえ、外観を裏切ることなく、良音質というよりも良表現という表現が似合いそうな、味のあるサウンドだった。

まとめ

ダブルカセットでなくオートリバース機能もない、ラジカセ黄金期を知る世代にとっては多少不満を憶える機能性かもしれないが、いっぽうで、ここまで“当時らしさ”にこだわった製品はほとんど存在していない。この姿を見て“ラジカセ懐かしい!”“80年代デザインが欲しかった!”と思う人は、ぜひ一度手に触れてみてほしい。青春時代に流行った懐かしの楽曲をかけ、当時を思い出しながらエモーショナルな気分に浸ってみるのも一興だ。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどのオーディオビジュアル系をメインに活躍するライター。TBSテレビ開運音楽堂にアドバイザーとして、レインボータウンFM「みケらじ!」にメインパーソナリティとしてレギュラー出演。音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員も務める。

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