ソニーは2023年4月10日、4K有機EL・4K液晶ブラビア(BRAVIA)の2023年モデルを発表した。2023年モデルの概要を簡単に説明すると、Google TVプラットフォームなどの既存のブラビアの特徴を継承しつつ、4K有機ELテレビは最も手ごろな「A80L」シリーズが登場したこと、4K液晶ブラビアはMini LED搭載の「X95L」シリーズ以下の完成度アップが注目ポイントだ。ちなみに、一部画面サイズは2022年モデルが継続販売される。
継続モデルを除く2023年モデルのラインアップは下記のとおり。なお、最新モデルの型番ルールは末尾のアルファベットが“L”となっている。
■A80Lシリーズ
XRJ-77A80L(77V型、5月20日発売、市場想定価格847,000円前後)
XRJ-65A80L(65V型、4月22日発売、市場想定価格506,000円前後)
XRJ-55A80L(55V型、4月22日発売、市場想定価格396,000円前後)
■X95Lシリーズ
XRJ-85X95L(85V型、5月20日発売、市場想定価格990,000円前後)
XRJ-75X95L(75V型、5月20日発売、市場想定価格715,000円前後)
XRJ-65X95L(65V型、5月20日発売、市場想定価格473,000円前後)
■X90Lシリーズ
XRJ-85X90L(85V型、5月27日発売、市場想定価格605,000円前後)
XRJ-75X90L(75V型、5月20日発売、市場想定価格440,000円前後)
XRJ-65X90L(65V型、5月20日発売、市場想定価格352,000円前後)
■X85Lシリーズ
KJ-65X85L(65V型、5月27日発売、市場想定価格275,000円前後)
KJ-55X85L(55V型、6月10日発売、市場想定価格215,000円前後)
■X80Lシリーズ
KJ-85X80L(85V型、6月10日発売、市場想定価格418,000円前後)
KJ-75X80L(75V型、6月10日発売、市場想定価格308,000円前後)
KJ-65X80L(65V型、4月22日発売、市場想定価格242,000円前後)
KJ-55X80L(55V型、4月22日発売、市場想定価格187,000円前後)
KJ-50X80L(50V型、4月22日発売、市場想定価格165,000円前後)
KJ-43X80L(43V型、4月22日発売、市場想定価格154,000円前後)
■X75WLシリーズ
KJ-75X75WL(75V型、7月15日発売、市場想定価格242,000円前後)
KJ-65X75WL(65V型、7月15日発売、市場想定価格187,000円前後)
KJ-55X75WL(55V型、7月15日発売、市場想定価格149,000円前後)
KJ-50X75WL(50V型、7月15日発売、市場想定価格138,000円前後)
KJ-43X75WL(43V型、7月15日発売、市場想定価格127,000円前後)
4K有機EL・4K液晶ブラビア2023年モデルの注目ポイントのひとつは、認知特性プロセッサー「XR」の進化。同社が2021年から展開するハイグレードライン「BRAVIA XR」に搭載されているエンジンだが、2023年モデルには最新のソフトウェアを組み合わせて第3世代へと進化を遂げている。
具体的には、「XR Clear Image」と呼ばれる新機能を搭載。大画面で目立つ放送波のノイズや動きブレを抑制、精細感を向上させることでくっきりと見やすい映像を実現できるようになったという。
2023年モデルの「BRAVIA XR」に搭載される認知特性プロセッサー「XR」。第3世代モデルとなり、「XR Clear Image」が新たに盛り込まれた
「XR Clear Image」の概要。放送波のノイズや動きブレを抑制し、くっきりと見やすい映像を楽しめるという
また、独自のコンテンツ配信サービス「BRAVIA CORE」の対応機器が拡大したのも見逃せない。以前は認知特性プロセッサー「XR」を搭載した製品でのみ利用可能だったが、2023年モデルでは、認知特性プロセッサー「XR」を搭載しない「X85L」「X80L」シリーズまで「BRAVIA CORE」の展開を拡大している。なお、認知特性プロセッサー「XR」を搭載するハイグレードラインの「BRAVIA XR」では、レンタル購入に用いる配布クレジットが10で有効期限が24か月、認知特性プロセッサー「XR」の非搭載モデルは配布クレジットが5で有効期限が12か月という違いがある。
独自のコンテンツ配信サービス「BRAVIA CORE」の対応機器が拡大。2023年モデルは、最エントリーモデルの「X75WL」シリーズ以外の全てのモデルで利用可能となった
このほか、ゲーム関連の機能を集約した「ゲームメニュー」を新搭載したのもポイント。画面サイズよりも小さくゲームを表示できる機能(後日ファームウェアアップデートで対応予定)、クロスヘア表示機能、ブラックイコライザー、VRRといったゲーム関連のアシスト機能を新メニューからすべてコントロールでき、ゲームプレイでの扱いやすさを高めている。
ゲーム関連の機能を集約した「ゲームメニュー」。2023年モデル全機種に搭載されている
付属リモコンもアップデートされ、ネット動画サービスのダイレクトボタンが2022年モデルから変更。ディズニー公式動画配信サービス「Disney+」が新たに追加された
4K有機ELブラビアは、「QD-OLED」を搭載した最上位モデルの「A95K」シリーズと、48/42V型の小型モデルをカバーする「A90K」シリーズが2022年モデルから継続となり、今回新たに追加される唯一の新モデルがエントリークラスの「A80L」シリーズだ。2022年モデルの「A80K」シリーズを置き換えるモデルで、画面サイズは77/65/55V型の3サイズをラインアップする。
4K有機ELブラビア「A80L」シリーズ
「A80L」シリーズの画質面でのアップデートは、「XR Clear Image」によるノイズ低減の機能がメイン。2022年モデルの「A80K」シリーズから「XR OLED Contrast Pro」など上位モデルの高コントラスト技術が投入されていたこともあり、カタログスペックの差分は小さい。
いっぽう、「A80L」シリーズを2022年モデルの「A80K」シリーズと見比べると、「XR Clear Image」による精細感アップのほかに、輝度感もアップしていることに気づいた。担当者によると、「パネルのポテンシャルは変わっていないが、『BRAVIA XR』の技術によってピーク輝度が最大10%アップしている。特にダイナミックモードは店頭も意識し、明るく感じる色合いに変えている」とのこと。「XR Clear Image」だけでなく、それ以外のチューニングも含めて総合的な画質がアップしていると考えてよさそうだ。
左が2023年モデルの「A80L」シリーズ、右が2022年モデルの「A80K」シリーズ。画面全体の輝度や精細感がたかまっていることがおわかりいただけるだろう
スピーカーシステムは、画面を振動させて音を鳴らす「Acoustic Surface Audio+」を引き続き採用。3基のアクチュエーター、2基のサブウーハーを搭載した3.2ch仕様で、実用最大出力は77V型が60W、65/55V型が50Wとなっている。
2023年の4K液晶ブラビアの最上位モデルとなるのが「X95L」シリーズ。Mini LEDバックライトを搭載した2022年モデルの「X95K」シリーズを置き換えるモデルで、「X95K」シリーズ同様、画面サイズは引き続き85/75/65V型の大画面サイズのみの展開となっている。なお、本機は「X95K」シリーズから継承する機能として、広視野角技術「X-Wide Angle」を搭載しているところもポイントだ。
4K液晶ブラビア「X95K」シリーズ
「X95L」シリーズの最大サイズとなる85V型の「XRJ-85X95L」
2023年モデルの「X95L」シリーズの最大の特徴は、なんといっても画質の大幅な向上だろう。最新世代の認知特性プロセッサー「XR」に実装された「XR Clear Image」による精細感アップだけでなく、認知特性プロセッサー「XR」を使った映像分析の進化により、「X95K」シリーズと比べて輝度とローカルディミングの分割数がアップ。パネルやMini LEDバックライトのハードウェアを変えず、認知特性プロセッサー「XR」の制御で画質アップを図ったということだ。
ソニーの液晶テレビには、暗部の電流を明部に集中させ明るさを高める機能の効果の高さと、その精度を表す独自指標「XR Contrast Booster」というものがあるが、2023年モデルの「X95L」シリーズではこの倍率が「X95K」シリーズの15から20と、トップクラスの数値にまで引き上げられている。20というのは、8K液晶ブラビア「Z9K」シリーズと同等の倍率だ。
実際に「X95L」シリーズを2022年モデル「X95K」シリーズと見比べてみたが、画面全体の明るい輝度感はもちろん、夜景映像などでは黒色の締りがさらによくなり、コントラスト性能が大きく向上していることを確認できた。
ほぼ全暗の状態で打ち上げ花火の映像を映し出したところ。左gaの「X95K」シリーズでは打ち上げ花火の周囲にハロー(漏れ光)が出ているのを確認できるが、右の「X95L」シリーズではハローがほとんど出ていない
また、「X95L」シリーズは、スピーカーシステムに「Acoustic Multi-Audio+」と呼ばれる新設計のものが導入され、音質面も大きく強化されている。2022年モデルの「X95K」シリーズでも、画面背面の上部左右に独自の「サウンドポジショニングトゥイーター」を搭載し、画面内の音定位確保と音の広がりを強化していたが、「X95L」シリーズに導入された「Acoustic Multi-Audio+」では、フレーム(サイドのベゼル)自体を裏から叩いて音を出す新構造の「フレームツイーター」となった。外見上はほぼ開口部がない構造だが、音が画面裏から回り込まずに直接前面に向かって広がるため、音の広がり感がさらに向上している。
フレームの内側から叩いて音を出す新構造「フレームツイーター」を導入。音の広がり感がさらに向上している
85/75/65V型という大画面サイズのみの展開のため、導入する際にある程度のスペース確保は必要だが、「X95L」シリーズはMini LEDと独自のスピーカーシステムによるハイクオリティな画音質で勝負を仕掛ける、ハイエンド4K液晶テレビの注目モデルになりそうだ。
4K液晶ブラビアのハイミドルモデルが「X90L」シリーズ。認知特性プロセッサー「XR」搭載のハイエンドよりの4K液晶テレビではあるが、最上位と比べるとバックライトは通常の直下型LEDバックライトで、コントラスト性能も「XR Contrast Booster」が10、広視野角技術「X-Wide Angle」も搭載しないなど、Mini LEDを搭載した「X95L」シリーズとはしっかりと差別化が図られている。2022年モデルの「X90K」シリーズからのアップデートは、「XR Clear Image」による画質向上がメイン。サウンドは「Acoustic Multi-Audio」で、スピーカーは2ch 30W仕様だ。
なお、「X90L」シリーズでは画面サイズが85/75/65V型と大型にシフトしており、55/50V型のハイミドルクラスとしては、2022年モデルの「X90K」シリーズが継続する形となっている。
4K液晶ブラビア「X90L」シリーズ
左が2021年モデルの「X95J」シリーズ、右が2023年モデルの「X90L」シリーズ。「X90L」シリーズでは、ふくろうの羽に反射する光の輝度感がしっかりとでていることがわかる
※2023年4月11日7時 訂正:初出時、画像の掲載位置と型番が間違っておりました。訂正しお詫びいたします
4K液晶ブラビアのスタンダードモデルが「X85L」シリーズだ。エンジンは「HDR X1」だが、倍速液晶パネル搭載で、VRR、ALLMなども揃うため、他社ではミドルクラスに相当する。2022年モデルの「X85K」シリーズにはなかった直下型LED部分駆動「X-Tended Dynamic Range」と残像低減機能「X-Motion Clarity」に対応したため、画質面での性能アップが図られている。スピーカーは2chで20W仕様。なお、2023年モデルの「X85L」シリーズは65/55V型の2サイズ展開で、50/43V型は2022年モデル「X85K」シリーズが継続する形となる。
4K液晶ブラビア「X85L」シリーズ
「X85L」シリーズよりもさらに下のエントリーモデル「X80L」シリーズは、85/75/65/55/50/43V型と全6サイズで展開。エンジンは「HDR X1」で、液晶は等速パネルを搭載。スピーカーは2chで20W仕様だ。なお、本シリーズまでが「BRAVIA CORE」の対応モデルとなっている。
4K液晶ブラビア「X80L」シリーズ
「X80L」シリーズよりもさらに安価なエントリー向けの4K液晶テレビとして「X75WL」シリーズも登場する。75/65/55/50/43V型と全5機種と幅広い画面サイズを展開する。エンジンは「HDR X1」よりもさらに1世代前の「X1」で、液晶は等速パネルだ。「BRAVIA CORE」対応こそないが、Google TVプラットフォームや新機能「ゲームメニュー」など、上位モデルとそん色ない機能性は魅力的。ブラビアのエントリー価格帯をさらに拡大するラインアップとして要注目のモデルと言えそうだ。
4K液晶ブラビア「X75WL」シリーズ
PC系版元の編集職を経て2004年に独立。モノ雑誌やオーディオ・ビジュアルの専門誌をメインフィールドとし、4K・HDRのビジュアルとハイレゾ・ヘッドフォンのオーディオ全般を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。