サブスクリプションによるネット動画のストリーミングサービスの普及により、いつでもどこでも簡単に質の高い映像作品に触れられるようになりました。しかし、じっくりと映像作品を鑑賞するならば画面の大きなテレビを利用したいものです。
そこで合わせて考えたいのは、テレビの音質。せっかく同じ時間をかけて映画などを見るならば、よい音で聞けば作品への没入度や感動の大きさまで変わってきます。
今回はテレビの音を簡単に、劇的によくするための3つの方法を紹介します。詳細はぜひ動画をご覧ください。
家電販売店などでも大人気のサウンドバーは最も手軽にテレビの音質を改善できるアイテムです。
現在発売されている多くの製品は、テレビのHDMI端子から音声データを受け取れるARC対応HDMI端子を持っています。テレビ側のARC対応HDMI端子とHDMIケーブル1本でつなぐだけで、テレビからの音を受け取って出力でき、手軽に音質アップが狙えます。図のようなシンプルなバータイプのほかにも、サブウーハーが同梱されている製品や、オプションでリアルサラウンドスピーカーを増設できる製品もあります。それに応じて価格も1万円前後から10万円を超える高級品まで発売されています。
テレビとの接続は、基本的にはHDMIケーブルをつなぐだけ。写真のように「ARC」という記載のあるHDMI端子と、テレビ側のHDMI端子(こちらにも「ARC」の記載があります)を接続します(写真はヤマハ「SR-B20A」)
接続方法はシンプルですが、テレビ側の設定が必要なこともあります。「HDMI連動」や「ARC」の設定は必ずオン。詳細がわからない場合はメーカーや製品の取り扱い説明書を参照しましょう
シンプルなワンバータイプのサウンドバーは価格.comでも人気です。置き場所に悩まないコンパクトさも手軽に選べる理由のひとつ
サブウーハーが付属する製品は低音の再生に有利。「DHT-S517」のサブウーハーはワイヤレスで接続するため、設置のしやすさも確保されています。さらに「DHT-S517」は上方向に音を放射する「イネーブルドスピーカー」を搭載しているので、テレビに加えるだけで3次元的な立体音場を再生できるのです
動画でも紹介したサラウンド(リア)スピーカーが着脱可能なサウンドバー「BAR 1000」。高価ではありますが、かなり本格的なサラウンド再生をできるパッケージシステムとして注目されています
JBL「BAR 1000」のように始めからサラウンド(リア)スピーカーを付属するのではなく、別売のワイヤレススピーカーを増設できるように販売されている製品もあります。ソニー「HT-A3000」では、サラウンドスピーカー「SA-RS5」、サブウーハー「SA-SW5」を組み合わせて、より本格的なシステムへグレードアップも可能です
サウンドバーよりも少し本格的なのはアクティブスピーカーを使う方法です。スピーカーを鳴らすためには必ずアンプが必要ですが、アンプを内蔵したスピーカーをアクティブスピーカー、アンプを内蔵していないスピーカーをパッシブスピーカーと区別して呼ぶことがあります。
テレビの脇に2つスピーカーを置くと、左右の広がりや奥行き方向の再現性(ステレオイメージの再現性)が高まることで、より臨場感のある再生を期待できます。
一口にアクティブスピーカーと言っても、製品の形はさまざまです。音声の入力端子も製品によりますので、パターン別に代表例を見ていきましょう。
アクティブスピーカーの裏側には、アンプを駆動するための電源用の端子や音声入力用の端子があります(写真はAIRPULSEの「A80」)
いっぽうのパッシブスピーカーの裏側は、アンプと接続するためのスピーカー端子があるだけ(写真はPolk Audioの「Polk Signature Elite ES15」)
現在のテレビのほとんどは、専用のアナログ音声出力を持っていません。そこで利用したいのがヘッドホン出力です。アクティブスピーカーとの接続に必要なのはケーブル1本だけ。電源はオートスタンバイ(音声信号が入ると自動でスイッチが入る形)が一般的です
アクティブスピーカーとテレビをつなぐ方法で最も一般的で簡単なのは、テレビのヘッドホン出力とアクティブスピーカーのアナログ音声入力を接続する形です。
アクティブスピーカーは製品によってさまざまな端子を持っていますが、RCAと呼ばれる(多くは赤白の)端子を持っていることが多く、その場合は変換ケーブルを使えばテレビのヘッドホン出力と直接接続できます。
テレビで音量調整をできるので利便性はそのままですが、あくまでオーディオ機器ではないテレビで音量調整を行うので、音質的には不利なシステムではあります。
テレビのヘッドホン出力は一般的なイヤホン/ヘッドホンを挿せる3.5mmステレオミニ。アクティブスピーカーにRCAと呼ばれる端子がある場合は、3.5mmステレオミニ/RCA変換ケーブルを使います。製品によってはL/Rスピーカーそれぞれに入力端子が分かれている場合もあります。製品に合ったケーブルを選びましょう
「G One」は、業務用モニタースピーカーの定番であるGENELEC(ジェネレック)の家庭用製品。なお、「G One」はL/Rスピーカーそれぞれに電源とRCA端子を持っています
HDMI端子を持ったアクティブスピーカーを使うならば、接続方法はサウンドバーとほぼ同じ。L/RどちらかのスピーカーとテレビとをHDMIケーブル1本でつなぐだけです。L/Rスピーカーの間はスピーカーケーブルやワイヤレスで接続する製品もあります
アクティブスピーカーのデジタル系の音声入力を使う方法もあり、アナログ音声入力を使うよりも音質的には有利です。その中で特に注目したいのが、サウンドバーと同じようにARC対応のHDMI端子を持った製品です。
HDMI端子を持ったアクティブスピーカーとテレビを使うと、(CEC連携に対応していれば)電源が連動するうえ、音量もテレビのリモコンで操作できます。つまり、操作感もサウンドバーとまったく同じ。それでいてより本格的なオーディオ再生を期待できるのです。
HDMIケーブルの接続時には端子に「ARC」の記載があることを確認しましょう。右の写真はELAC「Debut ConneX DCB41」。スピーカー間はスピーカーケーブルで接続します
ARC対応のHDMI端子を持ったアクティブスピーカーは、製品数が少ないことがネックです。ELAC(エラック)の「Debut ConneX DCB41」は10万円以下で購入できる価格も魅力です。このほかには、高価になりますがKEFの「LSX II」などの製品もあります
接続方法はシンプル。ただし、テレビに光デジタル出力がない場合もあります。この方法を検討する場合は、まずテレビの仕様を確認しましょう
アクティブスピーカーの光デジタル入力(TOS LINK/トスリンク)を使う方法は、HDMI接続よりも一般的です。やはりアナログ入力を使う方法よりも音質的に有利ですが、音量調整の方法がアクティブスピーカーにゆだねられるため、使用時にはテレビのリモコンと(付属する場合は)スピーカーの音量調整用リモコンを2つ同時に使う必要があります。
光デジタル音声の入出力端子は写真のような四角いコネクターが一般的です。「OPT」(opticalの略)と表記されることもあります
AIRPULSE(エアパルス)の「A80」はアナログ音声入力だけでなく、各種のデジタル音声入力も備えています。USB Type-B端子とPCをつないでハイレゾファイルを再生できるほか、上記のように光デジタル入力を使えば、テレビとの連携もできるのです
ARC対応HDMI端子を持ったプリメインアンプ/AVアンプとテレビを接続するならば、必要なのはやはりHDMIケーブル1本だけ。プリメインアンプ/AVアンプはとスピーカーの間はスピーカーケーブルで接続します
そして、最後に紹介するのがパッシブスピーカーを使う方法です。アンプを内蔵していないスピーカーを使うので、プリメインアンプやAVアンプを購入して接続する必要があります。ここがデメリットであるとも言えるのですが、スピーカーやプリメインアンプの選択肢がとても広いことが特徴で、それこそが楽しみと思える人にこそ試してほしい方法です。
接続方法は、AVアンプならばサウンドバーと同じくテレビとHDMIケーブルを1本つなぐだけ。最新のAVアンプを選ぶならば、基本的にはすべての製品がARC対応のHDMI端子を持っているからです。サラウンドスピーカーを使わない、という人も選択の対象にしてみるとよいでしょう。
プリメインアンプはアクティブスピーカーと同じように製品によってさまざまな接続方法が考えられます。最近ではARC対応のHDMI端子を持ったプリメインアンプが増えてきているので、テレビの音質改善を図るならばぜひHDMI端子付きの製品を選びましょう。
繰り返しになりますが、HDMI端子同士を接続する際は「ARC」の表記があることを確認しましょう。HDMIの「ARC」機能を使うこの方法が、テレビの音質改善のスタンダードと言えます
一般的にスピーカーと言えばパッシブスピーカーを示すことが多く、それほど選択肢が広がるのがパッシブスピーカーを使うことを選ぶメリットでもあります。写真はPolk Audio(ポークオーディオ)の「Signature Elite ES15」。Polk Audioは安くとも本格的なオーディオ製品のクオリティを提供してくれるブランドとして人気を博しています
ARC対応のHDMI端子を持ったプリメインアンプとして、価格.comでも人気のマランツ「NR1200」。2023年5月2日時点でのプリメインアンプカテゴリーの人気売れ筋ランキングで1位でした
ソニーの最新AVアンプ「STR-AN1000」。独自の音場空間創出技術「360 Spatial Sound Mapping」の効果の高さが話題となっています
以上、3つの方法を参考にぜひテレビの音質改善に取り組んでみてください。たとえば映画を見るときの音質を高めていくと、作品への没入度が増して、映画館のような臨場感に近づいていきますよ。
ハイレゾやストリーミングなど、デジタルオーディオ界の第一人者。テクノロジスト集団・チームラボのコンピューター/ネットワークエンジニアを経て、ハイエンドオーディオやカーAVの評論家として活躍中。