一般的なプリメインアンプやAVアンプを使う際に、必須となるのがスピーカーとアンプの間をつなぐスピーカーケーブルの存在です。このスピーカーケーブルは、現代の家庭用エレクトロニクス製品の中では異色の存在で、多くの場合は末端の被膜を“むいて”、露出させた導線をアンプ、スピーカーにそれぞれつなぐことになります。
このスピーカーケーブルを“むく”という作業は、ほとんどの人にとってなじみのないことのはず。ここでは誰でもできるスピーカーケーブルを“むく”方法と接続方法を動画で解説します。
重要なポイントは2つだけ。
●ていねいに作業すること
●露出した導線には素手で触れないこと
これらを守りながら、以下にチャレンジしてみましょう!
さて、ここからは動画の内容を写真で追っていきます。スピーカーケーブルを“むく”ために必要最小限の道具はカッターだけ。これならば、みなさん簡単に準備できますよね。ていねいに仕上げたいならば、マーキング用の油性ペンがあるとベターです。
さらに、処理するスピーカーケーブルの本数が多い場合には、ケーブル(ワイヤー)ストリッパーという専用工具の購入も検討してもよいでしょう。
スピーカーケーブルの末端を“むく”ために必要なグッズはカッターだけ。作業に慣れていない人、きれいに仕上げたい人は油性ペンを用意しておくとよいでしょう
使うケーブルによりますが、「2芯」(導線2本が平行に走っている)ケーブルは被膜がつながっている場合があります。まずはこの間を“裂いて”いきます。10〜20cmが目安ですが、短すぎなければ問題ありません
2本に“裂いた”ケーブルの被膜をひとつずつ“むいて”いきます。きれいに仕上げるために、ここでは油性ペンを使ってガイドとなる線を書いておきます。“むく”被膜の長さは1.5〜2cm前後が目安です
カッターを使って被膜を切るように作業します。力を入れすぎると導線を切ってしまうので、カッターを押し付けすぎず、ケーブルを回すように徐々に切り目を深くしていきましょう
被膜が切れたところで、その部分を引き抜きます。素手でもよいのですが、ペンチなどがあればより簡単に引き抜けます
被膜を“むいた”状態になりました。露出した導線は素手で触れないようにしましょう。腐食の原因になることがあります
ここから、工具を使う方法も紹介します。中央に穴の開いたニッパーを持っているならば、スピーカーケーブルを“むく”作業はもっと簡単です
中央の穴に、2本に“裂いた”状態のスピーカーケーブルをかけるように挟み、グリップを握り込みます。ケーブルによっては握り込みすぎると導線が切れてしまうことには注意しましょう
ニッパーの刃が被膜に切り込みが入った状態のまま、引き抜けばOKです
さらに、もうひとつの方法を紹介します。いちばん簡単な方法は、ワイヤー(ケーブル)ストリッパーというケーブルを“むく”ための専用工具を使うことです。なじみのない工具だと思いますが、3,000円程度で購入できます
ワイヤーストリッパーにはケーブルの太さに合わせたいくつかのガイド穴が用意されています。使うケーブルに合わせて穴を選び、ここでも2本に“裂いた”状態のケーブルをセットします
あとはグリップを握り込むだけ。被膜を切る、切った被膜を抜く、という一連の作業を一気にしかもきれいに行えます
被膜を“むいた”状態になりました。5.1chなど、サラウンドシステムの接続をするならば、ワイヤーストリッパーの購入を検討してもよいでしょう
スピーカーケーブルを“むいた”ところで、そのケーブルをアンプとスピーカーにつないでみましょう。スピーカーケーブルをつなぐための端子をスピーカー端子と呼びます。このスピーカー端子にもさまざまな種類があるのですが、ここでは最も一般的な形状のスピーカー端子を例にしています。
スピーカー端子は必ずプラスとマイナスがペアになっています。多くの場合、プラスは赤、マイナスは黒い端子です。ここで重要なのは、スピーカー側とアンプ側のプラスマイナスを合わせること。どちらかを逆にしてしまうと、音声が正しく再生されません。そのため、スピーカーケーブルには平行に走る導線の片方に何らかのマークが付いていることがほとんどです。このケーブルには線が入っていたので、こちらをマイナス(黒い端子)につなぐ、と決めて作業をしていきます
スピーカー端子は外側の留め具がネジになっているのが一般的です。まずはこれを緩めましょう。ネジを緩めると、端子の芯の部分に穴が空いているはずです。上下方向に貫通していることが多いのですが、ここではきれいな配線のために、下からスピーカーケーブルを通します。導線が通りづらい場合は手袋やタオルなどを使って導線部分を少しよってやりまししょう
露出した導線部分のみを穴に通し、ネジを締めてスピーカーケーブルを固定します。被膜部分を挟んでしまわないように注意しましょう。プラスマイナス両方の端子を締めて完成です。写真のように、少しだけ露出した導線が見えるくらいが理想です
スピーカーによっては、スピーカー端子を2組以上持っている場合があります。この場合にも、写真のようにどちらか1組にスピーカーケーブルをつなぐだけでOKです。基本的にはつなぎやすいほうを選べばよいでしょう。写真では上下の端子が金属のプレートで接続されていますので、どちらの端子もアンプと接続された状態になります
一度スピーカーとアンプをスピーカーケーブルでつなげば、これを外すことはそう多くないでしょう。しかし、掃除やシステムの変更など、ケーブルの脱着が多い人は「Yラグ」(左)や「バナナプラグ」(右)を使うと便利です。製品によって固定方法はさまざまですが、“むいた”状態のスピーカーケーブルに被せて使うことは共通しています。写真はどちらもケーブルの上から被せて、ネジ留めするタイプです
「バナナプラグ」を被せておけば、スピーカーおよびアンプへの接続は端子へ挿すだけ。外す場合は強めにプラグを引っ張るだけです
いっぽうの「Yラグ」は、ネジ式の留め具を締めて挟むように使います。こちらでも、穴を通すよりも簡単にできるはずです
ギュッとネジを締めれば、「Yラグ」での接続が完了します。「Yラグ」と「バナナプラグ」はスピーカー側、アンプ側、どちらでも使えるアイテムです
アンプ側へスピーカーケーブルをつなぎます。ここでは、あえてより難解なAVアンプを例にとります。使うのはフロントL/Rのスピーカーなので、たくさんあるスピーカー端子の中から、「FRONT R」や「FRONT L」と書いた端子を見つけます。プリメインアンプの場合は単に「L」や「R」と書かれている場合もあります
ここで、L(Left)つまり左スピーカーとR(Right)つまり右スピーカーとは何か? 改めて確認しておきましょう。テレビに向かって、左側がL、右側がRスピーカーです。ちなみに、サラウンドスピーカーを使う場合は、Lの正面がサラウンドのL、Rの正面がサラウンドのR。混乱しやすいので注意しましょう
AVアンプの「FRONT L」「FRONT R」端子にスピーカーケーブルを接続しました。方法はスピーカー側とまったく同じ。スピーカー側の接続時に、線が書いてあるケーブルをマイナス(黒い端子)につなぐ、と決めたので、ここでも線が書いてあるほうをマイナスにつなぎます
アンプへの接続時にも、やはり下の穴からケーブルを通すほうが美しく仕上がります。写真は上からケーブルを通した例。少し飛び出してしまいますし、ケーブルに不要なテンションがかかるのも避けたほうがよいでしょう
少数ではありますが、写真のようなプッシュ式と呼ばれる端子を持ったアンプやスピーカーもあります。接続方法は、黒/赤の部分を押して、そこにスピーカーケーブルの導線を入れ、押した手を離すだけ
端子がバネになっているので、挟まったケーブルが固定されました。あまり太いケーブルは接続が難しい場合があるので、注意しましょう
もしAVアンプのユーザーであれば、テストトーンを出せば、正しい接続がされているかどうか確認もできます。設定はメーカーや製品によって異なりますので、詳細は製品説明書を参照しましょう。動画で使ったのはデノンの「AVR-X2800H」という機種。セットアップメニューから、「スピーカー」「マニュアルセットアップ」「レベル」を順に選ぶとテストトーンの項目が表れました
以上で、スピーカーとアンプの接続が完了したはずです! 静止画ではお伝えしづらい部分もありますので、ぜひ動画もご覧いただき、正しくスピーカーケーブルを接続してください。
ハイレゾやストリーミングなど、デジタルオーディオ界の第一人者。テクノロジスト集団・チームラボのコンピューター/ネットワークエンジニアを経て、ハイエンドオーディオやカーAVの評論家として活躍中。