5月10日にハイセンスから4K液晶テレビの2023年モデル「UX」シリーズと「U8K」シリーズが発表された。製品の概要は発表時の以下の記事でレポートしているが、今回は最速で実機を使ったレビューをお届けしよう。
今回用意したのは、「UX」シリーズの65V型モデル「65UX」と、「U8K」シリーズの55V型モデル「55U8K」。発売前のサンプル機だが、画質面は「65UX」「55U8K」ともに製品版と同等品だ。
ハイセンスのMini LEDバックライト採用の最新4K液晶テレビ「65UX」「55U8K」を実機レビュー
さっそく、僕の自宅に発売前の「65UX」「55U8K」の2機種を導入してみたのだが……まず「65UX」は65V型だが、思ったよりも筐体サイズが大きく、大人2人で設置してもギリギリ持てるくらいの重量感だった。高密度化したMini LEDバックライト「ダイナミックXディスプレイ」や、TVS REGZA社の2023年最新モデルと同世代のエンジン「HI-VIEWエンジンX」などの高画質技術を多数搭載したフラッグシップだけのことはある。
ハイセンスのフラッグシップモデル「UX」シリーズ。今回お借りした65V型の「65UX」がシリーズ最小サイズとなる
もういっぽうの「55U8K」は、Mini LEDバックライト採用のハイクラスモデルだが、55V型ということもあって、大人2人で軽々と持ち上げて設置できた。こちらはMini LEDバックライトや「広色域量子ドット」、「ローカルディミングPro」などを搭載している。
Mini LEDバックライト採用モデルとしては珍しい55V型の手ごろなサイズが魅力の「55U8K」
画質・音質・機能性をバランスよく備えた高コスパなテレビを多数ラインアップし、日本市場の目の肥えたユーザーからも大手メーカーの一角として一目置かれるようになったハイセンス。2023年モデルは、全機種Mini LEDバックライト採用モデルになるなど、なかなかチャレンジングなラインアップとなった。今回は、そんな最新モデルがどれほどの実力を備えているか、ユーザーが気になる画質や音質、遅延性能、ネット動画機能や録画機能などを順にチェックしていこう。
「65UX」「55U8K」の付属リモコン。デザインは2機種とも共通だ
スタンドへの設置や放送、ネットワークなどの初期設定をひととおり終え、まずは「65UX」「55U8K」の画質からチェックしてみた。
なお、本稿に掲載している写真の中に3台のテレビが映っているが、写真中央がハイセンス「65UX」で、右が「55U8K」。左側に見切れている機種は僕の自宅に設置しているTVS REGZA「X9200S」(2020年のレグザのハイエンド4K有機ELテレビ)だ。4K有機ELテレビとの違いも参考にしていただければ幸いだ。
画質モードは部屋の明るさに応じて画質を最適化する「自動AI」を選択
まずは、普段使いの地デジ放送&YouTubeの画質からチェックしてみたが……ひと目見た瞬間から「65UX」の画面の明るさに驚いた。他機種でも滅多に見ることがないくらい画面全体が明るく、まぶしいと感じるかどうかのギリギリまで輝度を引き上げているのではと思ってしまうほど。4K有機ELテレビの画面の明るさに慣れている人だと、かなり衝撃を受けるかもしれない。
同じYouTubeの動画を流して画質を比較したところ。「65UX」(中央)は桁違いに明るくて高画質だ
「65UX」は、コントラストが高く、画面全体で立体感を見て取れる。画面の明るさだけでなく、テロップの赤や緑の発色の鮮やかさもしっかり出ており、とても映える画質だ。人肌も色鮮やかな部分に引っ張られることなく自然で違和感がなく再現できている。地デジやYouTubeの解像感もまったく不足せず、それでいてノイズもしっかりと押さえこまれている。「ダイナミックXディスプレイ」と最新の高画質エンジン「HI-VIEWエンジンX」の高画質技術のたまものだろう。
『The Spears & Munsil UHD HDR Benchmark』の1シーン。「65UX」「55U8K」ともに広色域だが、それ以上に「65UX」のまぶしさがすごい
「55U8K」の存在も忘れてはいけない。「55U8K」もMini LEDバックライト採用のハイクラスモデルらしく、4K有機ELテレビよりも明るく、画質はなかなかのレベル。地デジやYouTubeも明るい画面で輝度感もしっかり出ており、全体的にクッキリしている。日本のテレビ放送の特性やYouTubeの動画などに対してもしっかりと作り込まれている印象がある。よくできた高画質だが、「AI自動」モードだと色温度はやや高めに出るようだ。
続いて、暗室にした状態で画質をチェックしてみた。こちらの状態でも、「65UX」の輝度感とコントラスト再現はとても優秀だった。夜景の映像でも、暗所の沈み込みとともにピークのまぶしさがしっかりと再現されていた。ちなみに、夜景の映像をチョイスしたのはMini LEDバックライトでもハロー(高輝度部の周囲が白く浮く現象)が見えるかと思ったのだが……「65UX」「55U8K」ともに、正面から見る限りハローはまったく気にならなかった。ただ、「55U8K」は使われているMini LEDバックライトの密度の関係なのか、斜め位置からはハローが若干感じられた件は報告しておこう。
暗室で画質チェック。「65UX」の画面の明るさが突出していることがおわかりいただけるだろう
夜景の映像を流したところ。「65UX」もきれいだが、「55U8K」も左の4K有機テレビに近いなかなかの表現力
視野角もチェックしてみたが、「65UX」「55U8K」ともに視野角の広いADSパネルを採用しているため、斜めから見ても画質への影響はとても少ない。パネルの性能の違いによる輝度の違いもあって、「65UX」のほうが視野角はやや広いようだ。
右から「55U8K」、「65UX」、一番奥に見えているのが4K有機ELレグザ「X9200S」だ
キッチンから「65UX」「55U8K」を見てみたところ。斜めからでも画質の変化が少ないのが好印象
「65UX」は、「HI-VIEWエンジンX」の高画質化機能のひとつ「AIネット映像高画質処理アドバンスト」にも注目したい。ネット動画に発生しがちなバンディングノイズなどを低減させる機能で、TVS REGZAの2023年4K液晶/有機ELレグザのフラッグシップモデルにも搭載されているものと同一のものだ。実際にYouTubeで試してみたが、バンディングノイズの低減効果をしっかりと確認できた。
色の段差が出るシーンでは「AIネット映像高画質処理アドバンスト」が有効
次に、「65UX」「55U8K」内蔵スピーカーの音質をチェックしてみた。
まずは「65UX」から。実用最大出力82Wの「10スピーカー立体音響サラウンドシステム」で4.2.2ch構成(メインスピーカーが2ウェイで10スピーカー扱い)というスペックだ。地デジ放送やYouTubeでチェックしてみたが、ニュースやバラエティ番組では、出演者の声が画面の空間に浮かぶよう設計されているようで、バラエティや音楽番組の雰囲気がよく出ているし、若干高域強めで人の声も聴きやすい。
「65UX」の内蔵スピーカー。サイドとトップにもスピーカーを搭載
NetflixでDolby Atmosのサウンドもチェックしてみたが、上方向は天井あたりまで、横方向は頭の横くらいの位置まで音が広がり、空間を満たすような重厚感ある低音が強烈だった。
「65UX」「55U8K」ともにDolby Atmosに対応
「55U8K」は実用最大出力40Wで左右のメインスピーカーとツイーター、サブウーハーの5スピーカー構成。地デジ放送やYouTubeでは画面やや下の定位だが、声の立ち上がりはよく、しっかりとした低音で声の厚みも感じられ、全体的によくできたバランスだ。Dolby Atmosは頭上までの回り込みはないものの、音のよさと重厚感ある低音で再現性は十分。「55U8K」はシンプルに音のいいテレビスピーカーといったところだ。
「55U8K」は5スピーカー構成を採用
画質、音質とチェックしてきたが、「テレビに求めるのは、ゲームプレイ向けの遅延の小ささ」という人もいるだろう。そこでPS5の接続を想定して「4K LagTester」で4K/60Hz/SDRの表示遅延を測定してみた。
PS5の接続を想定して「4K LagTester」で4K/60Hzの遅延をテスト
「65UX」「55U8K」の表示遅延は、「65UX」は12.5ms、「55U8K」は12.1msだった。ゲーム関連は4K/120Hz、VRR、ALLM、AMD FreeSync Premium対応も揃い、いまどきのゲーミング向けテレビとしても活躍してくれそうだ。
「65UX」「55U8K」のネット動画機能は、独自の「VIDAA」プラットフォームを採用している。音声操作機能の「VIDAA Voice」にも対応している。今年からFOD、TVer、DAZN、NHK+、WOWOWが加わり、対応サービスは全17サービスと主要サービスをほぼ網羅した形となっている。
「VIDAA」のホーム画面
上記が「VIDAA」のホーム画面だが、リモコンにダイレクトボタンが増えたおかげで、ほとんどのネット動画はこの画面を経由せず起動できる。なお、実機でレスポンスを調べたところ、電源オンの状態、オフの状態ともにYouTubeとNetflixは約2秒で起動できた。他社のテレビでも起動速度が遅めのAmazonプライム・ビデオも7秒台とレスポンスは十分高速だ。
ネット動画の大部分はリモコンからダイレクト起動が可能
ユニークな機能として、アップル「AirPlay 2」にも対応しており、iPhoneなどから音楽・動画のキャスト再生も可能となっている。とはいえ、YouTubeやNetflix、Amazonプライム・ビデオなどはスマホのアプリと連動してキャストする仕組みが元々あるので、本当に「AirPlay 2」でしかできないことは、撮影した写真やビデオの再生、端末に保存した楽曲や音楽ストリーミングサービスの楽曲再生くらいだろう。
「AirPlay 2」によるキャストにも対応。iPhoneで撮影した写真などをテレビの大画面に簡単に表示できるのが便利だ
テレビである以上、地デジなどテレビ放送コンテンツ視聴もまだまだ多いだろう。「65UX」「55U8K」のネットではない地デジの番組表や録画機能まわりはどうなっているの? と思う人もいるかもしれない。これは以前からの仕様だが、テレビまわりの機能はレグザの画面をほぼ流用していて、基本的な録画機能は画面も操作性も含めてそっくり。ちなみに、電源オンから番組表の操作は約2秒で起動する。レスポンスに関しては特に不満は感じないはずだ。
「65UX」「55U8K」の番組表。左の4K有機ELレグザ「X9200S」とデザインがほぼ同じというところに注目してほしい
「65UX」「55U8K」ともに、外付けのUSB HDD増設による録画対応で、地デジは2番組同時録画まで対応する。レグザと比べると「タイムシフトマシン」がなく、「みるコレ」のネット連携機能もないが、それ以外のほとんどがレグザと同じで、ジャンルや繰り返し録画の絞り込みもあり使い勝手のよい部類なのは確かだ。ハイセンスのオリジナル機能として、録画番組を家庭内で共有する「AnyViewホームサーバー機能」も利用可能だ。
外付けUSB HDDを使った録画機能もしっかりと搭載
ハイセンスから2023年モデルとして登場した「65UX」「55U8K」。実際に実機に触れてみると、画質・音質・機能性のいずれもスキがなく、なかなかバランスのとれたモデルと言えそうだ。特に「65UX」は最新のハイエンドテレビとして画質・音質の両方で大きく進化を遂げており、ハイセンスだからと言って侮れないくらい完成度が高かった。Mini LEDバックライトを採用した55V型の「55U8K」もアンダー17万というなかなかインパクトのある価格設定で、コスパの面でも注目度が高そうだ。Mini LEDバックライト採用の最新4K液晶テレビの購入を検討している人は、ぜひチェックしてほしい。
PC系版元の編集職を経て2004年に独立。モノ雑誌やオーディオ・ビジュアルの専門誌をメインフィールドとし、4K・HDRのビジュアルとハイレゾ・ヘッドフォンのオーディオ全般を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。