完全ワイヤレスイヤホンだけでも数世代のモデルやProシリーズなどが併売されているアップルの「AirPods」シリーズ。価格も異なるためユーザーにとってはどのモデルを選ぶべきか迷いがちなポイントでしょう。
本企画では、改めて「AirPods」シリーズのラインアップをおさらいしつつ、各製品の特徴や、選ぶ際に確認したいポイントについて解説していきます。なお、本稿に記す価格は、2023年5月中旬時点におけるApple Store(オンライン)のものです。
昨今は、サードパーティー製品の完全ワイヤレスイヤホンやヘッドホンも市場が成熟しており、iPhoneと連携させた際の機能や、使い勝手についても、かなりよくなってきています。そういう意味で、“AirPodsシリーズならでは”と言える体験は、以前と比べると少なくなってきてはいます。
いっぽう、アップル製品との相性のよさについては、純正品である「AirPods」シリーズが一線を画す存在であることは変わりません。たとえば、iPhoneとのペアリングがスムーズに行えたり、複数のアップル製品への切り替えが簡単だったり、「探す」ネットワークでの捜索ができたりするなど、OSレベルでの機能連携ができることは大きなメリットです。
2023年5月時点においては、Apple Store(オンライン)にて、「AirPods」シリーズは以下の4モデルが展開されています。
・AirPods(第2世代):2019年3月発売、インイヤー型、H1チップ
・AirPods(第3世代):2021年10月発売、インイヤー型、H1チップ
・AirPods Pro(第2世代):2022年9月発売、カナル型、H2チップ
・AirPods Max:2020年12月発売、オーバーイヤーヘッドホン、H1チップ
完全ワイヤレスイヤホンとしては、「AirPods(エアポッズ)」と「AirPods Pro(エアポッズプロ)」の2種類がラインアップされています。
「AirPods」については、2019年に発売された第2世代モデルと、2022年に発売された第3世代モデルが併売されています。両世代に共通する特徴は、シリコン製のイヤーピースが付いていないインイヤー型のデザインになっており、軽やかな付け心地を実現している点です。
いっぽうで、環境音を低減するANC(アクティブノイズキャンセリング)機能は対応していませんので、たとえば、地下鉄のような周囲のノイズが大きい場所で音楽をじっくりと聴くような用途にはあまり適していません。
上位モデルに相当する「AirPods Pro(第2世代)」については、シリコン製のイヤーピースが付いており、外耳道に密着する装着感となっています。こちらはANC機能をサポートしているので、地下鉄に乗りながら音楽を聴くような用途にも適しています。なお、現時点でユーザーが意識する必要はほとんどありませんが、「AirPods Pro」が搭載するチップセットのみ最新の「H2」となっています。
そして、最上位の「AirPods Max(エアポッズマックス)」は、完全ワイヤレスイヤホンではなく、ヘッドホンタイプの製品です。ほかの「AirPods」シリーズと比べると、少し毛色が異なります。
以下、それぞれのモデルの特徴をチェックしていきましょう。
「AirPods」をとにかく安く入手したい場合には、「AirPods(第2世代)」が有力候補になるでしょう。同モデルは2019年に発売された少し前のモデルですが、19,800円(税込)というシリーズ内では最も手ごろな価格で提供されています。
充電ケースはやや縦長の形状をしており、イヤホン本体も軸部分が長い旧世代のデザインを採用しています。
先述のとおり、イヤーピースを備えないインイヤータイプの製品で、付け心地は軽やかです。ただし、ANCはサポートしていないので、地下鉄乗車時や皿洗いをしながらなど、ノイズが大きい環境での音楽リスニングにはあまり適していないことは理解しておきましょう。
また、イヤホン本体で楽曲のコントロールなどを行う際には、軸の部分をタップする操作のみであり、後述するモデルと比べると、やや操作感の快適さは劣る部分もあります。
そのほか、機能、仕様面では、「空間オーディオ」に対応していなかったり、耐汗・耐水性能を備えていなかったりしますので、問題がないか確認しておきましょう。
2021年10月に発売された「AirPods」の最新世代が「AirPods(第3世代)」です。上位の「AirPods Pro」と比べると、ANCに対応していない点に差分が残りますが、想定用途を考えたときにANCが不要という人ならば、こちらを選ぶことでよりコストを抑えつつ、インイヤー型ならではの軽やかな装着感を享受できるでしょう。
「AirPods(第3世代)」では、充電ケースの異なる2つのバリエーションが選択できるようになっています。具体的には、有線ケーブルのみで充電する「Lightning充電ケース」と、ワイヤレス充電にも対応する「MagSafe充電ケース」の2種類。前者を選ぶと26,800円で、後者を選ぶと+1,000円の27,800円になります。
ケースの形状は、第2世代からやや横長に刷新され、イヤホンの軸も短くなっています。楽曲のコントロールは、軸の部分にある感圧センサーを指先でつまむようにして行います。
先述の「AirPods(第2世代)」と比べると、機能、仕様面では、空間オーディオに対応したことや、充電ケースとイヤホンともにIPX4の耐汗・耐水性能を備えたことなどがポイント。音源の連続再生時間も最大6時間あり、前世代よりも+1時間長くなっています。充電ケースを含めた場合は、最大24時間→最大30時間の+6時間アップです。
音質に関しては、専用の高偏位アップルドライバーとハイダイナミックレンジアンプを搭載しており、前世代からアップグレードされています。
「AirPods Pro(第2世代)」は、ANC機能に対応しており、ANCに切り替えることで周囲のノイズを低減できるのがポイントです。たとえば、電車通学、通勤時に音楽リスニングや動画視聴を行うなら、ANC機能があると非常に重宝します。
価格は39,800円まで上がりますが、ノイズのある環境で使用する機会が多い場合には、「AirPods Pro(第2世代)」の一択となるでしょう。
ちなみに、「AirPods Pro(第2世代)」では、ANCで周囲のノイズを低減できるだけではなく、反対に周囲の音を取り込むためのモードも用意されています。たとえば、道路を歩くときなど、周りの音が聴こえていたほうが安全な場面では、こうしたモード切り替えが行えるので安心です。
そのほか、インイヤー型のイヤホンはサイズ調整が難しいですが、「AirPods Pro(第2世代)」はイヤーチップが付いているため、耳が小さい人でも比較的利用しやすいと言えます。「AirPods」シリーズを試してみて合わなかった人でも、諦めずに「AirPods Pro」を検討してみるとよいでしょう。
操作関連については、楽曲コントロールにタッチセンサーが採用されたのがポイントです。具体的には、スワイプ操作で音量調整などが行えるようになっており、わざわざiPhoneを取り出して操作する必要がありません。これは、ほかモデルと比べてユニークな点です。
そのほかの「AirPods Pro(第2世代)」ならではの特徴としては、充電ケースにストラップを装着できることもあります。サードパーティ製の保護ケースなどを併用せずとも、充電ケースにそのままストラップを装着できるので、紛失予防に活用したり、ワンポイントのオシャレを楽しんだりしやすいです。
また、ケースには「U1」チップが搭載されており、UWBに対応したiPhoneならば、近くにある「AirPods Pro(第2世代)」までの距離と方向を確認しながら探すことが可能。ふと置いたモノを見失いがちな人ならば、こうした機能が活躍することでしょう。
音質に関しては、こちらも「AirPods(第3世代)」と同様に高偏位アップルドライバーとハイダイナミックレンジアンプを搭載。上位モデルらしいリスニング体験が味わえます。ちなみに、楽曲の連続再生時間については、ANCオン時でも「AirPods(第3世代)」と大きく変わりません。
シリーズで唯一のワイヤレスヘッドホン型の製品が「AirPods Max」です。価格は84,800円で、「AirPods Pro」の倍以上します。一般的なワイヤレスヘッドホンの中でも高級機に位置づけられるため、iPhoneやiPadなどアップル製品を複数所有し、かつ、オーバーイヤー型のヘッドホンにこだわりがある人向けと言えるでしょう。
発売された時期は2020年12月ですが、最上位モデルらしい音質で、ANC機能や、外部音取り込みモード、空間オーディオなどもサポートします。サイズや重量的には日常的に持ち運ぶのが厳しいため、自宅などで映画や音楽を没入感高く楽しみたい人に向いているでしょう。
音質や機能面以外にも本製品ならではの特徴があり、それがDigital Crownやノイズコントロールボタンによる快適な操作です。特にDigital Clownによる細やかな音量調節は、ほかの製品では得がたいコントロールツールです。
そのほかの使い勝手に影響する特徴としては、ヘッドホン単体での再生時間が最大20時間(ANCオン)と長いことが覚えておきたいポイント。なお、付属する専用キャリングケース「Smart Case」に入れておくと、電力消費を抑えるモードに切り替わることも特徴です。
ただし、耐汗・耐水性能は備えていません。屋外利用時には、急な雨などに注意する必要があります。
ちなみに、「AirPods」シリーズとしては、唯一カラーが選択できることも特徴です。具体的には、「シルバー」「スペースグレイ」「スカイブルー」「ピンク」「グリーン」の5色を選択可能。ファッションやカラーにこだわりたい人ならば、検討候補に入れてもよいかもしれません。
以上のように「AirPods」シリーズは、名称こそ似ているものの、選択する製品によって体験が大きく異なってきます。形状がインイヤー型かカナル型か、あるいはヘッドホン型か。地下鉄乗車時などに必須のANC機能には対応しているかどうか、などのポイントを見極めつつ、自身の想定する利用スタイルにあった製品を検討してみてください。
パソコン・家電からカップ麺に至るまで、何でも自分で試してみないと気が済まないオタク(こだわり)集団。常にユーザー目線で製品を厳しくチェックします!